りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す! 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
「起きましたか、佳樹さん?」
「あぁ、愛か……何だろう、頭がガンガンする……」
土居内が、ソファで市ヶ谷に膝枕されていた。目の前には、恋人の連峰(意味深)がある。
そして土居内は、連峰(意味深)に頭を突っ込んでみた。
要塞のような巨大マグマ軍が箱根の山を降りる。
〔特科隊、射撃命令。全隊、修正射基準砲、座標1932,4306、各砲弾瞬発、砲座は装薬白7、効力射、92CVT、制限なし、ってぇ!〕
陸上自衛隊 特科隊による、FH-70 155mm榴弾砲、99式155mm自走榴弾砲、75式155mm自走榴弾砲、M110 203mm自走榴弾砲、M270 MLRS多連装ロケット砲による攻撃が始まった。
さらに、上空にはAH-1S攻撃ヘリとAH-64D戦闘ヘリ、SH-60K対潜哨戒ヘリが飛んでおり、目標へ対戦車ミサイルを発射する。
〔スカイキッド01、エンゲージ!〕
アメリカ空軍のA-10C サンダーボルトⅡがAGM-65 マーベリック対地ミサイルや30mmガトリング砲GAU-8 アベンジャーで攻撃を加える。が、動きを一旦止めただけで、2機のA-10C サンダーボルトⅡが対空レーザーで撃墜される。
〔怯むな! 総火力で押し続けろ!〕
沖合の米海軍の巡洋艦や駆逐艦からハープーン対艦ミサイルやトマホーク巡航ミサイルが発射され、対地攻撃が行われる。
そして陸上自衛隊や多国籍軍の戦車隊が砲撃を始める。
当たっていることには、当たっているのだが、全く効いているように見えない。
〔って!〕
10式戦車が120mm装弾筒付対戦車徹甲弾を放つ。砲手がペリスコープで、徹甲弾の曳光を確認する。が、目標が徹甲弾を弾いたのだ。
「馬鹿な!?」
「次弾、HEAT! どういう原理か知らねえが、徹甲弾が効かなきゃモンロー効果だ!」
戦車長が叫ぶ。砲手はボタンを押し、120mmHEAT(対戦車成形炸裂榴弾)を装填させる。
「HEATよぉし!」
「同一目標! ってぇ!」
「発射!」
砲手が発射ボタンを押した。直後、44口径新120mm滑腔戦車砲からHEAT弾が勢いよく飛び出た。
そして目標に命中する。HEAT弾はしっかり起爆し、モンロー効果(またはノイマン効果)によって爆風を一点に集中させて皮膚を溶かそうとする。が、せいぜい皮膚をほんの少し削っただけだった。
「何て、野郎だ……」
戦車長が冷や汗を流しながら言う。砲手は恐怖で震えていた。
「戦車長、あんな奴に、俺達勝てるんですか……?」
「馬鹿野郎ッ! 俺達自衛隊は『国民の盾』だ! 奴を人口密集地に向かわせないのが俺達がやるべき事だ! 分かったかッ!?」
「は、はい!」
とは言っても、戦車長の握り拳は微かに震えていた。
〔リリース・レディ、ナウ〕
アメリカ空軍のF-15E ストライクイーグルの編隊がバンカーバスターと呼ばれる地中貫通爆弾を一斉に投下する。
〔アルタイルリーダーより各機、我に続け〕
F-1戦闘機の編隊が、70mmロケット弾を一斉発射する。しかし、どちらの攻撃も致命傷にはならない。
目標が対空レーザーで反撃、F-15EとF-1が全滅した。
〔馬鹿な!?〕
アメリカ空軍のE-8地上管制機のオペレーターが叫ぶ。これまでの攻撃が、効いてはいるものの、全く刃が立っていなかった。
土居内が市ヶ谷にビンタされ、左頬をひりひりさせていると、司令官室の電話が鳴った。
「はい、新発田駐屯地 中央混成連隊」
〔土居内か!? 悪いが休日は後回しだ!〕
それは、津田沼陸将補だった。
「陸将補? どうしたんですか、閻魔大王でも見てきたかのような慌てっぷりですが?」
〔冗談言ってる場合じゃねぇ!〕
津田沼陸将補が怒鳴る。土居内は驚き、事態は緊迫していると察した。
「マグマ軍の大規模機甲部隊による反撃ですか?」
〔近いっちゃ近い! 箱根から、城並みにデカいマグマ軍が現れて、東京に向かっている! 陸海空の総戦力で迎え撃っているが、突破されるのも時間の問題だ!〕
「でも、我々は今、新潟にいるんです。ヘリなら直ぐに向かえますが、戦車や榴弾砲は……」
〔ヘリで構わん! とにかく戦力が足りないんだ!〕
「了解しました。中央混成連隊、直ちに応援に向かいます」
そして土居内は、警報ボタンを押した。
新発田駐屯地にサイレンが鳴り響く。
「何!?」
茜が驚く。久居が食べようとしていた饅頭が、床を転がる。
【駐屯地内にいる中混連隊員に告ぐ、直ちに完全装備で車両庫に集合せよ】
土居内の声が響く。隊員達はすぐに官舎を飛び出した。
「戦車班、全員確認」
「ヘリ班、全員確認」
「特科班、全員確認」
「小銃班、練馬3曹がいません!」
車両庫にて、点呼が終わる。富士の報告に、思わず土居内は叫ぶ。
「なぁにやってんだ練馬ぁ!」
「司令官、叫んでも練馬3曹を召喚出来ませんよ」
朝霞が冷静に言う。
「確かにそうだが……よく聞け! 今、箱根から特大サイズのマグマ軍が下りているとの連絡があった! 対戦車攻撃や艦砲射撃、空爆を行っているが、全く効いてはいないという! 我々中央混成連隊は、即応機動火力としてお呼びがかかった! これよりヘリコプターにて神奈川県に向かう! 搭乗!」
土居内が叫び、中央混成連隊の隊員達がヘリコプターに乗る。そして、新発田駐屯地から、2機のUH-1J汎用ヘリ(改)、1機のUH-60JA汎用ヘリ、さらにAH-64D戦闘ヘリ、AH-1S攻撃ヘリ(改)、AH-1S攻撃ヘリ、OH-1偵察ヘリが飛び立った。
自衛隊と多国籍軍の戦車隊は奮戦する。ロシア陸軍のT-72 B3戦車が125mm滑腔戦車砲から対戦車ミサイルを発射する。
対戦車ミサイルは命中するも、効いていない。
そして、目標がレーザー砲を乱れ撃つ。そのレーザー光線は、120mm対戦車徹甲弾やHEAT弾も防ぐはずの複合装甲を、いとも簡単に溶かし、戦車隊を壊滅させる。
〔トムキャット02よりタンクパッケージへ。撤退せよ、繰り返す、撤退せよ〕
上空を飛ぶE-8 ジョイントスターズ地上管制機が、戦車隊に撤退命令を下した。
しかし、その命令を実行できる者はいなかった。既に戦車隊は全滅した。
「何がどうなっている!?」
沖合の護衛艦〈かが〉に着艦した陸上自衛隊のEC-225特別輸送ヘリから降りた安田首相が、〈かが〉FIC(統合作戦指揮所)に入るなり叫んだ。すぐに情報分析官が報告する。
「新種のマグマ軍――ターゲットブラボー――は、箱根の芦ノ湖から出現、障害物を軒並み踏み潰しながら東に向かっています。既に神奈川県・東京都全域、埼玉県南部に避難指示が出ていますが……」
「どうした?」
「それが、神奈川県全域の避難は終了しましたが、東京では混乱が発生し、避難がまだ完了していません。既に第32普通科連隊等が治安維持出動していますが……」
「そうか。戦況は?」
「ターゲットは、レーザー光線を発し、さらに対戦車ミサイルや巡航ミサイルが通用しておりません。厚木・藤沢に張った第1防衛ラインは全滅、第2防衛ラインの特科隊や砲兵隊、武装ヘリによる攻撃を続けていますが――」
「これもやられるのは時間の問題か」
「ええ。さらに、アメリカとロシアが……」
そう言って、情報分析官が安田首相に耳打ちする。
「何!?」
「間違いありません。横田基地は米空軍が厳重警備をし、さらに中部国際空港の一部をロシア空軍が不法占拠し、自衛隊や警察と衝突しています」
安田首相は頭を抱える。
「連中、こっそり『戦術核』を持ち込んでいたのか……?」
「どうしますか?」
「何としてでも連中に核を使わせるな。『うっかり』で東京やここにぶち込まれたら終わりだ……」
安田首相の額から冷や汗が出る。
横田基地の滑走路からB-1B ランサー超音速可変翼爆撃機が離陸する。そして同時刻に、成田国際空港からB-2A スピリット戦略ステルス爆撃機が、中部国際空港からTu-160 ブラックジャック超音速可変翼爆撃機が離陸した。