りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す!   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

19 / 77
18話 哀しみ

 土居内達は新発田駐屯地に帰ってきた。が、豊川と新発田は泣き続け、コブラはAH-1S攻撃ヘリと共に修理工場へ、それ以外は皆黙っていた。

 

 あまりにも重い空気に、市ヶ谷と霧本はどうしようも無かった。

 

「司令官――」

 

「市ヶ谷、悪いけど独りにさせてくれ」

 

 そう言って、土居内は司令官室に閉じこもった。

 

 

 

 その頃、修理工場奥の部屋では――

 

「ふふふ、出来た、出来たぞ」

 

 大宮が、謎の液体が入った瓶を手に喜んでいた。

 

 そのすぐ側に、氷漬けにされた久居の死体が横たわっていた。

 

 

 

 会議室に、中央混成連隊の土居内とコブラを除く全員が集まっていた。

 

「…………」

 

 誰も何も言わない。沈黙した空気の中、ただ時間だけが静かに進んでいた。

 

「……私が悪いんですよね」

 

 新発田が呟く。

 

「私が、久居士長を置いて逃げたのが。あの時、命令に背いてでも残っていれば――」

 

「あんたの所為じゃない」

 

 腹の底から押し出すように、富山が言葉を発する。

 

「悪いのは全部マグマ軍だ。久居は、被害を最小限にするためにあんたらを逃がしたんだ」

 

「でも……!」

 

「新発田2士、あんたが今生きているのは久居士長の決死の思いのおかげだと気付かないのか!? 久居があんたらを生き延びさせようと身代わりになった! それをあんたは無駄にしようとしている! いつまでもくよくよしやがって、久居をこれ以上苦しめんなよ!」

 

 富山が言い切った。新発田は、何も言い返せずうつむく。その場にいた全員が富山の言葉を噛み締める。

 

「……何を言い争ってるの?」

 

 そこへ、白衣とマスクを身に着けた大宮が現れた。何故か白衣が血らしき物で汚れている。

 

「大宮2曹……」

 

 鯖江が呟く。しかし木更津姉妹や富山、習志野、新発田は首を傾げる。

 

「誰ですか?」

 

 葵が尋ねると、鯖江が答える。

 

「修理工場の奥で寝泊まりし、怪しい研究をしている。この前は修理工場にゾンビもどきが大量に発生して、司令官にバレぬよう隠すのが大変だった」

 

「はぁ……」

 

 葵、ノーコメント。

 

 

 

 その頃、陸上自衛隊上層部では愛知県及び長野県南部解放作戦を立案していた。

 

「現在、岐阜県と長野県北部に駐留する即席機械化部隊を、敵防衛ラインの一カ所に電撃的に投入、一気に名古屋市を目指し南下、同時に渥美半島と知多半島より上陸予定の米海兵隊及び米陸軍と合流し、一気に静岡へ向かう作戦です」

 

 中部方面隊総監が説明した。

 

「中部国際空港が解放できれば、空自と在日米空軍の戦力を分散できる。今、すべての航空戦力が小松に集結してしまっているからな」

 

 陸上幕僚長が言う。本来なら、この会議室は幕僚達で埋まるはずだが、大半の幕僚が文民統制を守るために「警察出身」なので、いざ戦争になって逃げ出したのだ。

 

「海岸まで行けば、海自の支援を受けられると思うが」

 

「無理だ。護衛艦にトマホーク積んでないから援護射撃は速射砲のみ、射程が短いからだいぶ限られる」

 

 思い思いに話す中、女性防衛大臣が質問する。

 

「現在の、自衛隊の地上戦力は?」

 

 中部方面隊総監が答える。

 

「第10師団、第12旅団、第1師団、第2師団、第4師団、第8師団、第15旅団、そして中央即応集団のみ。なお、第1師団は損害が大きく、戦力と見なせるのはかなり少ないです」

 

「そう言えば、何処の方面隊にも属さない連隊がありましたよね?」

 

「……中央混成連隊ですか。しかし、まだ出来たばかりで小隊程の戦力しかありません」

 

「中央混成連隊、確か『ごっちゃ混ぜの部隊』でしたね」

 

「その通りです。多種混成部隊(コンバインド・アームズ)は二次大戦中、ドイツが師団レベルで整備し、その重要性が第四次中東戦争で実証されたのです。中央混成連隊は、それらを連隊レベルまでコンパクトにし、戦術機動性を重視した部隊です」

 

 女性大臣がさらに質問する。

 

「戦術機動性?」

 

「簡単に言えば、敵ゲリラ対処や敵陣への突撃が得意という事です。代わりに、長期的な作戦、例えば敵の攻撃に対する防衛戦が苦手で、長らく専守防衛を掲げて塹壕戦に傾いていた陸上自衛隊において、かなり特異な部隊です」

 

 女性大臣は机をトントンと叩く。

 

「彼等の戦力は?」

 

「旧型の戦車1両にヘリが2機、普通科隊員が9人、後方支援要員が数人です」

 

「各隊の余剰人員や兵器を適量、彼等に与えなさい。この戦いは火力だけでは何ともならない、機動力が重要です。そうでなければ、際限なく増え、進化し続けるマグマ軍を潰せませんからね」

 

 

 

 新発田駐屯地の会議室――

 

「嘘、でしょ……?」

 

 豊川と新発田が固まる。他のメンバーも、思考が停止していた。

 

 何しろ、大宮に続いて会議室に入ったのは、久居だったからだ。下着姿で、上からタオルを羽織っているだけだが、紛れもなく久居 真津梨だった。

 

「そ……その、こんな姿で恥ずかしいですが、久居 真津梨陸士長、ただいま帰還しました」

 

 そう言って、久居は左手でタオルを抑えながら敬礼した。

 

「ひ、久居士長ぉー!」

 

 豊川と新発田が泣いて飛び付く。久居は受け止めきれず、そのまま倒れる。

 

「ごめんね、かるらちゃん、渚ちゃん、心配掛けて……」

 

 久居は2人の頭を撫でる。

 

 残りのメンバーが、有り得ない光景を目にし、富山が数珠を手に南無阿弥陀仏を呟く中、鯖江は何かひらめいたように大宮に質問した。

 

「まさか、この前のゾンビもどきと……あなたは死者を生き返させるのに成功したのか!?」

 

 その言葉に、大宮と久居を除く全員が驚く。富山の手から数珠が落ち、市ヶ谷が青ざめた顔になる。

 

 大宮はゆっくり頷き、口を開く。

 

「死んで2時間以内の死体ならば、ある化学物質を投与する事で再び動き出すのは前々から分かっていた。しかし、理性が無かった。そこで、改良に改良を重ね、遂に人間の記憶や理性をそのままに生き返らせるのに成功した」

 

 すると、豊川が呟く。

 

「そんな、『ユニ○ーサルソル○ャー』みたいな事が!?」

 

「ネタが古過ぎるよ、豊川1士」

 

 鯖江が冷静に突っ込みを入れ、大宮に訊く。

 

「あの映画では、身体を冷やす必要があると描かれているが、その必要は?」

 

「ない。ただ、何回この手が使えるかは試していないから分からない」

 

「とりあえず1回は生き返られるのか……」

 

 鯖江が顎に手を当て、神妙そうに言う。

 

 すると、市ヶ谷が提案した。

 

「とりあえず、司令官に報告しましょう!」

 

 

 

 司令官室の扉は固く閉じられていた。

 

「ここまでとはな……」

 

 鯖江が扉を蹴りながら言う。押しても蹴ってもこの扉は動かない。

 

 すると、習志野が言った。

 

「私の部屋にマスターキーがある。それで開けよう」

 

「よし乗った。富山士長、武器庫から暴れん坊を」

 

「おう!」

 

 それぞれ散り散りになる中、久居は市ヶ谷から借りた真っ赤なジャージを着ていた。

 

 

 

 しばらくして、習志野が階段を降りてくる。手には、黒光りする散弾銃があった。

 

「あ、あの、それは……?」

 

 豊川が質問すると、習志野は弾を3発装填しながら答える。

 

「見ての通り、マスターキーだ」

 

「どう見ても猟銃(散弾銃)ですよ!」

 

 習志野はフォアエンドを前後させ、初弾を薬室に送りながら答える。

 

「1発目はドアブリーチ弾、2~3発目は非殺傷のゴム散弾だから、至近距離でない限り死にはすまい」

 

「危ないじゃないですか!?」

 

 そこへ富山がやってきた。手には大量の9mm機関拳銃。

 

「1人50発だ。あんな奴相手にこんなに必要ないと思うが」

 

 富山が9mm機関拳銃と予備弾倉を投げ渡していく。鯖江は受け取ると、閉じた状態のボルトを開くために、力一杯チャージングハンドルを引いた。

 

 豊川と久居がおろおろする中、メンバーは9mm機関拳銃を、習志野はアメリカ製スライドアクション式散弾銃・レミントン M870 MCS ウィルソン・コンバットカスタムを構える。

 

「よし、行くぞ」

 

 鯖江が仕切る。面々は廊下の壁側に並びに、習志野がM870散弾銃を構える。

 

 習志野が引き金を引く。12ゲージ・ドアブリーチ弾がドアノブを破壊、素早く鯖江が扉を蹴り開け、中へと9mm機関拳銃を構えながら突入する。

 

「報告!」

 

「クリア!」

 

「クリア!」

 

「ルームクリア! 隣か!?」

 

 司令官室はもぬけの殻だった。となると、隣の寝室が怪しい。

 

「何て事だ、ドアブリーチ弾は1発しか持ってきてない」

 

 習志野が言う。しかし、そこで富山がポケットから何かを取り出した。

 

「富山士長、それは?」

 

「C4爆弾で作ったドア破壊器材だ。これならそこの扉を開けられる」

 

 そう言って、手のひらサイズの爆弾をドアノブの近くに貼り付ける。コードが巻き付けられており、使い捨ての発火装置が繋がっている。

 

「いつかに習った爆発物講習が、ここで役立つとはな」

 

 富山が呟く。鯖江は皆に、廊下へ出るように言い、富山に質問する。

 

「導火線の長さは?」

 

「7cm、7秒あれば吹っ飛ぶ計算だ」

 

 鯖江が部屋を出、富山は発火装置の安全ピンを抜く。輪っかを引っ張り、離すと大急いで部屋から飛び出る。

 

 そして、爆発した。

 

 素早く突入し、寝室を探す。

 

 すると、ベッドの上で土居内が体育座りして頭を垂れていた。

 

「おい、司令官!」

 

 富山が叫ぶ。しかし、土居内は反応しない。

 

「ちょっといいか?」

 

 習志野は富山にM870散弾銃を渡すと、土居内目掛け、回し蹴りを繰り出した。

 

「うわっ」

 

 土居内は急いでかわした。そして、そのままベッドから転げ落ちる。

 

「司令官、大丈夫ですか?」

 

 市ヶ谷が話し掛けると、土居内はぼそぼそと喋り出す。

 

「大丈夫じゃない……俺の所為で30もの部下が……部下が……!」

 

「司令官! 落ち着いてください!」

 

「落ち着いてられるか! 俺の所為で部下が死んだ! なのに戦争は終わらない! マグマ軍ってのは何だ!? 叩いても叩いても出てきやがる! もう……もう……」

 

 すると、市ヶ谷が土居内を抱きしめた。

 

 土居内の顔が、市ヶ谷の豊満なふくらみに埋もれ、富山と習志野が嫉妬の眼差しを向ける中、市ヶ谷は言う。

 

「前に言ってくれましたよね? 『仲間っていうのは信頼するものだ』って。どうしてあなた自身、それが出来てないんですか?」

 

 土居内は黙る。

 

「辛ければ、私達を頼ってください。私達も、司令官を信頼していますから」

 

 土居内は、市ヶ谷の胸の中で泣いた。




 しばらく投稿できず、申し訳ありません。素直に謝罪します、反省しております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。