『繰り返す救援を!』
その言葉は無線からずっと聞こえていた。時折、爆発音が聞こえてくる。その度に怒号が多く聞こえる。
「そこの新入り」
空井が呼びかけると緊張した口調で返事に応じた。
『は、はい!』
「燃料と弾薬は残っているか?」
『え・・・と・・・燃料は大丈夫ですが弾薬が・・・・』
どうやらミサイル全弾を撃ち尽くしてしまっているらしい。さすがに機銃だけで戦えとは言えない。
「分かった。「アメリカ」で補充をしてこい。但し、”着艦”には気を付けろよ?」
そういうと空井は機体を反転させて目的地に向かった。
「柊、そっちにファントムが戻っていくけど大丈夫か?」
「アメリカ」にはニミッツ級などの空母みたいに着艦能力は無い。その為に「ハリアーⅡ」や「シーハリアー」などのVTOL機やヘリを運用しているのだ。
柊はその言葉にまったく焦りを見せずにそしてやけにテンションが高い声で。
「大丈夫。”手製”で作ったから、あの子には無理をしてもらうことになるけど・・・・」
手製とか言ってるけど大丈夫かなと思いながらも頭からそのことを振り払い、戦闘に集中しなければならない。
「見えたよ!」
ハチが叫ぶ。遠目からでもはっきりと見えるくらいの光の多さだった。
「こちらセイバー、救援に来た!状況を教えてくれ!」
『セイバー、現在、本艦の被害は右舷に敵をミサイルが着弾して各所で火災と負傷者が多数発生している。護衛の「いなづま」は右舷と左舷に攻撃を喰らっているが戦闘続行は可能!』
「いなづま」も「おうみ」もまだ攻撃を続けている。しばらくは大丈夫だろう。しかしこのままの状況では確実に沈む。
「それを防がないとな。セイバー、エンゲージ!!」
空井は「おうみ」にまとわりついている敵に向けて突っ込んでいった。
「チッ!数が多い!」
最近では一番の多さだ。一気にその数が押し寄せてくる。
「この多さを対処するのは今は無理だ。ハチ、彼らの撤退を援護したら撤退だ」
「おっけい!」
まずは一機目からだ。「おうみ」の艦橋を破壊しようとしている「ヤク」に向けて機銃を放つが「ヤク」は難なく避けてしまう。
「第一射は無理か・・・」
分かっていたことである。しかしすぐにミサイル接近のアラートが鳴り響く。
「ミサイル接近!ブレイク!」
「フレヤを使う」
飛んできたミサイルをフレヤを撒いて回避する。「ハリアーⅡ」の後方で大きな爆発が起きて機体が大きく揺れる。
「後方に更に二機!」
「こなくそっ!」
彼はコブラ機動で敵の背後を取った。
「FOX2!」
ミサイルが発射された。「ヤク」の機体は引き裂かれて落ちて行った。
「一機すり抜けたか!?」
更に撃墜をした「ヤク」の残骸を黒い機体がすり抜けながら急降下している。
「行先は・・・「おうみ」と「いなづま」か!」
現時点ではどちらの艦に行くかは分からない。
「こちらセイバー、敵が一機そちらに行った迎撃を頼む!」
「おうみ」にて
「セイバーから通信!敵が一機すり抜けました!」
「「いなづま」の方に迎撃を頼め!」
「無理です。現在、敵機の迎撃で精いっぱいです!」
「いなづま」が出てこれないことは既に分かっていた。敵に発見され、救援を求み、セイバーが来るまでの時間を本来、補給艦である「おうみ」が今、浮かべているのは「いなづま」が自身の損害に構わずに本艦を守ってくれていたからである。
「左舷から敵機まっすぐ突っ込んできます!」
「CIWS攻撃始め!」
ここに来るまでに増設された20mm機関砲が唸りを上げた。しかしミサイルならともかく機体を破壊するのは困難に見えた。
「艦長!やはり本艦の武装では・・・・」
「諦めるな!最後まで諦めなければ何かが起こる」
艦長のその言葉が聞いたのか、敵機に火が噴き始めた。20mm機関砲の激しい銃撃の中で偶然、敵機の一番薄い場所に弾が入り込んだからだった。そのまま激しい弾幕を喰らいながら、徐々にバランスを崩して海面に激しい水しぶきを撒き散らしながら激突した。
「目標撃墜!」
その報告におぉと驚嘆の言葉と安心感がその場を支配した。
「まだ終わっていないぞ!」
艦長の言葉の通りだった。安全圏までまだ距離がある一遍たりとも気が抜けなかった。
「更に敵機!」
「そら来た。攻撃開始!」
再び、その艦艇から無数の光が生み出された。
「いなづま」にて
「トラックナンバー1278撃墜!」
「「おうみ」が敵機を撃ち落とした!」
「セイバー、更に一機!」
隊員達が次々と報告を口にする。セイバーの活躍でこの戦線は保たれているが「おうみ」の敵機撃墜も目を見張るものがあった。
「トラックナンバー1279、1281がすり抜けた!」
「シースパロー攻撃始め!」
二発のシースパローが甲板から発射される。緑の点と赤の点が重なり、そしてどちらともがレーダーから消失した。
「目標撃墜!」
しかしこの報告は「おうみ」では喜ばれたが「いなづま」ではほんの報告でしかない。すぐに男達の怒号に報告はかき消された。
「安全圏まで残り数キロだ・・・踏ん張りどころだな」
敵の攻撃は安全圏に近づく程に大規模なミサイルの雨を時折発射していた。
「最後に必ずアクションを敵が仕掛けてくるはずだ。それをしのぎ切れば我々の勝ち、負ければ船と運命を共にする。簡単な話だ」
「もうすぐだ」
「ヤク」を一機落としながら、空井は呟く。あと数キロで味方の安全圏に入る。
(だが一体どこからこんな戦力を・・・・?今までのことを考えると補給艦一隻と護衛艦一隻を沈めるには多すぎる)
確かに彼らの奮戦もあったからだとは思うが自分みたいな「民空」の人間か、自衛隊などのどこかの軍隊の戦闘機が無ければやられていたはずだ。
「敵のミサイルだと!?どこから現れた!?」
十四基のミサイルが二艦に向けて発射されていた。
「今度こそ喰らったら確実に大破、いや、撃沈される」
空井は発射された「ヤク」の対艦ミサイルの背後に入り、残ったミサイル全てを使って、6基のミサイルを落とした。
「あと8基!」
機銃で更に2基撃墜した。しかし既に近距離まで来てしまっている。
「くそ!間に合わない!」
このまま味方の艦に命中すると思われたミサイルが突如、横から現れたミサイル6基に撃墜された。
「!?」
『まったく・・・しょうがないから出てきたあげたわよ』
『救援に来ました!』
ミサイルが来た方角を見ると二機の戦闘機がいた。「ファントム」と「シーハリアー」だった。
「すまない、助かった。艦隊もどうやら安全圏に入ったようだ」
無線からは「いなづま」、「おうみ」の船員達が喜びの声を上げているのが分かった。
「ミッションコンプリートだ。彼らを港まで送り届けたら帰還しよう」
『『了解』』
通信を終えてからふとさっきの対艦ミサイルの来た方向を見た。
「あのミサイルは一体どこから来たんだ・・・?」
それから呉の港に着いた二艦はすぐさまドッグ送りへとなった。
「この度は救援要請に答えてくださってありがとうございます」
「いえ、これから仲間になる方々を見捨てるわけにはいきませんので」
「おうみ」と「いなづま」の艦長は「アメリカ」の艦長室で柊と話をしていた。
「それにしてもこの巨大な船をその歳で動かしているとは驚きです」
「いえ、「アメリカ」の船員が頑張っているからですよ。それよりもいつ出港可能になりますか?」
すると「いなづま」と「おうみ」の艦長はリストを鞄から取り出すと柊にそれを見せた。
「艦の損傷は思っているよりかはいくらかマシでした。しかし、消費した弾薬などを補充する時間も含めると二習慣は必要になります」
「そうですか・・・こちらも消費した航空燃料や弾薬などの補充もしなくてはならないので大丈夫です」
その報告を言った後に柊が二人に手を差し伸べた。
「ようこそ。「第25試験航空団」へ」
同時刻 強襲揚陸艦「アメリカ」甲板にて
「しかしよく作ったなぁ」
空井は感嘆していた。目の前には先程、助けたF-4Gとパイロットといっしょに連いてきたAH-1Z「ヴァイパー」二機とMH-53「スーパースタリオン」一機がいる。アメリカにはヘリならまだしも「ファントム」を着艦させる機能は無いが手製のワイヤーで無理やりフックをかけさせて着艦させていたのだ。
「それで君がそのパイロットでそっちが「ファントム」の彼女さんね?」
「は、はい。よろしくお願いします」
「彼女共々よろしく頼む」
パイロットの方は頼りない感じがするがもう一方の彼女は見た目も性格もクールだ。パイロットの方を補佐するには十分な感じだ。彼女がもう少し成長すればいいペアになるだろう。
「君の名前は?」
「岬 真央(みさき まお)です・・・」
岬という名前のパイロットらしい。
「じゃあ、よろしくね岬ちゃん」
「何でちゃん付けなんですか!?」
どうやら仲良く出来そうだった。二人のしゃべり声が「アメリカ」の甲板で響き渡った。
「ファントム」の着艦には少し・・・いや、だいぶ無理があったと思いますが気にしたら負けです。次回は場所は海外になるかと思います。どこかな?