りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す!   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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23話 前日 その2

 新発田駐屯地・食堂にて――

 

「はぁぁ……」

 

 席に着いた霧本が溜め息をつく。風呂上がりの新発田が訊く。

 

「どうしたんですか?」

 

「いやね、何か元カノがこうしてずっといるのはあいつにとって邪魔なのかなぁって」

 

 新発田は黙る。

 

「今はこうして保護されてるけど、元カノがずっといると、恋愛しづらいと思うのよ」

 

「司令官は、私達に恋愛感情が無いと思いますけど……」

 

「案外そうじゃないかもしれない。いや、そうじゃなくて、何というか、しがらみというか……」

 

「そんなので除け者にするほど酷な人じゃないですよ。所で、立ち入った話ですけど、別れた理由訊いてもいいですか?」

 

 霧本は天井を見上げ、しばらく黙ると、新発田を見て口を開く。

 

「私の方から振ったんだけどね。防大なんて入ったら、遠距離恋愛どころじゃないでしょというは表向き。本心としては、危ない目に遭ってほしくなかったの。『私と別れたくなければ自衛隊に行くな!』って脅しだったんだけど、あいつには通じなかった。ましてや、こう言ったのよ、『誰かが汚れ仕事をしなくちゃいけないんだ。例え血にまみれてようと、人を守る仕事だ。誰かを守るなら、誰かが犠牲にならなきゃいけない』ってね。当然私も言い返して、『何であんたが犠牲にならなきゃならないの?』、すると『人を守るのは名誉な事、なのに自衛隊に入るのは不名誉な事、誰が決めたんだ? 日夜人を守るために心身すり減らしてるのに、どうして誰も褒めないんだ? それすら感じないなんて、マスコミに洗脳されてるよ。俺は、地元が好きだ、それに好きな人がいる、でも今の日本はとても危ない状態だ。それに気付かないのはおかしい、なら皆が気付かないように平和を守るしかないんだよ。だから俺は自衛隊で、お前や他の皆を守る。お前が別れたいというなら、俺は嫌だがそれでいい。お前を陰で守ってやる』と言い切ったの。それで別れた」

 

「そんな理由が……」

 

 新発田は驚いていた。

 

 

 

 土居内は男湯でくしゃみをする。

 

「誰だ、俺の話をしてるのは……」

 

 その横には、風呂の中で体育座りする富山の姿があった。

 

「でだ、富山」

 

 土居内は富山に背中を向けながら言う。

 

「どうして男湯にいる?」

 

「……」

 

 富山は何も語らない。やがて、か細い声を放つ。

 

「だって……官と仲な……したいから……」

 

 随分途切れ途切れだったが、土居内は意味を汲み取った。

 

「俺と仲直り? お前、俺の事嫌いなのに?」

 

 すると、富山は激しい水音を出しながら反論した。

 

「それは司令官の思い込みだ!」

 

「思い込み? 今までだってずっと俺に怒鳴ってきていたのに!?」

 

「違う! それは……」

 

 富山が突然黙る。土居内が振り返ると、頬を真っ赤にした富山が土居内を睨んでいた。

 

「何が違うんだ?」

 

 土居内は、冷酷に訊く。

 

「何というか、その……何かわざと逆の反応をしちまうというか、いやわざとじゃなくて……」

 

「あ?」

 

「鈍い奴だな! 何つーか、司令官の事が好きなんだよ!」

 

 今度は土居内が黙った。

 

 

 

 その頃、車両庫では――

 

「ナナヨンさん、何してるんですか?」

 

 市ヶ谷が、74式戦車の車長用キューポラで寝ていたナナヨンに呼び掛ける。

 

「ああ、ちょっとね。ここにいると、何故か安心しちゃって」

 

「安心、ですか……?」

 

「やっぱり、これは私の一部なんだなって。いや、この74式戦車の方が本体で、私はおまけかもしれない」

 

 市ヶ谷は黙っている。

 

「市ヶ谷さん、さっきの話は忘れて。何か、暗い話をしてごめんなさいね」

 

「あ、いえいえ。それと、ちゃんと自分の部屋で寝てくださいよ? 風邪をひきますから」

 

「分かってるわ。と、そろそろ夕食の時間ね」

 

 そう言われ、市ヶ谷は腕時計を見る。確かに、今は1754時だ。

 

「じゃあ、一緒に行きましょう?」

 

 市ヶ谷がナナヨンを誘う。ナナヨンは74式戦車から降りてから返事をした。

 

「そうね。行きましょう」

 

 

 

「富山、本当なのか?」

 

「こんな状況で嘘言える訳ねーだろ!? つか、恥ずい事思い出させんな!」

 

 まだ二人は男湯にいた。

 

「てゆーか、いい加減それを隠せよ!」

 

 富山が土居内の股間を指差す。慌てて土居内は浴槽に浸かった。そして言う。

 

「お前も胸を隠せ!」

 

「な、何あたしの胸見てんだよ!」

 

「不可抗力だ! さっさと隠せ!」

 

 富山は頬を怒りと恥ずかしさで赤らめながら湯船に浸かる。

 

「でだ、富山」

 

 突然、土居内の口調が真面目になった。富山は息を飲み、次の言葉を待つ。

 

「さっきの話だが、すまん」

 

「え? 『すまん』って何だよ? あれか、その……」

 

「悪いが、お前とは付き合えない」

 

 富山は、頭をガツンと殴られた気がした。

 

「はぁ? 何でだよ? ガサツだから? 乙女っぽくないから? 胸が小さいから?」

 

「いや、俺は部下をそんな風に見れないんだ。それに、俺のようなちっとも優しくない男よりもいい奴はいっぱいいる。だから――」

 

 すると、富山は土居内を勢い良くぶん殴った。土居内は湯船に溺れ、富山は上がる。

 

「全く、恥掻いて損した!」

 

 富山は叫び、体を拭いてから更衣室に出た。

 

 

 

 新発田駐屯地・食堂にて――

 

「佳樹、どうしたの? その頬」

 

 霧本が訊いてくる。土居内は味噌汁を飲んで答える。

 

「さっき風呂で滑って転んだ」

 

「それで、誰かに殴られたような打撲痕になるの?」

 

 土居内はむせた。

 

「何でそういう言い方するんだ?」

 

「あれ? 図星だった? 誰に殴られたの?」

 

 土居内は黙る。何があったのか言うと、たちまち噂が隊内で広まり、司令官室に110mm対戦車弾が撃ち込まれかねないからだ。

 

「ノーコメントだ」

 

「あっそ、つれないなぁ」

 

 土居内は夕食を食べ終え、立ち上がる。

 

「あれ!? もう!?」

 

 霧本が驚いた。

 

「何驚いてんだ。自衛官はこんくらいで食うぞ、それに明日はこの隊初めての大規模作戦だ、少しでも早く寝たいんだ」

 

 すると霧本が立ち上がり、土居内の手からトレーを奪い取った。

 

「そっか。後片付けは私がやっとくよ、おやすみ」

 

「おう、おやすみ」

 

 

 

 愛知県・長野県南部解放作戦まで、あと11時間――




投稿遅れましたー! 素直にごめんなさい!

そして、これからの投稿速度はかなり遅くなります!(受験生なので)
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