りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す!   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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6話 前進

 土居内にとってはその女性はとても見覚えがあった。午前中の銃撃戦の最中に保護し、そして高校の同級生だった――

 

「霧本か?」

 

「久しぶり。まさか、本当に自衛隊員になるとは」

 

 市ヶ谷は2人を交互に見る。

 

「司令官、お知り合いですか?」

 

「ああ。高校の時の同級生で」

 

「それと元カノ」

 

 霧本という女性はそう言った。市ヶ谷の手のフォークからウィンナーが落ち、カレーが跳ねる。

 

「元カノ・・・?」

 

 テントの外から、物音がする。見れば、そこには糧食を手にした富山がいた。

 

「お前、立ち聞きしてたのか」

 

 土居内がそう話しかけると、富山は慌てて駆けていく。

 

「ば、馬鹿言ってんじゃねーぞ! 偶然聞こえただけだ!」

 

 そう叫びながら。霧本は呆気にとられる。

 

「今のは? 明らかにJKだよね? 佳樹の今カノ?」

 

「違う。それに、あいつもああ見えて自衛官だ。信じたくないが」

 

 土居内はそう言って炭焼きチキンをほおばる。市ヶ谷は海苔を食べながら土居内と霧本に質問する。

 

「一体お2人はどういった関係なんですか?」

 

 土居内はビーフシチューをスプーンでかき込みながら言葉を放つ。

 

「どうもこうもあるか。霧本が言った通りだ」

 

「そう。高校の時に付き合ってたの」

 

 市ヶ谷は驚きしかなかった。

 

「あの、付き合ってたんですか?」

 

「ええ。もう10年も前だけど」

 

 

 

 10年前、神奈川県内のとある高校の教室にて。

 

「本当に防大に行くの?」

 

「ああ。もう変えるつもりは無い」

 

「そう、じゃ別れましょ」

 

「別れる? 何でそんな話になるんだ?」

 

「そうでしょ。防大になんて行ったら遠距離恋愛どころじゃなくなるよ」

 

「そうだけどよ・・・」

 

「そんなに別れたくないの? じゃあ、次の同窓会の時にまた会いましょ」

 

 

 

 そして今。

 

「で、結局10年も会ってないし」

 

「仕方ないだろ、防大出た後に初等幹部教育課程、そこから北海道の戦車隊、でレンジャー教育課程に第1空挺団、でイラク行って帰ってきてこの様だ、不運だ・・・」

 

 さらっと土居内が言った事に、霧本はぽかんとする。

 

「あんた、一体どうなってるの? あとイラクって? 旅行?」

 

「馬鹿か、自衛官は許可得ないと海外旅行出来ないんだよ。あとイラクへはPKOで行ったの。つまり海外派遣だ」

 

「意外と出世してるの?」

 

「イラクで道外したけどな」

 

「あんた何やったの?」

 

 そこで、土居内は話題を変える。

 

「で、どうしてお前、富山県にいるんだ?」

 

「転勤。あんたと違って普通に就職したからね」

 

「俺は普通じゃないと言うのか?」

 

「ええ。自衛隊に入るなんて、死にたいの?」

 

「そういうつもりだったら自殺してるだろ。俺はただ国防に尽力をつくすために」

 

「自衛官になったと?」

 

「ああ。それに、俺は新潟で生まれたんだ」

 

 市ヶ谷は土居内が自衛官になった本当の理由を察した。

 

 霧本はため息をつく。

 

「どうせ自衛官になるというのは変えるつもりは無かったと」

 

「まあな。そういや、お前もう結婚したのか?」

 

「誰かさんをずっと待ってたから、まだよ。もう28だから、親はうるさく言ってくるけどね」

 

「そりゃ悪かった。でも、俺よりましな男ぐらいいるだろう。自衛官と結婚しても、今のご時世いい気分じゃないと思う」

 

「そりゃあいい男はいっぱいいますよ。自衛官と一緒になってもろくな目に合わない事が今はっきりと分かったし」

 

 霧本は腕を組む。土居内は残ったビーフシチューをご飯にかけて食べる。

 

 市ヶ谷は何を言っていいのか分からなかった。

 

「で、お前はこれからどうするんだ?」

 

 土居内は霧本に質問する。

 

「こんなんじゃ、仕事どころじゃないし。ま、おとなしく自衛隊に保護されてますよ」

 

「そうか。じゃあ市ヶ谷、君のテントに霧本を泊めさせてくれ」

 

 市ヶ谷は突然の事に驚く。

 

「民間人を泊めるんですか!?」

 

「ああ。どうせ民間人保護スペースはもう空いてないだろうしな」

 

 

 

 市ヶ谷と霧本は、土居内の寝るテントの隣のテントで、宿営用野戦ベッドを広げて寝る。

 

「お名前は?」

 

「市ヶ谷です、市ヶ谷 愛」

 

「あのアンポンタンと付き合ってるの?」

 

「ま、まさか。今日会ったばっかりですし」

 

「そう。にしても、かなり凶暴なモノ持ってるね」

 

「ど、何処を言ってるんですか!?」

 

「あまり声が大きいと、佳樹に聞こえるよ」

 

 市ヶ谷は赤面する。

 

 

 

 そして、その隣のテントでは土居内がブランケットにくるまって寝ようとしていた。

 

「全部まる聞こえだっつーの」

 

 

 

 翌朝、朝焼けと共に動き出した90式戦車の轟音で目が覚めた。

 

「朝っぱらからご苦労さんだな」

 

 土居内がそう呟きながらテントから這い出ると、82式通信指揮車を先頭に、90式戦車、87式自走高射機関砲、99式自走榴弾砲が列を成して出発した。

 

「朝から何の騒ぎ?」

 

 隣のテントから、ジャージ姿の霧本が出てくる。

 

「安眠なんて程遠そうね」

 

「当たり前だ、今は戦時だ」

 

 土居内はうんざりそうにテントに戻る。

 

「何戻ってるの?」

 

「着替えだ、着替え」

 

 土居内がテントに入った直後、1人の少女がやってきた。霧本が話し掛ける。

 

「おはよう、JK?」

 

「あの、土居内3尉はあなたですか?」

 

 その少女はそう言った。

 

「サンイ? 土居内はそこのテントの中だけど?」

 

「ありがとうございます。あなたの名前は?」

 

「私は霧本 明日花。自衛官じゃないの」

 

「え、そうなんですか?」

 

「ここで保護されてるの。あなた、自衛官なの?」

 

「はい! 豊川 かるら1等陸士です!」

 

 その少女はそう自己紹介した。しかし、霧本にはそれが信じられなかった。水色のショートヘアに、髪とほぼ同じ色のセーラー服、ミニスカートの下にスパッツ、そして背負った89式小銃。

 

(あ、これは本物だ)

 

 豊川が背負っている89式小銃が本物だと、霧本は悟った。

 

 そして土居内のいるテントに向かって話す。

 

「佳樹ー、かわいいお客さんだよー」

 

「下の名前で呼ぶんじゃねぇ」

 

 作業服姿の土居内がテントから出てくる。それを見た豊川が敬礼する。

 

「第10師団から今日付けで転属になりました、豊川 かるら1等陸士です」

 

「中央混成連隊の土居内 佳樹3等陸尉だ。後で残りのメンバーを紹介する」

 

 そう言って土居内は敬礼を返し、霧本に指示を出す。

 

「いつまでも寝てる連中を叩き起こしてくれ」

 

「自衛官が民間人に命令?」

 

「保護したのは誰だ?」

 

「はいはい、分かりました」

 

 霧本は市ヶ谷の眠るテントに入り、市ヶ谷の肩をそっと叩く。

 

「っ・・・・・・!?」

 

 市ヶ谷は飛び起き、枕の下の9mm拳銃を手にした。撃鉄を起こし、狙いを定めて引き金に触れる。

 

「手を挙げろ!」

 

 市ヶ谷はそう警告を発する。霧本は反射的に両手を上げる。

 

「待って待って。私だって。佳樹が起こせというから・・・」

 

 それを見、市ヶ谷は9mm拳銃のデコッキングレバーを下ろして撃鉄を元に戻す。

 

「司令官が?」

 

「そう。新入りだって」

 

 市ヶ谷は9mm拳銃を枕の下に仕舞うと、寝間着代わりのジャージからいつもの制服へと着替える。そして、腰にホルスターを吊るし、拳銃をそこへ仕舞う。

 

 そしてテントを出る。

 

 

 

 やがて富山もテントから出てくる。

 

「はい、整列! 駆け足!」

 

 土居内がそう大声を出し、一列に並ぶ。

 

「じゃ、朝の点呼取るぞー。市ヶ谷3尉!」

 

「はい!」

 

「富山陸士長!」

 

「・・・・・・はい」

 

「元気出せっ! グスタフハイポート走させるぞ!」

 

「・・・はい!」

 

「それから、新しく配属になった豊川1士!」

 

「はい!」

 

 豊川は返事をし、土居内や市ヶ谷、富山に向かって敬礼する。

 

「豊川駐屯地・第10高射特科大隊からやってきました、豊川 かるら1等陸士です。よろしくお願いします」

 

 そう言って89式小銃を抑えながらお辞儀をする。

 

「中央即応連隊・連隊長の土居内3尉だ。この連隊にはお前を含めてたった4人しかない。よってお前には精一杯働いてもらうぞ」

 

 土居内はそう言った。

 

「了解しました!」

 

 豊川はそう言って敬礼した。

 

「よし、早速ピクニックを始めるぞ」

 

 

 

 中央混成連隊、出撃。

 

 富山駐屯地の門を、高機動車が通り抜ける。

 

「で、何で私がドライバーなの?」

 

「使えるものは使っとくんだよ。市ヶ谷は他部隊との交渉や、防衛省から連絡の引き継ぎで忙しいし、俺は作戦立案でドライバーの暇は無いし、富山と豊川は周辺の警戒中。必然的にお前をドライバーにするしかなかったんだよ」

 

 霧本はため息をつき、高機動車のアクセルを踏み込む。ディーゼルエンジンがそれに唸って応える。

 

 

 

 それを、市ヶ谷は見送った。そして、駐屯地の外へと出る。

 

 

 

「で、今回は何処に行くの?」

 

 霧本は不満そうに言う。

 

「まず富山港に向かってくれ」

 

「え?」

 

「そこに『はくおう』が停泊してるんだ。それに乗る」

 

「外国に行くの?」

 

「国内だ。離島に攻撃ヘリが墜落した。その乗員の捜索及び保護が今回の任務だ」

 

 後部荷室では、富山や豊川が周りを警戒している。街には誰もいないし、車も高機動車以外は走っていない。が、所々建物が倒壊し、大破した装甲車や戦車、ヘリコプターが敵味方問わずに転がっている。

 

 

 

 富山港に着いた。そこには海上自衛隊のカーフェリー「はくおう」ではなく、海上自衛隊の大型ホヴァークラフト・LCACが停泊していた。

 

「聞いてねえぞおい」

 

 土居内は高機動車の助手席から降りるなりこう言った。

 

「中央混成連隊か!? 時間が無いんだ、早く乗ってくれ!」

 

 海上自衛隊と書かれた灰色の防弾チョッキを着た自衛官がそう叫ぶ。土居内はため息をついて、霧本に指示を出す。

 

「このまま乗船する」

 

「分かった」

 

 霧本はゆっくりとアクセルを踏んで、LCACに高機動車を載せる。既にLCACには複数の高機動車や軽装甲機動車が乗船していた。

 

「よぉし、出港!」

 

 海自隊員が叫び、LCACのランプドアが閉じる。

 

 

 

 その頃、日本海に浮かぶとある島では。

 

「はぁぁ、無線機が通じないよ・・・」

 

 機首から派手に地面に食い込んだ陸上自衛隊の攻撃ヘリ・AH-1Sのすぐ脇で、赤髪の女性が呟いていた。陸上自衛隊制定の迷彩服2型を着、89式小銃を背負っている。

 

「助けを呼びに海岸に向かった葵も帰ってこないし、ここで熊とか出てきたら・・・」

 

「心配しないでください! 茜お姉さま!」

 

「あ、あなた誰!?」

 

 

 

 同じ頃、富山県では。

 

「ギュギューギュ!」

 

「ギュギュイギュ!」

 

 マグマ軍歩兵達がある物を抱え、排水溝へと潜っていった。

 

 そのすぐ側には、弾切れの9mm拳銃が転がっていた。




第6話、いかがだったでしょーか?

とりあえず、何で期間限定イベントを2つも一緒にやろうと思ったんだろう・・・?
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