りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す!   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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49話 ほろ酔い

 土居内と市ヶ谷は、96式装輪装甲車の車内を洗っていた。

 

「司令官、掃除ですか?」

 

「ああ。日頃こいつに世話になっているからな」

 

 そう言って、土居内はベンチシートを拭く。朝霞は96式装輪装甲車の周りをぐるりと一周する。フロントには小さく「中混連 小銃班 WAPC 2号」と書かれ、側面には大きな白い文字「沙」と書かれている。

 

「そういや、あの饅頭騒動はどうなったんだ?」

 

 土居内が尋ねると、朝霞が満面の笑みを浮かべて答えた。

 

「犯人を処罰しました」

 

「……大宮か」

 

 土居内は全てを察し、掃除を再開した。

 

 

 

「あの、そろそろ降ろしてもらえませんか?」

 

「駄目」

 

 新発田駐屯地内のもみの木に、縛られた大宮が吊されている。そして松本と鯖江が見張っていた。

 

 ちなみに、大宮の首には「私が犯人です」と書かれたプラカードがぶら下がっている。

 

 

 

 相模湾、海上自衛隊 護衛艦〈たかなみ〉CIC(戦闘情報中枢)――

 

「あれが、新種のマグマ軍!?」

 

 発艦したSH-60K対潜哨戒ヘリからの映像が、正面モニターに表示される。

 

「Standing wave(護衛艦たかなみ), this is Sakura(SH-60K). Fire mission, target No.β(新種マグマ軍) Approved!! Approved!!」                                      映像を中継するSH-60Kから射撃許可が舞い込む。

 

「よし……対地戦闘ぉぉ!CIC指示の目標!!うちーかた、始めっ!」

 

「主砲撃ちぃー方始めぇー!」

 

「主砲発砲!」

 

ロクマルからの攻撃許可を受け、艦長が号令をかける。その号令は砲術長から砲術士に伝わり、砲術士は管制卓に備え付けられたトリガーを取り出すと引き金を引いた。            すると、〈たかなみ〉の艦首に搭載された、127mm単装速射砲が砲弾を放ち始める。付近を航行していた多国籍軍の艦艇も同じくして対地射撃を始める。

 

 

 

「弾~~着!着!着!着!着!着!…」   「良いぞ、命中している!」

 

 〈たかなみ〉から発艦したSH-60K対潜哨戒ヘリが着弾観測を行う。

 

「主砲弾、全命中! 戦果は――」

 

 SH-60K対潜哨戒ヘリからの無線が途切れた。

 

 

 

「な、何だぁ……?」

 

 〈たかなみ〉CICでは、いきなりヘリからの無線が途切れて動揺が広がる。

 

 そして目標が光る。

 

〔艦橋からCIC! 目標が発光!〕

 

「何ぃ!?」

 

 そして、一筋の赤い光線が〈たかなみ〉へと伸びていく。そしてその光線は、〈たかなみ〉を真っ二つに切断した。

 

 

 

〔〈たかなみ〉が撃沈された!〕

 

〔何だ今のは!? レーザー光線が〈たかなみ〉を一刀両断した!〕

 

 各国の艦艇が驚く中、そこへ航空自衛隊の戦闘機が到着した。

 

「ワイバーンリーダーより各機! ASM飽和攻撃を開始する!」

 

 16機のF-2A バイパーゼロがASM-2空対艦ミサイルを一斉に発射する。さらにSu-34やトーネード IDS、F-16C等の多国籍軍の攻撃機や戦闘機もミサイルを発射する。

 

 ASM-2着弾、しかし目標は何事もなかったかのように悠々と山を降りる。

 

〔くそっ! これでも喰らえ!〕

 

 アフターバーナーを焚いて、超音速で接近したF-15MJ イーグルが主翼下の2発の500ポンド爆弾をリリースする。そして機首を上げて反転離脱する。

 

 しかし、どれも致命傷にはならなかった。

 

 

 

 土居内は96式装輪装甲車の掃除を終え、1人司令官室で居眠りしていた。ソファに横たわり、寝息をたてている。

 

(こんな所に無防備で寝ていたら、手を出されるのに……)

 

 市ヶ谷が心の中でそう呟く。そして土居内に毛布を被せ、パイプ椅子を持ってきて腰掛けた。そのまま土居内の寝顔を観察する。

 

 しばらくすると、ノックもせずにキューマルとナナヨンが入ってきた。

 

「あら、市ヶ谷さん」

 

「お……お邪魔でしたか?」

 

 ナナヨンが書類を片手にし、キューマルが顔を真っ赤にしている。

 

「へ!? いや、そんな! ねぇ!」

 

 市ヶ谷も顔を真っ赤にする。それを見、ナナヨンが溜め息をつく。

 

「全く、今に始まった仲じゃないのに。あなた達がいつくっつくか、皆で賭けてたくらいよ」

 

「え、そ、そうなんですか?」

 

 市ヶ谷が真面目に訊く。

 

「いや嘘よ。本当は誰と司令官がくっつくかという賭をしてね、そしたら皆答えが違ったり殴り合いになったり……」

 

「冗談ですよね?」

 

「酒の席の話よ。ほら、いつだったかあなたと司令官が外泊した日」

 

「あぁ……」

 

 市ヶ谷は思い出す。あれは確か、愛知・長野南部解放作戦の数日前だった。作戦会議の為に何度も何度も新発田駐屯地と金沢城跡を往復するのが億劫になり、土居内のおごりで近くのビジネスホテルに2部屋借りて泊まった事がある。その時密かに市ヶ谷が「同じ部屋だったら……」と考えていたのは国家機密である。

 

「あの時、近所の居酒屋行って、確か久居ちゃんが『司令官さんは誰とお付き合いするのでしょうね?』と言ったのが発端だったわね?」

 

「確か……」

 

 キューマルが肯定した。

 

「それで――」

 

 

 

「司令官さんは誰とお付き合いするのでしょうね?」

 

 久居のその一言に、場が凍り付く。

 

「……逆に訊きますが、久居士長は誰と交際すると思います?」

 

 新発田が尋ねてみる。すると、久居は馬刺を一口運び、味わって飲み込んでから答えた。

 

「一番可能性があるのは、ナナヨンさんですね♪」

 

 その言葉に、再び場が凍り付く。ナナヨンが手にしたジョッキから、ビールがダバダバとこぼれる。

 

「そ……」

 

 ナナヨンがジョッキを置いて立ち上がった(注・お座敷です)。

 

「そんな訳無いでしょ!? 私と司令官は、ただの男女よ!」

 

「それ、誤解招きそうなので止めてもらえます?」

 

 葵が冷静に言い、くいっとビールを胃へと流す。

 

「だいたい、武器娘である私が、人間の司令官となんて……」

 

「武器娘って何ですか?」

 

「今ノリで出てきたのよ! とにかく、司令官とお付き合いなんて……嫌だ、濡れてるじゃない」

 

『え!?』

 

 ナナヨンの爆弾発言に、全員が驚く。一部は顔を真っ赤にしている。

 

「何処と勘違いしてるのよ! さっきこぼしたビールが、私のスカートにかかってるって話よ!」

 

 そしてナナヨンは残ったビールを一気に飲み干し、ジョッキをテーブルに叩きつける。若干ひびが入ったが気にしてはいけない。

 

「それで、司令官とは何処まで!?」

 

 酔ったヒトマルが尋ねる。ナナヨンはヒトマルの額にチョップしながら口を開く。

 

「ぶちのめすわよ、ヒトマル。それに、私は付き合ってるなんて一言も言ってない」

 

「もう叩いてますぅ……」

 

 そんな中、呑気にエフエイチが口を挟んだ。

 

「でもナナヨンさん、司令官が乗り込む時に乙女な顔になるものね~」

 

「黙れ酔いどれ野戦砲! あんたなんかキャリバー(ブローニング M2重機関銃)で充分よ!」

 

「155mm対戦車クラスターを20km先からお見舞いするわよ?」

 

「望む所よ。そんなの74式の機動力でかわしてやるわ」

 

 ものすごく険悪な空気になったため、キューキューと豊川が止めに入る。

 

 そんな中、白ワインを呑んでいたタイガーが口を開いた。

 

「いい? 男なんてディスコ行けば大量に釣れるわよ?」

 

「……そんな時代は30年前に終わりましたよ」

 

 新発田が突っ込むも、タイガーは聞く耳を持たない。

 

「美貌と華やかさ、そしてボディライン! まずはこの3つよ! ナナヨンは……それも個性だわ」

 

「氏ね行き遅れの調達打ち切られ歩兵戦闘車」

 

 そう言ってナナヨンはおかわりのビールを半分ほど飲む。

 

「いい呑みっぷり~」

 

 茜が茶化す。そしてナナヨンは愚痴り始める。

 

「私だって気にしてるのよ……司令官が巨乳好きだって知ってるのよ……なのに私の胸は……メンテナンス先で『砲塔のようなお胸』とか言われるし(注・言ったのは女性です。問題はありません)、三菱の人達(注・女性です)も『正面装甲(意味深)は足りてるかい?』とか『105mm粘着榴弾の弾頭を付けてるの?』とか言ってくるし! 同性だろうと充分セクハラ発言よ!」

 

 言い切り、ナナヨンは残りのビールを飲み干し、またおかわりを注文する。

 

「ナナヨンさん!? もう止めたら――」

 

「うるひゃい! 呑まずにやってられっかクソッタレ! 私だって司令官が好きなのよ! なのに天然爆乳野戦砲とかバイセクシャル自走榴弾砲とか行き遅れ歩兵戦闘車とかふわふわおっとり系巨乳JKとかヤンキー系後輩JKとかお姉さん系爆乳副官とか! しまいには後輩に正面装甲の厚さ(意味深)で負けるし! あ、1人勝ってるか。とにかく! 私だって好きなのよ! 隣にいるのに、どうして気付かないのよぉ……!」

 

 ナナヨンの渾身の叫びに、隊員達は複雑だった。ヒトマルが「脱げばすごいんです……最近のスポブラはしっかり締めてくれるんです……」と呟いているのは放っておいて。

 

 

 

 ナナヨンはすっかり酔いつぶれた。

 

「ナナヨンさん、起きてくださいよ~」

 

 新発田が揺するも、ナナヨンは起きない。「しれぇかぁん……」と寝言を言う。

 

「これは困ったわね」

 

 赤くなったタイガーが言う。その横でキューマルが「うふふ……」と小言を言いながら日本酒を呑んでいる。他の、未成年にしか見えない隊員も、粗方呑んでいた。

 

「それじゃあ、皆に聞くけど、司令官は誰と交際すると思う?」

 

 エフエイチが、場の空気を読まない爆弾発言をした。

 

 全員の動きが止まる。そしてナナヨンがむくりと起き上がり、右手をまっすぐ上に向け、口を開いた。

 

「私とよ!」

 

 すると、久居も右手を挙げた。

 

「私もぉ、司令官が好きでぇす!」

 

「久居士長、呑み過ぎです!」

 

 再びウイスキーを呑もうとする久居を、豊川が止める。

 

「私は、市ヶ谷さんが一番可能性が高いと思うわ」

 

 タイガーが意見具申した。が、ナナヨンと久居が大声を出した。

 

「「あんなデカパイには負けないませんわ!!」」

 

 その気迫に、タイガーが押し黙った。一方、酔いつぶれる直前のキューマルが口を開いた。

 

「私ぃも、市ヶ谷さんかなぁ……でも私だって……3Pとかでもいいけど……おこぼれでもいいから、司令官に……うふふ」

 

「キューマル、あなたどうしたのよ」

 

 ナナヨンが突っ込んだ。

 

 すると、今まで黙って焼酎を呑んでいた富山が口を開いた。

 

「あいつ、たぶん誰とも付き合わねぇよ。前に冗談で告白したら、『部下をそういう目で見れない』ってさ」

 

 その言葉に、また空気が凍った。

 

「……富山士長」

 

 豊川が口を開く。

 

「貴女は、そんな酷い人だったんですね。ボク、ちょっと距離を置きます」

 

「何でだよ!?」

 

 すると、エフエイチが口を挟んだ。

 

「そりゃそうよ。蔑まされるべき冗談よ」

 

「いや、その……」

 

 そして、富山がうつむく。

 

「……ホントは、冗談じゃなかったんだ。最初は本心だった、けど……」

 

 すると、キューキューが富山を抱き締めた。

 

「心配は無いわ。貴女は、貴女の本心をさらけ出した。充分立派よ」

 

「……うん!」

 

 富山がキューキューの胸で泣く。そして、すっかり別の顔になったキューキューがこう囁いた。

 

「私の部屋に、後で来て? いっぱい傷心を癒やさないと、ね?」

 

「……うん」

 

「おい待て、バイセクシャル自走砲」

 

 ナナヨンがキューキューの首根っこを掴んだ。

 

「貴女の公式愛称って、『ロングノーズ』よね?」

 

「止めて、その呼ばれ方は好きじゃないの」

 

「……名前の通りに鼻の下が伸びてるわよ、レズビアン」

 

 そう言われ、キューキューは手鏡を取り出した。

 

「やだぁ、伸びてないじゃなぁい」

 

 キューキューが安心しきったように言った。そしてナナヨンが言う。

 

「それだけ自覚があったのね」

 

「……!?」

 

 キューキューがビクッとなった。そしてしばらく考えると身を乗り出し、ナナヨンの耳元で囁いた。

 

「ねぇ、私、最近タマってるの……だから、貴女で楽しませて?」

 

 そう言われ、ナナヨンの頬が更に赤くなった。そしてナナヨンはキューキューの頭を掴んでテーブルに叩きつけた。

 

「この同性愛者め! 滅んでしまえ!(注・差別的発言を謝罪します)」

 

 キューキューは額を抑えて、泣き顔で言う。

 

「酷いわ、LGBTは今や世界中で認められつつあるのに……」

 

 すると、キューキューの横へコブラがすり寄った。

 

「あ、あの……」

 

「あら、コブラさん」

 

「茜お姉様に、今以上に近付きたいのですが、方法を伝授してくれますか?」

 

 キューキューはしばらく考える。そして口を開いた。

 

「夜這いよ!」

 

「ですよね!」

 

 コブラの顔が明るくなる。

 

「やっぱり、身体の関係が無ければ、心の距離は近付かないと!」

 

 すると、キューキューがコブラの肩を掴み、口付けをした。

 

「!?」

 

「コブラさんも可愛いわぁ……本当、この部隊に来て良かったわぁ」

 

 その後、キューキューはコブラの右ストレートを喰らった模様。

 

 

 

「――なんて事がね」

 

 ナナヨンが語り終えた。聞いていた市ヶ谷はムスッとしながら9mm拳銃を手にしている。

 

「ナナヨンさんもキューマルさんも久居ちゃんも佳樹さんを狙ってるなんて、今すぐ消した方が――」

 

「待って待って!」

 

 市ヶ谷が9mm拳銃をキューマルを向ける。キューマルは、青ざめた顔で両手を挙げた。

 

「待った」

 

 すると、土居内が市ヶ谷の9mm拳銃を奪い取った。

 

「そんな理由で隊員を殺すな。心配しなくても、俺はお前が一番だ」

 

「……佳樹さん!」

 

 ナナヨンが、一番驚く。

 

「司令官……? 一体、何処から聞いていて――」

 

「あぁ、『司令官さんは誰とお付き合いするのでしょうね?』からだな」

 

 ナナヨンの頬が赤くなる。つまり、殆ど全てを聞かれていたのである。

 

「き……」

 

 ナナヨンの右手が震える。

 

「記憶を消せぇ!」

 

 ナナヨンの右アッパーが決まった。

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