りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す!   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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42話 共産主義

 土居内は目覚めた。見慣れぬ木製の天井、慣れない煎餅布団、左から朝日がうっすらと差し込み、左隣に富山が、右隣には市ヶ谷が寝ている。

 

 枕の下にはM9 A1自動拳銃、壁にはPP-90短機関銃やAK12自動小銃が立て掛けられている。

 

「先輩、起きたか?」

 

 窓際で、サウンドサプレッサー付AKS74U自動小銃を抱えて座る習志野が言った。

 

 土居内は思い出し、応える。

 

「おはよう、習志野」

 

 

 

 昨夜、204号室――

 

「俺達はスパイとしてここにいる。勿論、自衛官だとばれると色々厄介だ。そこで、役を演じてもらう」

 

 土居内は言い切った。7人は集中する。

 

「俺はもう、新聞記者という役を持っている。市ヶ谷は俺の妻、習志野は俺の後輩、富山は市ヶ谷の妹を、富士と松本は雑誌記者、鯖江と朝霞は姉妹を演じろ」

 

 市ヶ谷を除き、皆頷く。市ヶ谷は頬を赤らめ、口を開く。

 

「演じるなんて……そんな……」

 

 土居内は言う。

 

「適任だからだよ。基本的にここにいて情報収集及び整理をしてもらうが、家にずっといる言い訳になるだろう?」

 

「確かに、そうですが……」

 

 市ヶ谷は落ち込んだ。

 

 

 

 土居内は起き上がり、習志野に話し掛ける。

 

「お前、一睡もしないで見張ってたのか?」

 

「富山士長と交代だ。司令官と市ヶ谷3尉の、あんな幸せそうな寝顔を見たら、起こすのが億劫だった」

 

「そうか……それは悪い事をした」

 

「いや、謝罪はいらない。ただ」

 

「ただ?」

 

 そう言って、習志野は自らの舌を舐めた。

 

「新発田駐屯地の近くに、おいしそうなスイーツバイキングの店が出来たんだ」

 

「……分かった、帰ったら奢るよ」

 

「おや、奢ってほしいと言ってないけど、それは嬉しい話だなぁ」

 

 土居内は、帰ったら習志野にC-1輸送機で大阪へ単身フリーフォールさせようと心に誓った。

 

 

 

 土居内はスーツに着替え、そして護身用のプラスチックナイフと一眼レフ、小型カメラを携帯し、ネクタイピン型隠しカメラを身に付ける。

 

「007みたいです!」

 

 『働いたら負け』と書かれた赤いTシャツを着た市ヶ谷が言う。あまりにも胸周りのボリュームがすごいため、へそが隠れない。

 

「ジェームズ=ボンドか。市ヶ谷3尉の年代なら、『ミッション・インポッシブル』だろう?」

 

 習志野が割って入った。土居内は市ヶ谷のTシャツをじっと見る。

 

「愛、そのTシャツは?」

 

「ああ、練馬3曹からもらいました。でも、何で『働いたら負け』なんですかね?」

 

「それはヒッキーとかニートの着る服だ(注・作者の個人的偏見が混じっています)。共産主義の街で着るなよ」

 

「はあ……でも、他にもらったTシャツは……」

 

 そう言って、市ヶ谷は鞄からいくつかのTシャツを取り出す。『主人は野獣』、『彼に○付けされました❤』、『恋人募集は終了しました』、『子○は旦那専用』、『私は司令官専用オ○○ー○』etc。これら以外にもあったが、さすがにまずいため省略する(色んな都合により、一部伏せ字になっています)。

 

「練馬ぁ! 帰ったらあいつをパラシュート無しのFF(フリーフォール)で福岡に落としてやる!」

 

 土居内は叫んだ。Tシャツの柄を見、習志野は目を逸らし、富山は顔を真っ赤にして震えている。

 

「でも、全部事実なんですよね……」

 

「愛! 余計な事言わなくていいから!」

 

 

 

「……隣は朝から元気な事」

 

 Yシャツのボタンを留めながら、富士が呟く。朝霞がコーヒーを淹れながら富士に問う。

 

「御幸さん、コーヒーです――私達は今日、どうすれば?」

 

「ありがと。そうねぇ、買い物行ってきてくれる?」

 

「買い物、ですか?」

 

「そう。出来るだけ多くの店を廻ってきて。私と亜衣璃ちゃんは街をぶらぶらしてくる」

 

 

 

〔住民の皆様にお伝えします。先日、三浦市にて、自動車盗難事件がありました。白の国民車で、登録ナンバーは6238-Xfq6-3392。目撃されたら、直ちに最寄りの親衛隊または国民警察へ――〕

 

 街中を、スピーカーを付けたマグマ軍のジープが走る。流れている音声は録音らしく、同じ抑揚で繰り返されている。

 

 土居内は、掛けた伊達メガネに付いた小型マイクとネクタイピン型隠しカメラでその様子を保存する。

 

「撮る必要、ある?」

 

 習志野が訊く。土居内は真顔で答えた。

 

「既にテレビ局(注・公安の事)も持ってるかもしれないが、情報は同じものが多ければ多い程信憑性が高まるのさ」

 

 そして、土居内は習志野の肩を叩いた。

 

「行くぞ。すっかり変わり果てた東京を見に」

 

 

 

 中部国際空港には今、あらん限りの軍用機が並んでいる。航空自衛隊のF-15MJやF-2A、F-35AJ、C-1、KC-46J、E-767、アメリカのF-22A、F-15E、F/A-18E/F、EA-18G、ロシアのSu-35、MiG-35、Su-34、Tu-22、それ以外にもユーロファイター EF-2000やラファール、JAS-39等が勢揃いしている。

 

「何とか間に合ったか」

 

「結構ギリギリでしたがね」

 

 整備員達が話す。駐機場の16機のF-2A バイパーゼロの主翼には、2発のAAM-3短距離空対空ミサイル、そして4発のAGM-88対レーダーミサイルと2本の増槽が吊り下げられていた。胴体下には、スナイパーポッドと本来F-4に付けるECMポッドがある。

 

「既存のF-2とF-4EJ改、RF-4EJを電子戦攻撃機に改修するなんて、2週間で出来る話じゃない」

 

「でも、こうして完了しましたし、良かったじゃないですか」

 

「上から残業代がめないと気が済まん」

 

 

 

 土居内と習志野は新宿の地下街を歩いていた。ここにいるのは、マグマ軍に追われた「非国民」達であった。

 

 共産主義体制下では自由に買えない食料や酒が法外的値段で売られている他、銃やドラッグ、さらには奴隷まで売られている。東京の、どの地下街にもかつての華やかさは無く、ホームレスやヤク中、ならず者、奴隷、娼婦と混沌を極めていた。

 

「一体……」

 

 習志野が呟く。土居内は何も言えない。

 

 すると、女が土居内の腕に絡んできた。

 

「あんた、中々の色男じゃないか。どう、今なら1回――」

 

 それは娼婦だった。薄い服を着、長い髪はちぢれて汚れまみれだった。

 

 土居内は腕を払う。

 

「悪いな、連れがいるんだ」

 

 そう言って土居内は、習志野を引き寄せ、彼女の尻を揉む。

 

 娼婦は舌打ちして離れていった。見れば、習志野は柄にもなく紅潮している。

 

「どうした?」

 

「先輩、いつまで尻揉んでるの?」

 

「あっと、すまん」

 

 土居内は手を離した。

 

 

 

 富士と松本は国会議事堂前に来ていた。いつもなら、数人の警察官がいるが、今は違う。マグマ軍の重戦車14號やBTR-80装輪装甲車、そして自動小銃や軽機関銃で身を固めた歩兵や近衛兵がずらりと並んでいる。

 

 2人は、今では使われていない特許庁ビルの最上階から見ている。議事堂前広場の周りに人々が集まり、視線の先には舞台がある。その上には近衛兵、そして20代の男女が全裸になって立たされている。

 

 松本は三脚でキヤノン製一眼レフを固定し、指向性マイクで音声を拾う。横では、富士がサウンドサプレッサー付PP-90短機関銃を構えて警戒している。

 

〔聞こえるか、素晴らしき国民達よ!〕

 

 壇上の近衛兵が、マイク片手に叫ぶ。群集はそれに呼応した。

 

 松本は、一眼レフの隣に、同じく三脚で固定したビデオカメラで録画を開始、一眼レフでの撮影も始めた。

 

〔ここにいるのは、我々日本平等国に楯突こうとした者達の生き残りだ。さて、この我々の平和を脅かそうとしたゴミは、どうするべきか?〕

 

『痛みを刻め!』

 

 群集が叫ぶ。すると、近衛兵は近くの歩兵に指示を出した。

 

 しばらくして、屈強そうな男が6人やってきた。サイガ自動散弾銃を手にした歩兵が舞台に登るよう促す。そして男達は、壇上に上がり、全裸の女を見る。

 

「…………」

 

 松本は黙っている。当然の成り行きだった。屈強そうな男達は人目もはばからず欲望を解放する。一方全裸の男は、マグマ軍歩兵達に鞭打たれ、蹴られ殴られ、生きているのが奇跡だった。いや死んでいるかもしれない。

 

「亜衣璃ちゃん、目に毒だよ」

 

 富士が話し掛けると、松本は一眼レフのシャッターを切りながら応えた。

 

「……見慣れているので」

 

 富士は何も言えなかった。

 

 

 

「ただいま」

 

「おかえりなさい、あなた」

 

 アパートに帰るなり、土居内はいきなり悶絶した。ばたんと倒れ、市ヶ谷が駆け寄る。

 

「ど、どうしました!?」

 

「いや……何か嬉しさが……」

 

「佳樹さん、いえ、あなた……」

 

「愛……」

 

「のろけるなら外でやれ!」

 

 富山がムードをぶち壊す。

 

 

 

 朝霞と鯖江が203号室に帰ってきた。エコバッグを肩から提げ、そしてうっすら汗を掻いている。

 

「どうしたの?」

 

 富士が問うと、朝霞がエコバッグをテーブルに起きながら言った。

 

「何せ、地下鉄が動いていないから歩きかバスしか無くて……」

 

 それを聞いた富士は驚いた。

 

「地下鉄が、動いていない……?」

 

 

 

「いいか。先程連絡があった。場所は浅草、また民利党と日本平等党の連中だ。俺達は、既に潜入している公安の連中の回収を行う。装備は――」

 

 共産主義の街に朝日が差し込む。長い1日の始まりだった。

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