りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す!   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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41話 ヒューミント

 土居内と市ヶ谷が、ちょっとボロいアパートの前に立っている。

 

「ここが新居だ」

 

「……改めて、よろしくお願いしますね、佳樹さん」

 

 話は、1日前に遡る――

 

 

 

「潜入作戦、ですって?」

 

「そうだ、土居内1尉」

 

 新発田駐屯地・第1官舎 司令官室にて、津田沼陸将補がコーヒーを啜る。

 

「しかし、南関東攻略作戦を2週間後に控えているのです。我々は即応機動部隊として――」

 

「いや、お前を筆頭に8人、東京に潜入し任務をこなした後、南関東攻略作戦で攪乱活動を行ってほしい」

 

 土居内の言葉を遮り、津田沼陸将補がそう言った。土居内は目を細める。

 

「ヒューミント(人間による情報収集活動)とサボタージュ、ですか? そいつは情報保全隊とか中央情報隊の仕事では――」

 

「2つともシギント(電子機器による情報収集活動)専門部隊だ。それに、サボタージュ訓練は受けてない。レジスタンスではないからな」

 

 土居内は頭を掻く。

 

「うちもスパイ活動とかサボタージュの訓練してませんよ」

 

「心配すんな。写真を撮ってくるだけだ。それくらいだったら、スカッドハントの要領で出来るだろう?」

 

 そう言って津田沼陸将補はコーヒーを飲み干した。土居内は溜め息をつく。

 

「……分かりましたよ。作戦の詳細のコピーを送って下さい」

 

 それを聞き、津田沼陸将補はニヤリと笑って立ち上がった。

 

「お前の部隊なら楽勝だろうな。あと、コーヒーご馳走様」

 

 津田沼陸将補は空のカップを市ヶ谷に手渡した。

 

「いえ、お粗末様です」

 

 市ヶ谷がカップを受け取った。

 

 

 

 やがて、部屋に置いてある業務用コピー機が唸りを上げた。

 

「どれどれ……」

 

 土居内が内容を見る。

 

 マグマ軍によって占領されている東京に、既に潜入している公安と合流、彼らが確保したアパートを拠点に、野党側についての裏付け調査を行うという内容だった。

 

「なるほど、政治が絡んでいたか」

 

 土居内は紙を丁寧に折り、放送用マイクを手にした。

 

「次に呼ばれる者は、直ちに司令官室に集合せよ。市ヶ谷、富士、習志野、富山、松本、鯖江、朝霞、コノエ」

 

 

 

「富士1尉、市ヶ谷3尉、習志野1曹、松本1曹、朝霞2曹、鯖江3曹、富山士長、コノエ、集合しました」

 

 富士を筆頭に、コノエ以外敬礼した。コノエはソファに座って腕を組んでいる。

 

 土居内はカーテンを閉め、会議室から運んできたプロジェクターの電源を入れた。真っ白な壁1面に東京の地図が映し出される。

 

「今回選抜したお前達には、東京へ潜入してもらう」

 

 8人がざわつく。

 

「潜入って、今東京はマグマ軍に――」

 

「そう、マグマ軍占領下の東京に潜入、そして南関東攻略作戦にて攪乱活動を行う」

 

 富士の言葉を遮り、土居内が説明した。

 

「大丈夫だ、現地に公安がいる。俺達は、公安が確保しているアパートを拠点に動く。ただ、味方の支援は無いから危険だ。今回選抜したお前達なら、成功させられると思っているが、嫌なら辞退しても構わない。それを引き留めたりはしない」

 

 土居内が7人を見る。そして一番最初に、市ヶ谷が口を開いた。

 

「勿論、ついていきますよ、佳樹さん」

 

 富士がふっと息を吹き出し、肩をすくめた。

 

「私は元レンジャー教官よ? そんな問い掛けに、意味は無いわ」

 

 習志野が腕を組んだ。

 

「当然だ。司令官について行く。イラクで共に戦った仲だしな」

 

 富山がパキパキと指を鳴らした。

 

「サイキョーのあたしに、任せておきな!!」

 

 松本が力強く頷いた。

 

「勿論。潜入なら慣れている」

 

 鯖江がふふっと小さく笑った。

 

「司令官、その質問はナンセンスだよ」

 

 朝霞が咳払いし、敬礼した。

 

「勿論、任務は遂行します」

 

 土居内は7人を順に見、敬礼した。

 

「全員、志願ご苦労。そうこなくっちゃな」

 

 すると、コノエがソファから立ち上がった。

 

「おい、私はどうすればいいんだ? 東京に行くのは御免だからな」

 

 土居内は敬礼を解き、コノエに向かって口を開いた。

 

「ま、お前は日本に亡命した扱いだからな。元仲間と会いたくないのは分かる。ここにいて、マグマ軍の慣習とかをアドバイスしてくれ」

 

 コノエは腰に手を当て(2本だけ)、目を閉じ、そして開いた。

 

「ふん、分かった。それだったら良いだろう」

 

 土居内は思わず苦笑した。

 

「本当、ツンデレだな」

 

 

 

「佳樹さん、これ転覆しませんよね……?」

 

「どうだろうな。ま、溺れたら俺が人工呼吸して起こしてやるよ」

 

「……バカップル」

 

 数日後、太平洋は大荒れだった。暗闇の中、伊豆半島沖合に浮かぶ、海上自衛隊の輸送艦〈くにさき〉の艦尾ウェルドックに、2艘のゴムボートが浮かんでいる。

 

 土居内達は撥水加工を施した、特殊な迷彩服を着、AKS74自動小銃を手にしていた。

 

「必要な物資は、陸路にて既に運び込まれている。三浦に着いたら、手筈通りにな」

 

「了解」

 

 土居内は、津田沼陸将補に向かってラフに敬礼した。

 

 エンジン始動、ゴムボートはゆっくり〈くにさき〉から出て行く。全通甲板の右舷端に集まった中央混成連隊や中央即応連隊の隊員達が手を振り、土居内達を見送った。

 

 

 

 中部国際空港に、次々戦闘機が着陸する。南関東攻略作戦を聞きつけ、世界中から支援のために軍が集まっていた。

 

 イタリア空軍のユーロファイター EF-2000が着陸し、沖合のイギリス海軍の最新鋭航空母艦〈クイーン・エリザベス〉からF-35Bが発艦する。

 

「全く奇妙な光景だ」

 

「同感です」

 

 名古屋港・コンテナターミナルにて、陸上自衛官達が話す。

 

 目の前には、チャレンジャー2やM1 A2 エイブラムス SEP、アリエテ、レオパルト2 A6、AMX ルクレール、T-90、PT-91、レオパルトC2、M2 A2 ブラッドレー、BTR-80、BMP-3と、世界中の機械化部隊が集まっている。

 

「何だって、こんなに……ロシアまで支援してくるなんて、どうかしてますよ」

 

「北方領土の件で、恩を売っておきたいんだろうな。他の連中もまた然りだ。中国まで出てこなかったのは不幸中の幸いだが」

 

 

 

〔コンタクト〕

 

 航空自衛隊 第305飛行隊のF-15MJ イーグルの編隊が、能登半島沖でとある航空機の編隊と合流した。それは、Su-34 フルバック、Su-35 フランカーから成る、ロシア空軍の編隊だった。F-15MJ達は、警戒のために後ろに回る。

 

(ロシアの連中、日本を支援するなんて、どういう風の吹き回しだ?)

 

 飛行隊長は、ヘッドアップディスプレイ越しに見えるSu-34を睨んだ。

 

 

 

 明け方、土居内達は三浦海岸に上陸した。ゴムボートを茂みに埋めて隠し、撥水加工の迷彩服を脱いでリュックに仕舞う。そして、その辺にあった白い国民車2台を盗み、ナンバープレートを付け替えた。適当にAKS74自動小銃を投げ捨て、下道だけで東京へ向かった。

 

 

 

「という事で、指揮官代行になった守山よ。元小銃小隊長だから、至らない点もあるでしょうが、よろしくお願いいたします」

 

 守山が頭を下げる。隊員達は拍手をした。

 

 ここは輸送艦〈くにさき〉の全通甲板、中央混成連隊は、〈くにさき〉に搭載されたLCAC(強襲揚陸用ホバークラフト)にて鎌倉市から上陸し、一気に国道1号線や東名高速道で東京へ攻め込む予定だ。

 

 ヘリコプターは、隣の護衛艦〈かが〉に搭載されている。なので、ヘリ担当のコブラやアパッチ、木更津姉妹、明野は〈くにさき〉にはいない。

 

 

 

 東京に、土居内達は到着した。マグマ軍占領下でも、街には人が溢れている。しかし、至る所にマグマ軍のBTR-80装輪装甲車やBMP-2歩兵戦闘車、ジープ、そしてAK74M自動小銃やAN94自動小銃を携えた歩兵や近衛兵がいる。

 

「まるで、ナチ占領下みたいだ」

 

 白いセダンタイプの国民車の運転席で、土居内は呟いた。

 

 街を走る車の殆どが白い国民車だった。日産 スカイライン(V35型)とトヨタ セルシオを足して2で割ったようなデザインの国民車が溢れる街並みは、気味が悪い。最も、今の日本も色違いのトヨタ プリウスで溢れているので大差無いが。

 

 

 

 やがて、土居内達は拠点となるアパートへたどり着いた。2階建てで合計8部屋、典型的なアパートだ。

 

 駐車場に国民車を止め、土居内達はアパートの階段を登る。すると、2階の廊下にスーツ姿の男が立っていた。オールバックで、白髪が混じっている。ざっと40代に見えた。

 

「あんたが新聞記者の土居内か?」

 

 スーツ姿の男が言った。土居内も言い返す。

 

「確か、タクシードライバーの箱崎だったか?」

 

 箱崎と呼ばれたスーツ姿の男は、土居内に鍵を投げ渡した。

 

「端にある203と204を使え。前の奴が丁寧に片付けてある」

 

「ご協力どうも」

 

「全く、マグマ軍の所為で商売上がったりだ。売り上げが左右されやすい職業を撤廃する条例が、東京都議会で可決された。マグマ軍が政治を仕切っているんだ。その内、国会までも……」

 

 土居内は廊下を進み、口を開いた。

 

「何のために俺達ジャーナリストがいると思っているんだよ」

 

 そして、部屋へと入った。

 

 

 

 輸送艦〈くにさき〉 甲板下格納庫――

 

「武器娘って何なのかしらね?」

 

「どうしたんです、いきなり」

 

 89式装甲戦闘車の砲塔・車長用ハッチに取り付けられたブローニング M2重機関銃を撫でながら、砲塔に腰掛けたタイガーが呟いた。それに、軽装甲機動車に搭載した中距離多目的誘導弾の照準装置の点検をしていた久居が反応した。

 

「あたし達は、云わば兵器の妖精、つまり人間ではない。何の為に、どうやって生まれたのか、自分自身も分からない。これが嫌なのよ」

 

 久居は黙っている。

 

「いつか、要らないと言われてスクラップ処分されてもおかしくない……あたし達は、人間ではなく、『モノ』だから」

 

「それは違います!」

 

 久居が大声を出した。

 

「司令官はそんな人じゃないって、タイガーさん自身分かっているでしょう!?」

 

「……でもね、司令官以外はそうじゃないし、あたし達武器娘が危険な存在だとしたら、彼はどう行動すると思う?」

 

 

 

 アパートの2階、一番端の部屋――

 

「佳樹さん、さっきの人は?」

 

 2DKの部屋に8人集まっていた。そして今、市ヶ谷が土居内に質問をしている。

 

「あの人、タクシードライバーには見えなかったのですが……」

 

「その通りだ。彼は公安の人間だ」

 

 そして、土居内は7人に対して口を開いた。




早速多国籍軍の登場です。何かもう話がややこしくなってまいりました。

今までの伏線、回収しきれてねぇ・・・!
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