りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す!   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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21話 二日前

 夕方、土居内達は新発田駐屯地に帰ってきた。

 

「おかえり」

 

「ただいま」

 

 車両庫前で、霧本と遭遇した。手には大量の洗濯物。

 

「何だそれ?」

 

「今日の訓練で、皆泥まみれになったの」

 

「ふうん」

 

「あ、これ盗んだりしないでよ」

 

「誰がするか」

 

 土居内は第1兵舎に入った。そのまま男湯へ直行し、体を洗った。

 

 

 

 風呂から出て、寝室で土居内は制服からいつもの迷彩服に着替える。その後に鯖江が司令官室に入ってきた。

 

「司令官、今日の報告書」

 

「おう。悪いな、お前より上の階級がいるのに」

 

「世の中階級が全てじゃないし、私は構わないよ」

 

「そっか」

 

 土居内は鯖江から報告書を受け取り、それを精査する。その間に鯖江が出ていく。

 

 

 

 やがて1800時に近付く。鯖江が書いた報告書をデスクに置き、土居内は司令官室から出る。

 

 食堂目指して歩くと、途中会議室が目に留まった。使っていないのに電気が灯っている。

 

(全く、誰か消し忘れたな)

 

 土居内は会議室へと入る。すると、富山がテーブルに突っ伏して寝ていた。

 

「……起こすか否か」

 

 土居内は呟く。すると、富山が寝言を言う。

 

「……令官、行かないで……」

 

(俺の事か? まさか)

 

 とりあえず土居内は富山を起こす事にした。

 

「おい起きろ。ここは仮眠室じゃないんだぞ」

 

 富山の肩を揺さぶる。が、起きない。

 

(にしても、綺麗な足だな。本当に自衛官か?)

 

 そんな事を思いながら肩を揺さぶる。そして、ようやく富山が起きた。

 

「……ん?」

 

「やっと起きたか。もう1805だし、寝るんだったら自分の部屋で寝ろ」

 

 そしてようやく富山は事態を理解する。

 

「な、何してんだよ!」

 

「は?」

 

「ど、どうせここで起きなかったら襲うつもりだったんだろ!?」

 

「何でそんな話になるんだ。そんな事すれば市ヶ谷とか習志野とか鯖江にぶっ殺されるわ。だいたい、襲うつもりだったら起こさねーよ」

 

 しかし富山は警戒したままだった。

 

 土居内は津田沼の言葉を噛み締める。

 

(女性自衛官は扱いづらい、か……)

 

 そして口を開く。

 

「そんなに俺が嫌なら、後ろ弾(味方に誤って撃たれる事、もしくは味方をわざと撃つ事)してみろよ」

 

 それを聞き、富山は咄嗟に太もものホルスターに手が伸び、9mm拳銃のグリップを握る。が抜く所でためらった。

 

「――ああもう! ホントに大っ嫌い!」

 

 富山はそう叫び、会議室を出ていく。

 

 土居内は会議室の照明を消し、廊下へと出た。すると、廊下に松本が立っていた。

 

「……聞こえたか?」

 

「だいたい」

 

 土居内は頭を掻く。

 

「……喧嘩は良くない」

 

「分かってる。だが、相手が嫌ってるのに仲良くするのは難しい」

 

 すると、松本は土居内の首を掴んで顔を近付けた。

 

「おい松も――」

 

 土居内の唇を、松本は右人差し指で抑える。

 

「それは貴方が彼女と向き合ってない証拠。スナイパーなら周囲の観察を怠らない、それがセオリー」

 

「俺はスナイパーではなく、指揮官兼マークスマンだ」

 

「指揮官なら尚更。部下の命を預かる者として部下のメンタルを観察する必要がある。私は、今何を考えているのかまで分かる。貴方もそれが必要」

 

 松本の言う事は正しかった。土居内は何も言い返せない。

 

 やがて松本は離れ、食堂へと歩き出す。土居内はただ呆然としていた。

 

 

 

 土居内は食堂に向かった。中には中央混成連隊と、同居する普通科中隊の隊員しかいなかった。

 

 土居内は食事が盛られたトレーを手に、空いていた所に座った。すると、隣に白い制服を着た少女がやってきた。

 

「隣、いいですか?」

 

「構わんよ」

 

 少女が座る。土居内は両手を合わせてから箸を取る。そして茶碗を手に取って口を開いた。

 

「確か、ヒトマルだっけか?」

 

「はい、そうです」

 

 少女は答える。彼女は10式戦車の妖精だった。

 

 

 

 その頃、航空自衛隊のRF-4EJ戦術偵察機は愛知県上空を飛行していた。既に地面は漆黒に染まり、機体は夕日を浴びて輝く。2基のGE-J79ターボジェットエンジンが正常な黒煙を曳く。

 

「下はもう日没か」

 

「だが、灯りらしき物は一切無い。まるで街全体が死んでしまったようだ」

 

 パイロットとフライトオフィサが会話する。眼下の街並みには一切灯りが灯ってない。

 

 胴体下のTAC(戦術偵察)ポッドの赤外線カメラはばっちりと街並みを録画する。フライトオフィサはその映像を見る。

 

「マグマ軍は息を殺して隠れている。戦車や装甲車に一切擬装をしていないがな」

 

「一般市民はいないのか?」

 

「この高度からは分からん。そろそろビンゴ・ヒューエル(最低燃料残量、帰投に必要な燃料の量しか残ってない事)だ、情報はもう充分だ」

 

「ラジャー、ブーメラン07、コンプリート・ミッション、RTB(帰投する)。ETA(到着予想時刻)1920」

 

 茶色と緑色の緑地迷彩のRF-4EJ戦術偵察機が左へ旋回、小松基地へと向かう。

 

 

 

 その後、2人はほとんど会話を交わさず食事をした。

 

 土居内はトレーを手に立ち上がり、食器を片付ける。

 

 そのまま司令官室へと戻る。ガンラックに掛かったM16 A1自動小銃を手に取り、ブルーシートを広げて分解を始める。

 

 そこへ、ナナヨンが司令官室に入ってきた。

 

「司令官?」

 

「ナナヨンか。どうした?」

 

 ナナヨンは何も言わず、ただソファに腰掛けた。

 

「ナナヨン?」

 

 分解する手を止め、床に座る土居内はナナヨンを見上げる。

 

「私、この戦争が終わったらどうなるのかな……」

 

 ナナヨンが呟く。土居内は何も言えない。

 

「それに、ずっと生きていられるとも限らないし――」

 

 すると、土居内は口を開いた。

 

「何未来の事語ってるんだよ。そんなの、『なるようになれ』としか言えねえよ。言っとくが、俺はもう部下を失いたくない。もう真っ平御免だ」

 

 それを聞き、ナナヨンは小さく微笑んだ。

 

「貴方らしい言葉ね」

 

「ま、この戦争が終わってもお前が生きていたら、上と掛け合って戸籍を作ってもらうよ」

 

 ナナヨンは立ち上がり、こう言った。

 

「貴方と話せて良かった。不安が吹っ切れた気がするわ」

 

「そうか。早く寝とけよ」

 

「分かってるわよ」

 

 ナナヨンが司令官室を出ていく。土居内はM16 A1自動小銃の分解を続け、終わらせた。

 

 

 

 気付けば、2054時だった。消灯ラッパが鳴るのは2100時だから、あと少しだ。

 

 土居内は寝室のベッドを整え、迷彩服からジャージに着替える。そしてベッドに飛び込んだ。

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