りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す! 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
「ふははは! 休日だ! レッツ・バケーション!」
休日2日目、文法的間違いのある英文を叫びながら、練馬はカーペットに寝転ぶ。そしてリモコンをテレビに向け、電源を入れた。
部屋の壁にはアニメ等のポスターが貼られ、それ以外の壁を本棚が隠している。その本棚には、大量の漫画やフィギュアが仕舞われている。
「結歌、赴任早々これって……」
部屋に訪れていた朝霞が困惑する。
「いいじゃん、私の部屋なんだし」
「だいたい、あんたには自衛官としての自覚が――」
「これでも読む?」
「話聞いてるの!?」
ベッドに腰掛けていた朝霞に、練馬がとある薄い本を差し出す。そしてカーペットの上であぐらをかき、アニメを見始める。
朝霞は訝しみながら薄い本を開く。そして閉じて立ち上がった。
「没収! こんな卑猥な本は没収!」
「しまった布教用と間違えた、待って美月~、それは貴重な資料~」
「何処が!? こんなの猥褻罪よ!」
朝霞は薄い本を手に部屋を出ていく。練馬が朝霞にしがみつくと、蹴り飛ばされた。
「司令官、お出掛けですか?」
「ああ。また津田沼陸将補に呼ばれて」
土居内はいつもの迷彩服で、作業帽を被った。ジャージ姿の市ヶ谷は、土居内に訊く。
「私も同行した方がいいですか?」
「いや、俺だけ来いだと」
「……そうですか、頑張ってください」
「おう、留守番よろしく」
土居内は高機動車で出発した。
「――どうしてここに!?」
守山が9mm拳銃をホルスターから抜き、それを鯖江と豊川が止める。その視線の先には、近衛兵がいた。
「私だって、好きでここにいる訳ではない。捕虜としてだ」
近衛兵が言う。守山の右腕が下がり、鯖江と豊川が胸を撫でる。
「そして司令官と契約を結び、共に闘う事にした」
「それは、裏切り行為では――」
葵の言葉を、近衛兵が遮る。
「どうせこのまま帰れば、かつての仲間に射殺される。ならば、ここで生きるまでだ」
すると、久居が手を挙げた。
「どうして日本語ぺらぺらなんですか? 他は良く分からない言葉を話しているのに」
「――まさか、日本に好きな人が!?」
皆がヒトマルを叩きながら、近衛兵が話す。
「まさか。日本は嫌いだ。周りの目を気にしまくり、何でも規格化し、流行に遅れまいと無駄金を使い、そして生物の本能を抑え込み、国防には目もくれない。だから我々に占領される。日本語を話せるのはな、我々近衛兵が通訳として作られたからだ」
「通訳?」
「そうだ。我々地底生物は、何万年も前から独自の進化を遂げてきた。文化や言語もだ。地中でも遠くまで届くよう、本来は超音波で会話する。が、空気中ではあまりにも届き過ぎる。だから人間にとっての一般的音域で会話をする。それは、人間の言語とは全く違う構造となっているために、人間の言葉を話せる声帯が必要で、それで我々近衛兵が生まれた」
皆黙る。すると、キューキューが手を挙げる。
「どうやって増えるの? マグマ軍はメスばっかりのイメージだけど、オスがいるの?」
「オスが生まれる事はある。が、全てその場で殺される」
「……じゃあ、同性生殖で生まれるの?」
「下っ端の歩兵は、繁殖期の生体から作られる卵子を埋めると勝手に生まれる。そこから、一部が改造されて近衛兵になる。他は、外部のオス――主に人間――を拉致して繁殖に使う」
全員が絶句した。そして、鯖江と豊川は思い出した。
「鯖江さん、市ヶ谷さんが捕らえられていたあの補給基地にたくさんあったあの死体は……」
「確かに、裸の男の死体がたくさんあったが――」
近衛兵が鯖江の言葉を遮った。
「そうだ、あれらは繁殖に使った『奴隷』の死体、云わば『絞りカス』だ」
それを聞き、豊川は思わず89式多用途銃剣を抜くが、鯖江が制止させる。
「……繁殖するのはどういう個体?」
ナナヨンが質問する。
「主に女王や幹部クラスだ。だが、戦果を上げた者には一度だけ交わる権利が与えられる。最も、戦線では構わず誰もがしていたが」
「女王や幹部……」
キューマルが呟いた。そこで新発田が恐る恐る質問する。
「どうして、私達に協力しようと判断したんですか?」
「簡単だ。あの男を番にし、マグマ軍を増やして自衛隊を内側から崩壊させる。そうすれば、祖国に帰った時に共産党経済会議の座につける。権力を手にする事が出来るのだ!」
満面の笑みで近衛兵が語った。
それを聞き、皆は溜め息をつきながら武器を手にする。9mm拳銃や9mm機関拳銃、MP7 A1短機関銃、M3 A1短機関銃、89式小銃 2型(折曲銃床仕様)の安全装置を外したり、スライドやチャージングハンドルを引く。
新発田駐屯地・第1兵舎 1階 休憩スペースに銃声が轟いた。
同じ頃、高機動車が金沢城跡に到着した。土居内は城内を歩き、例のテントを目指す。
「中央混成連隊、土居内3等陸尉です!」
「来たか、入れ」
中に入ると、津田沼陸将補と数人の情報分析官がいた。
「津田沼陸将補、何か用ですか?」
「ああ、そうだ。お前の報告書にあった『兵器の妖精』、巷では『武器娘』とか呼ばれているそうだが、一体何なんだ?」
「……それは私には分かりません。うちの生物兵器担当(大宮)に訊いても、普通の人間と何もかも同じ、だとか」
「本来なら、数人で動かす戦車や榴弾砲、それをたった1人で動かせられるなんて信じがたい」
「同感です。ただ、体の造りは一緒でも、記憶が一切無い」
「一切無い? どういう事だ?」
「彼女達が憶えていたのは、その兵器についてと、人間の味方である事、マグマ軍が敵である事だけでした。まぁ後は一般教養ですが。彼女達がどうして、どのように生まれたのかさっぱり分からない」
津田沼陸将補は腕を組んで唸る。
「言い換えれば、『前世の記憶が無い』訳か……」
「そういう事です。ただ」
「ただ?」
「うちのAH-1Sの妖精、コブラは記憶があるらしく、木更津3尉(茜)の名前を知っていました」
「ますます分からん……土居内3尉」
「はっ」
「日本本土解放と同時に、『兵器の妖精』についての研究も命じる。負担は増やしたくない、何か気付いた事があれば報告するだけでいい」
「了解しました」
土居内は敬礼した。
そこへ、情報分析官がやってくる。
「陸将補、まずい事になりました」
「何だ?」
「三重県にて偵察飛行を行っていたAH-64Dが消息を絶ちました。パイロットの生死は不明、しかし航空自衛隊のE-767が救難ビーコンをキャッチしているので場所は分かっています」
「救助隊は?」
「空自・小松救難隊のU-125捜索機とUH-60J救助ヘリ、KC-130空中給油機が既に」
その場所は、近くにマグマ軍の防空レーダーがある。土居内は津田沼陸将補に提言した。
「津田沼陸将補、野戦レーダーがあるので低空飛行を行えないU-125は引き換えさせるべきです」
「どうしてだ?」
土居内が、テーブルの上に広げられた地図を指差す。
「見てください、周りには森が生い茂っている。対空ミサイルを隠すにはぴったりです。墜落したアパッチは、この付近を飛んでいた最中に墜ちた、つまり何かしらの対空兵器があったという事です。恐らく、森を切り開いて対空ミサイルを設置、擬装網を被せて隠したと思われます」
「確かに、陸自も同じ事をする。分かった、U-125に緊急連絡、UH-60Jにも低空飛行を行うように伝えろ」
航空自衛隊の水色の救難捜索機・U-125が旋回し、濃紺の救助ヘリ・UH-60J ブラックホーク SP+が低空飛行を開始した。
森の中で、何かが動く。
ごめんなさい、受験のため連載スピードが大幅に遅れます・・・