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時代背景は、大戦終了後、サスケとサクラが二人旅を始めたころです。
サスケへの愛をこめて…。
サスケ、お誕生日おめでとう!
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ギリギリ間に合いました…(^_^;)
日差しが強くなりはじめた雨季明け間近の湿りを帯びた暑さ。
サスケは額ににじんだ汗を手の甲で拭った。
「サスケ君…私、向こう見てくる」
隣で同じ様に汗をぬぐったのは、数ヵ月前から共に旅をしている、サクラ…
「ああ…頼む…」
「うん」
今ではしっかりと想いを通じ合わせた2人。
交わす笑顔は、互いに柔らかい…。
背を向け際に優しく揺らいだサクラの美しい瞳に、サスケは胸があたたかくなるのを感じ、改めて笑みを浮かべる。
チリン…
ふいに小さな鈴の音が耳をかすめた…
チリン…
風に乗って、どこからか流れ聞こえてくる…
その音を探して、サスケはその場でクルリと回り、視線を巡らせた。
瓦礫が散らばる殺伐とした風景…
しかし、その隙間からは小さな緑色の芽が所々に顔を出しており、荒れたこの地にかすかな希望を生み出している。
その芽生えを瞳に映しながら、体を反転させた所で目に入ったのは、かろうじて形を残した壁…。
そこにしるされている…うちは一族の紋…
自然と動きが止まる。
空の眩しさか…それとも過去に馳せた想いからか…
見上げたその目が、スッと細められる…
『許せ…サスケ…』
鼓膜に刻み込まれた声…
目を閉じ、全身にそれを巡らせる…
「許せるかよ…」
再び開いた瞳に紋がうつる。
そっと触れる…
外気の暑さに反して、ヒヤリと冷たい…
「許せねぇ…」
グッと固くこぶしを握り、壁に額をつける。
冷たい感触が目の奥の熱を吸いとってくれるようで、その心地よさに、暫し身を預ける。
この場で繰り広げた…兄との最後の戦いが蘇る…
『本当に…強くなったな…サスケ…』
今になって、その声が…ひどく柔らかかったことに気づく。
自身を恨ませ…憎ませ…
生きる目的を与え…
強くなるよう仕向けた…
強くなければ…力がなければ…生き抜けないこの世界を生き抜くために…
弟である自分の命を…守るために…
「イタチ…」
自分の手で奪った命の名を呼ぶ。
語りかける…
「あんたは知らない…。
あんたがどれ程大きな存在だったか…。
どれ程大切だったか…
オレが…どれ程あんたを…愛していたか…」
消えたはずの熱さが目の奥に戻り…
ポタリ…
一粒の涙を生んだ…
チリン…
涙のその音に重なり、再び聞こえる鈴の音色…
振り返った先…
瓦礫の上に、漆黒の猫が姿勢よく佇み、サスケを見つめていた。
光の加減か、瞳が少し赤く見える。その瞳を日の光に輝かせ、美しい声で一鳴きした。
呼んでいる?
一瞬よぎった考えに苦い笑いを浮かべる。
子供が読む物語でもあるまいし…
だが、もう一度こちらを見て鳴いた猫の不思議なその空気に、サスケは足を向けた。
近づいても逃げる様子のないその猫の首には、小さな鈴のついた首輪。
飼われていた猫が…逃げ出したか…
それでも、辺り一面荒野と化したこの場所になぜ…
そんな事を思いながら猫のもとへたどり着く。
黒猫は、目の前にあるマンホールの蓋ほどの瓦礫を、小さな前足でカリカリ…とかいた。
「何かあるのか?」
食べれそうなものでもあるのか…と、その瓦礫をどかし…サスケは目を見開いた。
そこには、サスケが探していた物が…あった…
「…………」
無言で見つめるその先にあったのは…
…木の葉の…額あて…
布の部分は数ヶ所破れ…擦りきれ…朽ちかけている。
それでも金属部分は、しっかりと形を残していた。
そこにしるされた木の葉の紋様は、深く刻まれた一筋のキズによって切り裂かれている…。
サスケは額あてを手に取り、ゆっくりと裏返す。
金属箇所のちょうど裏側…
赤色と緑色の小さな丸い形の布が縫い付けられていた。
いびつな形のそれは、サスケが幼いころに慣れぬはさみで必死に作った物。
自分の好きなトマト。…そして、イタチの好きなキャベツ…。
それに見立てて作り、サスケが母に頼んで、兄の額あてにつけてもらったのだ。
間違いない…。
サスケはグッと額あてを握りしめる。
「イタチ…」
さらに力を込める…
カサリ…
手の中で紙が擦れる音がした。
「………?」
金属の板と布の隙間に、何かが挟まっていることに気づき、取りだして広げる。
紙に記されていたのは、術式…。その中央に『幻』の文字。
それを目に留めた瞬間、猫が一鳴きし、サスケの視界が揺らいだ。
「幻術!」
反射的に返そうとチャクラを練る。
しかし、その動きが止まった…
目の前に浮かんだのは、かつて暮らしていた自宅の一室…
そこに、父…母…幼き頃のイタチの姿があった。
母の腕には、小さな赤ん坊が抱かれている。
『小さいな…』
父がそっと…赤ん坊の頭をなでる。
大切そうに…愛おしそうに…幸せそうに、微笑んでいる。
「父さん…」
あれほどまでに柔らかい父の表情が記憶の中に見当たらず、サスケは思わずつぶやいた。
『かわいいでしょ』
母が赤ん坊の額に口づける。
その瞳には、感動からか涙がにじみ、愛を溢れさせながらポロリ…と、赤ん坊のほほに落ちた。
「母さん…」
ひしひしと伝わる母の愛に、胸が締め付けられる。
『僕の…弟…』
恐る恐る…イタチが、赤ん坊のほほを伝う母の涙を小さな手で拭う。
その手に触れたぬくもりを確かめるように、そっと頬に手のひらを添わせ、微笑む。
「兄さん…」
兄の手のぬくもりが、頬に伝わってくる…。
サスケが見つめるその先で、家族は幸せそうに微笑みあっている。
『名前は、サスケ…。うちはサスケよ』
母が一層柔らかく微笑み、赤ん坊…サスケをイタチの腕の中にそっと抱かせた。
『サスケ…』
『いい名だろう』
父の誇らしげな顔…。
イタチは強くうなずいて、腕の中のサスケを見つめた。
両親がサスケの手を握る。
生まれたばかりの小さき命が、家族をしっかりとつなぎ合わせる…。
幸せにあふれた空間…。
『サスケ、お母さんのところに生まれてきてくれてありがとう』
『サスケ、お前は父さんの…我が家の宝物だ』
言葉に答えるように、サスケの小さな指が、キュッと両親の親指を握った。
小さな赤ん坊の強いその力に、イタチが目を輝かせながら言葉を紡ぐ。
『サスケ、何があっても…お兄ちゃんが絶対守ってあげるからな』
「………っ」
その光景をじっと見つめていたサスケの瞳から涙が溢れた。
にじむ視界の中で、家族の声が重なる。
『サスケ…誕生日おめでとう』
暖かいぬくもりと共にまばゆい光が溢れ、サスケの視界を白く染めてゆく。
まぶしさに目を閉じる。
『何があっても…お兄ちゃんが絶対守ってあげるからな』
もう一度兄の声が聞こえた。
「兄さん…」
つぶやくように放ったその声に、サクラの声が重なり聞こえた。
「サスケ君!」
ハッとして目を開く。
心配そうにのぞきこむサクラの美しい瞳がすぐ近くにあった。
「大丈夫?暑さにあてられた?」
そっと頬にサクラの手が添えられ、そのぬくもりが先ほどのイタチの手のぬくもりと重なり、胸が苦しくなった。
「どこか痛い?」
歪ませた表情にサクラが気遣う。
「…いや…」
サスケは小さく首を横に振り、自分が初めに立っていた場所で、壁に背をつけて座り込んでいたことに気づく。
辺りを見回すが、あの黒猫の姿は…なかった…
…夢…だったのか…
しかし、手の中に感じた感触に、そうではなかった事を確信する。
サクラがそれを目に留めて、微笑んだ。
「見つけたんだ」
「ああ」
うなずいてサクラに見せる。
イタチの額あてを…。
「よかっ…た…ね」
その言葉の最後が、力を失った。
「サスケ君…」
サスケの瞳から…涙が溢れていた…
「………っ」
名を呼ばれて初めて気づいたのか、サスケは自分の涙に驚き、慌ててぬぐおうとする。
しかし、拭うために持ち上げた手の中にある額あてを見て、さらに涙があふれた。
「……うっ…」
こらえきれぬ切なさがこぼれる。
「うぅ…っ…」
「サスケ君…」
その涙を…切なさを…想いを…すべてを包み込むように、サクラがサスケを抱きしめた。
「…っ…サクラ…」
ギュッと、抱きしめ返す。
「オレは…オレは…まだ…許せない…」
『許せ…サスケ…』
兄の声が風に揺れる…
「許せない…。許せないんだ…まだ…オレ自身を…」
兄は、すべての罪をその身に受け…耐え忍んだ…
あの言葉の通り…自分の命を守りぬこうと、闇の中を孤独に生きた…。
その兄の命を…この手で奪った…
グッと額あてを握りしめ、先ほどの光景を思い出す。
「兄さん…」
つぶやきに、今度はあの戦いの最後がよみがえる。
『これで…最後だ…』
あの日そう言ってサスケに力を注いだ兄は、さらに弟に残してくれていた…
今日というこの日に…家族の愛の一場面を…
計り知れない兄の愛…
その大きな愛は、今を生きる力になっている。
だが、その半面で、いまだにサスケの胸を締め付ける。
「まだ許せない…」
繰り返されるその言葉に、サクラは優しい声で答える。
「わかってる。…わかってる…」
優しい響きがサスケの心に染み入ってゆく。
「大丈夫。それでも、私がそばにいるから…。離れないから」
「サクラ…」
「サスケ君…」
愛おしげにその名を呼び合う。
「…お前がいなければ…ここにはこれなかった…」
一人では到底来ることはできなかったであろうこの場所…。
自分を支えるサクラがいたからこそ来れた…。
家族の言葉を…愛を…知れた…。
「ありがとう…」
サクラへの感謝と愛が、サスケの心にあふれ広がってゆく。
「うん」
…チリン…
サクラのうなずきに合わせて、鈴の音が揺れた…
その音はまるで家族の愛のように、やさしく…あたたかく…穏やかに風の中に響く。
「サクラ…」
サスケは目の前にいる、愛する存在に微笑んだ。
「ありがとう…」
もう一度伝えたその想い。それに応えるように、サクラはサスケの額に口づけた。
そして言葉を贈る…。
「サスケ君…誕生日…おめでとう…」