7月23日。サスケの誕生日に合わせて…。
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時代背景は、大戦終了後、サスケとサクラが二人旅を始めたころです。


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7月23日。サスケの誕生日に合わせて…。
サスケへの愛をこめて…。

サスケ、お誕生日おめでとう!

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ギリギリ間に合いました…(^_^;)




贈り物 【2016 サスケ生誕祭】

 日差しが強くなりはじめた雨季明け間近の湿りを帯びた暑さ。

 サスケは額ににじんだ汗を手の甲で拭った。

 「サスケ君…私、向こう見てくる」

 隣で同じ様に汗をぬぐったのは、数ヵ月前から共に旅をしている、サクラ…

 「ああ…頼む…」

 「うん」

 今ではしっかりと想いを通じ合わせた2人。

 交わす笑顔は、互いに柔らかい…。

 背を向け際に優しく揺らいだサクラの美しい瞳に、サスケは胸があたたかくなるのを感じ、改めて笑みを浮かべる。

 

 

 チリン…

 

 ふいに小さな鈴の音が耳をかすめた…

 

 チリン…

 

 風に乗って、どこからか流れ聞こえてくる…

 

 その音を探して、サスケはその場でクルリと回り、視線を巡らせた。

 

 瓦礫が散らばる殺伐とした風景…

 しかし、その隙間からは小さな緑色の芽が所々に顔を出しており、荒れたこの地にかすかな希望を生み出している。

 その芽生えを瞳に映しながら、体を反転させた所で目に入ったのは、かろうじて形を残した壁…。

 そこにしるされている…うちは一族の紋…

 自然と動きが止まる。

 

 空の眩しさか…それとも過去に馳せた想いからか…

 

 見上げたその目が、スッと細められる…

 

 

 『許せ…サスケ…』

 

 

 鼓膜に刻み込まれた声…

 目を閉じ、全身にそれを巡らせる…

 

 「許せるかよ…」

 

 再び開いた瞳に紋がうつる。

 

 そっと触れる…

 

 外気の暑さに反して、ヒヤリと冷たい…

 

 「許せねぇ…」

 

 グッと固くこぶしを握り、壁に額をつける。

 冷たい感触が目の奥の熱を吸いとってくれるようで、その心地よさに、暫し身を預ける。

 

 この場で繰り広げた…兄との最後の戦いが蘇る…

 

 『本当に…強くなったな…サスケ…』

 

 今になって、その声が…ひどく柔らかかったことに気づく。

 

 自身を恨ませ…憎ませ…

 生きる目的を与え…

 強くなるよう仕向けた…

 

 強くなければ…力がなければ…生き抜けないこの世界を生き抜くために…

 

 弟である自分の命を…守るために…

 

 「イタチ…」

 

 自分の手で奪った命の名を呼ぶ。

 

 語りかける…

 

 「あんたは知らない…。

 あんたがどれ程大きな存在だったか…。

 どれ程大切だったか…

 オレが…どれ程あんたを…愛していたか…」

 

 消えたはずの熱さが目の奥に戻り…

 

 ポタリ…

 

 一粒の涙を生んだ…

 

 

 チリン…

 

 

 涙のその音に重なり、再び聞こえる鈴の音色…

 

 振り返った先…

 

 瓦礫の上に、漆黒の猫が姿勢よく佇み、サスケを見つめていた。

 

 光の加減か、瞳が少し赤く見える。その瞳を日の光に輝かせ、美しい声で一鳴きした。

 

 呼んでいる?

 

 一瞬よぎった考えに苦い笑いを浮かべる。

 

 子供が読む物語でもあるまいし…

 

 だが、もう一度こちらを見て鳴いた猫の不思議なその空気に、サスケは足を向けた。

 

 近づいても逃げる様子のないその猫の首には、小さな鈴のついた首輪。

 

 飼われていた猫が…逃げ出したか…

 

 それでも、辺り一面荒野と化したこの場所になぜ…

 そんな事を思いながら猫のもとへたどり着く。

 黒猫は、目の前にあるマンホールの蓋ほどの瓦礫を、小さな前足でカリカリ…とかいた。

 

 「何かあるのか?」

 

 食べれそうなものでもあるのか…と、その瓦礫をどかし…サスケは目を見開いた。

 

 そこには、サスケが探していた物が…あった…

 

 「…………」

 

 無言で見つめるその先にあったのは…

 

 …木の葉の…額あて…

 

 布の部分は数ヶ所破れ…擦りきれ…朽ちかけている。

 それでも金属部分は、しっかりと形を残していた。

 

 そこにしるされた木の葉の紋様は、深く刻まれた一筋のキズによって切り裂かれている…。

 

 サスケは額あてを手に取り、ゆっくりと裏返す。

 金属箇所のちょうど裏側…

 赤色と緑色の小さな丸い形の布が縫い付けられていた。

 

 いびつな形のそれは、サスケが幼いころに慣れぬはさみで必死に作った物。

 自分の好きなトマト。…そして、イタチの好きなキャベツ…。

 それに見立てて作り、サスケが母に頼んで、兄の額あてにつけてもらったのだ。

 

 間違いない…。

 

 サスケはグッと額あてを握りしめる。

 

 「イタチ…」

 

 さらに力を込める…

 

 カサリ…

 

 手の中で紙が擦れる音がした。

 

 「………?」

 金属の板と布の隙間に、何かが挟まっていることに気づき、取りだして広げる。

 

 紙に記されていたのは、術式…。その中央に『幻』の文字。

 それを目に留めた瞬間、猫が一鳴きし、サスケの視界が揺らいだ。

 「幻術!」

 反射的に返そうとチャクラを練る。

 しかし、その動きが止まった…

 

 目の前に浮かんだのは、かつて暮らしていた自宅の一室…

 

 そこに、父…母…幼き頃のイタチの姿があった。

 

 母の腕には、小さな赤ん坊が抱かれている。

 『小さいな…』

 父がそっと…赤ん坊の頭をなでる。

 大切そうに…愛おしそうに…幸せそうに、微笑んでいる。

 

 「父さん…」

 あれほどまでに柔らかい父の表情が記憶の中に見当たらず、サスケは思わずつぶやいた。

 

 『かわいいでしょ』

 母が赤ん坊の額に口づける。

 その瞳には、感動からか涙がにじみ、愛を溢れさせながらポロリ…と、赤ん坊のほほに落ちた。

 

 「母さん…」 

 ひしひしと伝わる母の愛に、胸が締め付けられる。

 

 『僕の…弟…』

 恐る恐る…イタチが、赤ん坊のほほを伝う母の涙を小さな手で拭う。

 その手に触れたぬくもりを確かめるように、そっと頬に手のひらを添わせ、微笑む。

 

 「兄さん…」

 兄の手のぬくもりが、頬に伝わってくる…。

 

 サスケが見つめるその先で、家族は幸せそうに微笑みあっている。

 『名前は、サスケ…。うちはサスケよ』

 母が一層柔らかく微笑み、赤ん坊…サスケをイタチの腕の中にそっと抱かせた。

 『サスケ…』

 『いい名だろう』

 父の誇らしげな顔…。

 イタチは強くうなずいて、腕の中のサスケを見つめた。

 

 両親がサスケの手を握る。

 

 生まれたばかりの小さき命が、家族をしっかりとつなぎ合わせる…。

 

 幸せにあふれた空間…。

 

 『サスケ、お母さんのところに生まれてきてくれてありがとう』

 『サスケ、お前は父さんの…我が家の宝物だ』

 言葉に答えるように、サスケの小さな指が、キュッと両親の親指を握った。

 小さな赤ん坊の強いその力に、イタチが目を輝かせながら言葉を紡ぐ。

 『サスケ、何があっても…お兄ちゃんが絶対守ってあげるからな』

 

 

 「………っ」

 その光景をじっと見つめていたサスケの瞳から涙が溢れた。

 

 にじむ視界の中で、家族の声が重なる。

 

 『サスケ…誕生日おめでとう』

 

 

 暖かいぬくもりと共にまばゆい光が溢れ、サスケの視界を白く染めてゆく。

 まぶしさに目を閉じる。

 

 『何があっても…お兄ちゃんが絶対守ってあげるからな』

 

 もう一度兄の声が聞こえた。

 

 「兄さん…」

 

 つぶやくように放ったその声に、サクラの声が重なり聞こえた。

 「サスケ君!」

 ハッとして目を開く。

 心配そうにのぞきこむサクラの美しい瞳がすぐ近くにあった。

 「大丈夫?暑さにあてられた?」

 そっと頬にサクラの手が添えられ、そのぬくもりが先ほどのイタチの手のぬくもりと重なり、胸が苦しくなった。

 「どこか痛い?」

 歪ませた表情にサクラが気遣う。

 「…いや…」

 サスケは小さく首を横に振り、自分が初めに立っていた場所で、壁に背をつけて座り込んでいたことに気づく。

 

 辺りを見回すが、あの黒猫の姿は…なかった…

 

 …夢…だったのか…

 

 しかし、手の中に感じた感触に、そうではなかった事を確信する。

 サクラがそれを目に留めて、微笑んだ。

 「見つけたんだ」

 「ああ」

 うなずいてサクラに見せる。

 

 イタチの額あてを…。

 

 「よかっ…た…ね」

 その言葉の最後が、力を失った。

 「サスケ君…」

 サスケの瞳から…涙が溢れていた…

 「………っ」

 名を呼ばれて初めて気づいたのか、サスケは自分の涙に驚き、慌ててぬぐおうとする。

 しかし、拭うために持ち上げた手の中にある額あてを見て、さらに涙があふれた。

 「……うっ…」

 こらえきれぬ切なさがこぼれる。

 「うぅ…っ…」

 「サスケ君…」

 その涙を…切なさを…想いを…すべてを包み込むように、サクラがサスケを抱きしめた。

 「…っ…サクラ…」

 ギュッと、抱きしめ返す。

 「オレは…オレは…まだ…許せない…」

 

 

 『許せ…サスケ…』

 

 

 兄の声が風に揺れる…

 

 

 「許せない…。許せないんだ…まだ…オレ自身を…」

 

 

 兄は、すべての罪をその身に受け…耐え忍んだ…

 

 あの言葉の通り…自分の命を守りぬこうと、闇の中を孤独に生きた…。

 

 その兄の命を…この手で奪った…

 

 グッと額あてを握りしめ、先ほどの光景を思い出す。

 

 「兄さん…」

 

 つぶやきに、今度はあの戦いの最後がよみがえる。

 

 

 『これで…最後だ…』

 

 

 あの日そう言ってサスケに力を注いだ兄は、さらに弟に残してくれていた…

 

 

 今日というこの日に…家族の愛の一場面を…

 

 

 計り知れない兄の愛…

 

 その大きな愛は、今を生きる力になっている。

 だが、その半面で、いまだにサスケの胸を締め付ける。

 

 「まだ許せない…」

 

 繰り返されるその言葉に、サクラは優しい声で答える。

 「わかってる。…わかってる…」

 優しい響きがサスケの心に染み入ってゆく。

 「大丈夫。それでも、私がそばにいるから…。離れないから」

 「サクラ…」

 「サスケ君…」

 愛おしげにその名を呼び合う。

 「…お前がいなければ…ここにはこれなかった…」

 一人では到底来ることはできなかったであろうこの場所…。

 自分を支えるサクラがいたからこそ来れた…。

 家族の言葉を…愛を…知れた…。

 「ありがとう…」

 サクラへの感謝と愛が、サスケの心にあふれ広がってゆく。

 「うん」

 

 

 …チリン…

 

 

 サクラのうなずきに合わせて、鈴の音が揺れた…

 

 その音はまるで家族の愛のように、やさしく…あたたかく…穏やかに風の中に響く。

 

 「サクラ…」

 サスケは目の前にいる、愛する存在に微笑んだ。

 「ありがとう…」

 もう一度伝えたその想い。それに応えるように、サクラはサスケの額に口づけた。

 そして言葉を贈る…。

 

 

 「サスケ君…誕生日…おめでとう…」


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