りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す!   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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36話 スカッド狩り その1

〔こちらハニーポッド・コントロール、ティッキー・ディッキー・ディーヴァー、作戦空域に達した。以後、完全な無線封鎖を行う。グッドラック〕

 

「こちらTDD、HPC、了解した」

 

 中央混成連隊所属、UH-60JA汎用ヘリ 1号機が埼玉県上空を低空飛行している。空は真っ黒で、かすかな星明かりがキャビンを照らしていた。

 

 キャビンの座席で、土居内は瞑想していた。手にはM203グレネードランチャーとACOGスコープを取り付けたM16 A4自動小銃、頭に被った88式鉄帽には夜間暗視装置JGVS-V8が付けられている。

 

「司令官、そろそろ小鹿野周辺です」

 

 明野が話し掛けた。土居内は目を開き、話し始めた。

 

「よし。本作戦は極めて重要で過酷だ、だが失敗すればスカッドが発射され、大量の民間人が死ぬ。もしかしたら新発田駐屯地へ飛んでいくかもしれない、作戦成功を祈る」

 

 やがてUH-60JA汎用ヘリはホバリングを始めた。機体が静止し、キャビンの扉が開く。

 

「ブラボーチーム、行くわよ!」

 

 富士を先頭に、松本、鯖江、豊川がヘリから降りた。そしてUH-60JA汎用ヘリはそのまま移動を始める。

 

 

 

 UH-60JA汎用ヘリは2つ目のポイントに到着した。秩父湖南西にホバリングし、土居内達が降りていく。北富士や明野が手を振り、土居内が右手を挙げて応えた。

 

「さて、行くぞ」

 

 土居内達は歩き出す。UH-60JA汎用ヘリのターボシャフトエンジンの音が遠ざかっていった。

 

 

 

 土居内達は4時間掛けて穴を掘り、監視所を設けた。唯一の出入り口に網を張り、土で屋根を覆う。そして寝袋を広げて富山とコノエが寝始めた。

 

「……」

 

「……」

 

 土居内と習志野は、出入り口の手前に伏せていた。習志野は双眼鏡を覗き、土居内はM14自動小銃を構えている。砂袋の上にM14自動小銃を置き、脇にはレーザー誘導装置やニコン製デジタル一眼レフを置いている。

 

 

 

 動きは無い。土居内は飴玉を咥え、眠気を覚ましていた。

 

「司令官」

 

 習志野が小声で呼ぶ。見れば、少し開けた場所に数体のマグマ軍歩兵とBMP-2が見える。しかし歩兵戦闘車2號の姿は無い。

 

「一体何なんだ?」

 

「さぁな。下見は既に終わってるだろうから、もしかしたら銃殺刑でもするんじゃないのか?」

 

 土居内はM14自動小銃に付けられた夜間暗視装置付スコープを覗く。緑色の視界の中、歩兵やBMP-2が真っ白に浮かび上がった。

 

 すると、歩兵がBMP-2の中から歩兵戦闘車2號を引っ張り出してきた。歩兵達が芋虫のような巨体を引きずり、そして食べ始めた。巨大な胸が喰い千切られ、柔らかそうな下半身が徐々に無くなっていく。既に人間のような上半身とはおさらばしており、内臓が歩兵2体によって引っ張り出されて喰われる。

 

「……ぅぐ」

 

 習志野が呻いた。土居内は黙ってM14自動小銃を構え続ける。そして構えたまま口を開いた。

 

「たぶん、カニバリズムの一環だろうな」

 

「……何を言っている。『たぶん』? どこからどう見てもカニバリズムまんまだ」

 

「そうじゃない。そもそもカニバリズム、食人というのは本来葬式のような意味だったんだよ。死んだ相手の体を喰う事で、その相手を自分の中で生きさせる。戦争中、敵を喰うのは遺族にそうさせない心理戦であり、かつ敵の能力を自分の物にするという意味を含んでいた。決して好きで喰っていた訳では無いが、それが勘違いされ、というか意味を知られずに広まった。奴らが歩兵戦闘車2號を喰っているのは、供養の意味があると思う」

 

 土居内の説明が終わり、習志野は黙った。

 

 

 

 途中、コノエや富山と交代しながら土居内と習志野は仮眠を取った。

 

 やがて朝になり、土居内は目覚めた。起き上がり、天井まで1mも無い低い空間を目にし、スカッド・ハントの最中と思い出す。

 

 隣では習志野がぐっすりと眠っていた。あんな光景を見ても眠れる所は、さすが元特殊作戦群だなと土居内は感心した。すると、習志野の瞼が開いた。

 

「……令官?」

 

「起きたか? おはよう」

 

「ああ、おはよう」

 

 習志野は目をこすりながら上半身を起こす。出入り口には、共に迷彩ポンチョと赤外線遮断カバーを被った富山とコノエが伏せている。

 

 コノエと土居内は交代し、コノエはM95対物狙撃銃を手に奥へと下がった。土居内は富山の隣に伏せ、M14自動小銃を構える。

 

 起きた習志野はカロリーメイトを頬張る。そして水で流し込み、仮眠をとり始める。一方、コノエはM95対物狙撃銃の弾倉を外し、ボルトハンドルを引いて薬室内の弾を抜いた。

 

 

 

 そして夜――

 

「マイクブラボー、キャラバンを見つけた」

 

〔ハニーポッド・コントロール、了解。アサシン隊、マイクブラボーがキャラバンを捉えた〕

 

〔アサシンリーダー、ラジャー。全機、低空飛行開始、超音速で侵攻する。我に続け〕

 

 鯖江が、特殊作戦群から供与されたドイツ製自動小銃・H&K HK417を構える横で、富士がレーザー誘導装置を起動させる。豊川は長距離無線機で現在地を攻撃機に伝える。

 

「オーケー、地底生物の逸物にマーキングしてやったわ」

 

 富士が呟き、豊川が準備完了の意を攻撃機に伝える。

 

「マイクブラボーよりアサシン隊、メイクアップ完了しました」

 

〔ラジャー、アサシンリーダーより全機、これより去勢手術を開始する!〕

 

 ジェットエンジンの音が轟き、4機のF-35AJステルス戦闘機がL-JDAM誘導爆弾を投下した。

 

 見事、爆弾はトレーラー型スカッドランチャーに命中、派手な爆破が起きた。

 

「マイクブラボーよりハニーポッド・コントロール、地底生物の逸物は折れました」

 

〔ハニーポッド・コントロール、了解。アサシン隊、アマゾネス軍の逸物は真っ二つだ〕

 

〔ラジャー、アサシンリーダー、RTB!〕

 

 4機のF-35AJ戦闘機は旋回し、帰投した。

 

 

 

「爆発?」

 

「どこかのバカがドジったか、ブラボーチームの方にスカッドが現れたか……」

 

 習志野と土居内が話す。小鹿野から遠く離れた秩父湖にも、スカッドの爆音が聞こえた。

 

 富山は9mm拳銃片手にカロリーメイトを食べ、コノエは袋に入ったピロシキを食べている。

 

 土居内は頭を振り、眠気を覚ます。習志野は無表情に双眼鏡を覗き続けた。

 

 

 

「…………」

 

「さぁ、何があったのか洗いざらい吐いちまいな」

 

 新発田駐屯地・食堂にて、市ヶ谷が座らされ、その向かいに霧本が腕を組んで座っていた。市ヶ谷の目の前にカツ丼が置かれ、湯気がたっている。2人の周りを完全武装の隊員が囲んでいた。

 

「…………」

 

 市ヶ谷が黙ってうつむいていた。霧本は前傾姿勢になり、市ヶ谷に話し掛ける。

 

「これ以上黙っていれば、佳樹にある事無い事言っちゃうよ?」

 

「……例えば?」

 

 市ヶ谷が顔を上げた。その頬は真っ赤だった。

 

「そうねぇ……『実は援交していた』とか『とんでもないビッチだ』とか『マグマ軍のスパイだ』とか『司令官を暗殺しに来た』とか?」

 

「……そんなの、司令官は信じませんよ」

 

「うん、自分で言っててそう思った。けど、『市ヶ谷さんは司令官の事が好きで好きでたまらなく、他の隊員に嫉妬して殺そうと思っている』ってあいつに言ったらどうするかな?」

 

 市ヶ谷がビクッと震えた。他の隊員が市ヶ谷を懐疑の眼差しで見下ろす。

 

「あいつの事だ、きっと戦力を維持するためにあなたを始末しようと考えるよ。いつか佳樹が言っていた、『市ヶ谷と俺がいなくなっても、鯖江と守山、それから久居がいれば安心だ』とね。あなたがいなくても心配は無いと、彼は明言したわけだ」

 

 市ヶ谷の体がガタガタと震える。そして霧本はテーブルをバンと叩いた。

 

「まだシラを切るつもりか!? 佳樹があなたに何かをしたのは分かっているんだよ!」

 

「まあまあ霧本さん、落ち着いて」

 89式小銃を手にした朝霞と金沢が霧本の肩を掴む。

 

 すると、市ヶ谷の口が小さく動いた。

 

「……告白されました」

 

「告白!? 嘘!」

 

「ヒトマル、少し黙ってなさい」

 

 M3 A1短機関銃片手に驚くヒトマルをナナヨンが黙らせた。

 

「第一、告白と言っても何の告白か――」

 

「……『作戦が終わったら、結婚を前提に付き合ってほしい』と言われました」

 

 その一言で、空気が固まった。

 

 

 

「退屈だな」

 

「そうね」

 

 土居内と習志野が呟く。アルファチームの方にはスカッドランチャーはまだ来ていない。ブラボーチームは、マグマ軍が捜索を始めたため移動した。

 

「しかし、男がいるというのに、あんなに眠れるとは」

 

「俺が誰これ構わずクリーピングする奴と言いたいのか?」

 

「いや、司令官はヘタレだから無いけど、そこまで安心出来るかなと」

 

「お前なぁ……寝る時気を付けろよ?」

 

「そう言いつつ、結局実行に移さないだろ? イラクでは何人にもクリーピングされたけど」

 

「……何さらっと言ってんだ。あの小隊でか?」

 

「ああ。返り討ちにしてやったが」

 

「どっちの意味でだ」

 

「殴ったり蹴ったり半殺しにしたり、シてやったり……」

 

「警務隊、こいつだ」

 

「ただ」

 

 習志野が、体をぴったりと土居内に密着させる。

 

「司令官になら、抱かれてもいいと思っている」

 

「おい習志野、悪ふざけもいい加減に――」

 

「ふざけてはいない。本心だ」

 

 

 

 富山は寝袋の中で目を開いていた。

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