りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す! 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
中央混成連隊が新発田駐屯地に帰投する。車両やヘリを格納庫に仕舞い、銃のメンテナンスを済ませて第1官舎に戻ると、見知らぬ女性がいた。
「中混連ってのはあなた達?」
見知らぬ女性が話し掛け、豊川が応える。
「はい、そうですが」
「そう。私は錦川2等陸尉、第32普通科連隊から来たんだけど、市ヶ谷3尉はこの部隊よね?」
「市ヶ谷さんのお知り合いですか?」
「うん、防大時代のね。あなた、お名前は?」
「ボクは豊川 かるら1等陸士です。今、市ヶ谷さんは……」
「何かあったの?」
錦川が見回すと、中央混成連隊の隊員達は暗い顔をしていた。
「もし構わないなら、中でお話ししませんか?」
富士がそう言い、皆第1官舎に入っていった。
沖合、海上自衛隊 第4護衛隊群 旗艦〈かが〉、多用途会議室――
「従来の戦略では、一方へ攻撃を加えると、その反対側から奇襲を仕掛けられるというパターンが多く見受けられました。事実、愛知・長野南部解放作戦の際、滋賀や山梨から挟撃部隊が現れ、南関東攻略作戦の際は名古屋にて地底特殊甲種害獣(マグマ軍)によるゲリラが多発しました。しかし、我々が後回しにし続けてきた静岡東部からは一切この兆候がありません。これを受け、地道な航空偵察、電子情報収集、斥候の展開を行い、遂に静岡東部、正確には富士山が地底特殊甲種害獣(マグマ軍)の日本における拠点と判明しました」
暗い会議室で、防衛省の情報分析官がプロジェクターで説明する。
「しかし、本当なのか? こんな分かりやすく地底特殊甲種害獣(マグマ軍)が拠点を置くか?」
「その情報の真偽とやらはどうなっているんだ?」
野次が飛ぶ。今、ここには陸海空自衛隊のみならず、アメリカやロシア、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オーストラリア、カナダ、イスラエル、インド、中華人民共和国、中華民国、大韓民国といった世界各国の高級将校や政治家が集まっていた(よくこんなに入ったな)。
「真偽については、次の動画をご覧ください」
情報分析官がリモコンのボタンを押す。
すると、ある動画が流れた。音は無いが、ゲスト達を驚かすのに充分だった。
「あれは……!?」
「ターゲットブラボー……!」
そこには、マグマ軍の遊撃要塞ゼファストポリが移動する航空映像だった。20秒毎にアングルが変わっていく。
「これは、航空自衛隊 第501飛行隊の偵察機RF-4EJや陸上自衛隊の無人偵察ヘリ・FFRS、さらにアメリカの無人偵察機RQ-4によるものです。ターゲットブラボー――陸上自衛隊の捕らえた捕虜によると、ゼファストポリと呼ばれるそうですが――は相模川直前で180度反転、そして箱根を登り、富士山付近で行方不明となりました。静岡西部の浜松基地や埼玉の入間基地にはゼファストポリの目撃情報が無いため、ゼファストポリは富士山にいる事になります」
「拉致られた?」
「ええ。マグマ軍に」
新発田駐屯地 第1官舎 司令官室にて、富士と錦川が話す。
「それで、居場所は!?」
「残念ながら、分かっていません」
「そう……」
錦川の顔色が沈む。富士は、失礼を承知で訊いてみた。
「錦川さんは、どうしてここに?」
「……以前の東京解放作戦で再会して、その時に言えなかった事があるんです」
「言えなかった事?」
「マグマ軍が東京に侵攻してきた時、私は市民を見殺しにしたんです……」
錦川がぽろぽろと涙を流す。
「それは、私や他の隊員も――」
「違うんです! 私は、私は愛の両親を見殺しにした!」
「愛……」
「佳樹さん……」
2人はベッドの上で抱き締め合う。
「死ぬ間際にまた会えて嬉しいです」
「俺もだ……」
舌を絡め合う濃厚な口付け、そして離れる。唾液の糸が伸びる。
「佳樹さん、謝っておきたい事が」
「何だ?」
「その、さっきマグマ軍にされました……」
「愛……」
「もう私は、純白ではありません……」
「それは俺もだ。マグマ軍にさせられた、お互い様だ……」
「だったら、最後に私を抱いてください。お願いです……」
「ああ……」
「市ヶ谷さんの両親を……?」
「はい……私達第32普通科連隊に撤退命令が下され、新宿近郊で市街戦の準備をしていた私の小隊はマグマ軍の攻撃を退けつつ退却しました……住民が、マグマ軍に虐殺されるのを見ながら……! その中に、愛の両親が……!」
新発田がそっと、錦川にティッシュを差し出す。
「錦川さん」
富士が口を開く。
「今日はもう遅いので、ここでお休みになってください。第32普通科連隊には連絡をしておきますから」
「すみません……外泊許可、取ってないんですけど……」
「今は戦時です。大目に見てもらえるよう、取り計らっておきますから」
「色々ありがとうございます……」
その会話を、霞目が聞いていた。
「お主らも大変じゃな」
「それが自衛官というものじゃないんですか?」
朝霞が言う。それを聞き、霞目はふふっと笑う。
「なるほど、見た目と違ってひよっこでは無かったか……」
「そう見られていたのは心外です。仕方ありませんが」
その後、富士は1人司令官室に残り、報告書作成や防衛省からの緊急召集の命令を読んだりしていた。
「地底特殊甲種害獣拠点奇襲……?」
富士が呟く。そして、隊員を集める。
「中混連隊員、ただちに完全武装でグラウンドに集合、繰り返す、ただちに完全武装でグラウンドに集合」
完全に日は落ちていた。が、中央混成連隊の隊員達がグラウンドに集まる。
「皆、疲れている所悪いけど」
富士が言う。
「明日、自衛隊と多国籍軍が富士山にあるマグマ軍拠点を奇襲する。我々中央混成連隊にも召集が掛かった。作戦に間に合わせるためにも、今から出発する」
隊員達は愚痴りながら、車両に乗り込み移動を開始する。ヘリコプターは離陸し、車列は神奈川県へ向け移動する。
市ヶ谷 愛、土居内 佳樹両名の処刑まで、あと14時間。