りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す! 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
ハロウィンが終わって、翌朝――
「こんないい物、私が使っていいのかしら?」
「ああ。圧倒的に対戦車火力が足りないから、一人でも多くT-80を倒せる隊員を増やさないと」
修理工場で、74式戦車の戦車砲が交換されていた。それを、土居内とナナヨンが見届ける。
「試製135mm滑腔戦車砲、技研(防衛技術研究所)の新兵器だ」
74式戦車に搭載されているのは、105mmライフル戦車砲L7 A1だが、これでは重戦車80號を倒す事が出来ないという事が判明している。そこで、実戦テスト用として渡された試製135mm滑腔戦車砲に換装して74式戦車の対戦車火力を底上げしようとしているのだ。
さらに、74式戦車は様々な改造が行われた。防御力を上げるため、砲塔と車体に新素材複合装甲、キャタピラに鉄製のサイドスカートを被せた。これに伴う重量増加を補い、かつ戦術機動性を上げるためにエンジンとトランスミッションを10式戦車の物へ換装した。
「何だか、面影が無いわ」
完成した74式戦車(改)は、74式戦車らしからぬ見た目をしていた。
「ま、勝つための手段だ。仕方ないが、不満でも?」
「ええ、形が不格好だわ」
確かに、新素材複合装甲を貼り付けた砲塔は、特徴的な丸みを残さず、角張っていた。
「何とも出来ないな。許せ、ナナヨン」
「勝つためなら、仕方ないけど」
この他にも、改造された兵器がある。
AH-1S攻撃ヘリはパワーパックを交換して出力を高め、30mm機関砲M230とヘルファイア対戦車ミサイルを搭載した。
87式自走高射機関砲は、パワーパックを10式戦車の物にし、機関砲の上に91式携行地対空誘導弾(携SAM)の二連装ランチャーを合計2基、そして93式近距離地対空誘導弾(近SAM)の照準装置を搭載した。
90式戦車は新素材複合装甲をやはり貼り付け、120mm滑腔戦車砲L44を10式戦車と同じ、新120mm滑腔戦車砲へと換装した。
そして、土居内が前々から欲しがっていた96式装輪装甲車がようやく配備された。ブローニング M2重機関銃搭載型、96式自動擲弾銃搭載型、20mmガトリング砲M197(AH-1S攻撃ヘリに積んでいた物)搭載型、中距離多目的誘導弾搭載型の4台だった。
さらに、軽装甲機動車も増やされた。今までは2台の車両を、搭載武装を取り替えて運用していたが、対戦車ミサイルという重量物はそう簡単に取り替えられないため、新たに79式対船艇対戦車誘導弾(重MAT)搭載型と中距離多目的誘導弾搭載型が配備された。
そして、素早い部隊展開のためにCH-47JA輸送ヘリとUH-60JA汎用ヘリ、UH-1J汎用ヘリが2機ずつ支給された。CH-47JA輸送ヘリとUH-60JA汎用ヘリはブローニング M2重機関銃のみだが、UH-1J汎用ヘリはブローニング M2重機関銃、70mmロケット弾ポッド、01式軽対戦車誘導弾(軽MAT)を搭載している。
「お陰で、それなりに戦える部隊になれたが……」
「今度は補給面での心配が生まれましたね……」
司令官室で、土居内と市ヶ谷が頭を抱える。今度は兵站(主に燃料)の問題が発生したのだ。
「燃料だけじゃねぇ。対空火力も足りない」
「一応、必要数のMANPADS(91式携行地対空誘導弾)は配備されていますが……」
「携SAMじゃ、小隊規模の防空戦力程度だ。自走高射機関砲をあと1台、それから短SAM(81式短距離地対空誘導弾)で、ようやく中隊規模の防空戦力を得られる」
土居内はソファから立ち上がり、市ヶ谷を見る。
「その辺は上と掛け合って見るよ。休暇中に悪かったな」
「いえ、構いません。私は、司令官を補佐する副官ですから」
新発田駐屯地・第1兵舎 2階――
「……」
習志野は、自室で黙々とUSP自動拳銃をメンテナンスしていた。マウントベースを介してタクティカルライトとホロサイトが取り付けられ、銃口にはサウンドサプレッサーを取り付けるためのネジが切ってある。
コンコン
「誰だ?」
ノック音、そして久居が入ってきた。
「習志野1曹、いいですか?」
「構わない」
習志野はUSP自動拳銃をベッドに置き、床に座る。絨毯が敷き詰められた部屋に、靴を脱いだ久居が上がり、正座する。
「で、何の用だ?」
「はい、私、習志野1曹みたいに強くなりたいんです」
習志野は一瞬驚く。
「……強くなりたい、でも私は――」
「充分強いです。元SFGP(特殊作戦群)なのですよね?」
「それは特殊部隊を勘違いしている。確かに体力は上だろうし、作戦内容は文字通り特殊だ。だが、元カリフォルニア州知事が演じた某大佐や、ベトナム帰りの乱暴者のような者はいない。実際にはもっと地味だ。例えば、ソマリアPKOを扱ったドキュメンタリー映画や、イラク戦争に参加した元ネイビーシールズ(米海軍特殊部隊)の自伝とかが、今の特殊部隊をよく表現している」
「いないんですか? 某大佐のような人」
「いたら大変だ。それに、今は『特殊部隊の一般部隊化、一般部隊の特殊部隊化』と言われている」
「……?」
久居は首を傾げる。
「どういう意味ですか?」
「今の時代、何処の部隊も市街地戦や対テロ・ゲリラ戦を行うが、一昔前はそういうのは特殊部隊の役目だった。歩兵には塹壕に籠もって敵を迎え撃つ事だけが求められた、が――」
「そっか、イラク戦争では一般部隊も動員せざるを得なかったんですね?」
「そう。街が多く、敵も多いために特殊部隊が足りなくなった。だから一般部隊を投入した。結果、特殊部隊と一般部隊の違いが減ったんだ」
「そんな事が――」
「だから、久居士長、私とあなたは能力の差はあまり無いと思う。あなたはカール君(84mm無反動砲)を扱えるが、私は使った事が無い。ずっとライフルマン(小銃兵)だったからだ。強くなりたいのなら、自分が得意な事を作るんだ。欠点は、仲間が補ってくれる、それが小隊だ」
「ありがとうございます、習志野1曹」
久居は深々と頭を下げ、礼を言った。そして立ち上がり、スカートを正す。
「まあ、教えて貰いたい事があったら言ってくれ。近接戦なら教えられる」
「はい! 習志野1曹」
土居内は、久々の休日を漫画や雑誌を読んで過ごしていた。
「……1つ訊いていいか?」
「はい、いいですよ」
「何でここにいる?」
土居内はデスクに座り、山のように積んだ漫画や雑誌を読んでいたが、ソファにはファッション誌を読む市ヶ谷がいた。
「いてはいけませんでしたか?」
「いや、構わないんだが、何でここにいるのか気になって」
「……秘密です」
「そうか」
土居内は漫画に目を落とす。異世界ファンタジー物で、主人公達が64式小銃やMINIMI機関銃でドラゴンと戦っているシーンだった。
そして土居内は気付かなかった、市ヶ谷が頬をファッション誌で隠しているのを。
秋のうららかな昼だった。
新発田駐屯地・屋外射撃場――
「……外した」
「いや、当たってるでしょ?」
ブルーシートの上で伏せた松本が、M24 SWS対人狙撃銃のボルトハンドルを引く。隣には、同じく伏せた鯖江がスコープ付64式小銃を構えている。
「2cm左だった」
「的には当たってるけど? もしかして、亜衣璃は完璧主義者?」
「静香はルーズ過ぎる。今は200mで2cm左でも、600mなら6cm、かなり大きくなる。心臓を狙っても当たらない」
鯖江は黙る。松本はM24 SWS対人狙撃銃のボルトハンドルを押し、口を開く。
「次は静香の番」
「分かってる」
鯖江は64式小銃を構え直す。しっかりストックを肩につけ、ストックに巻き付けられたチークピースに頬を付ける。左手でストックの付け根を握り締める。64式小銃は、既にバイポッドを広げて地面に置いてある。
短く息を吸い、呼吸を整える。銃のブレが収まった所で引き金を引いた。
「こちらジェリー・アロウ。作戦空域に達した」
〔ハニーポッド・コントロール、了解。これより無線封鎖を行う。グッドラック〕
「ジェリー・アロウ、了解」
陸上自衛隊のAH-64D戦闘ヘリが飛んでいた。短翼には、70mmロケット弾ポッド、増槽、スティンガー FIM-92携帯地対空ミサイル二連装ランチャーが付いている。
眼下には、マグマ軍が作った集団農場が広がっている。日本の大部分を占領統治したマグマ軍は、捕まえた日本国民の大半を集団農場で奴隷として使っていた。
「酷い。マグマ軍は、やっぱり畜生だ」
「……こんなの見たくない」
AH-64D戦闘ヘリのコクピットには、二人の女性が座っていた。しかし、ヘルメットのバイザーは下ろされていて顔は見えない。
眼下では、近衛兵の指示で歩兵が労働者を鞭打っていた。反抗的な者は、遠慮なくAN94自動小銃で粛正される。
「レーダーに反応! ヘリコプターが2機、こっちに近付いてる!」
ローター上のロングボウ・レーダーにヘリコプターが映る。IFF(敵味方識別装置)は「不明」と表示する。
「敵だ! 柚子、スティンガーを!」
「わ、分かった!」
スティンガー兵装システム起動、接近する敵ヘリコプターを正面に捉え、ロックオン。
「グッドトーン、ファイア!」
左短翼からスティンガー対空ミサイルが飛んでいく。そして敵ヘリコプター――Mi-24攻撃ヘリ ハインド――に命中した。
「当たった!」
「喜んでられないわ! ロックオンされた!」
機体の受動警戒装置が鳴る。AH-64D戦闘ヘリは、テールシャフトからチャフを撒いた。
そして、森の中から対空ミサイルが飛んでくる。
「擬装してたのか!?」
ミサイルは、チャフにはお構い無しとAH-64D戦闘ヘリに近付く。
そして、命中した。