「この辺だよな」
思ったよりギルドから遠かったため、歩き疲れて汗をかきながら俺は言った。
「そのはずです。」
この場所まではレアが案内してくれた。マッピングまでしてくれるなんてなんて親切な攻略本なんだ。
「しっ、何か来る」
サリアの目が鋭くなる。レベルが高いと索敵能力も上がるのか?
――ピョコッ
草むらから何かが飛び出してきた。一見しただけでわかる。これが”ピョコン”だと。
「か、かわいいー!ほんとにうさぎさんみたいですね!」
ピョコンに手を差し伸べるレアに対して
「待て!不用意に近づくな!」
「えっ」
レアがサリアの言葉を理解する前にピョコンは毛に隠れていた口を開き、レアに襲いかかる。温和そうな見た目とは裏腹に牙は鋭い。
「危ねえ!」
サリアが声を上げた時には体が動いていた。レアを突き飛ばし、俺も一緒に倒れこむ。
「おいおい、マジかよ…これのどこがペット用だってんだよ…」
俺が予想外のピョコンの獰猛さに驚いていると、次々と草むらからピョコンが現れる。2,3,4…8匹くらいか?
「恐らくこいつらは人の味というのを知ってしまっている。こうなっては野生の獣と何ら変わらない…」
サリアが剣を構える。おぉ…なんか戦士っぽいぞ。やっちまえ!
「ちょうど8匹か、ならば…」
サリアが剣を低く構え…叫ぶ
「ワイドスラスト!!」
「ワイドスラスト…どうやらスキルのようです。多数の敵を同時に攻撃できる剣士専用の技みたいです。」
レアが俺の隣で攻略本を開きながら説明する。お前襲われたってのに意外と余裕あんな。
だが、それって今の状況にぴったりの技じゃねーか!
「やっちまえサリア!」
――ブンッ!
あれ?おかしいな?俺が思っていた効果音と違う…もっとこうザシュッ!とかそういう…
あっ、そういうことね。すっかり忘れてたけどあいつDEXが低いんだった…でも、流石に8匹標的にして的中が0ってのは予想外…
考察する俺だったがサリアの横を抜けてきたピョコンが飛びかかってきてそれでころではなくなった。とっさに近くにあった木の棒でなんとか噛みつかれるのを防ぐ。
「ちょっ!おい、サリア!なんとかしてくれ!」
慌てて助けを求める俺
「ああ、任せろ!」
大きく剣を振りかぶり、サリアは恐らくピョコンに向けて剣を振り下ろしたんだろう。なぜ恐らくかって?剣が俺の顔をかすめて地面にぶつかったからだよ。
「おいィ!?お前、わざとやってんじゃねーだろうな!」
「なっ、貴様が動くから狙いが外れてしまったんだ!」
神に誓って言う。俺はその場から動いていない。
「くそったれ!」
俺は木の棒を振り回し、なんとかピョコンを遠ざけることができた。
おいおい、やべーぞこれ…サリアが攻撃した回数は8+1で9回。そのうち敵への命中は0、しかもフレンドリーファイアまでしそうになって…思った以上に低DEXの影響ってでけーな…!どうする…
俺が必死で解決策を考えているとピョコン達の後ろに毛色の違うピョコンがいるのが目に入った。あいつもしかして…
「おい、レア!あの奥に居る黒いやつ!もしかして親玉じゃないのか!?」
「えっ、あっ、はい。たしかにそのようですね。凶暴性が高く、一般的なピョコンと比べて3倍の機動力があるようです。」
なんだその当社比みてーな具体的な数字はよ…、3倍ってなんだよ、絶対捕まえらんねーよ。
絶望的な戦力を聞いて立ち尽くす俺をよそに、黒ピョコンが動き出した。
「はええ…!」
たしかに3倍…?いや、体感ではもっと早く感じる。視界の隅で捉えるのがやっとだ。
そして、その黒い影は徐々に近づき。俺に…いや、俺の横…?
「レ…」
レアを守ろうとしたが動きが速すぎる…無理だ…
――ザシュッ
俺の目の前で黒い塊が二つに分かれた。地面に落ちたそれを見て黒ピョコンであることを認識した。
「私の仲間に手を出すな」
剣を振り払ったサリアがそこには居た。
「サリア…」
俺は力なくつぶやく。
ハハッ…10回振って当たった回数は1回…1回って…それも親玉一本釣りかよ…どんな確率だよ…
親玉を討ち取られたピョコン達は明らかに動揺し、逃げていった。頭がいないと群れって機能しないんだな。俺はそう思った。
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「ふぅ、どうにかなったようだな」
クエストを達成し、帰路に付く俺達に、やり遂げた感を出しながらサリアが話しかける。
「『どうにかなったな』じゃねーよ!お前、本当にわざとやってたんじゃないだろうな!」
あまりに都合のよすぎる展開に俺は、思わずサリアに迫る
「馬鹿なことを言うな!私は一振り一振りを全霊を込めて行っている!」
本気で当てにいって当たらないのは余計にわけが悪いけどな?その辺分かってんのかコイツは?
「命中率10%の攻撃をボスに当てないといけないってどんな運ゲーだよ、まったく…」
「ですが、あの黒ピョコン、情報によると突然変種でとても戦闘能力が高かったようですよ。フワフワした見た目とは裏腹に防御力がとても高く、普通の攻撃は倒しきれなかったと思いますよ。」
「えっ、マジかよ」
ムカツク顔してるんだろうな、と思いながらもサリアの方を向く。
サリアはこれ以上ないくらいドヤ顔をしている。
一発殴ってやろうかと思ったが今回はお手柄なのでやめておいた。