幸福と不幸は女神様次第!?   作:ほるほるん

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狩人 【挿絵2種】

 俺はアルスター城ヘと向かった。修行が終わったあとは屋敷で会おうとレアと話していたからだ。国王はどうなったのだろう…不安にかられながらも俺は屋敷の扉を開ける。

 

 屋敷に入るとすぐにメイドが俺のそばに寄ってきた。

 

 「お部屋へご案内します」

 

 いつもならこのまま部屋まで連れて行ってもらって終わりだが、今回は

 

 「王様はどうっすか?」

 

 「旦那様はまだ目を覚ましておりません」

 

 「そっすか…」

 

 冷静に話すメイドに俺もあまり絡まないでおいた。が、意外にもメイドの方から会話が続けられた。

 

 「この度は旦那様を救っていただき心より感謝申し上げます」

 

 メイドはこちらを向き、そう言って深々と頭を下げる。

 

 「そ、そんないいっすよ!頭上げて下さい!」

 

 「本当に本当に…」

 

 頭を下げながら声を震わせるメイド。王様は厳しい人だって聞いてたけどちゃんと慕われてるんだな。

 

 それから再び歩き始め、しばらくすると部屋に着いた。

 

 「既にレア様は戻られております」

 

 そう言ってメイドは軽く頭を下げ、去っていった。今までなら何も言わずに足早に去っていってただけに、暖かさを感じた。

 

 「おーい、レアー帰ったぞー」

 

 俺は扉を開け、部屋へ入る。するとレアは部屋着ではなく防具屋で買った服を付けていた。それと手に持っているのは…スタッフか?

 

 「どうしたんだ?服のサイズでもキツくなったのか?」

 

 「ちっがいます!今日早速魔法を教えてもらったので見せてあげようと思ったんです!」

 

 マジかよ、俺まだ何も教えてもらってないんだが…

 

 「このスタッフも入門した時にもらったんですよ、では、見ていて下さい」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 レアがスタッフを前に出し、何やら唱え始める。メイルの詠唱より短めの詠唱のあと

 

 「シルト!」

 

 レアがそう言うと、レアの前に半透明の膜のようなものが現れる。俺はそれに触れてみる。

 

 「おぉ、固い。防御魔法かこれ」

 

 「えぇ、そうですよ!『一日で覚えられるなんて才能がある』って言われちゃいました」

 

 嬉しそうに話すレア、そして

 

 「あなたの方は?」

 

 「うっ…その…まだ…」

 

 俺はバツが悪そうに顔を横にそらす。そんな俺の様子を見ながらレアはこれ以上ないくらいむかつくドヤ顔をしていた。

 

 「今に見てろよ!すぐに短剣スキルマスターしてやっからな!」

 

 「はいはい、精々がんばって下さいね」

 

 プププッと笑いながら言い放つレア。畜生…レアにそんな才能があるなんて予想外だった。「俺も負けてられない、明日からの修行を頑張ろう」そう固く決心した。

 

 

 

――廃墟――

 

 俺は約束通りの時間に廃墟に訪れていた。アンセットはまず俺に狩人について教えてくれた。

 

 「狩人に一番大切なのは集中力だ。集中力を極限まで高めてすばやく相手の急所を突く。これが基本だ。お前は短剣が使いたいんだったな?短剣と剣の違いがわかるか?」

 

 俺は少し考え答える。

 

 「剣の長さ?」

 

 「そんなのはあったりまえだろうが、手数だよ、つまりスピード。デカくて重い剣を1回振る間には、短剣を10回は振れる」

 

 ほう、それだけ聞くと短剣は有能だな。

 

 「その分、欠点もある。それは…」

 

 「1回の攻撃力か」

 

 俺は草原での岩型のモンスターとの戦闘を思い出しつぶやく

 

 「そうだ。だからただ振れば良いってもんじゃない。相手の急所一点を狙う、だが実際の相手は動くし防御もするそこで重要なのが相手の隙を作ることと、その隙を見逃さないこと、そして隙を突くことだ」

 

 なるほどなるほど、凄く勉強になる。変人なんて聞いてたけど全然まともじゃないか、真面目に説明をしてくれるアンセットに、俺は安堵していた。この時は。

 

 「まぁ理屈だけ覚えてもしょうがないだろ。ほら表へ出な」

 

 俺達は廃墟の前の広場のようなところに移動する。

 

 「それじゃ短剣を構えな」

 

 そう言われ俺は短剣を構えてみる。

 

 「それじゃ棒立ちだろうが。足は肩幅か少し広めに開いて腰を落として重心を下げな」

 

 アンセットに言われた通り足を開き腰を落とす。

 

 「体の向きは相手に対して半身になるようにしな。ワタルは右利きだな?右手に短剣持って左足を前に出しな」

 

 聞いたとおりにやってみる。おぉ、なんかそれっぽいぞ。

 

 「それが基本の構えだ、忘れるんじゃないよ」

 

 「じゃあ訓練開始だ」

 

 そう言ってアンセットは弓を取り出し、引き絞り、俺に向ける。

 

 「えっ、ちょっ、何を…」

 

 動揺する俺をよそにアンセットは平然と言い放つ

 

 「今から矢をアンタに撃つからその場から動かずに避けるか弾きな。大丈夫。先は丸めてあるから当たっても死ぬほど痛いだけだから」

 

 「冗談だよな?俺まだ避け方も弾き方も教わってな…」

 

 俺が言い終わる前にアンセットは弦を引いていた手を離す。当然、矢は俺の方に向かって飛んできて…

 

 「っ痛てええええええええ」

 

 一瞬、俺の体に悪寒が走り、次の瞬間、矢は俺の脇腹に直撃する。息ができない。本気で穴が開いたんじゃないかと思うくらいの痛みだ。

 

 「ったくなさけないね、本物だったらお陀仏だよ」

 

 俺はうめき声を上げながらもアンセットに抗議をする。

 

 「なんっ…でこん…な…」

 

 「集中力を高めるにはこれが一番手っ取り早いんだよ。誰だって痛いのは嫌だからね。体の学習は早いってやつさ。さあ立ちな、もう一回だ」

 

 「くっそ…!」

 

 俺は手を付きながらなんとか体を起こし、構えを取る。

 

 「一つだけ教えてやる。矢を目で追ってから頭で反応して体を動かすんじゃ遅すぎる。感覚的な話になるけど、頭で考えるな。そもそも極限の集中なんてのは意識してやるもんじゃないんだよ」

 

 曖昧なアドバイスだな…でもそりゃそうか、飛んでくる矢を見て避けるなんて不可能だ。それよりも、さっきの矢が当たる瞬間の嫌な感じ、あの気配を感じることに集中しよう。

 

 「いくぞ!」

 

 アンセットが弓を引き絞り、しばらく時間をあけた後、手を放す。

 

 俺に向けて矢が放たれた瞬間、俺の左肩に嫌な…俺は反射的に身を捩っていた。矢が肩をかすめていったが痛みはそれほどない。

 

 「へえ…」

 

 アンセットは驚いたような顔だ。正直、俺も驚いた。

 

 「今の感じを忘れるなよ!もう一度行くぞ!」

 

 「おっ、おう!」

 

 そしてその日はひたすら集中力を鍛えるために矢を撃たれ続けた。

 

 

 

 「なぁ、お前には飛んで来る矢がどう見えてる?」

 

 今日の修行を終え、腰を下ろしていた俺にアンセットが声をかける。

 

 「どうって…見えてるなんて具体的なもんじゃなくて、なんていうか嫌なものが俺に近づいてくる感じ…かなぁ」

 

 「まぁ今はそんなもんだろうな、もっと鍛えていけば矢そのものを認識してからでも体が動いてくれるようになる」

 

 「へぇ、すげーなぁ…」

 

 「ただこれだけは覚えておけ、限度を超えた集中は体に負担をかける、特に頭にだ。だから今日は早く休めよ」

 

 言われなくてもぐっすり寝れそうだ。俺は準備が整い、立ち上がる。

 

 「じゃあまた明日な!師匠!」

 

 「あぁ、また明日」

 

 俺が遠くまで言ったことを確認したアンセットは一人呟く。

 

 「今まで私に修行を頼んで来た奴もいたが…修行を終えたあとも楽しそうにしているのはあいつだけだ。まったく…変わったやつだよ。まっ、私が言えたことじゃないけどね」

 

 

 

 「ただいまー」

 

 アルスター城に着いた俺はメイドに連れられ…ない。

 

 「どうかしたっすか?」

 

 「いえ、怪我をされているようでしたので」

 

 たしかに、今日の修行で打撲擦り傷なんでもござれだ。俺は笑って誤魔化そうとしたが

 

 「こちらへ来て下さい」

 

 普段とは違う部屋へ案内される。狭いが誰かの部屋なのだろうか?

 

 「ここは?」

 

 「使用人用の部屋です」

 

 へえ、と声を漏らす俺をよそにメイドは消毒液や包帯などを準備していく。

 

 「手当てしてくれるのか?」

 

 「お嬢様のご友人をその姿のまま通すわけにはいきませんので」

 

 言葉ではそう言っているが本当は俺を気遣ってくれているように感じる。だが、それは口にはしないでおく。

 

 「ねえ、名前は?」

 

 「どなたのでしょうか?」

 

 「君のだよ君の」

 

 メイドはなぜ自分の名前を知りたがるのか疑問に思っている様子だったが、しぶしぶ教えてくれた。

 

 「…ナタリアです」

 

 「ナタリアね……いっつつ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 話をしながらも消毒液を脱脂綿に湿らせ俺の傷口に当てるナタリア。

 

 「もうちょっと優しく…」

 

 「我慢して下さい」

 

 バッサリ言い放ったナタリアだったが、冷たい言い方ではない。その後も俺は染みるのを我慢しながら手当てを受け続けた。

 

 「はい、終わりました」

 

 「ありがとう、なんだか楽になったよ」

 

 「ではお部屋へご案内致します」

 

 俺は思うところがありナタリアの言葉を制す

 

 「ちょいまち!」

 

 「いかがされましたか?」

 

 「その必要以上の敬語禁止」

 

 ナタリアは首をかしげている。意味がわからない様子だ。

 

 「ナタリアも見たとこ俺と大差ない年だろ?ならさ、普通でいいよ普通で」

 

 「ですがお嬢様のご友人にそのような…」

 

 「メイドとしての立場も分かる!でも俺と二人きりの時はナタリアで居てくれよ」

 

 ナタリアは少し考えていたようだが、諦めたように

 

 「仕方がありませんね、分かりました」

 

 「良かった~、なんか謙ってしゃべられるのって慣れなくてさ~」

 

 「変わった人…」

 

 そう言ってナタリアは小さく笑みを浮かべていた。正直屋敷の中ではレアとエレナ以外と話すことがほとんどなくて寂しかったんだ。仲良くなれそうで良かった。俺はニコニコしながら部屋へ入ったが、レアに見られて「きもいですよ」みたいな顔で見られた。いいじゃない嬉しかったんだもの。

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