あの戦いから3週間後 俺達は色々な事が起きた。
まず一つは機体をだめにしかけたこと。これはこっぴどく叱られた。
二つ 修理が完了するまでの代わりの機体を見つけないといけないこと。
三つ 民空を束ねる総本部に呼ばれた事。
四つ あのパイロットからの”贈り物”の対処に困っていること。
結論 クソめんどくさい。
「あのいつまで空を眺めているんですか空井さん?」
声がしたので目隠しを外し、見ると岬がいた。
「岬ちゃんか。少し考え事をしていてさ」
「やっぱりあのことですか?」
そう三週間前のことだ。
「そうだよ。上からお呼び出しが来てね。今日行くことになったんだ」
「大丈夫なんですか?」
その言葉に詰まったがすぐに切り出した。
「たぶん大丈夫じゃないかな。俺達とアンタレスの部隊は既に相当外れたことしているからな。最低でも自宅謹慎ぐらいは命じられるんじゃないかな」
ちなみにそれはあくまで最低ラインの話だ。100%さらに上の厳しい処分がくだるはずだ。
それを知ってか知らずか岬は心配そうな顔をするが頭を撫でてやる。
「心配するなって!ははは!!」
「子供扱いしないでください!」
だって子供っぽいし。強いていうならハチよりも幼く見えてしまうのだ。実際ハチの年齢って・・・・あれ、寒気がしてきた。これは・・・殺気か?
「これ以上考えると物理で消されそうなのでやめておくか・・・」
「何を考えていたんですか?」
岬に聞かれて俺は視線を外した。正確にいえば岬ではなく、格納庫からこちらを見ている黒いオーラを出した傷だらけのハチからだった。
一時間後
「準備できた?」
「おう、出来たぞ」
俺達は正装に着替えて出発しようとしていた。今いる基地と総本部はそれほど離れていない為、十分に時間に間に合う。
「じゃあ、行きましょう。岬ちゃん留守番よろしくね」
「はい。頼まれました!」
俺達が行くのを笑顔で手を振りながら見送る姿に和んでしまった俺は悪いだろうか。
アメリカ合衆国 民空総本部にて
薄暗い部屋の中で俺達は幾多の大人たちに囲まれていた。忌々しい事に顔は全員見えない。
「では本題に移るが君たちは中東で一体何をしたんだね?」
大人たちの一人が一枚の紙をこちらに滑り込ませてくる。それに書かれていたのはやはり中東での動きであった。
「民空の行動手順には君たちがやったような動きは記載されていない。例えヤクが途中で出現していたとしてもだ」
その言葉を皆黙って聞いている。いつも馬鹿騒ぎをしているアンタレスも真剣な顔で聞いている。
「本来なら民空の規模を収縮する事になるが私達の耳にも君たちの活躍を聞いているし、何より君たちは我が国を救ってくれたという大きな借りがあるしな。その為、君たちには信頼回復の為にあの大規模作戦に参加してもらう」
「大規模な作戦とは?」
柊が聞く。すると不敵に笑みを浮かべた。
「ヤクに支配されたイタリアの解放作戦だ」
すると全員が目を見開いた。
「そ、そんなことを企画しているんですか!?総本部は!」
「あくまで段階の話だ。確かにヤクの支配地域には要塞など多数の防御兵器がある為に今まで反撃しようにもできなかったが・・・・」
「我々もそして人類も限界なのだ。これ以上ヤクに進撃されるのは」
確かにそうだ。既に人類はカナダ、アフリカの大部分、ロシアの北部、ヨーロッパそして中東がヤクによって陥落してしまっている。多くの避難民が周辺国へと溢れるように流れ着いている。だが人類もヤクとの戦いを続けている以上もう余力は残っていない。
「我々人類には”希望”が必要なのだ。だからやってくれるな?」
悲しみの色を帯びた声から再び、固い声色に変わったが今語ってくれた悲しみは皆が知っている。だから当然こう返した。
「よろこんで」
空軍基地にて
ここまで来てようやく肩の荷が降りた皆が口ぐちに語り始める。
「ふぅ~~やっと終わったわ」
「意外とhotな人達でしたね」
「あの大人たちの一人はヤクの攻撃で娘を失ったらしい。その為だろうな」
そして俺達は現在、とある一角の格納庫に来ていた。一つ目の用件が終わったので当然二つ目に取り掛からなければならない。
「はぁ~~」
息を吐いて格納庫の中へと入った。すると格納庫から喧嘩腰の声が大音量で聞こえてきた。
「だ か らぁ!あんたの武装は地対空ミサイルしか積めないだ!何回言わせるつもりだ!!」
「いやだぁ!私にはあれじゃないといけないの!塗装はまだしもこれは譲れない!!」
「お前、現状どれくらい厳しいか分かっているか!お前が注文を押し付けている対艦ミサイルは今は他の機体が使っていて在庫切れだ。それが搬入されるまでにあと一週間は待たないといけないいんだ!いい加減おとなしくしといてくれ!」
どうやら例の”贈り物”と整備班長がまた揉めているらしい。この調子が既に三回目だ。むしろここまで喧嘩できるまでに親しくなっているのを喜ぶべきか頭痛の種として扱うべきかは未だに空井の中では判断することが出来ない。
「またやっているみたいだな」
「ああ、君か、まったく面倒見きれんよ」
「塗装の時にも駄々をこねたしな」
「あの時は君が居てくれて助かったよ」
「お礼はいいよ。それでうちのハチはどうなっているかな」
ここに来たのは”贈り物”の現状とハチのことについて身に来たのだ。
「おたくのハリアーⅡはまだ修理できていない。少なくともヤクと戦えるようになるまでにはあと2か月かかる。だけど通常の戦闘機と戦う場合はあと二週間くれれば応急処置は出来る」
「もう少し早くは出来ないか?」
すると「無茶を言わないでくれ」と苦笑されてしまった。
「こっちも今、忙しい身でね。君達の修理は後回しになってしまいそうなんだ」
「分かったよ。無茶は言わない。それでもう一方は?」
「既に君たちに負わされた傷も修理できているが「スカイ」があれだとな・・・・」
遠い眼をしている整備班長に空井は深く同情した。
「話を戻そうか。さっきの会話を聞いていたとは思うが聞いての通りお望みの武装はもう少しだけ時間がかかる」
実はあの後にイタリア解放作戦に参加することが決まったのだがそれが丁度一週間後、とてもじゃないが同じ時刻に来る武装をちんたら乗せている時間はなかった。
「ということは地対空ミサイルだけか・・・・」
「いや、ひとつだけある。攻撃面ではないがな」
空井の言葉に班長は笑みを返す。攻撃面では無いということは・・・
「電子機器でのサポートということか」
「ご名答。正確に言えばECMを乗せて、電子面でサポートするということだ」
「ありがとう。その案で頼む」
「了解しました」
整備班長と別れて、今度はもう一方の喧嘩相手との会話をするために歩きだした。三回くらい彼女を見たことはあったが場の雰囲気でとてもじゃないが話しかけられる場じゃなかった為に今まで一度も会話をしたことが無かった。
「お前が「スーパーホーネット」の「スカイ」か?」
「あなたは?」
怪しむような目でこちらを見たがすぐにただの整備員と気がついたのか名前を聞いてきた。
「俺は空井 勇人 「第25試験航空団」の__」
「空井!?あなただったのね!」
抱き着いてきた。未だに状況が理解できていない空井だがスカイはそのまま言葉を続ける。
「あなたを探していたの。空井と言う男に会えとあの人が・・・・」
「待て待て、君の名前をまずは教えてくれ話はそれからだ」
あの人とはあの男だと思うがとりあえず「スカイ」というだけでは俺が不便だ。
彼女は砂埃を払いながら、自信たっぷりに胸を張って名前を言った。
「私の名前はアバランチ。以後よろしくね」
「ああ、こちらこそよろしくな」
それは彼の二機目の乗機となるF/A-18F「スーパーホーネット」の名前であった。
「スカイ」や登場人物の紹介を近いうちにしようと思います。次回はアバランチと共に空を飛びます。
注意 戦闘とは言っていない。