りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す! 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
マグマ軍 富士司令部攻略から数週間――
「本当にいいんですか?」
「ええ。そもそも、いつかこうなるって分かってましたから」
久居が、市ヶ谷の髪をとかしていた。市ヶ谷は純白のウェディングドレスを纏い、その傍らには真っ白な89式5.56mm小銃があった。
自衛隊、そして多国籍軍の連合部隊による、マグマ軍 富士司令部攻略作戦は成功した。軍上層部や各国首脳達は、マグマ軍の一網打尽を考えていたようだが、今も時折反撃がある。が、それも散発的なもので、マグマ軍としての統率は無くなった。
救出された土居内と市ヶ谷は、あの後嫌と言うほど詰問され、身体検査され、自衛隊中央病院に入院されられ、ようやく退院した。
「愛、こんな戦中に言うのも何だが……」
「はい……」
「結婚してくれないか?」
そんな事があってしばらく経った。
神奈川県 横浜市 中区 みなとみらい某所――
「何でわざわざ新潟から横浜に来なきゃなんないんだよ」
「ここが司令官の故郷、だからな」
「そしてあたしと出会った場所でもある」
そびえ立つランドマークタワーの足元で、富山と習志野、そして霧本が運河を見ていた。
「それに、他の混成中隊は関東近郊を拠点としている。元祖たる中央混成連隊が、遠く離れた新潟の新発田駐屯地じゃ、格好がつかない」
「別にいいだろ」
「富山2曹、多賀城3曹と馬が合うって言ってただろう?」
「……そうだった、習志野『3等陸尉』殿」
「当てつけか?」
「活躍認められて、全員均等に2階級特進、結局何ら変わりやしない」
「ま、今まで通り仲良くしろという事だ」
習志野は呑気にそう言った。すると、柄に無く青いドレスを着た霧本が口を開いた。
「全く、元カノを結婚式に呼ぶなよな。デリカシーってものが無い」
霧本が文句を言い、習志野がなだめる。
「まあまあ、一緒に過ごしてきた仲ではありませんか」
ある部屋に、制服を着た土居内と津田沼陸将補がいた。
「制服でいいんですかね?」
「向こうがいいって言ってんだ。さて、土居内1等陸佐、現場復帰は出来そうか?」
「医者も体力的には問題無いって言ってましたからね。しかし、陸佐なんて階級、俺には重いですよ」
「地底特殊甲種害獣の有益な情報を収集し、さらには地底特殊甲種害獣に大打撃を与えた……自由保証党はお前や中央混成連隊を英雄にしたがってるよ。それがその異例の3階級特進だ。20代で陸佐なんて前代未聞だぜ? おまけに、女性自衛官が20半ばで3佐という有り得ない出来事は当然だが、陸佐同士の結婚なんてもっと信じられん。まあ、俺の部下として活躍してくれるなら、それに越した事は無い」
「部下って……確かに、陸将補の頼みは結構聞いてきましたが、中央混成連隊はどこの方面隊にも属さない即席編成部隊だったはずです」
「それについては、ゲストが着いたら話すさ。さて、そろそろ時間じゃねぇか?」
それを聞き、土居内は壁時計を見た。
「おっと。では陸将補、また後ほど」
「おう」
土居内は89式5.56mm小銃(ドットサイト付)を掴み、部屋を出た。
教会のような建物の中に、大量のベンチが並んでいる。そしてそこには、中央混成連隊やその他6個混成中隊の隊員達やゲスト達が座っていた。
壇上にいるのは、第6混成中隊所属の仙台3等陸尉と、陸上自衛隊の制服を着、89式5.56mm小銃を背負う土居内だった。
「それでは、新婦入場です」
仙台の言葉と共に、大きな扉が開かれ、そしてウェディングドレスを纏った市ヶ谷が入ってきた。
「市ヶ谷さんきれー……」
「まさかこんな日が……うっ」
「富山2曹、別に親では無いだろう?」
「仕方ありませんよ、ひみ子2曹と愛さんと司令官は中央混成連隊発足時のメンバーなんですから」
「普通に憧れます!」
中央混成連隊の隊員達が拍手を送る中、市ヶ谷はバージンロードを歩く。そして、壇上へ上がった。
「確認します、土居内 佳樹1等陸佐」
「土居内1佐、現在地!」
「市ヶ谷 愛3等陸佐」
「市ヶ谷3佐、現在地!」
2人は敬礼する。仙台は頷き、口を開いた。
「お2人は、いかなる時もお互いに尽くし、互いの事を思い、そして互いを愛し合う事を、誓いますか?」
土居内が敬礼する。
「誓います」
そして市ヶ谷も、敬礼した。
「誓います」
そして仙台は、2人が指輪を交換した後、言った。
「それでは、誓いのキスを」
土居内と市ヶ谷は向き合い、土居内が市ヶ谷のベールを開いた。そして2人は、唇を重ね合った。
「それでは皆さん、行きますよー!」
市ヶ谷が大声を出す。既に全員教会の外に出ている。
「それっ!」
市ヶ谷がブーケを投げた。
投げられたブーケは放物線を描き、皆が手を伸ばす。そしてキャッチしたのは、ナナヨンだった。
その後二次会となり、隣の建物で食事を取るが――
「やべぇ、テーブルマナー分かんねぇ……」
「富山2曹、私もだ……」
「真津梨2曹ー、パンはいつ食べるんですか?」
「え、えっと……」
「あ! ベレーザさん尻尾で食べない!」
「全く、地上人は食べ方にうるさ過ぎる」
「コノエさんも手掴みで食べないでください!」
「こういうのは外側から取るのがマナーだ」
「鯖江さん物知りですね!」
「静香、内側からじゃなかった?」
「あれ?」
「普通に食べりゃいいじゃない」
「富士さん! 食べ方がワイルド過ぎるのも程があります!」
実戦バカにテーブルマナーは難しい。
そして、テラスには――
「いいんですか、SP無しに外に出て? スナイパーに狙われますよ?」
「構いません。私はあくまで『防衛省の最高責任者』、私がいなくとも自衛隊は行動する」
「まあそうですが」
そこには、土居内と津田沼陸将補、そして稲木防衛大臣がいた。
「で、話とは?」
「土居内、驚くな。中央混成連隊は今日をもって解散する」
「……はい?」
土居内の目が白黒する。
「解散って、あの解散ですか?」
「それ以外に何がある」
「いや待ってください、部下はどうなるんです? そして俺や愛は――」
「落ち着け。中混連が無くなる訳じゃない」
「はい?」
「中央即応集団を解散し、代わりに陸上総隊が新設されるのは知っているよな?」
「ええ」
「そこで、対ゲリラ・威力偵察・強襲作戦に有効な混成機動戦力が必要となった。そのため、今ある中央混成連隊及び6個混成中隊を、新設する中央混成連隊(新)として再編成する。7個中隊から成るが、その内の即応展開部隊である即応混成中隊、これを今の中央混成連隊で作る。つまり、名前が変わるだけだ」
「脅かさないでくださいよ陸将補」
「そういう事だ。大臣、お願いします」
「土居内1佐、こういう形で申し訳ありませんが、あなたを陸上自衛隊 陸上総隊 中央混成連隊(新) 即応混成中隊指揮官に任命します」
土居内は敬礼する。
「了解しました」
「明日には正式な辞令が来るだろう。ところで――」
津田沼陸将補の口調が堅くなる。
「お前の話を聞くと、あの武器娘とやらは、マグマ軍が人間の死体から作った兵器遠隔操作モジュールらしいな」
「ええ」
「害は無いだろうが、他の部下に話したのか?」
「昨夜話しました。そしたら、全員が『そんなのどうでもいい』と。タフな連中ですよ」
「そうか」
「ところで、中央即応集団が解散になったら、陸将補はどうなるんです? 陸上総隊指揮官ですか?」
「馬鹿、俺が慣れる訳が無いだろう。初代陸上総隊長は陸上幕僚長が兼任するらしい」
「それじゃあ――」
すると、稲木防衛大臣が口を開いた。
「津田沼陸将補は、中央混成連隊(新)指揮官となります」
「えっ」
「そういう事だ。つまり、お前は俺の配下になる」
「うわぁ……」
「何が『うわぁ』だ!」
するとそこへ、情報分析官がやってきた。
「陸将補、大変です」
「どうした?」
「地底特殊甲種害獣に新たな動きです。東北・北海道にいる部隊と、西日本の部隊が関東へ向け移動を開始しています」
「エアボーン(空挺作戦)されなくて幸いだな。守備隊は?」
「既にある戦力と、多国籍軍部隊で防げそうですが、ゲリラによる後方攪乱の可能性もあります」
「うーむ……」
そして、津田沼陸将補は土居内を向く。
「土居内1佐、中央混成連隊としての最後の任務だ。東京都内にて、対ゲリラ警戒を行え。詳細は後程伝える」
「了解しました!」
土居内は敬礼し、隊員達を呼ぶ。
「中混連隊員! 結婚式は一時切り上げ、東京にて対ゲリラ警戒を行う!」
「フォアグラ食いたかった……」
「こんな日に?」
「普通に最悪です……」
隊員達は愚痴りながら、96式装輪装甲車や軽装甲機動車、89式装甲戦闘車に乗り込む。
「悪い、愛」
「いいんですよ。自衛官である以上、命は国に捧げていますから」
2人は微笑み合い、74式戦車(改)に乗り込んだ。
「全く冗談じゃないわ」
「すまんな、ナナヨン」
砲手用ハッチにて、土居内は無線機で点呼を取った。
「班員数え!」
〔ヘリ班、準備良し!〕
〔特科班、準備良し!〕
〔車両班、準備良し!〕
〔小銃班、準備良し!〕
「指揮車確認、中央混成連隊、前進す!」