りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す!   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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5話 夕暮れ

 夕方、土居内と富山は無事に富山駐屯地に帰ってきた。高機動車の低いディーゼル音に、市ヶ谷が反応する。

 

「司令官! お帰りなさい!」

 

 高機動車の運転席から降りた土居内は市ヶ谷に向かって返事をする。

 

「ただいま」

 

 

 

 中央混成連隊に割り当てられたのは、たった3つのテントだけだった。

 

「これだけで生活しろと?」

 

「仕方ありませんよ、司令官。今、全国の部隊がここ富山県に集結していますから」

 

 土居内はヘルメットを脱いで頭を掻き、悩んだ。そして口を開く。

 

「じゃ、俺は一番左端を使うから、後は適当に」

 

 そう言って一番左端のテントに入ろうとするが、富山が露骨に嫌そうな顔をしていた。

 

「何嫌そうな顔してんだ」

 

「何でこんなのと一緒に寝るのなんて御免だね」

 

「別のテントで寝ればいいだろうが。そんなに疑うんだったら、拳銃持っとけ」

 

「言われなくても!」

 

 富山はそう言って、右端のテントに入る。市ヶ谷はこんな2人に戸惑っていた。

 

「司令官、富山陸士長と何かあったんですか?」

 

「奴は俺が気に入らないみたいだ。ずっとあの様子だ」

 

「そうですか。でも、仲が悪いのは隊としてよろしくないですよ?」

 

「分かってるけどさ、奴はネコみたいで何をすればいいのかまるで分からん」

 

「とにかく、あんな態度じゃ駄目ですよ、司令官」

 

 市ヶ谷はそう言った。土居内は頬を掻く。

 

「そういうもんなのか?」

 

「そういうものです」

 

 そして土居内は思い出す。

 

「やべ、車両と銃のメンテと報告書の作成しねえと」

 

「手伝いましょうか?」

 

「ああ、頼む。あと、富山を呼んでくれ」

 

「司令官がお呼びになれば…」

 

「あいつが着替えの真っ最中だったらどうすんだ?」

 

 市ヶ谷は察し、富山のいる右端のテントに向かう。

 

 土居内はまず、近くの水道にホースを繋ぎ、ブラシを持ってくる。そして高機動車に水を掛け、ブラシで泥汚れを落とす。

 

 高機動車を洗った所で、富山が不機嫌そうにテントから出てきた。

 

「ったく、一体何の用だよ?」

 

「お前、89のメンテはしたのか?」

 

 それを聞き、富山は慌ててテントに戻る。きっとしてない、土居内はそう思った。

 

 次に土居内はブルーシートを地面に敷き、その上で89式小銃の分解を始める。まず薬室に弾が残ってないか、ボルトハンドルを引き切って指を突っ込んで確かめる。次にドットサイトを取り外して被筒(ハンドガード)を分解、そこからグリップの辺りにあるピンを抜いてアッパーレシーバーとロアレシーバーに分ける。そしてボルトと銃身、ガスチューブを引き抜いた。細い棒に専用の洗剤を染み込ませた柔らかい布を巻き付けて銃身やガスチューブに残っている火薬の燃えカスや煤を拭き取る。同じことをボルトでも行い、ガンオイルを塗布する。ブルーシートの上に並ぶパーツを先程とは逆の手順で組み立て、ドットサイトを取り付ける。最後にボルトハンドルを引いて作動を確認、空薬莢を入れて引き金を引いて最後の確認をし、分解清掃を終える。

 

 その一部始終を、市ヶ谷は土居内の隣で無言で見ていた。

 

「早いですね」

 

「そうか? 空挺団にはもっと早く分解出来るのがいたけど」

 

 市ヶ谷は言葉を失う。いや、後方勤務だから出来なくて当然だ、そう市ヶ谷は自分に言い聞かせる。

 

 その頃に、富山がテントから出てきた。

 

「終わったよ、これでいいんだろ?」

 

「ああ。ちゃんと寝る前に銃のメンテはしとけ、命を預ける相棒だからな。それと、ちゃんと飯食って風呂入れ」

 

 その発言に富山は赤面する。

 

「何言ってんだ、このセクハラ司令官!」

 

 しかし、富山の腹が鳴った。土居内は需品科のいる方を指差し、こう言った。

 

「言ったろ? あっちで炊き出ししてるから貰ってこい」

 

 富山はさらに赤面し、何か言いたげだったが、素直に需品科のいる方に向かう。

 

 市ヶ谷は呆気に取られて富山の後ろ姿を見送る。そして思い出す。

 

「司令官は食べなくていいんですか?」

 

「ああ。今回の報告書を書かないと。飯だったら糧食で済ませるよ」

 

 市ヶ谷はため息を漏らす。

 

「司令官? 自分で『ちゃんと食べろ』とおっしゃってましたよね?」

 

 土居内は言葉が詰まる。市ヶ谷は一瞬微笑み、土居内に敬礼する。

 

「では司令官の分も一緒に貰ってきます。私もお腹ぺこぺこですし」

 

「ありがとう、市ヶ谷」

 

 土居内は市ヶ谷に向かって微笑み、テントの中に入る。LED照明を骨組みにぶら下げ、余った木箱で簡易的な机と椅子を用意し、宿営用野戦ベッドを広げる。この時期の日本海側は夜が冷えると、レンジャー教育課程の教官が言っていたのを思い出し、ブランケットも用意した。

 

 そして木箱で作った机の上にノートパソコンを広げ、ワードを新規作成した所で、報告書を誰に出せばいいのか迷った。小隊長をしていた時は中隊長に出し、それを連隊長がチェックしていた。

 

 しかし、今や土居内が連隊長、しかもどこの方面隊に所属しているのかも分からない。

 

 悩みながらも報告書を書き進めると、外から声がした。

 

「市ヶ谷です」

 

「入っていいぞ」

 

 市ヶ谷がテントに入ってくる。両手には複数のレトルトパック。

 

「炊き出しは?」

 

「単に糧食を湯煎してるだけでした…」

 

「そうだったか。ま、2型ならまだましだな」

 

 それは陸上自衛隊が使用している戦闘糧食 2型(通称・パック飯)だった。その名の通りに、ただのレトルト食品で、袋は暗緑の迷彩が施されている。

 

「ほう、ウィンナーカレーとビーフシチューか」

 

「ええ、お好きな方を」

 

「市ヶ谷、お前から選んでいいって」

 

 すると、市ヶ谷はウィンナーカレー、白飯、海苔を選んだ。必然的に土居内は残ったビーフシチューと白飯、炭焼きチキンを選ぶ。レトルトパックの封を開け、その中にフォークやスプーンを突っ込んで食べる。

 

「そういえば、今日の午前中に俺が保護した女性はどうなったんだ?」

 

 そのタイミングで、誰かがテントに入って来た。

 

「久しぶりね、佳樹」




あああ、陸娘以外を出しちまったー!

あと、89の分解シーンですが想像なので実際と異なります。
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