りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す! 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
夕方、土居内達は新発田駐屯地に帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま」
車両庫前で、霧本と遭遇した。手には大量の洗濯物。
「何だそれ?」
「今日の訓練で、皆泥まみれになったの」
「ふうん」
「あ、これ盗んだりしないでよ」
「誰がするか」
土居内は第1兵舎に入った。そのまま男湯へ直行し、体を洗った。
風呂から出て、寝室で土居内は制服からいつもの迷彩服に着替える。その後に鯖江が司令官室に入ってきた。
「司令官、今日の報告書」
「おう。悪いな、お前より上の階級がいるのに」
「世の中階級が全てじゃないし、私は構わないよ」
「そっか」
土居内は鯖江から報告書を受け取り、それを精査する。その間に鯖江が出ていく。
やがて1800時に近付く。鯖江が書いた報告書をデスクに置き、土居内は司令官室から出る。
食堂目指して歩くと、途中会議室が目に留まった。使っていないのに電気が灯っている。
(全く、誰か消し忘れたな)
土居内は会議室へと入る。すると、富山がテーブルに突っ伏して寝ていた。
「……起こすか否か」
土居内は呟く。すると、富山が寝言を言う。
「……令官、行かないで……」
(俺の事か? まさか)
とりあえず土居内は富山を起こす事にした。
「おい起きろ。ここは仮眠室じゃないんだぞ」
富山の肩を揺さぶる。が、起きない。
(にしても、綺麗な足だな。本当に自衛官か?)
そんな事を思いながら肩を揺さぶる。そして、ようやく富山が起きた。
「……ん?」
「やっと起きたか。もう1805だし、寝るんだったら自分の部屋で寝ろ」
そしてようやく富山は事態を理解する。
「な、何してんだよ!」
「は?」
「ど、どうせここで起きなかったら襲うつもりだったんだろ!?」
「何でそんな話になるんだ。そんな事すれば市ヶ谷とか習志野とか鯖江にぶっ殺されるわ。だいたい、襲うつもりだったら起こさねーよ」
しかし富山は警戒したままだった。
土居内は津田沼の言葉を噛み締める。
(女性自衛官は扱いづらい、か……)
そして口を開く。
「そんなに俺が嫌なら、後ろ弾(味方に誤って撃たれる事、もしくは味方をわざと撃つ事)してみろよ」
それを聞き、富山は咄嗟に太もものホルスターに手が伸び、9mm拳銃のグリップを握る。が抜く所でためらった。
「――ああもう! ホントに大っ嫌い!」
富山はそう叫び、会議室を出ていく。
土居内は会議室の照明を消し、廊下へと出た。すると、廊下に松本が立っていた。
「……聞こえたか?」
「だいたい」
土居内は頭を掻く。
「……喧嘩は良くない」
「分かってる。だが、相手が嫌ってるのに仲良くするのは難しい」
すると、松本は土居内の首を掴んで顔を近付けた。
「おい松も――」
土居内の唇を、松本は右人差し指で抑える。
「それは貴方が彼女と向き合ってない証拠。スナイパーなら周囲の観察を怠らない、それがセオリー」
「俺はスナイパーではなく、指揮官兼マークスマンだ」
「指揮官なら尚更。部下の命を預かる者として部下のメンタルを観察する必要がある。私は、今何を考えているのかまで分かる。貴方もそれが必要」
松本の言う事は正しかった。土居内は何も言い返せない。
やがて松本は離れ、食堂へと歩き出す。土居内はただ呆然としていた。
土居内は食堂に向かった。中には中央混成連隊と、同居する普通科中隊の隊員しかいなかった。
土居内は食事が盛られたトレーを手に、空いていた所に座った。すると、隣に白い制服を着た少女がやってきた。
「隣、いいですか?」
「構わんよ」
少女が座る。土居内は両手を合わせてから箸を取る。そして茶碗を手に取って口を開いた。
「確か、ヒトマルだっけか?」
「はい、そうです」
少女は答える。彼女は10式戦車の妖精だった。
その頃、航空自衛隊のRF-4EJ戦術偵察機は愛知県上空を飛行していた。既に地面は漆黒に染まり、機体は夕日を浴びて輝く。2基のGE-J79ターボジェットエンジンが正常な黒煙を曳く。
「下はもう日没か」
「だが、灯りらしき物は一切無い。まるで街全体が死んでしまったようだ」
パイロットとフライトオフィサが会話する。眼下の街並みには一切灯りが灯ってない。
胴体下のTAC(戦術偵察)ポッドの赤外線カメラはばっちりと街並みを録画する。フライトオフィサはその映像を見る。
「マグマ軍は息を殺して隠れている。戦車や装甲車に一切擬装をしていないがな」
「一般市民はいないのか?」
「この高度からは分からん。そろそろビンゴ・ヒューエル(最低燃料残量、帰投に必要な燃料の量しか残ってない事)だ、情報はもう充分だ」
「ラジャー、ブーメラン07、コンプリート・ミッション、RTB(帰投する)。ETA(到着予想時刻)1920」
茶色と緑色の緑地迷彩のRF-4EJ戦術偵察機が左へ旋回、小松基地へと向かう。
その後、2人はほとんど会話を交わさず食事をした。
土居内はトレーを手に立ち上がり、食器を片付ける。
そのまま司令官室へと戻る。ガンラックに掛かったM16 A1自動小銃を手に取り、ブルーシートを広げて分解を始める。
そこへ、ナナヨンが司令官室に入ってきた。
「司令官?」
「ナナヨンか。どうした?」
ナナヨンは何も言わず、ただソファに腰掛けた。
「ナナヨン?」
分解する手を止め、床に座る土居内はナナヨンを見上げる。
「私、この戦争が終わったらどうなるのかな……」
ナナヨンが呟く。土居内は何も言えない。
「それに、ずっと生きていられるとも限らないし――」
すると、土居内は口を開いた。
「何未来の事語ってるんだよ。そんなの、『なるようになれ』としか言えねえよ。言っとくが、俺はもう部下を失いたくない。もう真っ平御免だ」
それを聞き、ナナヨンは小さく微笑んだ。
「貴方らしい言葉ね」
「ま、この戦争が終わってもお前が生きていたら、上と掛け合って戸籍を作ってもらうよ」
ナナヨンは立ち上がり、こう言った。
「貴方と話せて良かった。不安が吹っ切れた気がするわ」
「そうか。早く寝とけよ」
「分かってるわよ」
ナナヨンが司令官室を出ていく。土居内はM16 A1自動小銃の分解を続け、終わらせた。
気付けば、2054時だった。消灯ラッパが鳴るのは2100時だから、あと少しだ。
土居内は寝室のベッドを整え、迷彩服からジャージに着替える。そしてベッドに飛び込んだ。