幸福と不幸は女神様次第!?   作:ほるほるん

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見覚えのある朝

 俺は、レアに抱きついたのは寝ぼけていたからだと説明した。皆、不思議そうな顔をしていたがどうにか誤魔化せたようだ。その後は、国王とエレナも混じえて夕食を食べた。そして各自、自分の宿、部屋に戻ることになったので俺はサリアとメイルを見送った。

 

自分の部屋に戻り、扉を開けると既にレアは寝る準備万端だった。

 

 「寝ぼけて私の布団に入ったりしないで下さいよ」

 

 レアが目を細めて俺に忠告する。そうか、もう寝なくちゃいけないんだもんな…

 

 俺は脳裏にレアが居なくなった時の記憶が蘇った。嫌な汗が流れる。

 

 「…レア」

 

 「?」

 

 「今日だけ…隣で寝ちゃ駄目か?怖いんだ」

 

 レアは驚いた顔をしたあと、自分の髪を触りながら何やら考えている。即断られると思ったがそうでもないらしい。

 

 「まあ、どうしてもと言うならいいですが…。夕方のことといい少し変ですよ?」

 

 「…横になりながら話すよ」

 

 俺はそう言ってベッドをレアのベッドまで近づけ、それぞれのベッドに横になる。

 

 「実はあの薬を飲んだ時に夢を見てたんだ」

 

 「夢…ですか?」

 

 「ああ、レアが居なくてみんながレアのことを忘れてて、俺しか覚えてない夢だ」

 

 「なるほど、それで…」

 

 レアは俺が抱きついたことに納得がいったようだ。

 

 「それで俺は気付いたんだ。俺にはレアが大切なんだ、って」

 

 「っ…!そ、そんなことを堂々と言わないで下さい!」

 

 レアはそう言って反対を向いてしまった。

 

 「だからまた寝て起きた時にレアがいなくなったらと思うと怖くて」

 

 俺はそう言いながら自分の手が冷たくなっていくのを感じた。

 

 「私はどこにも行きませんよ」

 

 レアはそう言って俺の手を握ってくれた。温かい。心まで温まっていくようだ。さっきまであれほど不安だったのに今はもう怖くない。いつしか俺は眠っていた。手にレアの温かさを感じたまま。

 

 

 

 

 「…様…旦那様」

 

 俺が目を開けるとナタリアが目に映る。朝日が差し込む、眩しい。

 

 「旦那様、朝食が出来ていますよ」

 

 ナタリアが朝食の声掛けをしてくれたようだ…既視感のある光景に俺はハッとして隣を見る。

 

 良かった、ちゃんと居る。結局ずっと手を繋いだまま寝てしまったようだ。

 

 「仲がよろしいですね」

 

 ナタリアがクスッと笑いながら言う。俺は恥ずかしくなって手を放す。よく考えたら昨夜は色々口走っちまった。思い返すほどに恥ずかしい。俺は両手を顔に当てて顔を伏せた。たぶん顔は赤くなっているだろう。それでも…

 

 「おい、レア。起きろよ、朝飯だぞ!」

 

 レアが居てくれる。それだけで十分じゃないか。

 

 

 

 

 

 「レア、ちょっと俺、出かけてくる。昼には戻れると思うから」

 

 俺は朝食を終え、身支度を整えながらレアに声をかける。

 

 「そうですか、お気をつけて」

 

 レアは本を読みながらこちらに顔を向けずに答える。何の用事かくらい聞いてくれてもいいのに。まあ口には出さないが。

 

 そして俺は部屋を出て、廊下を歩き玄関の扉を開けようとした時、ナタリアと会った。

 

 「お一人でどこかに行かれるのですか?」

 

 「あぁ、ちょっと買い物にな」

 

 「それでしたら私が代わりに…」

 

 「いや、えっと、その…ちょっと個人的な物だから」

 

 ナタリアの気持ちは嬉しいが今回は断らせてもらった。俺の曖昧な断り方にナタリアは不思議そうな顔をしていたがそれ以上は聞かないでおいてくれた。

 

 ナタリアに見送られた後、街へと到着した俺はうろ覚えな記憶を頼りに店を探す。たしかこの辺だったはず…あった。

 

 路地に佇む黒い店。そう、穎知の雫を買った店だ。

 

 「…お邪魔しまーす」

 

 俺は入り口にかかっている黒いカーテンを開け、声を掛けてみる。店主は居るが返事は返ってこない。

 

 店主が深いフードの奥から俺の顔を見ている。表情はよくわからないが少し驚いているようだ。

 

 「どうかしたか?」

 

 「…私の店の商品を買って…もう一度店を訪れる人は…稀ですので…」

 

 相変わらずぼそぼそとしゃべっているが意思の疎通が出来るようで安心した。

 

 「この前の、穎知の雫?はすごく良い物だった、おかげで大切な物に気づけたよ」

 

 「…そう…ですか」

 

 とりあえず、俺は伝えたかった感謝を店主に伝えた。

 

 「そんで、他にも良い物があれば買いたいなって思って来たんだ」

 

 そう言って俺は適当に店の中を見て回る。名前を見てもわからないので値段で選ぶことにした。そして俺は小さな飴のようなものを見つけ、手に取る。

 

 「ここって食べ物も売ってるのか?」

 

 「…違います…それは傲遜の結珠です…。…簡単に言うと…強気になる…飴玉です…普段気持ちを抑えている者ほど…その効果は顕著に現れるでしょう…」

 

 「へえ」

 

 面白いな。以前レアに草食系だのヘタレだの言われたからな。たまには一発、ガツンと言っとくのもありかもしれない。金は…ギリギリ1個なら買えるな。

 

 「よし、じゃあこれ買うよ」

 

 店主は金を受け取ると頭を下げる。特に言葉はない。ちょっと寂しいな。よし

 

 「なあ、そういえば名前は?」

 

 「…商品のですか?…先程言いましたが…」

 

 「違う違う、店主さんの名前。俺はワタルね」

 

 「…エンクリットです…」

 

 店主は少し考えたあとに名前を教えてくれた。

 

 「また来るよ、エンクリット」

 

 俺はそう言って店を出た。早速、試してみるか?いや、効果がいつまで持つか分からない。屋敷に戻ってからにしよう。そう考え、俺は屋敷へ向かって歩き出した。

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