「しかし妙だな」
空井はどうしても腑に落ちる事があった。
「どうしたの?」
アバランチが聞いてくる。周囲に敵影が無い事を確認すると話を続ける。
「敵の予想戦力が”少ない”んだ。この予想戦力は以前のイタリア軍の戦闘記録から作り出されている。それなのに以前よりも少ないという事は・・・・」
「敵がどっか余所へ行っているか、罠を張っているかもしれないっていうこと?」
「そういうことだ」
その時に無線に妙なノイズが走った。
「うん?おかしいな。無線機の調子が」
このままでは戦況の様子を聞き取れない。そう思って無線機を調整しようとした時に違和感に気付いた。
あれ?この状況どこかでと思ったと思った時にアバランチが大声を上げた。
「空井、左に避けて!!」
「え?クッ!」
言われたとおりにするとさっきいた場所に黒い影が横切った。無線機とノイズがひどくなり、レーダーが激しく乱れる。
『うわぁぁぁ!!』
『アルファ2がやられた!敵はどこに____うわぁ!?』
『全機、散開しろ!』
『敵はどこなんだ!?味方がどんどん落ちていくぞ!?』
無線機からノイズを掻き消すくらいの怒号が聞こえた。黒い影の進路にいた味方の識別信号が大きく減った。レーダーが乱れていて分からないが少なくとも二個小隊がやられた。
「一回、距離を取るか!」
このままではやられるだけだからと機体を黒い物体がいる場所から遠ざかる。するとレーダーの乱れがやみ、元の戦況を映し出す。無線の調子も直っていた。
『航空部隊どうなっている!?敵の対地攻撃が激しくなったぞ!』
『被害が増えている。誰でもいいから何とかしてくれ!』
『ヘリが一機落ちた!このままじゃ挟み撃ちを喰らって全滅だ!』
地上部隊も損害を受けつつあるらしい。早くしなければ作戦全体が破たんしてしまう。
「ふぅ、やれやれだ」
「やっちゃう?」
「無茶いうな。機関砲しかない状態でどうやって戦うんだ?せめてミサイルの一発でもあればまだ何とかなったかもしれないけどな」
「でも、でも、でもぉ!」
聞き分けないスカイだと思っていると無線に声が割り込んできた。
『機関砲だけ?そいつは違うぜセイバー』
『上を見てみろよ』
無線の通り言われて見てみると二機のスーパーホーネットがいた。ダル隊のだ。
「まさかお前たちが落とそうってわけじゃないよな?」
そんな事をしようというのなら、はっきり言うが分が悪い。ヤクは基本的にスカイを搭載した機体が当たる事になっている。通常の機体で挑むというならヤク一機につき、二倍の戦力で当たらなければならない。
しかもあれはどう見たって敵の新型であることは間違い無い。ということは確実に今の戦力では心もとない。一度再編成して戻ってくるのが合理的だ。だが。
『おいおい、まさか馬鹿にしてんのか?心外だねぇ。でもよ・・・・』
『確かに俺達は通常の機体だ。日本のお前らと違ってヤクに対抗できる装備は俺達の機体には何一つ無い。だがな・・・・』
『『友軍が危機に瀕していて助けられるのが俺達だけならたとえ装備が貧弱でもやらなければならないことがあるんだ。だから俺達はやる。どんな絶望的だろうがな』
「ふっ」
「あ、ははは」
こういう状況だというのになぜか笑いがこみ上げてしまう。アバランチもそうだった。
「おもしろい人たちだね。さすが大国アメリカの守る兵士だよ」
アバランチはどうやらやる気らしい。ここまでされると反論の余地が無い。
「で?どうするんだ」
『それはな・・・』
ダル1が教えてくれた。俺は説明を聞いた後にダル隊に声をかけた。
「いいのか、それで?」
「・・・・・・・・・」
返事は無かった。沈黙は肯定を意味する。彼らの覚悟は決まった。だがそれに言葉はいらない。
空井にはそう聞こえた。
空の戦場を蹂躙する黒い影。それに二つの機体が襲いかかった。
(やはりコイツが電波障害を引き起こしているのか。電波攪乱機の役割と戦闘機の役割を両方こなしているがそのどちらもこちら側と同じ程度、何て化け物だ)
そんな化け物に挑もうとする俺と相棒もつくづく馬鹿だと思った。だが俺達が奴をやることが出来れば戦線を押し上げることが出来る。そうすればあの黒い化け物共に初めて引導を渡すことが出来る第一歩を作れる。そうも思った。
「さてやるぞ」
『おうっ!!』
敵は他の航空部隊に気を取られていて気付いていない。馬鹿な奴だ。
「ダル1FOX2!」
ミサイルを切り離し、まっすぐ黒い機体に向かう。当たるかと思ったがそれは間違いだった。奴は驚異的な速さでミサイルを躱す。次に放たれたダル2のミサイルも外れたようだ。
「どこだ!うっ!?」
警告音が鳴り響く。フレアが出る中で敵の姿を探す。爆発音と衝撃の中で根気よく探すといた。
「ダル2敵は俺から見て6時の方角だ。回避しろ!」
ダル2が避けると敵の機関砲の弾が空の切る。悪いな敵さん。俺達はそう簡単にやられる程、伊達に訓練はしていないからな。
「こんのっ!!」
操縦桿を強く握り、強くなるGに耐えながら敵を見据える。機体が震える中でも俺は黒い死神の姿をその目に捉えていた。
「くらえ!!」
再度、ミサイルを切り離す。真っ直ぐ機体を目指すがその前に。
「あ、相棒!!」
ダル2が餌食となった。ダル2の機体が火球に変わり、落下していく様を俺は呆然と見ていた。俺はただ、ミサイルを見ずにダル2を見ていた。
ピピピピ!!!
警告音が鳴る。こうなる事は想定していた。だがそれは俺がなるはずだった。
「やはり無理だったかな・・・・」
俺としては情けない弱気な発言だと自分でも思った。だがこうも現実が非情だとは思わなかった。俺とダル2がいて初めてなる作戦だった。だがそれもダル2が撃墜されたことでご破算だった。俺一人でもどこまでやれるか。
俺は正面を見つめた。黒い死神を見つめた。
「来いよ。来ていろよ」
ミサイルが来る。俺はやけくそで言った。その時
『諦めるな。そうじゃなかったのか?』
声がした。それにハッとさせられる。
ブオオオオ!!
機関砲の音が間近で聞こえた。黒い機体が傷いた。隣を見ると蒼い機体がいた。
「来ると思ったよ。セイバー」
ギリギリだが作戦通りにはなった。笑みを浮かながら俺はそういった。目の前のミサイルををフレアで躱す。黒い死神が蒼い死神を前に揺らいだ。
何とか間に合った。片方は間に合わなかったが。
悔しさを噛みしめながら目の前を見つめたがそこには何もいなかった。
「何・・・?」
辺りを見回すがどこにもいない。それどころか・・・・
『どういう事だ?敵が引いて行くぞ!』
無線の通り、敵が後退しているのだ。
「一体どうして?」
「空井、そろそろ燃料が」
アバランチが警告する。どこかパッとしない勝利の中で俺は母艦へと戻った。
この戦いがまだ始まりというのは空井や参加した全員が知っていた。だが・・・・
それもまた敵も同じということは知る由も無かった。
遅れてしまってすいません!
今回は敵にも新型が出てきました。アレは後で近いうちに出てきますのでご安心してください。
そして今年もありがとうございました。新年もよろしくお願いします。
空井「じゃあな」
柊「またねーー」
ハチ「私は当分出番ないけど忘れないで!」
アバランチ「グッバイ!」
ダル1「また会おう」