りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す!   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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43話 東京

「状況を説明する」

 

 204号室に、8人が集まっていた。地図を床に広げ、雁首揃えてそれを覗く。

 

「今回の作戦は、料亭『菊花』。ここに野党の連中がやってくる」

 

「拉致るのか?」

 

「大問題になるぞ……とにかく、ここに今潜入している公安を回収し、入間方面へ脱出する」

 

「その後のサボタージュはどうするんですか?」

 

「そのまま実行する。サボタージュについては――」

 

 

 

 朝になった。ここは渋谷区 代々木、公安や防衛省のスパイの拠点のアパートがある。マグマ軍の爆撃を喰らったのか、半分に折れた東京都庁が朝日に照らされている。

 

「デートなんて、初めてですね」

 

「そうだな」

 

 新宿の街並みを、土居内と市ヶ谷が手を繋いで歩く。伊勢丹の角を曲がり、靖国通りを進めば、市ヶ谷駐屯地兼防衛省がある。

 

「ここです」

 

 突然、市ヶ谷が立ち止まり、細い路地を指差した。

 

「どうした?」

 

「この先に、私の実家があるんです」

 

 土居内はピクリと反応する。市ヶ谷は、その様子を見て微笑んだ。

 

「大丈夫ですよ、佳樹さん。私の両親はそんな堅い人ではありませんから」

 

「……やっぱり寄るんだ」

 

 土居内は、作戦の前に試練に直面した。

 

 

 

 市ヶ谷はずんずんと路地を進む。土居内は進む気がしなかったが、腹を決めて踏み出した。

 

「ここですよ、佳樹さん」

 

 靖国通りから3分ほど歩いた所で、市ヶ谷は立ち止まり、ある家を指差した。ちゃんと「市ヶ谷」と書かれた表札もある。

 

 そして、市ヶ谷は躊躇いもなくインターホンを押した。しかし反応が無い。

 

「……?」

 

 市ヶ谷は首を傾げながらもう一度押す。やはり反応が無い。

 

「留守かな……」

 

 市ヶ谷が呟くと、土居内は市ヶ谷の肩を叩いた。

 

「きっと出掛けているんだよ。また帰りに寄ろう」

 

「はい」

 

 その時、2人は気付かなかった。塀の内側におびただしい量の血痕があったのを。

 

 

 

 富山と習志野も出掛けていた。

 

「新宿とか、あたしには関係無いって思ってた」

 

 新宿陸橋の上で、富山が呟く。習志野も頷いた。

 

「私もだ。元来から人付き合いは苦手だから、人混みは嫌いだった。それに、人混みは犯罪の対象にうってつけだからな」

 

 だいぶ本数が減らされたJR山手線の車両が新宿駅へ滑り込んだ。

 

 

 

 土居内と市ヶ谷は、防衛省に辿り着いた。もう、防衛省は跡形も無く破壊され、かろうじて基礎が残っているだけだ。

 

「私の、かつての職場が……」

 

 市ヶ谷が口に手をあて、目を見開いている。土居内は手を合わせ、そして口を開いた。

 

「マグマ軍侵攻の際に、徹底的に破壊されたか、もしくは機密漏洩を防ぐために破壊したか……」

 

「そんな……!?」

 

「残酷だが、これが戦争なんだ」

 

 すると、市ヶ谷が土居内の胸に頭を当てた。

 

「愛?」

 

「佳樹さん……泣いていいですか?」

 

 土居内は返事をしなかったが、そっと市ヶ谷の髪を撫でた。

 

 市ヶ谷は、ただただ泣いた。

 

 

 

「そろそろだな」

 

 夕方、土居内は7人を集めた。

 

「状況は、朝説明した通りだ。浅草にて公安を回収した後、下道だけで入間へ向かう。公安の数は3人、全員女性だ」

 

 土居内は、料亭付近の地図を広げる。

 

「車両は二手、こことここで待機する。松本と鯖江はこのビルから狙撃援護、その後合流。国民車には俺と市ヶ谷、富山、ワンボックス車には富士、朝霞、習志野が搭乗。俺と習志野、富山で脱出口を確保する。異論は?」

 

 特に無さそうだ。

 

「ワンボックス車は、側に来て回収を担当する。その後は躊躇う事無くぶっ飛ばせ」

 

 土居内が説明を終える。土居内はAKS74自動小銃のチャージングハンドルを引く。習志野はAK12自動小銃を、市ヶ谷はAKS74u自動小銃を、富山はAK107自動小銃を、朝霞はAK74M自動小銃を、富士はPP-2000短機関銃を、鯖江はAN94自動小銃を、松本はVSS自動狙撃銃とPP-90短機関銃を用意した。

 

「長い1日になりそうだ」

 

 土居内達はアパートを出た。冬の空は澄み渡り、これから起こる惨劇を感じさせなかった。

 

 

 

 遂に、南関東解放作戦が開始された。既に静岡県東部や埼玉県北部に部隊が集結し、戦闘機や攻撃機が発進していく。

 

「オーライ、オーライ、ストップ!」

 

 輸送艦〈くにさき〉の艦尾ウェルドックにて、揚陸作戦用ホバークラフト・LCACに89式装甲戦闘車が搭載される。砲塔の車長用ハッチから顔を出すタイガーが慎重にバックさせ、新発田が指示を出す。

 

「確認するわ。先遣隊、FV、久居、豊川、新発田」

 

「先遣隊、全員いるわ」

 

 タイガーが確認する。LCACには89式装甲戦闘車と軽装甲機動車が1台ずつ積まれている。

 

「それでは、手筈通りにね」

 

 中央混成連隊・指揮官代行の守山が敬礼する。先遣隊の4人は敬礼を返した。

 

 

 

 土居内達は目的地に着いた。その料亭は、浅草通りから1本入った所にある、こぢんまりしているが高級なのはよく分かる感じであった。

 

 国民車は正面口から少し離れた所に、ワンボックス車は裏口から少し離れた所に止まる。松本と鯖江は料亭の庭が見えるビルの3階に隠れた。

 

〔こちらゴースト、準備良し〕

 

〔こちらヘイヘ、準備良し〕

 

「ビッグボス、了解」

 

 国民車の助手席で、土居内は腕を組む。運転席には市ヶ谷、後部座席には富山がいる。

 

「本当に、大丈夫なんですか?」

 

 市ヶ谷が尋ねる。

 

「大丈夫かどうかは分からない。少なくとも、今までの戦闘よりはリスクは少ないと思いたいが、それは『開けてびっくり玉手箱』だ」

 

 土居内は腕時計を見る。予定時刻の30分前だ。

 

〔ヘイヘよりビッグボス、黒のセダンが4台接近中〕

 

 突然、鯖江から連絡が入った。土居内はデジカメを用意しながら応える。

 

「オーケー、1匹目の迷える羊のご登場だ」

 

 やがて、4台の黒いセダンが料亭の前に止まった。後ろから2番目のセダンから、メガネをした初老の男が降りてくる。

 

「日本平等党の宮本党首だ。あとはマグマ軍幹部と民利党の蓮井代表だな」

 

 土居内がシャッターを切りながら言う。

 

「司令官、後ろから」

 

 後部座席の富山が呼ぶ。振り返れば、白いワゴン車が近付いてくる。土居内は、座席下からAKS74自動小銃を引き出した。富山も足元のAK107自動小銃に触れる。

 

 しかし、ワゴン車は横をすり抜けた。そしてセダンの代わりに、料亭の前に止まった。

 

「誰か降りました」

 

 市ヶ谷が言う。土居内も見るが、車の下の隙間からの足元しか見えない。

 

「革靴2人、ハイヒール1人……蓮井代表とボディガードか?」

 

 土居内は憶測するも、詳しくは分からなかった。

 

 

 

「失礼致します」

 

 女中達が給仕をする。その部屋には、日本平等党の宮本党首、民利党の女性党首・蓮井 さゆき代表、そして近衛兵と、赤髪の妙齢の女性がいた。

 

「全く、自衛隊の連中はしぶとい。その上、安田の爺さんもまだくたばらないとはな」

 

 宮本党首が口を開く。すかさず、蓮井代表が口を挟んだ。

 

「口が悪いですね。しかし、防衛省の稲木 直子、以前は脅威ではなく攻撃の対象だったのに、今ではすっかり有能な政治家に。実戦で能力を発揮するなんて――」

 

 すると、赤髪の妙齢の女性が口を開いた。

 

「とにかく、今は自衛隊と内閣の切り離しを考えるべきです。でなければ、『日本平等共和国』はいつまで経っても統一は出来ません」

 

「全くその通りですな」

 

 そんな中、廊下に出た女中の1人が、袖に隠していたボタンを押した。

 

 

 

「ビッグボスより全員、グリーンライトが点灯した。繰り返す、グリーンライトが点灯した」

 

 土居内は、手にしたポケベルが鳴ったのを確認、そしてAKS74自動小銃を手にして国民車を降りた。富山も降り、そして料亭の塀に設置された監視カメラを狙い撃った。

 

「行け!」

 

 土居内は小型無線機で突入を指示する。すると、料亭からPP-2000短機関銃を手にしたマグマ軍歩兵が飛び出してきた。土居内は素早くAKS74自動小銃で撃ち殺す。

 

 

 

 習志野と富士も裏口から突入する。出てきたマグマ軍歩兵や近衛兵、ボディガードを撃ち殺し、しかし女中は『無力化』し(肩の関節が外れる音がしたが、気にしてはいけない)、奥へ進む。

 

 すると、いきなり拳銃の銃声が響いた。それも、10発以上。廊下を進むと、襖がいきなり吹き飛んできた。習志野と富士は銃を構える。

 

 見れば、屈強な体型のボディガードが倒れている。そして頭に2発の銃弾が撃ち込まれた。

 

 習志野と富士が警戒すると、ホールドオープンした2丁のグロック 26自動拳銃を両手に持ち、和服に返り血を被った女中が現れた。習志野は癖で、女中の拳銃を両方とも払い落とし、壁に女中を叩きつけようとしたが、逆に習志野が壁に叩きつけられた。

 

「ぐっ!?」

 

 習志野は声にならない声を出し、女中を見る。すると、バタフライナイフを手に飛びかかってきていた。習志野は目を閉じるが、同時に富士が女中にPP-2000短機関銃を突き付ける。

 

「そこまでよ。私はね、脳漿が撒き散る光景を間近で見たくないのよ」

 

 女中は、富士の警告を聞いてバタフライナイフを離した。

 

「あんた、何処の人間?」

 

 女中は頬や口元の返り血を袖で拭きながら富士に訊いた。

 

「ただの運送業者よ。この後飛行場に行く予定の」

 

「なるほど……私は繭、よろしく」

 

 女中の言葉に、富士と習志野が反応した。繭というのは、公安から聞かされていた女スパイのコードネームだ。

 

 そこへ、土居内と富山が2人の女中を引き連れてやってきた。

 

「富士、習志野、これで全員だ」

 

 土居内の言葉に、富士が頷く。

 

「じゃあ、3人とヘイヘはこっちに乗せるわ」

 

 7人は二手に分かれた。

 

 

 

 土居内と富山は正面口へ戻り、国民車に乗り込んだ。

 

「いいぞ、出せ!」

 

 土居内が叫び、市ヶ谷がアクセルを踏み込んだ。国民車の4気筒直列ディーゼルエンジンが唸り、急発進した。

 

 そのまま浅草通りへ飛び出し、富士達のワンボックス車と合流する。

 

「このままノンストップ! 邪魔者は遠慮無くぶっ放せ!」

 

 土居内は叫びながらAKS74自動小銃を構え直した。

 

 

 

 すると、後方からパトカーのサイレン音が聞こえてきた。後ろを走るワンボックス車のラゲッジスペースにいる鯖江が反応する。

 

「司令官! 後ろからパトカーが!」

 

 見れば、後ろからパトカーが近付いてきている。白黒のトヨタ クラウンだが、車体には「東京国民警察」と書かれている。

 

〔面倒だ! 破壊しろ!〕

 

 土居内の指示に、待ってましたと言わんばかりに富士がMGL-140リボルバーランチャーという、米海兵隊の6連射型グレネードランチャーを構えた。そしてリアウィンドウ越しに射撃した。

 

 40mmグレネード弾がリアウィンドウを突き破り、パトカーに炸裂する。周りの国民車も数台一緒に吹き飛んだ。

 

「ありゃ、やり過ぎた」

 

 40mmグレネード弾を装填しながら富士が呟いた。

 

 

 

 やがて2台は、航空自衛隊 入間基地へ向けて疾走した。




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