りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す!   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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51話 遊撃要塞

 胴体下に集塵ポッドを取り付けたT-4 ドルフィン中等練習機が、2機のF-35AJ戦闘機の護衛と共に目標へ接近する。

 

 そして目標の真上を通過した。T-4練習機はそのまま低空飛行を続け、山脈に隠れる。F-35AJ戦闘機は上昇し、そして目標へ急降下する。

 

 胴体下ウェポンベイを開き、バンカーバスターを投下する。急降下しながら投下したため、先程のF-15Eの水平投下よりは威力がある。

 

〔バンカーバスター、命中!〕

 

 目標は触手を振り回して暴れている。

 

〔効いているようだ!〕

 

〔やったね!〕

 

 しかし次の瞬間、2機のF-35AJ戦闘機は、触手で叩かれて爆散する。

 

 

 

「あれが、新種のマグマ軍……」

 

 相模原市上空のUH-1J汎用ヘリ(改)の中から、土居内が呟く。触手を振り回す様子はまるで――

 

「タコだ」

 

「タコみたいですね」

 

 市ヶ谷も呟く。が、コノエが青ざめた顔で驚く。

 

「馬鹿な……」

 

「コノエ?」

 

「あれが、もう出来たというのか……?」

 

「あれ?」

 

「遊撃要塞セヴァストポリ……我々が西ヨーロッパ防衛戦線を突破するために開発した究極破壊兵器……」

 

 そこで、土居内が試しに質問してみた。

 

「なぁ、マグマ軍には核兵器とか無いのか?」

 

 すると、コノエは素直に答えた。

 

「かつてはあった」

 

「かつて?」

 

「お前達が『ラグナレク・イヤー』と呼ぶ、あの全世界同時多発自然災害――。我々が開発に成功した核兵器の全てをそれに投じた……」

 

「マジか」

 

 そんな中、UH-1J汎用ヘリ(改)を操縦する明野が叫んだ。

 

「司令官! 目標が!」

 

 土居内達が窓の外を見る。見れば、セヴァストポリがロケット砲を乱射していた。そのロケット弾達は弧を描き、第2防衛ラインの特科隊や砲兵隊に降り注ぐ。

 

 

 

「逃げろぉ!」

 

「緊急退避ぃ!」

 

 自衛隊員達や砲兵達が、装備を捨ててトラックやジープ、ハンヴィーに飛び乗って逃げる。自走榴弾砲の装甲は、機関銃や砲弾の破片しか防いでくれないからである。

 

 しかし、ロケット弾達は空中で破裂、大量の子爆弾を地上へばらまき、第2防衛ラインを全滅させた。

 

 

 

「何て野郎だ……クラスターロケットだと? クラスター弾禁止条約を結んだ自衛隊相手に……!」

 

 土居内が、ドアガンのブローニング M2重機関銃のフィードカバーを叩く。隣で市ヶ谷がぼそっと一言。

 

「私達ではなく、軍事は全て悪と決めつけている政治家が悪いんですよ……」

 

「全くその通りだ」

 

「今回ばかりは地上人の意見に賛成だ」

 

 土居内とコノエが頷く。

 

 

 

 安田首相は歯軋りをする。

 

(どうする、戦術核を発射されたら、止める手立ては無い。かと言って通常兵器は目標に通用していないし、早期に迎撃すれば米露を敵に回すことになる……考えろ、晋介、1億2000万の命が掛かっているんだ!)

 

 しかし、何も浮かばない。

 

 すると、ビィーッという音がFICに響いた。

 

「何だ!?」

 

 安田首相が頭を上げた。見れば、正面ディスプレイに表現された地図の浜松と入間、百里から何か出ている。

 

「確認しました! 空自のスクランブル機です! 浜松から306飛行隊のF-15MJ、百里から302飛行隊のF-4EJ改、入間から1飛行隊のF-1です!」

 

 情報分析官が叫ぶ。すぐに安田首相は指示を出した。

 

「迎撃機を上げろとは言ってない! 横田基地のSOC(航空司令部)を呼び出せ!」

 

「了解!」

 

 

 

 土居内達の頭上を、F-2A バイパーゼロの編隊が飛び越えていく。バンカーバスターや、最新のXASM-3空対艦ミサイルを発射するも、大半が対空レーザーや触手で叩き落とされるが、生き残ったXASM-3空対艦ミサイルは目標に直撃した。

 

「超音速空対艦ミサイルであの程度か……こいつは、俺達には無理そうだな」

 

 土居内が呟く。ゼファストポリは、相変わらず触手を振り回し、元気はあるようだった。市ヶ谷が土居内に尋ねる。

 

「一体、どうやればあれを倒せるんですか……?」

 

「FAE(燃料気化爆弾、またはサーモバリック爆弾)か、はたまた核だな」

 

「自衛隊の戦力だけでは倒せないのはよく分かりました……」

 

 市ヶ谷ががくんと肩を落とす。

 

 

 

 ロシアの可変翼超音速爆撃機Tu-160 ブラックジャックと、その護衛のSu-30 フランカーの編隊に、航空自衛隊のF-15MJ イーグルが接近した。

 

〔ロシア空軍機に警告する、こちらは航空自衛隊、貴機は直ちに反転せよ。繰り返す、直ちに反転せよ。日本国政府からの飛行許可は下りていない〕

 

 航空自衛隊 第306飛行隊のパイロットが、英語でそう警告した。

 

 しかし、次の瞬間にSu-30 フランカーが左急旋回、F-15MJ イーグルに襲い掛かった。

 

 

 

 鎌倉市内の道路に展開した、陸上自衛隊の88式地対艦誘導弾(SSM-1)と12式地対艦誘導弾(SSM-2)が一斉に発射される。さらには、どこかの武器庫か博物館から持ってきたかのような、旧式の68式30型ロケット榴弾(R-30)や75式130mm多連装ロケット発射機(75MSSR)も攻撃を始める。

 

 特撮か、それとも箱根を舞台にした某ロボットアニメのような地対地ロケットと地対艦ミサイルの斉射で、鎌倉は一時的に霧の町になった。

 

 そしてそれを、相模湾上空のLR-2偵察機が着弾観測を行う。

 

「弾ちゃーく、今ッ!」

 

 次々とロケット弾や地対艦ミサイルが命中する。その爆炎で、目標が一瞬見えなくなる。

 

 

 

「見ろ、総火演でもなかなか見ない量のロケット砲だ!」

 

 UH-1J汎用ヘリ(改)の中で、土居内が指を指す。

 

 その先には、大量のロケット弾と地対艦ミサイルを喰らうゼファストポリの姿があった。

 

 やがて、爆炎が晴れる。そこには、大半の触手を失いながらも、生き延びたゼファストポリの姿があった。

 

「何て、野郎だ……」

 

 土居内が呟く。他の中央混成連隊隊員達も、絶望の表情を浮かべる。

 

 もはや、自衛隊にはどうしようもなかった。

 

 

 

 静岡県上空で、航空自衛隊のF-15MJ イーグルとロシア空軍のSu-30 フランカーがドッグファイトを始める。

 

 双方に被害が出る中、1機のF-15MJ イーグルがTu-160 ブラックジャックに向かう。

 

「くたばれ露助ぇ!」

 

 F-15MJ イーグルのパイロットが叫びながら、操縦桿のガンコントロールスイッチを引いた。20mmバルカン砲から無数の弾が吐き出され、曳光弾のビームがTu-160 ブラックジャックに命中する。

 

 胴体を真っ二つにされたTu-160は、炎上しながら太平洋に落っこちる。Tu-160を撃墜したF-15MJ イーグルがSu-30 フランカーに喰われる中、Tu-160の「積み荷」が起爆した。

 

 それは巨大な火球を生み出したと思えば、ドッグファイトをする戦闘機や海岸の飲み込み、キノコ雲へと成長した。

 

 

 

 その衝撃波は、伊豆半島南西4kmの護衛艦〈かが〉にも伝わった。

 

「うわっ!!」

 

「何だッ!?」

 

 艦橋の窓ガラスにひびが入り、テーブルの上のマグカップが落ち、耳鳴りが起きる。

 

「何が起きた!?」

 

 椅子からひっくり返った安田首相が、起き上がりながら言う。しかし、誰にも分からなかった。

 

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