りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す! 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
「中央混成連隊、土居内3尉、入ります」
「同じく市ヶ谷3尉、入ります」
金沢城跡、土居内と市ヶ谷が例のテントに入る。
「いつもいつも、すまんな」
津田沼陸将補が言う。テーブルの上には、何故かM16 A4自動小銃とM9 A1自動拳銃が置いてある。
「今日はどんな用事ですか?」
「お前のところに新たに配属になった『兵器の妖精』、確かAH-64Dだったか? それはいいとして、別の隊が新たに見つけた」
「『兵器の妖精』を、ですか?」
「ああ」
津田沼陸将補は、手元の資料を土居内に手渡した。そこには、「M24軽戦車」、「60式106mm自走無反動砲」、「M4 A3 E8中戦車」、「M41軽戦車」、「74式戦車」と書かれている。
「74式?」
「奇妙だろ? お前のとこの74式戦車とは見た目がだいぶ違う」
添付された写真には、金髪の女性が写っている。しかし、中央混成連隊の74式戦車の妖精は白髪なのだ。
「俺が考えていた仮説がひっくり返りましたよ」
「ほう、仮説とは?」
「『兵器の妖精』は、その兵器の潜在的意識の象徴と考えていました。何しろ、1つの兵器につき1人しか生まれてませんからね。言うなれば、『兵器の特徴』でもある」
「それがひっくり返った訳か。2人目の74式戦車が生まれたから」
土居内達は頭を悩ます。そして、市ヶ谷が閑話休題にする。
「話変わりますが、つまりこれらをうちで預かるのですか?」
津田沼陸将補が口を開く。
「いや、何もかも土居内に押し付けたくはない。お前等の連隊は充分な戦力を持っている、必要ないならそう言ってもいい。というか、そっちの方が嬉しいが」
「どういう事ですか?」
「今、混成部隊を編成する計画がある。愛知・長野南部解放作戦の成功を受け、必要に応じて自由に編成を変えられ、適宜使用可能な戦力として、6個混成中隊を整備する」
土居内と市ヶ谷は軽く驚く。
「混成中隊……?」
「大丈夫、中央混成連隊は解散や再編成の対象ではない」
土居内と市ヶ谷は胸を撫で下ろす。
「全体の話は以上だ。後は、土居内だけの用事だ」
津田沼陸将補は、また新たな書類を土居内に差し出した。
「何ですかこれ?」
「よく読め。前の愛知・長野南部解放作戦にて、米海兵隊から感謝状だ。『敵戦車中隊と相対し、絶体絶命の海兵を助けたお礼』だとよ」
そう言って、テーブルの上のM16 A4自動小銃とM9 A1自動拳銃を指差す。
「感謝の品物が鉄砲なのは、単に戦時で余裕が無いかららしい」
土居内がM16 A4自動小銃を持ち上げる。ハンドガードにはバーチカルフォアグリップ、フレーム上部にはACOGスコープが付いている。
「ありがたく使わせて貰います」
「それと、防衛大臣から」
今度は賞状だった。
「土居内3等陸尉、貴殿は愛知・長野南部解放作戦を始め、様々な作戦にて優秀な活躍をし、日本の防衛に尽力を果たした。ここにその活躍を賞賛し、1等陸尉への昇進を与える。防衛大臣、稲木 直子及び中央即応集団 集団長、津田沼 喜孝陸将補。ま、昇進祝いだ」
土居内は津田沼陸将補から賞状を受け取る。
「それとだ、市ヶ谷3尉、退室してもらいたい」
「私ですか?」
「ああ。悪いが、土居内に話があるんだ」
市ヶ谷は敬礼し、テントを出た。津田沼陸将補はパイプ椅子に座り、電子タバコを咥える。
「話とは?」
「土居内、笑わずに聞け。お前、結婚はどうするんだ?」
「は?」
土居内は一瞬理解に苦しんだ。
「結婚?」
「あと2年で30代、結婚する気が無いならそれでいいが、あるんだったら今から手を打たないと手遅れになるぞ」
「あると言えば、ありますが……」
「当てはあるのか? 無いなら伝手を辿って合コンを設定出来るが――」
すると、土居内は津田沼陸将補の言葉を遮った。
「いえ、今は自分でどうにかします。『信じれるのは己の五感だけ』、本当にヤバくなったら陸将補の手を借りますよ」
「俺が空挺団の頃、よく言っていた台詞だな。了解した、土居内1尉。中央即応集団は必要に応じ、後方支援を行う。話は以上だ、退室してよし」
2人は敬礼し、土居内はテントを出た。
土居内と市ヶ谷が新発田駐屯地に帰ってきた。
「あ……お帰りなさい……」
110mm対戦車弾や84mm無反動砲(B)を背負った新町が挨拶した。
「ただいま」
土居内はポケットにM9 A1自動拳銃、左手にM16 A4自動小銃という格好だった。
司令官室のガンラックにM16 A4自動小銃とM9 A1自動拳銃を掛け、土居内はソファに倒れた。
「新しい隊員、多過ぎだっつうの……」
土居内が呟く。既に何人も新たに配属され、さらに3人新しく入るという。
「あらあら~、お疲れ?」
司令官室にエフエイチが入ってきた。
「あのなぁ、ここは休憩室じゃないんだ。専用の休憩スペースだってあるだろう?」
するとエフエイチはソファに近付く。仕方ないので、土居内は起き上がってスペースを作った。
「駄目よ、ちゃんと休まないと」
「休もうにも、こうして勝手に入られると休めないんだよ」
すると、エフエイチは立っている土居内に横へ座るよう促した。土居内が従うと、エフエイチは土居の頭を掴み、自分の膝に乗せる。
「おいエフエイ――」
土居内が言い切る前に、エフエイチが口を塞ぐ。
「休憩以前に、こうして誰かに甘えたりしてないでしょ?」
しかし、土居内の頭には聞こえていなかった。もっぱら意識は見上げた先の巨大なバストに向けられている。
そして、土居内の右手が上がり――
「何してるんですかあなた達!」
翌朝、新発田駐屯地・グラウンドにて――
「群馬県にあるマグマ軍の戦線警戒所、これを第6戦車大隊や第13普通科連隊と共に奇襲する。我々は裏手の細道を進み、敵を陽動する」
左頬にビンタされた跡のある土居内が説明する。グラウンドには74式戦車(改)や10式戦車、89式装甲戦闘車、87式自走高射機関砲、99式155mm自走榴弾砲、96式装輪装甲車が並んでいる。
「よぉし、出発!」
拗ねている市ヶ谷が送り届ける中、中央混成連隊の車列が走り出した。
「アラート! 正体不明の飛行物体を捉えました!」
上空を飛ぶ航空自衛隊の早期警戒管制機・E-767のレーダーに、何かが映る。
「山梨県の山中から現れました。現在、石川県の方に向かっています」
「一体何だ? 航空機にしては小さいし、高度も低い」
邀撃管制官が腕を組む。すると、血相を変えた通信士が報告する。
「米軍のE-3A空中警戒管制機のデータリンクによると、スカッドらしいです!」
「何!?」
湾岸戦争の際、イラク軍が多国籍軍やイスラエルに雨霰と降らせた地対地巡航ミサイル、それがスカッドミサイルである。
「岐阜、小松の高射群に緊急連絡! ダイレクトラインで目標を指示、着弾予想地域には警報を発令させろ!」
E-767の情報を頼りに、航空自衛隊の高射群はペトリオット地対空ミサイルを用意する。対IRBM(短距離弾道ミサイル)迎撃ミサイルとして開発されたPAC-3と呼ばれるモデルだ。
「着弾予想時刻、0723! あと8分です!」
レーダー観測員が報告した。高射群の迎撃は間に合いそうもない。
「CAP(空中哨戒任務)機は!?」
「います! 302飛行隊のF-4EJ改!」
「緊急回線で割り込み、目標を指示!」
「了解!」
中央混成連隊は細い山道を進む。左側は急斜面で、下手に操縦を間違えば真っ逆様に転落する。
「本当に大丈夫なの?」
「仕方ないだろ、この道しか無いんだから」
先頭の74式戦車(改)の戦車長用キューポラのナナヨンが慎重に操縦し、砲手用キューポラの土居内が辺りを警戒する。
その時、74式戦車(改)の車体が少し傾き始めた。
「全体止まれ! 一旦停止!」
土居内が叫ぶ。後ろの10式戦車や89式装甲戦闘車が急停止した。
その途端、74式戦車(改)の車体が大きく傾いた。土居内はナナヨンを砲塔に押し込め、シートベルトを着けさせる。
そして、崖が崩れて74式戦車(改)が落ちた。