りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す! 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
中央混成連隊が新発田駐屯地に帰ってきた。装甲車や戦車が車両庫に向かう途中、何故かヘリポートに見慣れぬUH-1J汎用ヘリが駐機していた。
土居内は疑問に思いながら、武器・弾薬を返納し、司令官室に向かった。
「おう、お邪魔してるぞ」
司令官室に、見慣れた男がいた。
「陸将補、どうしてここに?」
それは津田沼陸将補だった。津田沼陸将補はマグカップを本棚に置き、立ち上がる。
「どうしてか? 緊急で重要な作戦ができ、お前らに手伝ってもらいたいからだ」
「緊急で重要……?」
「お前なら、スカッドミサイルを知っているよな?」
「ソ連製の地対地ミサイルですよね? 移動式発射台の所為で捕捉・破壊が難しいとされる……」
「そうだ、そんな面倒なのをマグマ軍が手に入れやがった」
「――何ですって!?」
土居内が驚く。
「お前が戦車ごと落っこちた日、山梨県から謎の飛行物体が出現し、空中哨戒中だったF-4 ファントムⅡがこれを破壊した。幸い死者は出なかったが、米軍のデータリンクでこれがスカッドだと判明した」
土居内は88式鉄帽を脱ぐ。
「それで、我々は『スカッド・ハント』をやれと?」
「その通りだ、土居内1尉。特殊作戦群も参加する、中央混成連隊は4人2チーム、合計8人出してくれ」
「しかし、うちにはレンジャー持ちは8人もいませんよ」
「お前の隊だ、レンジャーはいなくとも戦力は揃っているだろ? よろしく頼む、土居内1尉」
そして津田沼陸将補は、ヘリポートにいたUH-1J汎用ヘリに乗って帰っていった。
「……散々まくし立てて帰っていきやがった」
土居内が呟く。それを市ヶ谷が慰めた。
「元気出してくださいよ、司令官」
「……スカッド・ハントかぁ」
土居内は、窓際で肘を立ててぼんやりと外の雑草にじょうろで水をやる。そこへ大宮がやってきた。
「司令官、報告」
「おう」
今、新発田駐屯地の修理工場には、T-72、T-80、BMP-2が並び、武装を交換されていた。コノエの通訳の下、歩兵3体、歩兵戦闘車2號、重戦車72號、重戦車80號の亡命が認められ、中央混成連隊で飼う事になった。
T-72とT-80に新120mm滑腔戦車砲、歩兵戦闘車2號には35mm機関砲と87式対戦車誘導弾(中MAT)が装着された。
「皮肉ね、今まで敵として破壊してきたのが仲間になるなんて」
「仕方ありませんよ、戦力不足なんですから」
T-72とT-80を見ながら、ナナヨンとキューマルが話す。
「にしても――」
キューマルが振り返る。
「あれは何でしょうね?」
床に、無造作に見たこと無い砲弾が置かれていた。
「という訳で作戦を説明する」
会議室に、少数の隊員が集まっていた。土居内がスクリーンに投影されている地図を、レーザーポインターで指し示した。
「マグマ軍がソ連製地対地ミサイル、スカッドを手に入れた。こいつはTEL、移動式発射台を使い、撃ったら逃げるヒット&ランを行うため、ミサイルの飛翔経路から発射ポイントを見つけて攻撃機を向かわせた所で無意味だ。そこで、特殊作戦群と共にマグマ軍支配地域に潜入、スカッドランチャーを見つけて攻撃機を誘導する。4人2チーム、合計8人を選抜した。アルファチームは俺と習志野、コノエ、富山。ブラボーチームは富士、松本、鯖江、豊川だ。我々は明野の操縦するUH-60JAで埼玉県に侵入、アルファチームは秩父湖周辺に、ブラボーチームは小鹿野周辺で警戒する。出発は2日後の0120だ。以上!」
全員が立ち上がり、散らばっていく。
土居内は司令官室に向かった。
夕方、中央混成連隊の隊員達は食堂に向かった。ついこの間群馬県を解放したが、それ以外の出撃は、せいぜいマグマ軍ゲリラの対処程度だった。南関東解放作戦が立案されたが、航空自衛隊のRF-4EJや陸上自衛隊のFFRSによる決死の偵察飛行の結果、解放作戦をしようにも戦力が足りないため決行出来なかった。あろうことにも、マグマ軍はロシア陸軍の最新鋭試作戦車・T-14 アルマータを量産し、南関東の県境に並べていた。日本の防衛体勢を本格的に整えさせないために、南関東を死守するつもりらしい。
「いただきます」
土居内は手を合わせ、食事を摂る。
「おいしい?」
「ああ」
「よかった」
土居内の向かいに座った霧本が話し掛ける。その隣には不機嫌そうな市ヶ谷。
「佳樹、何かでかい作戦でもあるの?」
「何でそう思うんだ?」
「だって思い詰めた顔してるもん。バレバレだって」
「まぁな。詳しくは言えないが、下手をすれば1ヶ月は帰れないかもしれない」
「マジ?」
霧本は呆気に取られる。
「もしかしたら永遠に――」
「ストッップ! フラグ立てんな!」
土居内の言葉を霧本が遮り、市ヶ谷の手から箸が落ちる。
「本当ですか、司令官!?」
「可能性だ。思えば、今まで死ぬかもしれないシチュエーションにいっぱい当たってきたなぁ……イラクでは数百人の民兵から20人足らずのパトロール隊で、アメリカのNGO集団を警護し、交戦し、そしてマグマ軍に何度も殺されかけ……」
「さりげなく機密情報漏らさないでくださいよ」
「え、イラクで!? 何かヤバい系!?」
市ヶ谷が静かに憤慨する中、今度は霧本が驚いた。土居内は天井を眺め、回想する。
「ああ、俺達の中隊からパトロール隊を出す事になってな、ジャンケンで負けた俺は小隊から隊員を選抜し、2台のLAVと1台の高機動車で出発した。それが――」
「止めてください! 撃ちますよ!?」
9mm拳銃を手にした市ヶ谷が土居内の回想を止めた。
「とにかく、そろそろかなぁ……」
「何が?」
「男にとって重要な事」
そして土居内は食べるのを再開した。
翌朝、新発田駐屯地――
「おはよう、市ヶ谷」
「おはようございます、司令官。いよいよ今夜ですね」
「そうだな」
廊下で、土居内と市ヶ谷が遭遇した。2人は挨拶をし、グラウンドに向かった。
ラッパの音が響き、隊員達が一斉に日本国旗に向かって敬礼をする。
国旗掲揚が終わり、一斉に食堂へ。土居内が食堂に向かうと、富山と豊川の食事が進んでいなかった。
「どうした? 腹でも痛いのか?」
「いえ、何か緊張して……」
「認めたくないけど、箸が進まねぇんだよ……」
土居内は肩をすくめた。
「ま、初めての潜入作戦だ、緊張してもおかしくないが、早めに緊張を解いておけよ」
そう言って土居内は食事を取りに行った。
朝食の後、土居内は準備をした。かなり巨大な迷彩柄のリュックに、戦闘糧食 2型や各種無線機、着替え、水、レーザー誘導装置、ノートパソコン、寝袋等を収め、M16 A4自動小銃の手入れを始めた。
すると、扉がノックされた。
「誰だ?」
「豊川1士、入ります!」
「おう、入れ」
豊川が入ってきた。
「どうした?」
「一体何を持っていけばいいんですか?」
土居内は腕を組む。
「それは富士に訊いてくれ。あの人はあの人なりの分担を決めているだろうからな」
「……そうですか。あと、銃は89でいいんですよね?」
「そうだ。というか、89式以外に銃があるか?」
「――9mm機関拳銃程度ですね」
そして、豊川は敬礼して出ていった。
やがて夕方になった。土居内はM14自動小銃の手入れも終わらせた所で市ヶ谷がやってきた。
「司令官、どうですか?」
「もちろん、絶好調だ」
「――ちょっと精神科に予約入れてきます」
「待った待った! 冗談だから!」
市ヶ谷が再びむくれた。
「全く、司令官はデリカシー無さ過ぎです!」
「ごめんなさい……」
そして、土居内は思い出した。
「何で俺の所に?」
「ああ、単に何かお手伝いが出来ないかなと……」
「ありがとう、でも粗方終わっちまった。まあちょうどいい、話したい事あったし」
「はい?」
市ヶ谷が首を傾げた。土居内は頬を掻きながら口を開いた。
「なぁ、『結婚したい』って思っているか?」
「はい!?」
市ヶ谷がひどく驚き、よろけた。
「そんな、結婚なんて……だいたい交際相手もいないのに……」
「それなんだが」
土居内が立ち上がる。
「市ヶ谷、この作戦が終わったら、結婚を前提に付き合ってくれないか?」
市ヶ谷の頭がフリーズした。
「富山士長、どうしたんだ? こんな所で」
廊下で、習志野が富山に話し掛けた。すると、富山は一目散に逃げた。
「何なんだ? 一体……」
左隣には司令官室。
その日の夜、新発田駐屯地・ヘリポート――
〔ティッキー・ディッキー・ディーヴァー、離陸許可発令〕
「TDD、了解」
UH-60JA汎用ヘリが離陸した。コクピットには夜間暗視装置を着けた葵と明野、キャビンには土居内、習志野、コノエ、富山、豊川、富士、鯖江、松本、そしてブローニング M2重機関銃を構える北富士と新町がいた。
市ヶ谷は不安そうにUH-60JA汎用ヘリを見つめていた。
初めて予約投稿機能を使いました。
しばらくの間、感想などにお答えできません(受験生のため)。