りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す! 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
土居内とナナヨンが新発田駐屯地に帰還した。
「しれーかん!」
市ヶ谷が土居内に飛び付く。
「私、もう司令官が帰ってこないかと心配で心配で……!」
「すまなかった、市ヶ谷」
土居内が市ヶ谷を抱擁する。富山は、やりきれない思いで見ていた。
翌朝、新発田駐屯地――
「新しく配属になりました、木更津 若菜、陸准尉です。元第4対戦車ヘリ隊で、この前は助けていただき、ありがとうございました」
「……同じく、第4対戦車ヘリ隊の木更津 柚子、陸曹長です……よろしくお願いします……」
第1兵舎 1階 会議室で、2人の女性自衛官が敬礼した。片方は赤いフレームのメガネをした茶髪ポニーテール、もう片方は黄髪のショートボブだった。
「新たに配属された、明野 菜摘2等陸曹です! 以前はUH-60JAのコパイロットをしてました!」
赤髪の女子高生も敬礼した。
「中央混成連隊指揮官の土居内 佳樹1等陸尉だ。お陰で不足気味だったヘリ乗員を確保できた。見ての通り俺以外WAC(女性自衛官)だ、気負う必要は無い」
土居内も敬礼する。隊員達は拍手で新しい仲間を歓迎した。
金沢城跡・防衛省 統合戦線指揮所(仮)――
「面倒な事になったな」
「全くです」
プロジェクターで、スクリーンに中部地方の地図が映され、初老の自衛官達が会議をしている。
「まさか、マグマ軍がスカッドを手に入れていたとはな」
「空自のF-4で破壊されたため、被害はありませんでしたが――」
「だが、日本のBMDの根幹が揺るがされる。今、空自の高射群や海自のBMDイージス艦は、近隣諸国が自棄になってIRBM(中距離弾道ミサイル)やSLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)を発射しないかの警戒で手一杯だ。そこに地底生物のスカッドとなると、処理がパンクする」
「恐らく、マグマ軍はそれを狙っている。日本の防空網がへたった所で、大規模空挺作戦でもやるのだろう」
「そんなもの、うちのF-15で全て叩き落としてやる」
「今あるF-15Jはたった3個飛行隊分だ。それに、4機撃墜され、6機はエンジンがオーバーヒートで壊れて再生修理中だ」
「それだったら、湾岸戦争に倣おうじゃないか」
「何?」
「ご存知でしょう、湾岸戦争時に行われた『スカッド・ハント』。アメリカの特殊部隊が、スカッドTEL(移動式発射台)を見つけ、上空の攻撃機を誘導して破壊させた。それをすればいいんです」
「そんな簡単にいくか?」
「第一、制空権を奪わなければ――」
「制空権を奪う必要は無い。アメリカから輸入した4機のF-35AJ、それに岐阜と愛知の工場でノックダウン生産とライセンス生産が再開されている。それなら、制空権を確保せずとも空爆は可能だ」
「なるほど……しかし、誘導と偵察・潜入を行う特殊部隊はどうする? 虎の子の特戦群は2個小隊が壊滅している。空挺団や中即連にはそんな技能は持ち合わせていない」
「1つ、あります」
「何だって?」
「中混連、中央混成連隊なら。元特戦群に元空挺団、現役の山岳レンジャー、さらにはレンジャーの元教官までいる」
「あのアマゾネス連隊? 一部では忌み嫌われ、『リア充撲滅作戦』だの『ハーレム破壊・強襲作戦』だの計画されている対象だ、連隊長しか男がいないというのに、スカッド・ハントなんて出来るのか?」
「皆さん、この名前は聞いた事ありますよね? 富士 御幸」
「おい、あの富士が?」
「ええ。彼女は現在中央混成連隊配属、先程羅列したレンジャー徽章持ちは、全員彼女の教え子です」
「何と……」
「とにかく、スカッド・ハントには特殊作戦群を総動員、並びに中央混成連隊から4人の2チームを参加させよう。津田沼陸将補、特殊作戦群と中央混成連隊に指示を」
「了解しました」
「散開! 目標を一気に叩け!」
土居内が叫ぶ。96式装輪装甲車から隊員達が展開し、小銃を構えながらビルへと突入する。屋上からもUH-60JA汎用ヘリから降りた隊員達がビルへと入る。
金沢がビルに入り、左手で「敵無し」というハンドサインを出す。土居内、富山、豊川、久居、新発田が続き、階段を駆け上がる。
ある部屋の前に並び、豊川が閃光音響手榴弾の安全ピンを引き抜く。金沢が扉を少し開き、豊川が閃光音響手榴弾を投げ込む。
爆発、素早く金沢が扉を開け放ち、突入。豊川と金沢、新発田が89式小銃でマグマ軍歩兵を撃ち殺した。
「クリア!」
「クリアー!」
「ルーム・クリア! ゴー!」
廊下に出て、89式小銃に装着したタクティカルライトを点灯して進む。
同じ頃、松本がM24 SWS対人狙撃銃で狙撃していた。ボルトハンドルを引き、次弾装填。狙いを定め、もう1発。
「命中。次、3階の右から5番目」
「見えた」
机を並べ、松本と鯖江がその上で伏せていた。松本はバイポッドを使ってM24 SWS対人狙撃銃を構え、鯖江は傍らに64式小銃を置いて単眼鏡を手にしていた。
すると突然、鯖江が寝返りを打って仰向けになると、ホルスターから9mm拳銃を引き抜いて発砲した。
「静香?」
「亜衣璃、まずいよ」
見れば、彼女達のいる部屋の入り口にマグマ軍歩兵が倒れていた。
鯖江は立ち上がり、9mm拳銃の弾倉を交換すると、64式小銃を持ち上げた。
「移動しないと」
「分かった」
松本はスリングでM24 SWS対人狙撃銃を背負い、9mm機関拳銃を手にして立ち上がった。
神奈川県 某所――
「これだけあれば一安心だな」
「これでやっとマグマ軍に一矢報いれる」
数十人の男女がビルの一室に集まっていた。テーブルの上には、大量の9mm機関拳銃やマカロフ自動拳銃、89式小銃、AK47自動小銃、PKM軽機関銃、RPG-7ロケットランチャーや各種爆弾が並んでいる。
「マグマ軍に占領され、奴隷扱いされてきたんだ。ここで奴らを血祭りに上げ、奴隷にする」
「そうだ、殺された娘の仇を取るんだ」
「息子を拉致された苦しみを!」
「私は彼氏をなぶり殺しにされた……!」
「男だからって寝る間も与えずにこき使いやがって!」
彼らは武器を持ち上げた。
「しかし、よくこれだけ集められたな」
「破壊された駐屯地や警察署、それからマグマ軍の補給トラックからパクってきた」
「誰か、使い方教えてくれない?」
「俺は元予備自衛官だ、教えてやるよ」
そんな中、1人の男が携帯電話を取り出し、通話を始めた。
「裏は取れた、ばっちりだ」
「一体どこに電話を――」
89式小銃を手にした男が問い掛けると同時に扉が破壊された。そしてAKS74自動小銃を手にしたマグマ軍歩兵が突入してきて、窓の外には攻撃ヘリ24號がホバリングしていた。
「――はめられた!?」
AK47自動小銃を手にした男が叫ぶ。9mm機関拳銃を手にした中年女性が思わず腰だめで構え、引き金を引こうとしてマグマ軍歩兵に撃たれた。
「無駄な抵抗はするな。既に狙撃兵中隊が周りを取り囲んでいる。外には武装ヘリが待機している、下手な事をすればお前達は粉微塵だ」
トカレフ TT-33自動拳銃を手にした近衛兵が前に出てくる。携帯電話で通話していた男が近衛兵に敬礼した。
「よくやった、同志」
「はっ、お褒めのお言葉、ありがとうございます」
男が近衛兵にお辞儀をする。元予備自衛官と言った89式小銃を手にした男が叫ぶ。
「貴様、KGBの犬だったのか!?」
「それがどうした? 何が『国民解放戦線』だ? 会社で上司にへこへこ頭下げてなじられ続け、リストラや年金減額、増税に震える人生より、共産主義で権力を手にする方がよっぽどマシだ!」
MP5 A5短機関銃を持った女子高生が、通話していた男につかみかかった。
「このロクデナシ! 私の彼氏を奴らに殺されたんだ!」
「……何を今更」
「は?」
「俺達低所得者はなぁ、何時間何時間働いても働いても給料も休みも貰えなかったんだよ……日本という腐った国家で肥え太った企業に何人も何人も殺された! 俺の同期は営業の帰り道で電車に飛び込んだ! それなのに一向に改善されない! だったらこんな国、ぶっ壊してやる!」
他の男女は、拳を握り締めて殴りかかろうとしていたが、出来なかった。
見かねた近衛兵が歩兵に指示し、男女を捕らえさせる。女子高生も3体の歩兵に取り押さえられた。が、通話していた男が歩兵を押しのけ、女子高生の髪を掴んで近衛兵に話し掛ける。
「同志、こいつの身柄を貰っていっても構いませんか?」
「構わん。どうせ反逆罪で銃殺刑が確定しているからな」
そして男は近衛兵に礼を言い、女子高生を引き連れてビルを出た。そこで彼女に手錠をかけ、ビルの前に止まっていた真っ白な国民車に押し込む。
「お前、何のつもりだ!?」
助手席に座らされた女子高生が問いただす。男はエンジンをかけながらスチェッキン自動拳銃を女子高生に向けた。
「……決まってんだろ?」
そして男の左手が女子高生の胸に鷲掴みにする。
「――ひっ!」
「お前の態度次第で余命が決まる。さて、どうする?」
男はスチェッキン自動拳銃を左手に持ち替え、アクセルを踏んで車を発進させた。
群馬県 高崎市――
「報告!」
〔クリア!〕
〔クリアです!〕
〔クリア〕
「損害は?」
〔ゼロ、だね〕
「よし、小隊集合!」
中央混成連隊を筆頭とする混成部隊や機甲部隊は群馬県のマグマ軍を制圧した。
96式装輪装甲車の分隊長用ハッチで、土居内は三脚に据えられたMINIMI機関銃を手にしている。隣の車長用キューポラでは、北富士がブローニング M2重機関銃のグリップを握っている。
やがて、あちこちの建物から隊員達が出てきた。そして開かれた96式装輪装甲車の後部ドアから兵員室に入っていく。
「よし、撤収だ!」
土居内が叫んだ。新町がアクセルを踏み、96式装輪装甲車が走り出す。既に地域住民は別の普通科連隊によって介抱されている。
中央混成連隊は新発田駐屯地へと帰還する。