りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す!   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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52話 侵入

「司令官、正気ですか!?」

 

「俺は本気だ! 奴に近付いて20秒ホバリング!」

 

 土居内が、腰に着けたM2スライダーにロープを通す。その横で、市ヶ谷も同様の準備をしていた。

 

 

 

 数時間前――

 

「行っけぇ!」

 

 新発田が腕を振るい、紙飛行機のような何かを投げる。その何かは風に乗り、プロペラの音を響かせながら飛んでいく。

 

「今の戦争は、だいぶSFめいてきたな。無人機で偵察とはね」

 

 マグマ軍との戦争で廃校になった小学校のグラウンドで、土居内が呟いた。中央混成連隊のヘリコプターは一時ここに着陸し、小型無人偵察機を飛ばして状況を把握していた。

 

「これから無人兵器はどんどん増えますよ。アメリカは非正規戦用に数多くの無人兵器を作っていますし」

 

 タブレット端末を操作する市ヶ谷がそう言った。土居内は頷き、空を見上げる。

 

「今時ラジコン飛行機がヘルファイア対戦車ミサイルを懸架しているからなぁ。全く怖い時代になったものだ。ターミネーターとか出てきたらどうすんだ」

 

「ああ、ロシアの歩兵駆逐戦車ですね」

 

「……確かにそれもターミネーターだけどさ」

 

「分かってますって。元カリフォルニア州知事の主演映画ですよね? 『I'll be back.』でお馴染みの」

 

「2か……」

 

 そんな他愛の無い会話をしている中、隊員達は思い思いに過ごしていた。

 

 ある者達は偶然あったサッカーボールで蹴鞠をし、またある者達は見つけたゴム製の小さな袋で想像を膨らませていた。

 

 そして、市ヶ谷が土居内を呼ぶ。

 

「佳樹さん」

 

「これか……」

 

 市ヶ谷が見せたタブレット端末の画面には、ゼファストポリが大きく映っていた。新発田が先程飛ばした、紙飛行機のような小型無人偵察機からの映像だった。

 

 そして、土居内は気付いた。

 

「愛、拡大してくれるか?」

 

「はい」

 

 そこには、双眼鏡を手にしたマグマ軍歩兵や近衛兵の姿があった。

 

 

 

 その頃、護衛艦〈かが〉FICに衝撃が走っていた。

 

「何だって!?」

 

〔間違いありません、浜松の南東20kmの海上にて、核爆発が起きました!〕

 

 航空自衛隊 浜松基地からの連絡だった。安田首相は指示を出す。

 

「横田の中空SOC(中央航空指令所)は!? 何故音信不通なんだ!? 浜松管制塔、誰の指示で迎撃機を上げた!?」

 

〔ちゅ、中空SOCです! 『アンノウンが現れたため、ホットスクランブルを発令する』、と! その後連絡が途絶えました!〕

 

 安田首相がテーブルを叩く。航空自衛隊の迎撃機を上げた、東京都 横田基地の中空SOCは今、連絡が途絶えている。

 

 

 

 東京都 航空自衛隊 横田基地 中空SOC――

 

[これで全員か?]

 

[だな]

 

 M4 A1自動小銃を手にしたアメリカ空軍憲兵が会話する。その足下には、手足を縛られ、猿ぐつわを噛まされた自衛官達が転がされていた。

 

 

 

 そして今――

 

「司令官、正気ですか!?」

 

「俺は本気だ! 奴に近付いて20秒ホバリング!」

 

 明野の操縦するUH-60JA汎用ヘリが、地面スレスレの低空飛行でゼファストポリに接近する。

 

 土居内が、キャビン内でロープをM2スライダーに通す。同じ事を、市ヶ谷もやっていた。

 

 ゼファストポリに、歩兵が出入り出来る穴を見つけたため、土居内と市ヶ谷が内部から制圧もしくは破壊することにしたのだ。

 

 土居内が背負ったバックパックには大量のC4爆弾が、一方市ヶ谷のバックパックにはノートパソコンや通信装置が入っている。

 

 

 

 数十分前――

 

「俺がここに直接乗り込む。歩兵が出入りしているなら、中にあるであろうCIC(戦闘情報センター)にも行けるはずだ」

 

 土居内が、タブレット端末に映った写真を指差しながら言った。それは、先程新発田が投げた小型無人偵察機が、その役目を全うする直前に捉えた、ゼファストポリの左肩に乗ったマグマ軍歩兵や近衛兵の姿だった。

 

「乗り込むって」

 

「そんな無茶な」

 

「ヘリボーンだな。血が騒ぐ」

 

 皆が口々に言い、習志野がトンチンカンな事を言ったのはスルーされた。

 

「佳樹さん、1人で行くつもりですか?」

 

「出来ればな」

 

 市ヶ谷の問い掛けに、土居内はそう答えた。すると、市ヶ谷が土居内の胸を思い切り殴った。

 

「バカ」

 

 市ヶ谷が、確かにそう言った。

 

「前に言いましたよね? 私が心を許せるのは、佳樹さんだけだって。何でそんなに死にたがるんですか?」

 

 土居内は、殴られた胸を押さえながら、顔を俯かせて言う。

 

「時々、夢に出るんだよ。第1空挺団の時の小隊や、全滅した第1普通科連隊の小隊の部下の顔がな。俺は今も、あの時死ぬべきだったのかと自問自答している。答えは出ない。お前が死ぬのであれば、俺が死ぬべきだと、どうしてもそう考えてしまう」

 

「だったら――」

 

 市ヶ谷が声を震わせる。

 

「だったら、2人で死にましょうよ。出来るなら、2人で生き延びる。どうしてその考えが出ないんですか?」

 

「愛……」

 

 見かねた富山が口を開いた。

 

「もう見てらんね。で、結局どーすんだ?」

 

 

 

 UH-60JA汎用ヘリが、ゼファストポリに触れ合う程近くを飛び、高度を上げる。

 

「こんな飛行、2度としたくない!」

 

 ラダーペダルを踏み込み、操縦桿を手前に引く明野が叫ぶ。こんな近くを飛ぶのは、「ほら、ハエとか蚊って叩き落としにくいじゃん?」という、土居内の言葉からだった。

 

「見えました!」

 

 やがてUH-60JA汎用ヘリは、ゼファストポリの左肩に到達した。ガナーの北富士がブローニング M2重機関銃のトリガーを押し、マグマ軍歩兵を掃討して降下地点を確保した。

 

「降下よぉーい!」

 

 金沢が叫ぶ。土居内がキャビン右ドアを、市ヶ谷がキャビン左ドアを開ける。金沢が両手を左右に広げ、手の平を下に向ける。

 

 土居内と市ヶ谷は、キャビン縁に足を掛け、ロープに体重を預けて降下体勢をとる。

 

「降下ッ!」

 

 金沢が、叫ぶ声と共に両手を下げる。その合図で、土居内と市ヶ谷は降下した。

 

 シュルシュルと、2人はUH-60JA汎用ヘリからロープで降り、ゼファストポリの左肩に着地する。素早くM2スライダーを外し、UH-60JA汎用ヘリに向かって両手で丸を描いて合図を送った。

 

 UH-60JA汎用ヘリが離れていき、土居内と市ヶ谷は89式小銃を構えた。

 

「行くぞ」

 

「はい」

 

 

 

 その頃、対核用に機内にビニールシートを貼り付けた、航空自衛隊のCH-47J LR輸送ヘリが、浜松の南東20kmの地点に近付いていた。

 

「すごい汚染だ! もうレッドランプだ!」

 

「駄目だ、引き返すぞ!」

 

 本来の目的である、汚染調査を中止し、CH-47J LR輸送ヘリは引き返した。

 

 

 

「突撃!」

 

 土居内が、走りながら89式小銃を発砲した。連射された5.56mm小銃弾は、マグマ軍歩兵の体をズタズタに引き裂いた。

 

 2人は今、ゼファストポリの体内に侵入して交戦していた。地下鉄の駅を思わせる造りの通路を進み、2人は確実に屠っていく。市ヶ谷は女性自衛官用夏服のミニスカートの左太ももの部分を裂き、動きやすくしている。

 

「やぁぁっ!」

 

 土居内が89式小銃の銃床でマグマ軍歩兵を殴り飛ばす。そして弾倉を交換する。

 

「くそっ、CICは何処だ!?」

 

 土居内が息を切らす。市ヶ谷も肩で息をしている。

 

「佳樹さん、こっち!」

 

 市ヶ谷が部屋に突入した。土居内は腰のピストルベルトからM26 A1J破片手榴弾を取り出し、安全ピンを引き抜く。セーフティレバーを弾き飛ばし、2秒待ってから投げた。

 

 M26 A1J破片手榴弾が破裂し、通路が死屍累々の状態になる。土居内は扉に鍵を掛けた。

 

「佳樹さん、やりましたよ!」

 

 市ヶ谷が喜んでいる。そこには、大量のコンソールや液晶ディスプレイが並んでいる。つまり、CICだった。

 

「これで停止コマンドを作動させれば!」

 

 市ヶ谷が、一番高い所にあったコンソールに座る。手持ち無沙汰の土居内は、追っ手が来ないか警戒しつつ、CICを見渡した。

 

 誰もいない。静かだった。背筋が凍る程の静けさが場を支配していた。

 

「佳樹さん?」

 

「おかしくないか?」

 

 土居内は89式小銃を、ローレディの姿勢で持つ。そう、おかしいくらいに静かなのだ。

 

「よし、あとはこれで」

 

 市ヶ谷がコンソールを操作する。しかし、突然CICに警報が鳴り響いた。

 

「な、何!?」

 

 市ヶ谷ははっとし、コンソールに立て掛けていた89式小銃を探る。土居内は、セレクターが「連射」になっているか、右親指で左側セレクターを触って確認する。

 

 そして、正面のディスプレイに、見覚えの無い赤髪の女性が映った。

 

〔よく来たな、地上人! いや、君達なら楽勝かな? 歓迎するよ、中央混成連隊の土居内 佳樹3等陸尉と市ヶ谷 愛3等陸尉〕

 

 その女性は、楽しそうに笑っている。

 

「お前は誰だ!?」

 

 土居内が叫ぶ。その時、市ヶ谷が異変に気付いた。

 

「佳樹さん、こ……れ……」

 

 市ヶ谷が崩れ落ちる。その直後、土居内の意識が急激に薄れていった。

 

(しまっ……た……全身麻す……)

 

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