りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す! 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
新発田駐屯地・食堂――
「マジで?」
「はい……」
霧本は頭を抱える。
「あいつの好みなら、富山ちゃんが一番可能性あったんだけどなぁ……」
「そうなんですか?」
新発田が霧本に訊く。
「あいつ、がさつで色気の無いのが好きなんだよ。結構変わった奴だった」
霧本が高校時代を回想する。
「私はがさつに見られていたのでしょうか……?」
市ヶ谷が呟くと、霧本が反応した。
「いや、あいつの好みが変わったんだきっと」
「そうですよね……そうでなきゃ」
新発田が呟く。霧本は目ざとく反応した。
「あいつが何かしたの?」
「いえ、富山士長に告白されたらしいのですが、振ったとか」
霧本が軽くショックを受けた。
「マジか。あいつ、何をどうやったらそんなにモテるんだ? こっちは男っ気無いのに……もうあと2年でアラサーなのに……」
「大変ですね……」
久居が呟いた。霧本は頭を振るい、市ヶ谷を見る。
「で、佳樹の事はどう思っているの?」
「言わなきゃ、駄目ですか?」
「ここまで来て焦らす? あたし、焦らしプレイは好きじゃないんだよね。もっとしゃきっとしろって」
市ヶ谷は再びうつむき、口を開く。
「……嫌いではないです」
富山がくしゃみをした。一瞬土居内と習志野の体がビクッと震えたが、振り返って富山が起きていないのを見た。
「習志野、本気か?」
「本気だ。でなきゃこんな事はしない」
そして、習志野は己の顔を土居内に近付ける。しかし、土居内は止めた。
「……司令官?」
「悪い。俺は今別の奴が好きなんだ」
「市ヶ谷さんか?」
「ノーコメント」
習志野は土居内から離れ、双眼鏡を再び覗いた。
「なら、私は引くよ。後武運を」
「サンキュ」
「本当か?」
「ええ。この先で、網が掛けられた穴を見つけたんです。もしかしたら、何処かの特殊部隊が――」
「あれか。でかしたぞ」
「ははぁ、ありがたき御言葉」
霧本は市ヶ谷の肩を掴んだ。
「何だ、相思相愛なら付き合っちゃえよ!」
「そ、そんな! 第一、上官と下士官での恋愛は……それに同じ部隊に属していたら指揮系統が……」
市ヶ谷は顔を真っ赤にしてうつむいた。霧本はため息をつく。
「はぁぁ、変な所で真面目なんだから。ま、あいつと似てると言えば似てるけど」
「…………」
市ヶ谷は黙っている。ちなみにヒトマルと練馬は既に粛清された模様。
「司令官」
習志野が呼ぶ。
「ああ。マグマ軍の歩兵部隊だ、1個分隊分だな。こっちに向かってきている」
土居内はM14自動小銃の狙いを動かす。夜間暗視装置越しの緑色の視界の中、真っ白に浮かび上がるマグマ軍歩兵と近衛兵を捕捉した。
「習志野、2人を叩き起こせ」
「了解」
習志野はM4 A1自動小銃を傍らに置き、富山とコノエを文字通り叩き起こした。
富山とコノエは瞬時に起き上がり、銃を手にする。
「富山は無線で航空支援を要請、習志野は脱出口を確保、コノエはここで俺と狙撃だ」
土居内の指示で3人は動く。習志野は奥へ下がり、M4 A1自動小銃の銃床で天井を破壊、富山は長距離無線機を起動させた。コノエはM95対物狙撃銃を持ってきて、土居内の隣に伏せる。
「俺は先頭の歩兵を」
「なら、私は近衛兵を撃つ」
それぞれ狙いを定め、引き金を引いた。
「で、どーするの?」
「付き合ってもよろしいのなら……」
市ヶ谷は小さくなっていた。一方の霧本はふんぞり返っている。
「何許可を求めてんの? あたしはただの元カノで、『自衛隊に保護され、一時的にアルバイトしている民間人』よ? 何の権限も無いし、ここにいる皆だって市ヶ谷さんに刃向かえない、階級的に。あ、武器娘は例外だけど」
霧本は言う。
「日本国憲法にも恋愛の自由が明記されてんじゃん」
「……『結婚の自由』です」
「そうだったそうだった。防大卒は強いね」
「防衛大にこんな問題出ませんよ」
「ま、好きなら好きで付き合っちゃえ」
霧本は言い切った。市ヶ谷は深々と頭を下げた。
「それでは付き合わさせてもらいます」
「うん、何となくあたしが姑みたいなんだけど」
「ギュッギュッーギュ!(ヤポンスキーが撃ってきた)」
「マギューギュギャ!(同志が殺られた)」
ポイントマンと部隊長を同時に殺られ、マグマ軍歩兵分隊はパニックになる。銃声がした方へ闇雲にAK74自動小銃やRPK74軽機関銃、PKM汎用機関銃を乱射した。曵光弾がレーザービームのように夜の森を突き抜ける。
「馬鹿だな、発射炎で丸見えだっつうの!」
土居内は再び引き金を引いた。強烈な反動、薬莢が地面に刺さる。
習志野は天井を破壊し、上へと出た。そしてM4 A1自動小銃にサウンドサプレッサーを取り付け、射撃を開始する。
一方、富山は長距離無線機で応援を要請していた。
「マイクアルファよりハニーポッド・コントロール、敵に見つかった! 早く航空支援を!」
〔……駄目だ、マイクアルファ。貴様達のいる所はマグマ軍の完全支配地域だ、航空支援を送れない〕
「何だとぉ! 攻撃機は!?」
〔昨夜の空爆以降、マグマ軍の対空監視が厳しくなり、今MiGと交戦している。何とか踏ん張ってくれ〕
「無責任共が!」
富山が受話器を無線機に叩きつけた。無線機に受話器が当たり、跳ねる。
「富山! 上に上がって弾幕を張れ!」
M14自動小銃の弾倉を交換しながら土居内が叫ぶ。富山は了承し、89式小銃を持って上に上がった。そして習志野から少し離れた所で89式小銃を撃ち始めた。
「うわぁぁ! クソッタレめ!」
土居内が頭を低くし、監視所内に銃弾が飛び込んできた。マグマ軍歩兵はじりじりと距離を詰めてくる。
「くそっ! ここまでか……」
土居内はM14自動小銃のチャージングハンドルを引く。コノエは89式小銃を撃ちまくっていた。
「特殊作戦群の西井3尉だ」
「中央混成連隊、ブラボーチームの富士1尉です、後はよろしく頼みます」
「了解」
ブラボーチームは特殊作戦群と交代し、迎えのヘリとの合流地点へ向かった。
「ぞろぞろ出てきやがって! ゾンビか!?」
「銃を撃ってくるから、ゾンビより厄介だな」
富山と習志野は撃ちまくった。弾き出された薬莢が枯れ葉の上に積もっていく。
ゾンビの如くマグマ軍歩兵は大挙してはやってくる。いくら弾があっても足りない、その上マグマ軍歩兵は銃を撃ってくる。
「……っぐはっ!」
「富山士長! 司令官、富山士長が撃たれた!」
「何!?」
富山の右肩の迷彩服がみるみる赤く染まっていく。
「大丈夫だ! 右肩に1発喰らっただけだ!」
富山はリュックサックからガムテープを取り出し、自分の右肩に巻いて止血した。そして左手で9mm拳銃を撃つ。
「全く、タフな野郎だな」
土居内は呟き、M14自動小銃を構え直して発砲した。
するとそこへ、ジェットエンジンの音が響いた。
〔マイクアルファ、迷惑を掛けたな。待ってろ、今すぐ吹っ飛ばしてやる〕
それは航空自衛隊のF-35AJだった。2機は急降下し、25mmガトリング砲で対地射撃を開始した。土煙が上がり、歩兵がミンチになる。
「畜生、何とか帰れそうだぜ、相棒」
「いつから私は貴様の相棒になった?」
「ノリが悪いな」
夜間だが、F-35AJのパイロットは正確にマグマ軍歩兵の集団を機銃掃射する。機首下の赤外線索敵装置で熱源を捉え、腕が4本見えたら操縦桿のガンコントロールスイッチを引く。左主翼付け根に内蔵された25mmガトリング砲が唸り、密集していた歩兵達が挽き肉と化する。
「……ハンバーグ食いてぇ」
「正気か?」
土居内は長距離無線機を背負い、M14自動小銃とM16 A4自動小銃を両手に、コノエはM95対物狙撃銃とレーザー誘導装置を背負って上に上がった。
すると、ヘリのローター音が聞こえた。土居内は叫ぶ。
「隠れろ!」
頑丈そうな大木の幹に隠れると、ヘリがやってきた。巨大な胴体、下に垂れ下がった短翼――
「ヤバい、ハインドだ!」
それはマグマ軍の攻撃ヘリ24號だった。隠れている土居内達へ12.7mmガトリング銃を撃ってくる。
幸い大木の幹を貫通していないが、時間の問題だった。
「くそっ、こうなったら!」
土居内はM16 A4自動小銃に付けられたM203グレネードランチャーに40mmグレネード弾を装填した。そして左手に持ち替え、ハンドガード上面のランチャーサイトを起こす。幹から左半身を出し、M16 A4自動小銃の銃床を左肩に当てて右人差し指でM203グレネードランチャーの引き金を引いた。
巨大な40mmグレネード弾が攻撃ヘリ24號目掛けて飛んでいき、強力なダウンウォッシュで狙いが外れ、地表のマグマ軍歩兵達が吹き飛んだ。
「クソッタレめ! 今度こそ最後か!?」
土居内は叫んだ。攻撃ヘリ24號の12.7mmガトリング銃がこちらを向いている。土居内は死を覚悟した。
しかし、攻撃ヘリ24號に何かロケット弾のような物が突っ込み、攻撃ヘリ24號は火達磨になった。キャビンから燃え盛る歩兵が飛び出し、炙り焼きになっていった。
「一体、何が――」
土居内が呟く。すると、森の向こうから再びヘリがやってきた。しかしそれは見覚えがあった――
「あれは、OH-1とUH-60JA、それにコブラやアパッチ……」
それは陸上自衛隊のOH-1偵察ヘリやAH-1S攻撃ヘリ(改)、AH-1S攻撃ヘリ、AH-64D戦闘ヘリ、UH-60JA汎用ヘリの編隊だった。
〔全く、こんな夜中に――〕
〔助けに来ましたわ、司令官〕
〔よぉし、マグマ軍を殲滅だー!〕
AH-1S攻撃ヘリのガナー・茜がボタンを押し、70mmロケット弾を乱射した。歩兵が次々吹き飛んでいく。
〔若菜、ロケット弾は撃ち止めだよ〕
〔あとはガンで!〕
AH-1S攻撃ヘリのパイロット・若菜が機首下の20mmガトリング砲M197で対地掃射を開始した。
そしてUH-60JA汎用ヘリが地面スレスレでホバリングした。
「早く!」
UH-60JA汎用ヘリのキャビン左側で、金沢がブローニング M2重機関銃を撃ちまくりながら叫ぶ。その隣では富士と豊川が89式小銃を連射している。
「急げぇ!」
土居内がM16 A4自動小銃を3点バーストで撃ち、習志野の肩を借りた富山が乗り込む。そして土居内とコノエも乗り込んだ。
「助かった!」
「まだです! 掴まって!」
明野が叫び、ペダルを踏み込む。UH-60JA汎用ヘリのターボシャフトエンジンが唸り、上昇した。
新発田駐屯地・ヘリポート――
「来た!」
久居が叫ぶ。やがてヘリ編隊が姿を表した。そして次々着陸し、UH-60JA汎用ヘリからぞろぞろ降りてくる。
「急いで!」
三宿や衛生科隊員、医務官が富山に駆け寄り、担架に載せて運んでいった。
そして土居内が降りると、市ヶ谷が抱き付いた。
「おい市ヶ谷!?」
「良かったです……司令官が無事に帰ってきて……」
「市ヶ谷……」
土居内は市ヶ谷を優しく抱き締めた。