りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す! 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
土居内は頭を抱えていた。
「うーむ……」
捕虜として捕まえた近衛兵が何も語らない事、さらに74式戦車に乗っていた白い女性は意識が回復して普通に話せるようになったが、何一つ覚えてない事、さらにさらに前に捕縛した女性が修理工場から抜け出し、AH-1Sで勝手に航空支援に来た事――。
「どうすりゃいいんだよ全く……」
そこへ、霧本がやってきた。
「佳樹、何悩んでるの?」
「主に捕虜の事。あと名前で呼ぶな」
「案外堅いのね。捕虜って、拷問すれば――」
「そうもいかない。明確に兵士であればジュネーブ条約で保護されるし、そうで無くても基本的人権の観点から拷問できないんだよ。あの近衛兵と名乗った奴は、人間では無いから何とでもなりそうだが」
土居内は頭をさらに抱える。
さらに今日は、新しく転属になるのが2人いる。
「隊員が増えるのはいいが、混成部隊なのに普通科しかいないし、新しい奴の情報は来ないし、しかも男は俺だけだ」
「いいじゃん、ハーレムで」
霧本が言うと、土居内は木箱で出来た急拵えの机に伏せる。
「よくねぇよ。全員俺に惚れてるならまだましだが、そうでもないし、それに俺は純愛派だ」
「どうだか。私の事さっさと捨てて、遊びまくってたんでしょ?」
「20代の初等幹部にそんな暇ねぇよ。上からもこき使われ、下からは馬鹿にされ、損な階級だよ全く」
土居内が深いため息をつく。霧本は、何と言っていいのか悩んでいると、誰かがテントに入ってくる。
「隊長はいるか?」
それは、また女子高生だった。茶髪のポニーテール、白いYシャツ、短いスカート、そしてM4 A1自動小銃を手にしていた。
土居内には、見覚えのある人物であった。
「お前、習志野か?」
「久し振りだな、隊長」
霧本は、困惑する。
「えっと、誰?」
「習志野 飛音1等陸曹、これより中央混成連隊の指揮下に入ります」
習志野と名乗った少女は答える。土居内は霧本に説明する。
「俺が空挺団の小隊長の時の部下だ。1等陸曹、昇進したのか」
「そっちは変わらず3等陸尉か」
土居内は苦笑いする。
「相変わらずの遠慮の無さだな」
その後、もう1人の新入隊員がやってきた。
「久居 真津梨陸士長です! よろしくお願いします!」
「中央混成連隊の土居内だ。今、我が隊には9、そう君を入れて9人だ。文字通りの戦力不足だ、しっかり働いてもらう」
「了解しました!」
久居がテントを出ていく。土居内はため息をつき、パソコンに向かう。
今日は出撃は無かった。しかし、土居内と市ヶ谷は明日の出撃に必要な戦力を他部隊から借りられないか、その作業で忙しかった。
「えぇ、ヘリを借りたいのですが。パイロットなら我が隊におりますし、え? 明日岐阜県奪還作戦で全機出撃? いや、余っている汎用ヘリとかでも、無理ですか。分かりました、掛け直します」
「戦車小隊を1個、無理なら1両でもいいんです。明日の新潟火力偵察に、岐阜県奪還作戦に使用するから無理? そうですか、掛け直します」
土居内は機甲科連隊やヘリコプター部隊に電話を掛け、何とか戦力を集められないかと奮闘していたが、無駄だった。
何処の部隊も、明日は岐阜県奪還作戦に全火力を投入するつもりらしい。しかし、土居内に下された「新潟県火力偵察」も重要なのである。
「駄目だ、こんなのじゃ新潟で野垂れ死んでしまう……」
土居内は呟きながらベッドに潜る。
そこへ、市ヶ谷がテントに入ってきた。
「司令官、戦力調達は……」
もうベッドで小さくなっている土居内を見て察した。
「駄目だったんですね……」
「言わないでくれ……今モーレツに傷付いた……」
土居内がベッドの上で丸くなる。市ヶ谷はすかさず書類を差し出した。
「戦車と攻撃ヘリなら、1つずつですが我が隊への配備ができそうですよ」
土居内は跳ね上がる。
「何!? 本当か!?」
そして思い出した。
「待てよ、それって修理工場にあるアレか?」
「はい、何処の隊も必要無いから、と」
土居内は深くため息をつく。
「兵器があるのはいいが、使える隊員がいないんだ。戦車操縦の訓練を受けたのは俺だけだし、攻撃ヘリなら木更津姉妹で何とかなるか?」
市ヶ谷は言う。
「それについて、一旦修理工場に行きませんか?」
土居内と市ヶ谷は修理工場に来ていた。そこには整備が終わった74式戦車とAH-1S攻撃ヘリが置いてある。その途中で土居内は市ヶ谷から色々説明を受ける。
土居内はある部屋に入る。部屋には例の白い髪の女性がいた。
「あら、やっと出してくれるの?」
女性は言う。しかし、土居内は首を横に振った。
「いや、それはまだだ。あんたの返答次第だが」
「冷たいわね。それと、私の見えない所であの戦車をいじらないでくれるかしら? ずっと触られてるような感じで眠れなくて」
「やはり、な」
土居内は呟く。
「市ヶ谷から話は聞いた。あんたと戦車が深く結び付きあってるとな。そこで提案だ、俺の部隊に来い」
「は?」
女性は肩をすくめる。
「どうしてそうなるの? 私にだって人権はあるでしょ、なら断る」
「そうか。だが、生憎あんたに人権は無い」
「どういう事?」
「人権を保証するには身元が必要不可欠だ。だがあんたは記憶喪失、人権の保証のしようが無いんだ。今はジュネーブ条約に従い、『戦闘員捕虜』という扱いだが、生憎日本には捕虜に関する法律その他もろもろが無い。あんたを非人道的に扱わない限り俺達は自由にしていい。その上で俺はあんたに訊いたんだよ」
「つまり、私には拒否権は無いけど、あなたが独断で与えたと?」
「そういう事だ。どうするつもりだ、妖精さん」
「妖精?」
「俺は、あんたは兵器を擬人化した物だと考えてる。最近『艦これ』だの『アルペジオ』とかあるだろ? 両方とも大戦中の軍艦だが」
「面白い解釈ね。私が兵器の妖精だなんて」
「それなら、あんたと戦車が精神的に繋がり、あんたに名前と記憶が無い説明がつく」
女性は黙る。
(記憶、ある事にはある。でも、それは私のではなく――)
「で、どうする?」
女性の沈黙を破るように土居内は問う。
女性は決断をした。
「分かったわ、あなたの部隊に入るわ。でも、最高の戦場を用意出来なければ辞めるわ」
土居内は小さく笑う。
「勿論だ。俺達の仕事は敵陣に飛び込む事だからな。しかし、いきなり最高の戦場を求めるなんて――」
「我ながら戦闘狂ね」
女性も笑う。
「ああそうだ」
「何よ?」
「名前はどうする?」
女性は一瞬考え、口を開く。
「ナナヨンがいいわ」
「まんまじゃないか」
2人は笑った。
同様の話を、黒髪の女性にもする。
「茜お姉様と一緒じゃなきゃぶっ殺す」
「出来る限り一緒にするが、作戦上一緒にし続けるのは無理だ」
「なら許す」
黒髪の女性は、コブラと名乗った。
「AH-1Sの擬人化だからか?」
「いえ、夢の中で茜お姉様にそう呼ばれながら身体を拭かれて――」
そこでコブラは大量の鼻血を出す。土居内はポケットティッシュをコブラに差し出す。
「落ち着け百合っ娘。鼻血が収まったら、グラウンドにあるテントの前に来い。お前の新しい仲間を紹介する」
土居内は修理工場を後にする。
中央混成連隊、新潟県火力偵察出撃まで、18時間。
お久しぶりです。最近文化祭の準備で忙しくて投稿できませんでした! 素直にゴメンナサイ