りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す! 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
海上保安庁 横浜防災拠点に停泊中のワスプ級強襲揚陸艦〈サラトガ〉艦内――
「司令、お話があります」
「キューマルか。珍しいな」
司令官室に、キューマルがやってきた。土居内に敬礼し、用件を話す。
「装備についての事ですが」
「装備? レールガンが欲しいとか?」
「いえ……ミニガンが欲しいんです」
「はぁん、ミニガン――ミニガンだって!?」
土居内が思わずコーヒーをこぼしかけた。
「ミニガンって、アメリカ製のM134 ミニガンだよな?」
「それ以外にありますか?」
「何だってミニガンが? ブローニングでは駄目か?」
「対歩兵能力を考えると、今の武装では力不足な気がするんです」
「.50キャリバーと言う事聞かん銃だけだもんなぁ」
「ヒトマルちゃんにはMINIMIもありますが」
「あいつ、敵陣に単身で飛び込むんだもん。マシンガンがいくつあっても足りねぇもん」
「とにかく、お願い出来ますか?」
「……上に言ってみるよ」
そして、入れ替わり立ち替わりで朝霞が入ってきた。
「今度は? SCARが欲しいとか言うのか?」
「いえ、どちらかと言うとタボールが――ではなく、人員の拡充をお願いしたいです」
「人員の拡充? 小銃小隊の?」
「はい。以前の岬守学園との演習で、マンパワーが不足している気がして。調べてみた所、他の混成中隊より普通科隊員が少ない事が分かりました」
「だが、俺達は『先陣を切る』のが任務だ。人が多いとそれだけ厄介になる」
「それも、そうですが……」
「分かった分かった。上に話してみるから」
〔で、ミニガンの調達と人員補充? ミニガンなら、アメリカに何とか言えば何とかなるだろうが、人員補充は厳しいぞ〕
「承知の上ですよ。何も急にとは言いませんが、即戦力が欲しいですね」
土居内は、津田沼陸将補に電話していた。
〔そういう即戦力は、他の連隊に回される。お前や俺の所にはよっぽどの事が無いと補充は来ない〕
「やはり、無理ですか」
〔話が出来る所にはしておく。ミニガンはいくつだ?〕
「予備含め、15って所です」
〔分かった。明日にはミニガンが届くだろう〕
「ありがとうございます」
そして、通話が終了した。
いくつかの書類を済ませると、また扉がノックされた。
「入れ」
「佳樹さん」
「愛か。どうした?」
「今日は暇ですか?」
「まあ、差し迫った仕事は無いけど」
「なら、デートしませんか?」
私服に着替えた2人は、〈サラトガ〉を降り、赤レンガ倉庫に向かった。土居内はTシャツとGパンという平凡な服装で、ウェストポーチを身に付けていた。一方の市ヶ谷は白いワンピースに水色の薄着、そしてポシェットを首から提げていた。
「前の格好(市ヶ谷 愛 私服ver)じゃないんだな」
「あの時色々からかった癖に!」
「ははは、ごめんごめん」
そして、赤レンガ倉庫 1号館に入った。色々な雑貨屋が入っており、その度に市ヶ谷の足は止まる。
土居内には、何が可愛いのかさっぱり分からないので、辺りを見回してみる。すると、見覚えのある人物がいた。というより、背負っているそれが違和感を放ちまくっていた。
「おい鯖江」
「おや、司令官」
それは、間違い無く鯖江だった。私服姿の鯖江は大人っぽいがしかし――
「背負っているそれは何だ?」
「何だって、香林から借りた」
背負っているそれは、紛れも無く豊和工業の89式5.56mm小銃である。
「お前、64じゃなかったか? いやそうじゃなくて、自衛官がプライベートで銃器を携帯するのは違法だぞ」
「でも、警察官は何も言わなかったよ」
「そういう問題じゃねぇ……!」
「だとしたら、どういう問題なのかな?」
「…………!」
何も言い返せなかった。激昂に震える土居内を、市ヶ谷が叩いた。
「何してるんですか佳樹さん。ほら、次行きますよ」
食品サンプルの店にて、いちごタルトのキーホルダーを買った市ヶ谷は、早速スマートフォンに付けた。
「美味そうだな」
「食べられませんよ?」
「分かってる分かってる」
そして2人はクイーンズスクエアへ向かった。何かのライブをやっているらしく、かなりの人だかりだった。
「佳樹さん、少し早いですが、お昼にしません?」
「そうだな」
土居内は腕時計を見る。時刻は1058だ。
「だったら、ちょっと気になっていたお店があるんです」
「ここ?」
「ええ」
「じゃあ、そこにするか」
強襲揚陸艦〈サラトガ〉 車両格納庫――
「ナナヨン」
タイガーが、74式戦車の側で12.7mm M2重機関銃の整備をするナナヨンを呼んだ。
「何?」
「もうすぐお昼でしょ? どっか食べに行かない?」
「私はパス。キューマルなり呼べば?」
「何でそんなに邪険にすんのよ?」
「貴女とは馬が合いそうになさそうだから」
「酷いわね。同じ冷戦期なのに」
そして、タイガーは車両格納庫を見回した。
「仲間もだいぶ増えたものよ。なのに、親睦を深めようとしないなんて」
「放っといてよ」
「そんなにひねくれているのは、時代の所為?」
思わずナナヨンは、12.7mm M2重機関銃の銃身でこいつをぶん殴ってやろうかと思慮した。が、思い踏みとどまった。
「まあいいわ。ランドマークプラザ行ってくるわ」
「そ。なら早く行きなさい」
タイガーは肩をすくめ、車両格納庫を出ていく。
「もう少し素直になれば、少しは可愛げも出てくるのに」
そう言い残して。
「意外だな、肉が好きなんて」
「自衛官になってからですが。体力が要りますし、食べれる時に食べないと」
市ヶ谷がステーキを頬張る。一方の土居内はビ○グマ○クに劣らぬ、というかそれより大きいハンバーガーを食べていた。
「やっぱり、自衛官になる前は普通の女子高生だったのか?」
「ええ。友達とふざけたり笑ったり――あ、やましい事はしてませんよ?」
「分かってるって。初めてをくれた相手にそんな事疑ったりしないって」
市ヶ谷は赤面する。
「もう!」
「全くもー、愛は本当可愛いな」
「…………!」
その後、土居内は市ヶ谷に痛いほど叩かれた模様。
土居内と市ヶ谷の2人はランドマークプラザやコレットマーレを巡り、汽車道を通ってワールドポーターズへやってきた。
「映画見ません?」
「映画か。久し振りだな」
その時、市ヶ谷が突然屈んだ。
「大丈夫か?」
「ちょっと靴擦れが……」
なので、土居内は市ヶ谷をおんぶすると、近くにあったベンチへと向かった。
「ちょっと!? 自分で歩けますから!」
「怪我人は丁重に扱わないとな」
そしてベンチにそっと下ろした。
「絆創膏は?」
「ありますよ」
「そっか。じゃ、飲み物買ってくる。何がいい?」
「じゃあ、緑茶を」
「分かった」
そして、土居内は離れていった。市ヶ谷は左のヒールを脱ぎ、擦れた部分に絆創膏を貼る。
すると、誰かが近付いてきた。
「やあお姉さん」
「誰ですか?」
市ヶ谷はそっと顔を上げた。見覚えの無い2人の男が、市ヶ谷を囲むように立っていた。服装から、相当軽そうなのが分かる。
「お姉さん、靴擦れ? 大変だね」
「良かったら救護室まで運んでいこうか?」
「必要ありません」
市ヶ谷はそっと、ポシェットを前に持ってくる。中には、護身用に忍ばせたタクティカルライト付USP自動拳銃が入っている(言わずもがな、自衛官でも非番時の銃器の携帯は違法です)。
「そう冷たくしないでよ。お姉さんの事を思って――」
「必要無いと言っているでしょう」
すると、2人の男の後ろから声がした。
「おい餓鬼共。離れてもらおうか」
「佳樹さん!」
市ヶ谷の視線の先には、2本のペットボトルを抱えた土居内がいた。
「んだよ、連れか?」
「ああ、そんな所だ。さっさと離れてもらおうか」
「恋人を放っとくお前の方が悪い」
土居内がカチンときた。
「いい度胸だな。そいつの左薬指を見たか?」
2人は見る。確かに、市ヶ谷の左薬指には指輪があった。
「諦めろ、糞餓鬼共」
「んだと! そんなので諦めると――」
2人は土居内に殴りかかろうとする。が、土居内はある物をウェストポーチから取り出した。
「殴ったらどうなるか、分かるよな?」
『――!?』
それは、陸上自衛隊の身分証だった。2人の男は思わず止まる。
「ああ、言っとくが、これでもレンジャー徽章を持っててね。彼女か俺に一回触る度、指の骨を1本貰うぞ」
すると、2人は逃げ出した。
そして映画を見、土居内と市ヶ谷の2人は屋上に来ていた。
「わー……」
みなとみらいの夜景に、市ヶ谷はうっとりする。
「佳樹さん、助けていただきありがとうございます」
「何言ってるんだ。妻を守るのは夫の役目だろう?」
「ふふっ、そうですね」
そして、市ヶ谷は頭を土居内に添えた。
「愛?」
「この先もずっと、私の側にいてくださいね?」
「当たり前だ。子供が出来ても、定年退職しても、墓場までずっと一緒にいよう」
「……はい!」
数時間後、宮城県上空――
〔アルタイル01、現在高度2000フィート、マグマ軍領空に侵入〕
〔スカイワッチ、了解〕
航空自衛隊のステルス戦闘機・三菱重工 F-35AJ ライトニングⅡが1機、マグマ軍領空に侵入した。速度マッハ1.2、機首下の赤外線センサーで海岸線を撮影する。
新たな大規模作戦が、始まろうとしていた。