クエストを達成し、ギルドへと戻ってきた俺達は受付で報酬を受け取り、空いている席に座る。
そして、報酬を分け合う相談をする。俺とレアは何もしていないから少なくて当然なのだが、
「前にも言ったが私はパーティを組めるだけで満足だ、だから報酬は同じで構わない。」
「私も同意見ですよ、久しぶりに組んだパーティ、久しぶりに撃った魔法の感覚…それだけで十分ですよ」
こいつらいい奴すぎるだろっ…!どっかの女神よりよっぽどまともだ…!誰とは言わないが。
そして俺は二人に感謝しつつ、今日のクエストを振り返る。
「いやぁ、今回も危機一髪だったなー」
俺は冗談っぽく言ったが実際結構危ないところだったと思う。
「メイルが自信満々だったのにしょっぼい魔法撃った時はどうしようかと思ったぜ」
これも冗談だがメイルには聞き捨てならなかったらしい。
「あれはたまたま低い火力が出てしまっただけですよ!二発目は大丈夫でしたよ!」
振り幅が大きいってのは一長一短だな、と思いながらも疑問に思ったことをメイルに尋ねる。
「撃った魔法が自分の振り幅の中でどれくらいだったのかって分かるのか?」
「詠唱中ではわかりませんが発動した時の精度ですぐにわかりますよ、しかし、一度発動した魔法は止めることができませんよ」
聞けば聞くほど不便だ、精度が低かったらキャンセルして詠唱し直すとかができればよかったんだが…
「じゃあさ、フレイムスフィア…だったか?の1回目と2回目のは具体的にどれくらいの精度だったんだ?」
「そうですね…1回目は2%、2回目は30%と言ったところですよ」
「マジかよ!?」
おいおい、あれで30%の火力だったのかよ、100%だとどうなってたんだ?とても気になる…。
…いかんいかん!俺まで最大火力全振り娘に毒されてきている。でもロマンがあってそれもいいかも…
メイルといいサリアといい、大事な場面で俺達を助けてくれるから火力至上主義も一概に否定できない。メイルもこのパーティを気に入ってくれたようだしよかった…
なんてことを考えているとサリアが突然立ち上がり俺達に告げる。
「やはりあの剣が欲しい!」
あまりに唐突な宣言に俺の頭は理解が追いつかなかった。しかし、ふと武器屋でのことを思い出す。
「あぁ、お前が武器屋で見てた剣か」
「そうだ、やはりあの剣は買っておきたい!報酬ももらったし今なら買うことができる!」
興奮しながら話すサリアだったが俺にはそこまでこだわる理由がわからなかった。
「なぁサリア、もう夜だし明日にしようぜ?」
「わかっている…わかっているがこの高ぶる気持ちを抑えられないんだ!あぁ、今すぐあの剣の威力を確かめたい…!」
ダメだこりゃ、仕方ないな…
「じゃあ俺も付いてくよ、戦士とはいえ夜に女の子を一人にするってのもな。レアとメイルは先に帰っててくれ」
「わかりました、エレナには私から伝えておきます。あとこれ言ってなかったのですが…」
「私の力で、私は、知っている人の居場所を知ることが出来ます。なので安心して行ってきて下さい。」
ほう…と俺達三人が驚きの声を上げる。
初耳だがそれはありがたいな。もし俺がアルスター城に帰る途中で迷子になっても大丈夫ってわけだ。
「そうか、じゃあ何かあったら頼むぜ!メイルもまた明日な!」
「また明日ですよ!」
そして俺とサリアは二人と別れ、武器屋を目指す。すっかり日は落ち、辺りは街灯の明かりが灯っていた。
「じゃあ、行くかサリア」
「あぁ!」
そして俺達は並んで街道を歩き出す。
しばらくサリアと歩いていて、ふと思うことがあり、サリアに話しかける。
「なぁ、サリア」
「どうした?」
「その、今日は、ありがとな」
なんだか気恥ずかしくてつまりながら言ってしまった。だがサリアはなぜ俺に礼を言われてるのかわからないようだ。
「ほら、今日ゴブリン達に襲われた時にさ、俺を守ってくれただろ?しかも2回。あの時サリアが守ってくれなかったら大怪我してたと思うんだ」
率直に理由を言った俺だったが、感謝を言葉にするのはなんだかむず痒い。だが、サリアはフッと笑い
「なんだそんなことか、戦士が仲間を守るのは当然のことだ」
やっぱりそう言うと思った。サリアは本当に優しい女の子だ。
「それでも感謝してる。また迷惑かけると思うけど、これからもよろしくな」
「まかせておけ、私は何があろうと仲間を守る」
サリアの真っ直ぐな言葉に俺は安心した。本当にパーティを組めてよかった。そんなことを考えていると
――ポツポツ…
――ザーッ
あまり雲行きが良くないとは思っていたが案の定、雨が降り始めた。
「仕方ない屋根のあるところに入ろう」
サリアにそう言われ、俺達は近くにあった店の屋根を借りる。
「こりゃしばらく止みそうにないな…クシュン!」
俺は思わずクシャミをする。雨に濡れて体が冷えただろうか。
「仕方がないな、武器屋には明日行くことにしよう」
あっさり諦めるサリアに俺は
「いいのか?」
「あぁ、あの剣は欲しいが、ワタルの方が大事だ」
自分の気持ちよりも俺のことを優先してくれるサリア。そういや名前、初めて呼ばれたな。
「ここは…」
サリアが辺りを見回す、知っている場所のようだ。
「私の宿が近い、今から城に戻るのも大変だろう?泊まっていくと良い」
そう言われ、俺はサリアに付いていく。宿屋に泊まるとなると余分な金がかかるが無理をして体を壊しても困る。俺はサリアと同じ宿屋で部屋を借りることにした。
宿屋に着いた。思っていたよりも近かった。俺は宿屋の受付へ向かおうとしたが
「ワタルは疲れている。私が受付をしてこよう」
そう言われ、俺は近くの椅子に腰掛け休ませてもらう。宿屋は想像より綺麗だった。結構お金かかるんじゃないかなぁ、と考えていると
「よし、さぁ部屋へ行こう」
サリアが部屋を取ってくれたようだ。空いていて良かった。俺は、先に歩いて案内してくれるサリアに付いていく。
「ここが私の部屋だ」
サリアが二階の角部屋の扉の前でそう告げる。サリアの部屋の場所はちゃんと覚えておかないとな。
「俺の部屋は向かいか?」
わざわざ遠い部屋から案内しないだろうという俺の真っ当な推理だ、だが返ってきた返答は予想外だった。
「??私の借りている部屋は一つしか無いが…?」
「えっ…」
意味がわからない、サリアはさっき俺の部屋を借りてくれたんじゃないのか?混乱する俺をよそにサリアは扉を開ける。
「さぁ、ここが私の部屋だ。二人で過ごすのに不便するような広さではないだろう?」
たしかに思っていたよりも部屋は広い、ベッドだけがあるビジネスホテルをイメージしていたが、どちらかというとアパートのようだ。……ん?
「…二人で過ごす?」
「あぁ、なにか問題があったか?」
「いや、ちょっと待てよ。何言ってるかわかってるのか!?男と一緒の部屋で泊まるっておかしいだろ!?」
大声でツッコむ。俺はてっきり別々の部屋だと思っていたし、それが当たり前だからだ。だがサリアは
「なにもおかしいことはない、私達は仲間じゃないか」
「…」
「…」
あーあれか、友達ができたことがないぼっちが初めてできた友達との距離感を間違えてしまうやつか。参ったな、どうするか…。俺がどうサリアを説得しようか考えていると
「疲れただろう、大したものは出せないがゆっくりしてくれ」
そう言ってサリアは着ていた防具を外す。俺がいるのに普通に脱ぐなよっ…!
「体が冷えただろう?先に風呂に入ると良い」
まぁサリアが嫌じゃないなら無理に部屋を分ける必要もないか、お金も浮くし。俺はそう考え、風呂を借りることにした。
「風呂も割りと広めだな」
俺は服を脱ぎ、独り言をつぶやきながら風呂場に入り、体を洗う。普段、サリアが使っている風呂だと考えると少し緊張するが、俺は紳士なのでこれ以上考えずに…
――ガラッ
鼻歌を歌いながら体を洗っていた俺は驚いた。浴室のドアが何の遠慮もなく開けられたからだ。そしてそこにはサリア、おかしいな、服を着ていない。
「なにしてんだお前えぇぇ!?早く閉めろよ!」
思わず叫ぶ俺、だがサリアは何の疑問も抱いていない様子で浴室に入り、ドアを閉める。違う、俺はサリアが浴室に入ってからドアを閉めろと言ったのではない。
「体を流してやろう、遠慮することはない、仲間なのだから」
ダメだこいつ、”仲間”というだけで人と人との境界線を遥かに飛び越えてきやがる。流石の俺もここまでとは予想外だ。
「いやいやいや、流石におかしいから!別に一人で洗えるから!」
必死に拒否する俺だったが
「ワタルは私を仲間だと思っていないのか…?」
その場に膝をつき、上目遣いで俺に聞いてくるサリア。ちょっとずるいでしょそれ。
「いや、仲間だけどこれは流石に…」
「ダメか…?」
「ダメじゃないです…」
俺は断りきれずにサリアに背中を流してもらう。俺って以外と押しに弱かったりするんだろうか。でも女の子に悲しそうな顔されると断れないよなぁ…。
当たり前だが女の子に体を洗ってもらったことなどない。タオル越しの細い指が俺の体を撫でる感覚はとても新鮮だ…が、この状況に俺の理性が長時間耐えられそうにない。
「も、もう十分だ、サリア。ありがとな、先に上がってていいぞ。俺は湯船に浸かってから上がる」
限界を迎えそうだった俺はサリアにそう伝える。が
「そうなのか?では私も一緒に…」
「あああああああそういえばめっちゃお腹空いてたんだった!風呂上がったらすぐに飯食いたいな!サリア用意してくれるか?してくれるよな?さあ、先に上がって用意しといてくれ!」
あくまで一緒に入ろうとするサリアに、俺は料理を作ってくれと必死にお願いをする。これ以上はヤバい。
「あ、あぁ…そんなに腹が減っていたのか、すまない気が付かなかった、すぐに用意してくる」
あくまで善意でやってくれていたサリアに嘘をつくのは後ろめたかったが、俺にはこうするしかなかったんだ、許してくれサリア。
そして俺は湯船に浸かり、気持ちを落ち着かせてから浴室を出た。少しもったいなかった気がしたが気のせいということにしておこう。
風呂を上がり、居間に出るとサリアが台所で料理をしていた。エプロンのようなものを付けて立っている姿は様になる。正直、意外だった。そして俺は椅子に腰掛け、話しかける。
「サリアって料理できたんだな」
「あぁ、だがあまり期待はするなよ」
俺と話しながらも調理の音は途切れない。そしてしばらくするとサリアが料理を運んでくる。
「さあ、できたぞ」
野菜炒めのようなものが皿に盛られている。見たことのない肉と野菜だが、見た目は悪くない。
もう一つは魚…か?結構エグい顔してるがたぶん魚だ。
「サンキュー、いただきます」
俺は手を合わせ、料理を口に運ぶ。
「うっ、…うまいな!」
お世辞じゃない、俺は正直な感想を述べる。
「ま、まぁこのくらいなら私にもできる」
少し顔を赤くしながら横を向くサリア。照れているサリアを見るのも新鮮でいいな。
そして俺達は一緒にたわいもない会話をしながら夕食を食べた。