幸福と不幸は女神様次第!?   作:ほるほるん

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ウォルダムにて 【挿絵2種】

 「ほー、ここがウォルダムか」

 

 俺達はウォルダムの入り口に到着していた。街を血管のように流れる川、中央にある大きな噴水、確かに水の街と言った様子だ。

 

 「初めて来たが大きな街だな」

 

 「水がとっても綺麗ですよ」

 

 二人も初めて来た街だが気に入ったようだ。レアは大して感動もなさそうだ。たぶん女神の力で一度見たことがあったんだろうな。

 

 「さて、あそこが城だな」

 

 街の一番奥に大きな城が見える。街を真っ直ぐ突っ切って行けば付きそうだ。俺は、目的地を見据え、歩き出す。

 

 「細かい路地がたくさんあんなぁ、橋も多いし、迷子になるぞこりゃ」

 

 俺は街の路地の多さに声をあげる。そう思いながら脇見をして歩いていると

 

 「おっと、悪い」

 

 一人の少女とぶつかった。俺はすぐに謝り、少女は軽く頭を下げて走り去る。だが俺は少女の急ぎ方が気になり、ふと鞄の中を…

 

 「やられた…小箱がねえ!」

 

 三人が驚きの声をあげる。

 

 「おい、待てよてめえ!」

 

 俺達は即座に盗人を追いかける。しかし、かなり距離をあけられてしまった。

 

 「メイル!魔法届くか!?」

 

 「遠すぎますよ!」

 

 ダメか、どうする。俺が作戦を考えていると

 

 「ぷぎゃっ!」

 

 盗人が何かにぶつかったように止まった。レアの魔法だ。シルトって単純に壁としても使えたんだな。

 

 「レア!サンキュー!」

 

 俺達は盗人に追いつき

 

 「おい、お前もその小箱狙ってる奴らの仲間か!」

 

 盗人は俯いたまま何も言わない、次の瞬間顔を上げ、ボウガンのようなものをこちらに向け…

 

 金属音が周囲に響き、矢が弾かれる。

 

 「そんなおせー矢が俺に当たるかよ!さっさと小箱を返しな」

 

 俺は言い放ったが、盗人は少し笑みを浮かべると、丸い玉を地面にたたきつける。周囲は煙に包まれ、盗人の姿が見えなくなる。

 

 「バーカ!盗られる方がマヌケなんだよ!」

 

 遠くに逃げていた盗人はそう言い残して走り出そうとする。が、その足は一歩も前には出ない。地面には…氷?

 

 「愚か者め、私が警護するこの街で狼藉を働くなど…余程命知らずと見える」

 

 盗人の前に一人の少女が現れる。着ているのは…何かの制服か?俺が状況を把握していると少女は提げていた剣を抜き、盗人に向けて…

 

 剣と短剣の擦れ合う音が響く。

 

 「ちょいちょい!盗みぐらいで死刑ってのはちょっと重すぎるんでないの?」

 

 俺は少女の剣を短剣で払い、盗人を助ける。

 

 「退け、貴様から処刑するぞ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 目が本気だ。マジかよ…一発目は弾けたけど次も上手く行く保証は…

 

 「クライス!何をしているの!」

 

 遠くから女性の声が聞こえる。クライス?この子の名前か…?呼び捨てで呼ぶあたり、立場が上の者だろう。少女は踵を返すと

 

 「ふん、命拾いしたな。そこの盗人は憲兵に突き出しておけ。わかったな?」

 

 「お、おう…」

 

 俺はどもりながら返事をして、その場に座り込み、盗人少女に声をかける。

 

 「おい、あんま無茶すんなよ。殺されてたぞお前」

 

 「うるせーな!助けてくれなんて頼んでねーよ!」

 

 こんのガキ…人が助けてやったってのに生意気だな。俺が内心で悪態をついていると

 

 「ん!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 盗人少女は小箱を俺に向けて差し出す。

 

 「ははっ、素直でよろしい」

 

 俺は小箱を受け取り、鞄に入れる。

 

 「さて、この氷どうすっか…なぁ、お前、名前は?」

 

 「…ルトラだよ」

 

 「ルトラね、なぁ、狙い外れて足が切れるかもしれないのと、火力高すぎて足をやけどするかもしれないのとどっちがいい?」

 

 俺はルトラに尋ねる。サリアかメイルを選べということだ。俺ならどっちも選びたくないけどな。

 

 「どっちも嫌に決まってんだろ!放っとけよ、しばらくすれば溶けるっての」

 

 ルトラはそう言ったが、俺は短剣を取り出し、少しずつ氷を壊していく。なんだか氷像を作ってるみたいだ。

 

 「お前さぁ、こんなことはこれっきりにしとけよ?」

 

 「うるせーな、どうしてもすぐに金がいるんだよ」

 

 「捕まって殺されるかもしれなくても?」

 

 「…そうだ、早くしないと死んじまう」

 

 何やら訳ありのようだ。

 

 「母ちゃんが倒れて…薬が要るんだよ…でもうちには金がないから、こうするしか…」

 

 ルトラの話し方でその場しのぎの嘘でないことが確信できる。俺は鞄の中をあさり…

 

 「ほら、小箱はやれないけどよ、この金持ってけよ」

 

 俺は国王からもらった金をルトラに差し出す。

 

 「施しなんか受けねーよ」

 

 「なら、貸しでいいよ。またここに来ることもあると思うからさ。その時返してくれればいい」

 

 俺の言葉にルトラはしばらく考え、舌打ちをして金を受け取った。と、ちょうど氷が割れ、ルトラは動けるようになった。

 

 「じゃあ俺達は行くからな、もう盗みなんてするんじゃねーぞ」

 

 俺はルトラに別れを告げ、立ち上がる。

 

 「…名前」

 

 「ん?」

 

 「お前の名前、まだ聞いてない」

 

 「そうだっけか?俺の名前はワタルだよ。よろしくなルトラ」

 

 ルトラは俺の名前を繰り返すと、路地に入って行った。まぁもう目的地には着いてんだ。金なんて別になくてもいいだろ。と俺は考えていたが、他の三人には不評だったようだ。

 

 「まったく、ワタルはお人好し過ぎますよ」

 

 メイルにそう言われ、返す言葉もなかったので素直に謝った。

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