りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す!   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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33話 MIA その2

 新発田駐屯地からAH-1S攻撃ヘリ(改)やAH-64D戦闘ヘリが離陸する。

 

「司令官とナナヨンさんが……?」

 

〔そう。戦車ごと崖から〕

 

 師団用長距離無線機の受話器を手にした市ヶ谷が立ち尽くす。

 

「それで、見つかったんですか!?」

 

〔いや、まだ。一応回って下へ降りてみたけど……〕

 

 市ヶ谷は倒れそうになった。が、何とか持ちこたえた。

 

「分かりました、そのまま捜索を続けてください。私もそちらに向かいます」

 

 

 

 通話が終わり、鯖江は96式装輪装甲車に備え付けられた師団用長距離無線機の受話器を置いた。

 

「しかし」

 

 鯖江が96式装輪装甲車の分隊長用ハッチから降りる。

 

「これで生きてる方が奇跡だよ……」

 

 崖の高さは、ざっと20mはあった。

 

 

 

 日が暮れ始める。土居内とナナヨンは適当な場所を見つけ、野営する。

 

「ねぇ、司令官?」

 

「何だ?」

 

「私達、生きて帰られるかしら?」

 

「……不吉な事言うなよ。可能性云々は置いといて、帰る事だけを考えろよ」

 

「……そうね」

 

 焚き火がぱちぱちと爆ぜ、その中に直接放り込んだ戦闘糧食 1型(缶メシ)が温められている。

 

 

 

「どうです?」

 

〔もぬけの殻です。武器すらありません〕

 

 崖の下を覗き込む久居が首を振った。上に残った隊員達は一斉に崖を覗き込む。

 

 

 

 転落してひっくり返った74式戦車(改)の砲塔から練馬が這い出る。辺りを習志野や朝霞が警戒している。

 

「可能性として、司令官とナナヨンさんは武器を持ち出して外へ出た。もしくは道中でマグマ軍に攫われたか、遺体をマグマ軍に回収されたか」

 

「……止めなさいよ」

 

「あくまでも可能性だ、守山3尉」

 

 守山と習志野が議論し、朝霞と練馬が移動を促す。そして4人は歩き出した。

 

 

 

「本当、何処へ行ってしまったんでしょう……?」

 

 久居が呟く。すると、富山が口を開いた。

 

「あの司令官なら、死ぬ訳が無いだろ。ましてや、武器娘と一緒だ、死んでいる方がおかしい」

 

「さっきから一番落ち着いてないのは貴女だよ、富山士長」

 

 鯖江が言い、豊川と新発田が頷く。

 

「な、何言ってんだよ!? そんな訳無いだろ!?」

 

 富山が頬を真っ赤にして反論する。すると、ヒトマルが手を叩いた。

 

「まさか、相思相愛!?」

 

 すかさずスカイシューターがラリアットを、富士が回し蹴りをヒトマルに加えた。

 

 富山はただ俯いている。なので松本が話し掛けた。

 

「本当なの?」

 

「いや、相思相愛じゃなくて! その、片思いで終わったというか……」

 

 その言葉に、全員が固まった。

 

 

 

 日が暮れ、火を消した土居内はナナヨンと同じ寝袋で寝ていた。周りを簡素なトラップで囲み、土居内とナナヨンは必然的に引っ付く。

 

「司令官?」

 

「何だ?」

 

「あの……恥ずかしいんだけど」

 

「仕方ないだろ。我慢してくれ」

 

 お互い背中を合わせて寝ているため、互いの体温が伝わってくる。

 

 その暖かさなのか、ナナヨンは恥ずかしいと感じながらもすぐ寝てしまった。

 

 

 

 しかし、2人はヘリの爆音で目覚めた。土居内は寝袋から這い出て、茂みへとナナヨンを引きずり込んだ。

 

「しれ――」

 

「静かにしてろ」

 

 息を潜め、ヘリコプターが去るのを待ち続けた。

 

 

 

〔駄目、FLIR(正面夜間赤外線暗視装置)でも見つけられない〕

 

〔全く、早く帰って茜お姉様と……〕

 

〔スタァァップ!〕

 

 

 

 日が登り始めた。ナナヨンが目を覚ますと、土居内が覆い被さっていた。

 

 森に悲鳴が木霊した。

 

 

 

「よし、移動するぞ」

 

「ええ」

 

 88式鉄帽を被り、土居内は89式小銃を持って歩き出す。

 

 その後をナナヨンが追った。

 

 

 

 上空をAH-64D戦闘ヘリやAH-1S攻撃ヘリ(改)、OH-6D偵察ヘリが周回し、崖下では直接支援隊の90式戦車回収車がひっくり返った74式戦車(改)を元に戻そうとしていた。

 

 県道には中央混成連隊や第1戦車大隊が勢揃いしていた。

 

「……司令官」

 

 73式小型トラック(パジェロ)の側に立っている市ヶ谷が、胸に手を当てて呟いた。

 

 

 

 元の姿勢に戻った74式戦車(改)が特大型運搬車に載せられ、中央混成連隊の軽装甲機動車や96式装輪装甲車の護衛と共に出発した。

 

「捜索再開だ!」

 

 富山が叫び、隊員達は小銃片手に森へと分け入った。

 

「しれーかーん!」

 

「司令官さーん!」

 

「ナナヨンさーん!」

 

 大声で呼ぶが、返事は無かった。

 

 

 

 その頃、土居内とナナヨンは――

 

「やばいな」

 

「ええ、やばいわね」

 

 両手を挙げ、3体のマグマ軍歩兵にAK47自動小銃を向けられていた。

 

 その後ろには歩兵戦闘車2號と重戦車72號が、砲身をこちらに向けている。

 

 すると、重戦車72號の砲塔からスライムスーツの女が降りてきた。歩兵3体はAK47自動小銃の銃口を降ろす。スライムスーツの女は歩兵を押しのけ、そして自分の両腕を合わせて前に出した。

 

「ギュ」

 

「何だ? マグマ軍流の挨拶か?」

 

「そんな友好的に見えるかしら?」

 

 そして、土居内は思い出した。

 

「あ」

 

「何? 分かったの?」

 

「これ、手錠をかけられる仕草じゃね?」

 

「言われてみれば……でも、マグマ軍が手錠なんて知っているかしら?」

 

「まあ、コノエ(捕虜として捕まってた近衛兵)の話では無さそうだが……」

 

 スライムスーツの女は動かない。すると、今度は歩兵達がAK47自動小銃を傍らに置いて土下座し始めた。

 

「何だ何だ?」

 

「ねぇ、司令官。まさかと思うけど……」

 

「言ってみろ。例え馬鹿な思い付きでも笑わないつもりだ」

 

 ナナヨンが土居内にアッパーを決める。

 

「まさか、降伏したいんじゃない?」

 

「まさか」

 

 土居内が顎を押さえていると、スライムスーツの女と歩兵達が頷いた。

 

「マジか」

 

「コノエの話通りだと、きっと何処かの戦いで負けて逃げてきたんじゃないかしら?」

 

 すると、歩兵達とスライムスーツの女は土居内とナナヨンを持ち上げ、重戦車72號の砲塔に載せた。そしてスライムスーツの女も重戦車72號に乗り込み、動き出す。歩兵達は歩兵戦闘車2號の上に乗っていた。

 

 

 

 捜索しても見つけられなかった。後を第32普通科連隊に引き継ぎ、中央混成連隊の隊員達は高機動車や96式装輪装甲車で新発田駐屯地へと向かった。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 高機動車の車内、誰も何も言わない。助手席には富士、運転席には鯖江、後部座席には富山、豊川、新発田、久居、守山、北富士、金沢、新町が座っている。

 

 疲れたのか、金沢や新町はぐっすり眠っている。L16 81mm迫撃砲を懸架する金属バーの所為で豊川と北富士が足を伸ばせず、困っていた。

 

 富山は振り返り、小さな窓から見える森を眺めていた。

 

 

 

「……本当にこれで通用するの?」

 

「白旗といったら降伏の証だろ?」

 

「ギュギュ(何これ)?」

 

「ギュッギューギュギュ(きっと地上人にしか通用しない合図だ)」

 

「ギュギュ、ギューギュギュ(そうかもしれない)」

 

 

 

 中央混成連隊は新発田駐屯地に帰ってきた。既に74式戦車(改)は修理工場に運び込まれ、砲身の交換やレーザー測距儀の確認等が行われている。

 

 しかし、隊員達は休めなかった。簡単な腹ごしらえを済ませると、すぐに県境へと向かって警戒任務に就く。

 

「2日連続徹夜かぁ……」

 

「司令官もナナヨンさんもいないのに……」

 

 文句を言いながら、バリケードで小銃や機関銃を手に並ぶ。向こう側にはマグマ軍のBTR-80装輪装甲車や重戦車80號、RPK軽機関銃やAK47自動小銃で身を固めた歩兵が並んでいる。

 

 10式戦車の戦車長用キューポラでヒトマルがあんパンを頬張り、高機動車の中で新町と金沢、北富士が戦闘糧食 2型を冷えたまま食べる。

 

 

 

 しばらくすると、マグマ軍に動きがあった。砲声が響き、BTR-80装輪装甲車が爆ぜ、歩兵が散り散りになる。そして重戦車80號が自衛隊のバリケードに向かってくる。

 

「ストップ! アイル・シュート・ユー! ストップ!」

 

 朝霞が89式小銃を構えて叫ぶ。富山が、バリケードに立てかけておいた110mm対戦車弾を持ち上げ、弾頭プローヴを伸ばして構える。重戦車80號はようやく停車、すると後ろから重戦車72號や歩兵戦闘車2號がやってきた。

 

「警告射撃ぃ!」

 

 朝霞が叫び、富山が110mm対戦車弾を発射しようとする。

 

〔待ちなさい!〕

 

 富士が止める。よく見れば、誰かが重戦車72號の砲塔の上で白旗を振っていた。守山が双眼鏡で見ると、見慣れた人物だった。

 

「司令官とナナヨンさんだわ!」

 

 

 

 そして重戦車80號の隣に重戦車72號が停車した。砲塔のスライムスーツの女が、重戦車80號のメイドに話し掛ける中、土居内とナナヨンが重戦車72號の砲塔から飛び降り、自衛隊のバリケードに向かう。

 

「司令官!」

 

 朝霞が大声を出した。富山はもう110mm対戦車弾を投げ出しそうになっている。

 

「すまない、心配掛けたな」

 

 土居内が2人の頭を撫でる。富山は涙を流しながら口を開いた。

 

「馬鹿、心配なんてしてねぇよ!」

 

「素直になれよ、富山」

 

 土居内が富山を抱き締めた。守山は朝霞の肩を叩き、離れていった。

 

 

 

 富山はいつまでも土居内の胸の中で泣いていた。

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