「こちらC班!今、建物から出ました。3時の方向に制圧射撃をお願いします!」
「了解」
「ハリアーⅡ」のVTOL機能を起動させて、射撃体勢を整えた。
「攻撃開始」
建物に向けて自身の機銃で攻撃した。振ってきた建物の破片で敵兵が怯む。その間にC班が移動する。
「っ!回避っと」
さすがにいい獲物になっている「ハリアーⅡ」に多数のRPG兵が撃ってきた。すぐさまVTOL機能を解除して、チャフを撒いた。
「それにしてもよくやるよ」
今の所はスティンガーみたいな対空兵器は確認されていないがそれはこちらの区域だけであり、他の所では航空機が落とされているらしい。
『こちらは弾切れ。補給して戻ってくる』
どうやらアンタレス隊は一仕事終えて、先に帰るみたいだ。
「敵装甲車両を発見!」
「了解。機銃からロケットポッドに操作を変えて」
切り替えが完了したと同時に敵装甲車が二台、左の路地からやってきた。その鼻先にロケット弾をいくらか当てた。
「目標無力化」
その言葉通り、二台の敵装甲車は火を噴いており、乗員が煙を吸ってしまったからか、せき込みながらハッチを開けて出て来て、逃げようとしていた。
「新たに記録更新だね!」
ハチが喜ぶ。こんな状況であるがその笑顔に思わず顔がほころんだ。
「RPG!」
もう何度目か分からない程まで繰り返された言葉だと心の中で毒づきながら身を伏せた。近くで爆発が起こり、その爆風で巻き上げられた土が全身に振りかかる。顔に着いたものだけ払い落して悪態を吐く。
「くそっ!どこにいるんだ。もうあらかた片付けたぞ!」
名も知らない戦車の乗務員に頼むから早く出て来てくれと願った。既にいると思われるポイント全てを回ったが一行に見つかる気配も無かった。次のポイントで最後だった。
『こち・・・戦・・・援・・・』
何かの言葉が無線に入った。混戦かと思ったが徐々に聞き取りやすくなる。それでも銃撃の音で掻き消されてしまいそうな声だった。
『こちら米軍偵察隊。現在、敵の襲撃を受けている。援護を要請する』
それは探していた者達の声だった。こんな偶然もあるんだなと思いながら、すぐに発信源を突き止めさせた。分かるとすぐに銃撃を避けながら細い路地を通り、大きな広場に出た。
「どこだ・・・・」
発信源はここだ。じっと辺りを見渡すと広場の隅で見つけた。建物にエイブラムスが突っ込んだ状態で機銃手が機関銃を民兵に撃ちまくっている。周りにいる民兵に応戦しながら機銃手の後ろに回りこんで声をかけた。
「・・・・おい」
「!!」
機銃主がこちらを敵だと思ったのか、すぐに機銃をこちらに向けようとするので慌てて言葉を追加する。
「待て待て、味方だ。あなた達を助けに来た」
最初は事態を呑み込めていなかったが自分達の装備を見て味方だと確信したそうだ。部下に応戦させながらエイブラムスの影で事情をお互い説明し合った。
「助かった。俺は砲手なんでが機銃手がやられちまって、ここも人手が足りずに困っていたところなんだ。それと奥に興味深いものがあるぜ」
二つの指を立てて、その後に一つ目はエイブラムスを指して、二つ目は建物の奥を指した。
「何があるというんだ」
「俺にはさっぱりだが何かやばそうだ」
その言葉に首を傾げながらも他の者をエイブラムスの方に向けて、二人で行くことにした。
「これは・・・」
「え・・・」
二人は奥の物が何かがすぐに分かった。その専門知識が自分にはたまたまあったからだ。
「すぐに米軍の総司令部と「アメリカ」に連絡だ!それと俺達も撤収準備だ!」
慌てながらも指示を出す。もう一方はよく分かっていないようだ。
「一体何なんですか、これ」
その言葉に自分は時間が無いので簡潔に言った。
「簡単に言うとな。俺達もろともこの町が消えてしまう。そういう代物だ。これは」
それを言うと返事を待たずに走り出した。
「おい、出来たか!早く撤収するぞ!」
エイブラムスに向かった部下に声をかける。もう一方の部下の顔は走り抜ける時に少しだけ見ることが出来た。言葉は無かったが代わりにこの世の終わりでも見るような青い顔をしていた。
米軍総司令部にて
「司令官、日本の民空部隊から連絡です」
「そうか。変われ」
司令官は行方不明になった偵察部隊の残りが見つかったのだろうと推測した。だが受話器を取った司令官の顔は最初は安堵、次は真剣な顔、最後に真っ青な顔で受話器を下した。その光景に部下の一人が仕事も忘れて訪ねる。
「どうかされましたか?」
だがその質問には答えずに司令官は指令室を出て行こうとする。
「私は少し席を外す。その間に全部隊に撤退命令。人員、装備、機材全てだ。揚陸艦にも連絡だ」
その言葉を最後に彼はこの部屋から消えた。誰もが訳が分からない中でただ命令に従い、機材などを撤収させ始めた。一体どうしたのかとあの司令官の顔を思い出した。彼らがその顔をした真の意味を知るのは数十分後だった。
『どうしたのっ!』
『what!?どういうことですか!?』
『どういうことですか!』
「分からないがこの指示に従うしかない」
上から柊、岬、アンタレス、俺の順番で困惑の声を出した。総司令部の指示が民空の俺達にも届いた。命令は『全員装備を纏めて、指定時刻までに指定ポイントまで撤退せよ。その後の動向は追って知らせる』というものだった。既に多くの部隊が撤退を開始しており、陸戦隊も撤退を開始しているのを確認した。
『無線は通じないわ!』
柊の言葉通り無線が働くなっていた。さっきまでは正常に動いていたのに。この反応は。
「とりあえず離脱だ!考えるのは後で_____」
その時にアンタレスから通信が入った。
『セイバー、狙われている!ブレイク!ブレイク!』
その言葉で考えにふける時間は無かったと急いでチャフを撒きながら左にブレイクした。
「ハチ、分かるか!」
「あそこ!八時の方向よ!」
ハチの言われた通りに八時の方角を見るといた。森林迷彩で酷く目立つF-18E「スーパーホーネット」だ。
『この距離から避けるとはさすが噂通りの腕はあるようだな。空井 勇人』
貴様は誰だ!と大声で叫びたかったがそれをぐっと抑えて二人に言う。
「アンタレス、ガルーダ、シーガルお前たちは離脱しろ」
その言葉に柊が食って掛かる。
『はぁ!?相手は実力を見る限りかなりの相手よ!そんなの』
『分かりました。セイバー』
柊が食って掛かるのをアンタレスが制する。
「お前たちには撤退中の部隊の援護を頼む。必ず敵は撤退の時をチャンスと見るはずだ。だがお前たちがいれば損害が出ることはないだろう。それとアンタレス、お前んときに強襲揚陸艦「エセックス」がいたはずだ。俺達「アメリカ」にはウェルドッグ機能はついていない。だからそこも頼む。」
『で、でも』
『はいはい、行きますよガルーダ!』
『えっ!ちょ、ああ、もう気をつけてね!』
『頑張ってください』
「お前達もな」
アンタレスには本当に感謝している。あの性格に何度助けられたか。
『お前さんだけでいいのか?』
相手が挑発してくるがそんな物に乗るほど安い男ではない。
「お前は自分の心配していればいいさ」
『よく言う。口先だけではないことを証明してもらおう!!』
「受けて立つ!!」
乾いた空気の中で二つの戦闘機がぶつかりあった。
『早く行って!!』
上にいる戦闘ヘリ「ヴァイパー」のスカイが叫んだ。(捕捉だが戦闘ヘリのスカイ化は極めて珍しい)俺達は元来た道を帰り、装甲車、戦車、戦闘ヘリ、隊長たちの戦闘機の火力で民兵の包囲から抜け出していた。合流地点はもうすぐだった。
「見えました!目印のスモークです!」
確かに緑のスモークが見えていた。そこまで行くと二隻のLCACと三機のヘリが見えた。LCACは「エセックス」、ヘリは「アメリカ」だろう。
「急げ!急げ!」
点検が本来ならいるがそんな時間はない。全ての人員と車両を乗せるとすぐに発信した。
自分は時計を見た。あれが確かならあと一分。
多くの米軍のLCACや輸送ヘリ、戦闘ヘリが撤退している。残り30秒
誰もが顔を隠した。あと一秒。
その時に白い閃光が辺りを満たした。
「うぁ!!」
「くそったれ!」
『操縦桿が鈍い!』
誰もが悲鳴に似た声をあげる。その中で以外にも自分は冷静に”それ”を見た。無線に飛び込んでくる悲鳴や救難要請も耳に入ってこなかった。
その光景は大きなキノコ雲と空に光る二つの物体。「ハリアーⅡ」と森林迷彩で酷く目立つF-18E「スーパーホーネット」だった。
そしてそれらを呑み込もうとする黒い群体「ヤク」だった。
次回は「ヤク」も登場して通常路線に戻ろうと思います。