りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す! 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
彼ら、中央混成連隊は富山駐屯地に帰ってきた。が、すぐに第4師団が解放した新潟県の新発田駐屯地への異動を命じられた。
大型トラックや高機動車に荷物を満載し、2台の特大型トレーラーに74式戦車とAH-1Sを搭載して出発する。
「で、何で私まで運転させられてるの?」
高機動車の運転席に座った霧本が不満そうに言う。助手席の土居内が説明する。
「仕方ないだろ。俺達の中で車の運転出来るのは少ないし、それにあの富山駐屯地に今すぐ戻るか?」
現在の富山駐屯地は守備用の1個普通科中隊がいるだけで、他は岐阜と新潟に移動した。
「逆に人が少なすぎて嫌だわ」
「だろ? それに『働かざる者食うべからず』って言うしな」
「つまり私は雑用係?」
「簡単に言えばな」
中央混成連隊は高速道路を走行し、新発田駐屯地に向かう。
やがて彼らは新発田駐屯地に到着した。
「丸々使わせてもらえるとはな」
「すごい贅沢ですよね……」
兵舎の前で、土居内と市ヶ谷が話し合っていた。兵舎は4階建てで、その隣には修理工場や浴場が建っている。
また、兵舎の前には車両庫があり、軽装甲機動車や高機動車、トレーラー、74式戦車、AH-1Sが格納されている。
「じゃ、俺は寝る。他の奴には休みと伝えておけ」
「司令官、捕虜はどうするんですか?」
兵舎に入ろうとしていた土居内の足が止まる。
「あと、3人ほど新しい隊員が」
「うっ、頭が」
土居内は頭を抱える。
市ヶ谷は土居内を診察室へと連れて行く。
「三宿さん、急患です」
「は~い」
奥から、ピンク髪の女性が出てくる。土居内には見覚えがあった。
「あれ? あんたは富山駐屯地の――」
「富山駐屯地から転属になった三宿 比奈乃3等陸尉で~す♪」
「何だこの音符」
市ヶ谷が説明する。
「彼女は我が隊の新しい医務官(衛生兵)です」
「医務官って事は、銃使えるのか?」
「はい~♪」
「だから音符止めろ」
そして土居内は気付いた。診察室の壁が薄ピンク色だったのだ。
「何でピンク色なんだ?」
「ピンクには人を落ち着かせる効果があるんです~♪」(本当)
「ふーん、じゃああんたの髪がピンクなのもそうなのか?」
すると、三宿はポシェットから注射器を取り出した。
「は~い、お注射しましょうね~♪」
「おい待て中身は何だ!? 市ヶ谷、助けてくれ!」
しかし、市ヶ谷は土居内を羽交い締めした。土居内の背中に豊満な胸が当たるも、土居内はそれどころではなかった。
「司令官、暴れないで下さい? いや普通に気持ちいいですよ。意識ぶっ飛びますよ」
市ヶ谷が冷たく言う。
「さてはお前らグルだな!? つーか危険ドラッグだろそれ!」
土居内は何とか診察室から抜け出し、修理工場に向かった。
2階に上がり、ある部屋へと入る。すると、白衣を着た少女がメスやノコギリ、電動ドリルを手に、椅子に縛られた近衛兵に迫っていた。近衛兵は必死に首を振り、目に涙を浮かべ、手足をばたつかせる。が、無駄だった。
土居内は素早く右太ももにぶら下げたホルスターから9mm拳銃を抜いて構える。
「何をしている!? 両手を上げろこのフ○○ク野郎!」
土居内は狙いを少女の背中に合わせる。少女は手に持っていた武器を捨て、ゆっくり振り返る。
「よぉし、ゆっくり両手を上げるんだ」
土居内は左の親指で9mm拳銃の撃鉄を起こす。
少女は素直に両手を上げる。
そこへ、市ヶ谷が飛び込んできた。
「何してるんですかあなた達は!」
3人は階下の修理スペースにいた。何故だかご立腹の市ヶ谷に、不機嫌な土居内と少女。
「で、こいつが3人の新任の1人か?」
「ええ」
少女は、富山駐屯地の修理工場にいた大宮 氷乃だった。
「大宮さん、捕虜に拷問しようとしてましたよね?」
市ヶ谷が訊く。大宮は答えた。
「……生態研究」
「あのなぁ……」
土居内は額に青筋を作る。
「あいつは戦闘員捕虜で、ジュネーブ条約で保護されてるんだ。下手な事をすれば叩かれる、叩く機関が残っていればだが、そんな事になればお前は追放され、俺は責任を問われる。俺は責任を負うのは構わんが、負わされるのは真っ平御免だ」
大宮は反論する。
「でも、口を割らなければ――」
「『歯医者』でもするのか?」
「……ご存知でしたか」
大宮は黙る。そして市ヶ谷が質問する。
「あの、『歯医者』って?」
「拷問の一種だ。質問に答えなければ歯を一本ずつ抜いていくという痛々しい拷問で、確かソ連だったかな?」
土居内が答える。一方の大宮は黙っていた。
「とにかく勝手な真似はするな。お前の立場を悪くするだけだ」
土居内は厳しく言った。大宮は小さく頷いた。そして大宮は修理工場の奥の部屋へと入っていった。
「あんな部屋あったか?」
「何か、怪しげな研究をしているみたいですよ?」
土居内は、その部屋を見なかった事にした。
気を取り直して、近衛兵の縛られている部屋に入る。
「さっきは、指示の行き届いていない部下の所為ですまない事をした」
「……」
近衛兵は何も言わない。
「手荒な真似はしない。俺がこれからする質問に答えてくれれば、マグマ軍に帰す。悪くない提案だろ?」
すると、近衛兵は一瞬反応し、首を横に振った。
「帰りたくないのか?」
「……地上人に言う義理は無い」
「こっちの飯の方が旨いのか?」
近衛兵は、回答に困ったように固まった。
「ま、言うか言わないかはあんたの自由だ。1ヶ月、何も答えなければ競合地域にヘリで投下するから、そのつもりで」
土居内は部屋を出る。
この新発田駐屯地には兵舎がいくつかあり、中央混成連隊が使用するのは第1兵舎である。現在中央混成連隊の他に警備用の1個普通科中隊がいる。
土居内は第1兵舎に入る。中は小綺麗で、上に昇る階段の手前には「男子禁制」「不審者は射殺する」「上がるには全員の許諾が必要」などと書かれた立て看板が置いてあった。
「要は俺は入るなと」
階段の向かいには「司令官室」と書かれた扉がある。
土居内が開けると、中々広い部屋があった。北側には廊下と繋がっている扉、南側には巨大な窓と高級そうな木製のデスクと椅子、東側にはソファと本棚とガンラック、西側には給湯スペースと大きなプリンター、そして謎の扉。
床は木目の美しいフローリングで、窓には真っ赤なカーテン、デスクの足下には無造作にデスクトップPC。
「雑にも程があるだろ……」
デスクに近付くと、そこそこ大きめのモニターとキーボード、固定電話、そしてメモがあった。
持ち上げてみると、市ヶ谷の直筆であった。
[司令官へ
ここがあなたの新しい仕事場です。何かあれば、電話で私を呼んでください
市ヶ谷]
裏には、固定電話の内線の使い方とそれぞれの部屋の内線番号、そして部屋割りが書かれていた。
土居内はメモをデスクの上に戻し、ホルスターから9mm拳銃を抜く。音を出さないように歩き、例の謎の扉に近付く。
扉にトラップが無いのを確認し、ドアノブをゆっくり回す。そして扉を蹴り開け、9mm拳銃を構える。
誰もいなかった。代わりに、ダブルベッドとタンスがあった。
「……ここで寝泊まりしろってか」
土居内は9mm拳銃のデコッキングレバーを下ろしてホルスターに仕舞う。
そのタイミングで、誰かが廊下に出る扉をノックした。
「誰だ?」
土居内が開けると、また白い少女がいた。
腰まである真っ白な髪、透き通るような白い肌、汚れの無いYシャツ、腰の辺りで巻いた青いパーカー、そして89式小銃――
「新任か?」
「はい、新発田 渚2等陸士です。よろしくお願いします」
そう言って敬礼した。土居内も敬礼を返し、指示を出す。
「中央混成連隊の土居内だ。今我が隊は深刻な人員不足だ、だが今日は出撃は無い。上に上がってゆっくりしとけ」
「了解です!」
新発田は敬礼し、階段を昇っていく。一方土居内は腕時計を見た。
「1623、暇だな」
夕飯は1800時からなので、1時間半も空いている。
土居内は司令官室に戻り、ダブルベッドに飛び込んだ。
「……官、司令官!」
誰かが土居内を呼ぶ。目を開くと、そこには市ヶ谷がいた。
「……市ヶ谷か。おはよう」
「もう1811ですよ!」
「え」
慌てて腕時計を見ると、確かに18時を過ぎていた。
「やっべ、本格的に寝てた!」
飛び起き、迷彩服の見える範囲の皺を伸ばす。そして市ヶ谷と共に廊下に出た。
「……よっぽどお疲れだったんですね」
「今日は偵察して、引っ越しして、新任を確認して、色々起き過ぎた」
すると、久居とばったり遭遇した。
「あ」「あ」
そして久居は慌てて食堂へと駆け出した。土居内は呆気に取られる。
「何だ?」
「さぁ……とにかく、早く食堂に行きましょう」
「そうだな」
食堂には、既に中央混成連隊の面々が食事をしていた。土居内と市ヶ谷は食券を選び、食べ物を受け取る。そして席についた。
「お、熱い感じ?」
そこへ霧本がやってきた。
「霧本か」
「だいぶ冷たいわね。2人揃ってお食事とは仲がいいようで」
「ちげーよ。あくまでも市ヶ谷は部下だ」
「ふぅん」
ニヤニヤ笑う霧本。そこで土居内は話題を変えてみる。
「で、何でお前ここにいるんだ?」
「いちゃ悪い? それに、私ここで働く事になったし」
「は?」
土居内は驚愕した。駐屯地の食堂は、普通需品科が運営している。民間人が働けるとしたら駐屯地内の売店(もしくは購買部)ぐらいだ。
「人手不足だからって、まあ私も保護されっぱなしという訳にはいかないし」
「……そうか。毒混ぜんなよ」
「混ぜる訳無いでしょ。あんただけが食べてるんじゃないし」
「俺だけだったら混ぜんのか?」
「……まっさかー」
「おい何だ、今の沈黙」
こんな2人の会話を聞いていた市ヶ谷が口を挟む。
「本当、仲良いですよね……」
その発言に、土居内と霧本は固まった。
「あー、まあ付き合う前は友達だったし、それに今は気は無いもん」
「俺もだ。あの時は確かに付き合ってたし、こいつの事は好きだが、『love』ではなく『like』だからな」
「あん時も?」
「あの頃のは……いい表現が見当たらない」
それを聞き、市ヶ谷が悲しそうな顔をする。
「本当、うらやましいです」
土居内と霧本は、何を言っていいのか分からなかった。
「一体何があったの?」
霧本が訊くと、市ヶ谷は急に明るそうに応えた。
「あ、いえ! 何でもありませんよ!」
しかし、市ヶ谷の瞳からは大粒の涙がぽろぽろと溢れ出てきた。
「分かった分かった。無理に言わなくていいから。佳樹、あんたの部屋借りるよ」
「おう。鍵は掛かってないはずだ」
市ヶ谷は、霧本と土居内の手で食堂の外へと運ばれた。
どうしてシリアス展開になったんだ!?
それはともかく、都合により2週間ほど更新できないかもです