りっく☆じあ~す 中央混成連隊、前進す! 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
AAV-7水陸両用装甲車、そして16式機動戦闘車や軽装甲機動車、96式装輪装甲車を満載したLCACホバークラフト揚陸艇が朝焼けの海を進む。上空には攻撃ヘリの編隊、左右にはフリゲート艦〈スコールイ〉〈シーリヌイ〉がいる。
AAV-7水陸両用装甲車の砲塔にはショートヘアの少女、車内には第2小銃小隊の隊員達が肩を並べていた。
1班所属の豊崎は、愛銃・89式5.56mm小銃を片手に、右手を震わせていた。何度もマグマ軍ゲリラやイクシスと交戦した経験があるとはいえ、今までのは「防衛」だった。が、今やっているのはれっきとした「攻撃」である。
「やっぱり怖いよね」
隣の朝戸が話し掛けてきた。豊崎は頷く。
「……手が勝手に震えるんだよ」
「仕方ないとはいえ、女子高生のやる事かな?」
「…………」
「まあ、何事も慣れなのかな? 1小隊の人達、すごい落ち着いてたし」
「ホント、呆れるくらいに前向きね」
その時、AAV-7水陸両用装甲車が大きく揺れた。
習志野達に、砲声が聞こえた。見れば、古びた倉庫の屋根を突き破って出てきた榴弾砲の砲身が見える。
「しまった! 砲撃陣地は市街地か!」
「エコー・ブラボーよりバルト1! リアタックを要請! マーベリックを1発頼む!」
〔バルト1、了解、マーベリックを発射!〕
白根がAN/PEQ-16レーザーサイトで倉庫へレーザー照射、AGM-65 マーベリック対戦車ミサイルを誘導する。
「きゃあ!」
「痛い!」
「沈むー!」
「馬鹿、これくらいで沈まないわよ!」
「落ち着いて! 沈まないから!」
AAV-7水陸両用装甲車の車内で、女子高生達がもみくちゃになり、銃があちこちに当たる。
「勘だったけど、ライフルをケースに入れておいて良かった」
沢城 桐子が、何人かを下敷きにしているハードケースを手に起き上がる。
「皆、大丈夫!?」
砲塔から、AAV-7水陸両用装甲車の武器娘――ブイナナ――が降りてきた。
「う〜ん、何とか……」
「頭打った……」
皆軽傷であった。
マグマ軍の榴弾砲を1門破壊したが、まだありそうな気配がある。
双眼鏡で捜索する習志野は、照安を呼んだ。
「照安」
「何?」
「観測兵を狙撃出来るか?」
「観測兵? なるほど、任せといて」
習志野の隣に伏せ、M82A2対空/対物狙撃銃を構える。スコープを覗き、フォアグリップを握り締める。
スナイパーと呼ばれる職種には、様々な任務がある。敵の監視や重要装備の破壊、敵スナイパー排除(カウンタースナイプ)、敵戦力の縮小等だが、敵の情報収集手段の排除――つまり、斥候や観測兵の狙撃――も重大な任務の1つである。特に、こちらの戦力や位置を逐一砲兵に伝える観測兵は、味方部隊を守るためにも排除しなくてはならないのだ。
照安と習志野は、マグマ軍の観測兵を探す。上陸してくる部隊を砲撃するなら、海岸が見える場所しかない。
(2階建ての事務所……違う。なら雑居ビル? いない。なら……!)
照安は銃を動かした。その銃口は、内陸の小学校を向く。
「いた!」
「何処だ!?」
「内陸の小学校!」
「あれか!」
4階建ての校舎の4階に、マグマ軍の観測兵がいた。素早く習志野が双眼鏡のレーザー測距機能で距離を測る。
「2840m」
照安は深呼吸をする。
遠距離狙撃は一筋縄ではない。そもそも弾丸はまっすぐ飛んでいかない。長く飛べばその分不安定になるし、ライフリングの回転運動で左右にぶれてしまう(そのため、近年の戦車砲にはライフリングが無い。イギリスを除いて)。更に、横風という大敵もいるが、厄介なのがコリオリの力である。これは南北方向へ狙撃する際に関わってくるのだ(単純に言えば、弾丸が飛んでいる間に地球は回るよね、という事)。その他、動いている的を狙うのは難しい(参考までに、12.7mmNATO弾が3000m飛ぶのに7秒掛かる)。
ましてや、今までの照安の最長狙撃距離は1670m。2800mなんて未知の領域である。
照安は呼吸を整える。スコープのゼロイン距離は1200m、かなり上を狙わなくてはならない。それに、北西方向への狙撃、右寄りに狙う。
「習志野さん、着弾観測よろしく」
「ああ」
スコープの十字照準――クロスヘア・レクティクル――が上下に揺れる。引き金を慎重に引き、あと2mmで撃鉄が落ちる所まで引いた。
揺れる照準が、狙点と重なった瞬間に、照安は引き金を引き絞った。
AAV-7水陸両用装甲車が上陸した。停車後、すぐに後部ランプドアが開き、第2小銃小隊が展開する。
「やだもー、砂まみれになっちゃう」
小海が文句を言いながら、1班は砂浜に伏せる。
海岸に、敵はいないようだ。しかし、狙われているかもしれないという恐怖がつきまとう。
しばらくして、3隻のLCACホバークラフト揚陸艇が上陸し、車両を降ろして帰っていった。
上陸作戦はまだ、始まったばかりだった。