りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す! 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
翌日、新発田駐屯地に大量のトレーラーがやってきた。荷台には10式戦車や90式戦車、99式155mm自走榴弾砲、FH-70 155mm榴弾砲、89式装甲戦闘車、87式自走高射機関砲が積まれている。
「新しい戦力、か……」
2階の自室の窓から見ていた鯖江が呟いた。
その頃、東北自動車道のあるサービスエリアに、1台のトラックが停車した。それは緑色で、6輪の大型トラックだった。
「ふぅー、ここまで長かったわい」
トラックの運転席から、1人の女性が降りてきた。やたらと露出が高い服、何故かある猫耳と尻尾、そして腰にはホルスターがぶら下げられ、中にはドットサイトとタクティカルライトの付いた9mm拳銃が収められている。
「さて、休憩がてら好物でも頂くかのう!」
その女性はそう言って、マグマ軍占領下で営業している食堂に入っていった。
「お前、本当に久居なのか?」
「はい、そうですよ! 司令官さん!」
赤ジャージの久居が敬礼する。土居内は目をこすり、幻でない事を確認した。そして、土居内は胸ポケットから十字架を取り出し、真っ青な顔で神に助けを求めた。
「あ、悪霊退散!」
「それ神道ですよ」
葵が突っ込み、大宮が解説する。
「そ、そんな……『これが戦争ってもんだ、軍曹!』が!?」
土居内が十字架を落とす。すると、久居が土居内の腕を掴んだ。
「司令官さん、私はちゃんと生き返ったんですよ」
「ひ、久居……」
ちなみに、その場にいた全員が険しい目つきだったが気にしてはいけない。
夕方、とあるサービスエリアから1台の大型トラックが出発し、土居内は先程届いた兵器を確認、そして新入者を会議室で全員に紹介した。
「この度、我が隊に配属になった、松本1曹だ」
セーターにミニスカと、明らかに自衛官っぽくない格好の少女が敬礼し、口を開く。
「松本 亜衣璃、第12旅団の第13普通科連隊からやってきた。よろしく、お願いします……」
「彼女はスナイパーだ。鯖江や俺のようにマークスマン(選抜射手)ではないから、共に戦う事は少ないだろうが、万が一の事があれば、彼女が背中を守ってくれるだろう」
皆拍手をし、松本を歓迎した。
そして土居内は、とある部屋に向かった。
そこには、あの発電所にいた女性達が押し込まれていた。
「ホンット有り得ない! いきなりこんな所に押し込めるなんて!」
扉を開けるなり、ツインテールの女子高生が土居内に向かって叫んだ。
土居内は耳を両手で塞ぎながら言い返す。
「悪いが、あんたらは自由が無い。その上防衛省から色々言われてな、まぁ戦力不足の我が隊には嬉しいが」
「はぁ? まさか、私達の事をこき使う気?」
「端的に言えばな」
「冗談じゃない。私達にだって人権はある」
「じゃ、自分の名前が言えるのか?」
「っ………!?」
「名前が無ければ、人権の保証は無い。さて、どうする?」
ツインテールの少女は、土居内を睨みながら固まる。すると、ポニーテールの女子高生が彼女の肩を叩き、小声で囁く。
(この場合、あの人の下で働くしか無いよ……断れば何されるか分からないもん……)
(でも!)
(嫌なら嫌で、後で殺せばいいよ……)
ツインテールはしぶしぶ頷く。
「よし、決まりだな。来い、まず紹介しておかなければならない物がある」
土居内は部屋を出る。残りはその後についていった。
その頃、松本は愛銃であるアメリカ製ボルトアクション式狙撃銃・レミントン M24 SWSを手に屋外射撃場に向かった。
すでに何人かが小銃で訓練している。本来、屋外射撃場は滅多に使わないのだが、今は戦時、例外的に使用が認められていた。
バイポッドを広げ、M24 SWS対人狙撃銃を地面に置くと、左手で持ってきた弾薬箱を開けて7.62mmNATO弾を数発取り出す。M24 SWS対人狙撃銃のボルトハンドルを引き切り、弾倉へ5発の7.62mmNATO弾を押し込む。ボルトハンドルを押して薬室を閉鎖、スコープのレンズを保護するバトラーキャップを跳ね上げて地面に伏せて構える。ボルト周りにあるセレクターを右親指で押して安全装置を解除、スコープを覗いて狙いを定める。
スコープの照準は400mに設定している。人型の的までの距離は目測で270m、若干下を狙う。
松本は呼吸を落ち着かせ、全身で風を感じる。左から秒速6m、狙いをずらし引き金に右人差し指を掛ける。
心臓の鼓動で狙いが上下にゆっくり揺れる。呼吸を止めても抑えられない揺れだ。揺れた瞬間、狙いが重なるのを見計らって引き金を引き絞った。
強力な反動、松本の華奢な体つきでかろうじて抑えられる衝撃を生み出しながら、弾丸は飛んでいく。
見事、弾丸は的のど真ん中を貫いた。松本は素早くボルトハンドルを引いて排莢、次弾を用意する。
「ふむ、さすがスナイパーだな」
振り返ると、そこにはスコープ付64式小銃を手にした鯖江がいた。
松本はM24 SWS対人狙撃銃の安全装置を動かし、質問する。
「……貴女は、鯖江3曹でしたっけ?」
「うん、鯖江 静香、元施設科のマークスマン(選抜射手)だよ、1曹」
「施設科出身のマークスマン?」
「さっき会ったあの男性自衛官、土居内3尉、私達は司令官と呼んでるけど、彼も機甲科生まれだ」
松本にとって違和感しかなかった。マークスマン、自衛隊では選抜射手と呼ばれる職種は、いわばスナイパーのような選ばれた人間しかなれない。スナイパーは専用の銃で敵の指揮官や高価なレーダーを狙撃し、敵に心理的影響を強く与えるのに対し、マークスマンはスコープ付の自動小銃で味方の行動を支援する。
任務としてはスナイパー程高度な技能は必要ないが、それでも小銃小隊の中では一番の腕がいる。それなのに、施設科(戦闘工兵)出身でマークスマンはかなりの実力があるのだろう。
松本はそう考える。そして、口を開く。
「鯖江3曹、私と御手合わせお願いします」
「え、私と? スナイパーとマークスマンとでは、かなり実力差があると思うけど……」
「それでも」
松本の真っ直ぐな瞳に、鯖江は折れた。64式小銃のチャージングハンドルを引きながら言う。
「分かった。5発勝負だ」
「ありがとう、よろしくお願いします」
松本と鯖江は銃を片手に、左手で握手をした。
「嘘……」
土居内に連れられ、女性達は中央混成連隊の車両庫に来ていた。そこには、先程届いた兵器が並んでいた。
「修理は済んだが、何故かエンジンが始動しなくてな、手を焼いている。そこで、君達にこれを動かしてもらいたい」
土居内は言う。ツインテールが87式自走高射機関砲の車体に触れると、ディーゼルエンジンがかかった。
「それで、私達をこき使うの?」
ツインテールが質問する。
「ああそうだ。俺達中央混成連隊は、敵陣へ特攻するのが仕事だ。戦いには困らないぞ」
すると、緑色のスーツを来たアラサー(ぽい)女性が答える。
「面白そうじゃない。私、乗った」
全員が驚く。土居内が喜んだ。
「そうか、そいつは嬉しい。よろしく」
「私の事、タイガーなりFVと呼びなさい。VIPカーと呼んだら、容赦しないわよ?」
「……恐ろしや」
中央混成連隊、戦力増強計画始動。現在の戦力は、戦車3両、ヘリコプター2機、火砲2門、自走高射機関砲1門、装甲車3両、普通科隊員10人。