空が燃えていた。俺は上空からそれを見ていた。地上ではそれを人々が見ているだろう。
「敵が撤退したぞ!」
仲間は喜んでいる。しかし俺は喜べなかった。俺が所属しているのはエリート中のエリート部隊だ。しかしそんな部隊でさえ、喜んでしまうほどの状況だった。しかし俺の機内は地獄絵図だった。
「なぁ、起きてくれよ。○○!!」
彼は一人、未だに起きぬ彼女に向けて起きてくれよと声をかけ続けた。後にこの戦いは「第一次東京空戦」として、世界的に見て、比較的被害が少なかった実例として世に残った。
それから数年後
「第一次東京空戦」から数年が経ったが未だに敵はその攻撃を諦めてはいなかった。度重なる攻撃は自衛隊は何とか防いでいたが疲労は増していくばかりだった。その為、日本政府は志願者だけを募った特別民間航空部隊を編成することとなった。
「こちら”セイバー”、どうぞ」
海上を一機のAV-8ハリアーⅡが飛んでいた。
「こちら「アメリカ」。どうぞ」
どうやら無線の調子はいいようだ。
「そちらではどうなっている?」
ハリアーⅡに乗っているには青年だった。
「自衛隊、米軍からの情報では10機程度がこちらに向かって来ているようです」
通信から聞こえているのもまだ若い声だった。
「10機か。今回は多いな」
「ええ。最近は数が増えてきています」
「まぁ、それを減らすのが俺達の仕事だけどな」
特別民間航空部隊。通称「民空」とも呼ばれる部隊。あまたにある多くの部隊の一つがこの部隊。「第25試験航空団」だった。
「見えた!」
アフターバーナーを吹かしながら行くと大きな黒い物が見えた。
「これより交戦を開始する!」
あの黒い物体は敵だった。名を「ヤク」と呼ばれている。数年前の戦いで世界に甚大な被害を出して多くの犠牲者を出し、未だに人類を攻撃し続けている謎の敵だった。
「喰らえ!」
彼はハリアーⅡに搭載されているミサイルを敵向かって放った。奇襲を受けて上手く行動できなかったのか。4発放ったすべてが命中した。ヤクは4機とも海に落ちて行った。
「来るか!」
機体を右にずらす。するとさっきいたところに銃撃の光が走った。しかしそれを難なく躱したハリアーⅡは代わりに機銃を近くの機に銃撃を放つ。すると吸い込まれるかのように敵に当たった。
「・・・・遅い」
後は一方的な蹂躙だった。ミサイルと機銃を使って10機全てをすばやく落とした。
「こちらセイバー、敵を殲滅した。これより帰還する」
「了解。待っています」
すばやく機体を反転させて、自分の旗艦に向かっていった。「第25試験航空団」の”艦”が見えてきた。その甲板の航空要員の指示に合わせてゆっくりとハリアーⅡのVTOL機の機能を使って、降りていった。甲板に着陸した衝撃を感じてからゆっくりとエンジンが停止する。
「・・・・ふぅ・・」
彼は軽く息を吐いてから外に出た。彼がいる艦は強襲揚陸艦「アメリカ」。「第25試験航空団」の”臨時”旗艦であった。
「お疲れ様」
「・・・・あぁ」
後ろから声をかけられた。彼には誰かは分かっていた。
「私を上手く使ってくれてありがとう」
彼女の言葉は一見すると何を言っているかは分からない。しかし関係者は分かる。
「いや、でも少し操縦桿ににぶりがあったからそこを直しておいてくれ」
「りょーかい!!」
そういうと彼女は去ってしまう。彼女の赤色の髪がたなびく。
「・・・・・」
彼はそれを静かに見つめていた。彼女の話だがその話はまた今度にしよう。彼__空井 勇人(そらい はやと)は静かに艦橋に入っていった。
強襲揚陸艦「アメリカ」 艦橋にて
「お疲れ様です」
「あ、ありがとう」
部下が自分に飲み物を渡してくる。確かに少し肩が凝っていた。背伸びをしたら少し楽になり、飲み物を飲むと気持ちが冴えたので書類の仕事をこなす。
「これで米軍と自衛隊が手が回らなかった地区の掃討作戦はひとまず終わったけど・・・」
「民空」はいわゆる警備会社と同じである。クライアントから依頼をもらい、その目的を達成すると報酬がもらえるのだ。
「軍備の増強もしたいしな~~」
今のところの我が「第25試験航空団」の戦力をパソコンに保存してあるファイルから読む。
「第25試験航空団」の保有戦力
保有艦艇
強襲揚陸艦「アメリカ」
保有航空機
AV-8「ハリアーⅡ」一機
BAe「シーハリアー」一機
SH-60K「シーホーク」3機
たったこれだけしかないのだ。彼女はため息を吐くしかない。しかもほぼ勇人一人に任せきりなのだ。「シーハリアー」はあるがこれは何かあった時の為の艦防護機な為に戦闘地域には回せない。「シーホーク」なんて救助と対戦行動の目的なのであるために論外だ。
(クライアントにおねだりするかぁ)
彼女は戦力の増強が必要だと考え初めていた。志願者の塊で出来ている「民空」だが政府や軍から何も支援が無いわけでは無い。そもそもそれぞれ国が持つ空軍が先の戦いで大部分の機能が失われてしまったため、それを補う為に結成されたのが「民空」だった。自分達「第25試験航空団」は強襲揚陸艦「アメリカ」を米海軍から受諾している。「ハリアーⅡ」や「シーハリアー」、「シーホーク」は海自からである。しかし最近では「ヤク」の活動が活発化してきたのも含めると他の艦艇や機体やパイロットの増加も検討しなければならなかった。
「・・・・何をそんなに考えているんだ?」
考えにふけっていると声がした。
「ああ、空井くん。お疲れ」
「まぁな。そっちはどうだ。柊」
彼女の名は柊 霞(ひいらぎ かすみ)。現在の臨時旗艦「アメリカ」の艦長であり、「シーハリアー」のパイロットでもあった。
「最近問題になっていることよ」
「ああ、戦力の事か。確かに最近は「ヤク」の活動が活発になってきたからな。もしもの時に対処が難しい」
どの口がそういうのかを彼女は思った。前の戦いでは彼は二つの戦闘地域を補給も無しに飛んで「ヤク」数十機を叩き落としたのだ。
「とにかくそれはクライアントに相談してみるわ。一度、横須賀港に寄ろうと思っていたし」
「そうか。じゃあ、俺は何かあるまで休んでおくか」
彼は艦橋から出ていく。
「点検はしなくてはいいからね。少しは整備班の人たちにも仕事を増やしてあげて。それと到着は4時間後になりそうよ」
「へいへい」
適当に返事をして彼は出て行った。彼女もまた自分の仕事に集中し始めた。
横須賀港にて
「君たちの活躍は私の耳にも届いている。本当にありがとう」
「いえ。仕事ですから。それよりも例の件ですが・・・・」
「ああ、すまないね。”彼女”達も元気に働いているようだしな。そこで私からのプレゼントだ」
依頼人は笑顔を見せる。彼は依頼人としか答えないために名前は知らない。しかし悪い人ではなさそううだった。そう思いながら出されたファイルを見た。
「これは私がコネを使って取り寄せた物だ。今の戦力では心もとないだろう。見ていておいてくれ」
そこに書かれたプレゼントに空井と柊は驚嘆した。
「いいんですか?ここまで」
「ああ。だけど受け取り場所はここではない。呉基地まで行かなければならない」
「呉・・・ですか」
確かに遠い。一応日本の近くの海域の安全は確保されている。よほどのことが無ければ大丈夫そうだった。
「分かりました。お気づかいに感謝します」
「それともう一つ。今度は依頼だ。呉の方で何か揉め事が起きているらしい。よければそれの確認、もし可能ならば解決してやってくれ」
「分かりました。では」
数時間後、補給を終えた「アメリカ」は呉に向かった。