IS~ワンサマーの親友   作:piguzam]

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話を煮詰めるとどうしても時間が掛かってしまうんですよねぇ。


しかし駄作者なので中身は薄っぺら。


投稿するのも「これでいいかな?」と勇気が要るという三重苦。


そして作者は感想が無いとモチベーション下がる駄目っぷり。


皆さん、厚かましいお願いですが感想お待ちしてます(土下座)


感想が多ければ多い程、作者は力を増すうぅ!!




獣にも休日と癒しは必要なんです。

 

 

 

チュン。チュンチュン。

 

 

「……ん……んぅ……朝、か……」

 

 

一日の始まりを告げる雀の鳴き声。

そしてカーテンの隙間から零れる朝日に、織斑千冬はその意識を覚醒させ始める。

ボンヤリとしていた意識が少しずつ鮮明になり、視界も寝惚けを覚まそうと働く。

千冬は近年稀に見る程に爽快で気持ちの良い目覚めに、その口元を無意識に緩ませていた。

 

あぁ……久しぶりに、とても気持ち良く眠れたな……こんな気分は何時ぶりだろうか。

 

思い返すも出てくる記憶は学園の業務、弟の壊したドアの対応、非常事態の後始末等と碌でもない記憶ばかり。

こんなにも良い朝に思い返したくも無いと、千冬は直ぐにその記憶を埋める(シャットダウン)

そして今日は土曜日、珍しくも職員も休みの日だと記憶を思い出していた。

確か今日は真耶と約束していたな、と本日の予定を頭の中に組み立て、起き上がろうと己の意識をハッキリさせる。

 

「うぅ……うぬぅ……」

 

「――」

 

そして、自分の谷間に顔を埋めて寝こける元次の姿を発見。

一瞬でフリーズしてしまった。

 

 

 

――チュンチュン。

 

 

 

「――」

 

「う、ぬぉ……ち、千冬さん……エロ過ぎますぅ……zzz」

 

 

 

 

 

――――。

 

 

 

 

 

――――――――。

 

 

 

 

 

――――――――――――は?

 

 

 

 

 

小鳥の囀る耳触りが良く心地よい鳴き声と、胸の中で困った表情で寝言を口走る元次。

余りにも予想外過ぎる展開に、千冬の心は呆然としてしまう。

そして、視覚情報によって確認した自らの格好にすら駄目押しを食らう。

上は何時もの白いYシャツを着ているが、ボタンは全て外してフルオープン。

千冬が好む黒い下着は惜しげも無く晒され、その柔肌に顔を埋める元次(愛しい男)の姿。

更に目の前で眠っている元次すらYシャツの前は開き、その鍛え上げられた筋肉が露出していた。

 

――そして、元次の体の至る所に残る、無数の所有証明(キスマーク)

 

ここで千冬は漸く、昨夜自分が何をしたのかを思い出す。

酒に酔い、気分がよくなっていた所為で。

目の前のスケベに妬き餅を焼いてやらかした……とんでもないやらかしを。

 

「あ……あぁ……ッ!?」

 

昨夜の出来事が少しづつ鮮明になるのと比例して顔に血流が流れ、林檎の様な顔色になっていく世界最強の”乙女”。

自分以外の女にうつつを抜かすこの男が憎くて、愛しくて。

この腕の中に納めた暖かくて心地よくしてくれる温もりを、自分だけの物にしたくて。

 

「……あ、ぅ……ッ!?」

 

理不尽な状況でも自分の事を第一に考えてくれる、目の前の男を困らせたくなって。

意地悪をしても自分を想ってくれる愛らしいケダモノに胎の奥が、女の部分がじゅんと疼いて。

ISに乗る事がなければ、ここまでヤキモキする事も無かったのに、と。

私以外の他の女なんて見るな、楽しそうにするな――私だけを見ろ、と。

自分も構って欲しいと駄々を捏ねて、拒否しなかったから散々に甘え倒した。

 

でも、乙女心は複雑怪奇。

 

それを真正面から言う勇気が無かったから、酒の力を借りた。

そして、遂に己の腕にその憎たらしい(愛らしい)野生の獣を捕まえ――首輪(キスマーク)を付けたのだと。

と、昨夜の出来事の全てを思い出し、千冬の心臓はバクバクと早鐘を打つ。

 

そして、自分の手に伝わる硬くてbigな”ナニ”かの感触に、思わず視界を向け――。

 

「――な、ぁ……ッ!?わ、わわっ……ッ!?」

 

それがドコのナニか理解し、蒸気を顔からプシュゥウゥ~ッ!!と立ち昇らせる。

ババッと音を鳴らして手をどけるも生々しい感触が消えず、視界に映るドでかいテントに血流は更に加速してしまう。

乙女心一万二千回転、オーバーレブ突入状態。

このままいけば、千冬の大事な何か(羞恥心)がオーバーヒートするのは確実であり、あえなく彼女は臨界点突破(エンジンブロー)となってしまうだろう。

 

「――う――うっ――」

 

そして、暴れる鼓動を止めようと――。

 

 

 

 

 

「むにゃむにゃ……す、擦り付けより……そのおっぱいを揉ませてくだ――」

 

 

 

 

 

ブチッッッ!!!

 

 

 

 

 

「――――うがぁあああぁぁああぁああああッ!!?」

 

バチコォオオオンッ!!

 

「ぶげらぁああああああああああッ!?」

 

 

 

 

 

千冬は目の前の獣に照れ隠し(剛撃の極み)を解き放つのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「だ、大丈夫、元次君?疲れてるの?」

 

「そ~だよゲンチ~。元気がないよ~?」

 

「……いや、大丈夫だ……ちっと朝方に、麗しい狼様にじゃれつかれたってだけだからよ」

 

「え~?おおかみ~?」

 

「え!?が、学園に狼が……ッ!?」

 

「あーいや、狼ってのは比喩なだけで……まぁ大丈夫だ。気にしねぇでくれ」

 

両手を吊り革にぶら下げて項垂れる俺を心配してくれる本音ちゃんとさゆか。

その二人に内心は隠しつつ笑顔で返事を返しておく。

 

「む?学園の中にはそういった猛獣の類はいなかった筈……一般生徒が危険に晒されてしまう。これは教官に捜索の手配を頼まねば」

 

「止めてくれラウラ。マジで」

 

寧ろそれって俺に止めブッ刺す事になるから、ホント勘弁。

折角比喩的な表現したのにその主に連絡とか洒落になんねぇよ。

「何故だ?」と問うラウラに大丈夫、大丈夫だからと誤魔化し、俺は軽く息を吐いた。

 

あの生殺しハニトラ耐久訓練(お相手はブリュンヒルデ様の逆指名)から生還し、今日はその翌日。

 

昨日約束した通り、俺はラウラ、本音ちゃん、さゆかの3人でモノレールに乗って街へと向かっていた。

時刻は後一時間ばかりで昼には良いぐらいの時間になるぐらいだ。

んで、何で買い物に行く段階で俺が疲れてるかと言えば、だが……勿論、昨夜の訓練のおかげである。

脳裏に蘇る、千冬さんという極上の美女との甘い一時。

しかしその内容は男泣かせな我慢比べときた。

俺の精神力と忍耐力、理性という名の木をチェーンソーで薙ぎ倒しにかかる鬼畜極まり無い諸行。

しかも誘惑した本人は先に寝て、結局俺が寝れたのは未明の4時だ。

少しは疲れた表情になっちまうのも見逃して欲しい。

 

しかも不幸は単独ではやってこず。

 

漸く眠りについた俺を強制的に現世へ呼び起こしたのは、優しい女神のモーニングコール?

勿論そんな甘くて美味い話な訳は無ぇよ。

 

俺を叩き起こしたのは文字通り頬に伝わる激痛に寄る”叩き”起こしだったのだから。

 

そして俺を叩き起こしたのは皆さんご存知あの人。

夕べ俺をこれでもかと誘惑し、焦らし、弄んだ千冬さんだ。

頬を殴り飛ばされて目を覚ました俺の目に映ったのは、Yシャツの前を握り締めて肌を隠し、真っ赤な顔で俺を睨む千冬さんの姿だった。

しかも涙目で俺を睨みながらまるで強引に迫られて怒る女の様な有様で、下着が見えない様に女座りで後ろに逃げていらっしゃる。

俺にキスを落としてた妖艶な唇は波の様にユラユラした形にキュッと閉じられ、保護欲をそそる可愛い唇へ変貌しているではないか。

目付きも怒りというよりは”拗ねている”感じなんですよ?

 

おい何だこの可愛い千冬さんは?美しい?綺麗?もうブッ飛んで可愛いだよこれ。

いや、これじゃ千冬さんじゃねぇ”千冬しゃん”じゃねぇかべらぼうめぃ(錯乱)

 

そして胸元でシャツを握り締めながら逃げる千冬さんの様子に、昨夜の記憶があると分かったのは当然の事で、ねぇ。

しかしそれを行った張本人である千冬さんは何も喋らず、俺を睨みつけるばかり。

まるで俺が悪いと言わんばかりの態度だ。

まぁ、俺自身はヤラれた立場なのでどうとも声を掛ける事が出来ず――。

 

『え、えっと……昨日は、激しかったっす☆』

 

ブッチンッ!!

 

思わず口から出たNG過ぎる言葉と何かの千切れた音に青褪め――。

何故か背後のクローゼットから打鉄に積まれてる筈のブレード《葵》を取り出し(何で入ってたのアレ?)

シャツの前を片手で握って隠しながら、表情が前髪で隠れたその形相に戦慄。

そして、真っ赤な顔色のままに目元を隠し、片手でブレードを引き摺る千冬さんに後ずさり――。

 

『……あの、ち、千冬……さん……?』

 

『……………………え』

 

『……え?あ、あの?今、なんと……?』

 

『…………………なえ』

 

『え?え?お、おおぉ俺の聞き間違えっすかね?おかしいな、俺の馬鹿耳が更に馬鹿になっちま――』

 

 

 

 

 

『私の剣で、記憶を失えぇぇえええぇぇぇえええぇ――――ッッッ!!!』

 

 

 

 

 

『ホ、ホアチャアアアアァアアァァアアっっ!!?(裏声)』

 

眼前に現れた千冬さんの首を狙った突きをスウェイからの転がりで奇跡的に回避。

後数ミリで綺麗に俺の首は狩り殺られていたであろう。

咄嗟に動けたのは正にミラクルだった。

両手でパチンッ!!と潰される寸前で奇跡的に回避した蚊を連想しちまった程に。

しかし続くは剣客浪漫でお馴染みの牙突――ッ!?

 

『うがああぁぁあああぁあああぁあああ――――っっっ!!!』

 

『ちょまっ!?おち、おちつい――――ぬぅおぉあぁぁあああぁぁあああっっ!?』

 

 

 

顔を真っ赤にして、目をぐるぐるさせて襲い掛かってくる千冬さんに、学園入学以来最大の命の危機を感じたのであった。

 

 

 

間違い無く千冬さんからしたら酒に酔ってやらかした照れ隠しだったろう。

しかしどれだけ恥ずかしがっていてもその剣筋に曇り無し。

数ミリ単位で自分の髪の毛が一本二本、薄皮がスラスラ切れていくのは正に悪夢でした。

ドッタンバッタンというでかい音を立てながら追い立てる千冬さん、逃げる俺。

最後には這々の体で俺は命辛々寮長室から逃げ出す事に成功したのであった。

寮長室のドアが、千冬さんの放った月牙○衝モドキで刳り貫かれたのにはマジで肝が冷えました。

 

さすがに寮長室の外までは追われなかったのが救いだったぜ。

 

まぁそんなこんなで朝っぱらから激しい命の遣り取りをして、今に至る訳だ。

 

俺の目の前の席に座る本音ちゃんとさゆかに心配されながらも、とりあえず今日の予定を確認。

本来はパフェ食べに行くだけだったが、ここでちょっと予定の追加が入ったのだ。

 

「えっと……先に水着とか服を買いに行くんだったな?」

 

「う、うん。来週の臨海学校に持っていく水着は、新しいのにしようと思ってるんだ♪」

 

「私は水着と~新しい着ぐるみパジャマ~♪また可愛いの出たの~♪」

 

まだバリエーションあんの?あのシリーズ?

まぁ本音ちゃんが着ると3倍増しで可愛いから良いんだが。

 

「そうか。んじゃ、まずはその辺を回ってから、最後にパフェで〆、だな。ラウラは?」

 

「うむ。私は今の装備で充分だから衣服は特に無いな。強いて言えば……パフェが楽しみだぞ!!」

 

「そうか。じゃあその楽しみはちょっとだけ取っとこうな?」

 

俺の言葉にキラキラした目で「うむ!!」と元気良く返事を返すラウラを笑顔で見つつ、俺は吊り革を握りなおす。

ラウラも本音ちゃんの隣で行儀良く、というか姿勢良く座りながらもソワソワしていた。

やっぱ軍育ちなだけあってその辺の基本姿勢はキッチリしてるけどな。

 

「でも、元次君。立ってたら辛く無い?まだここ座れるよ」

 

と、俺の前に座るさゆかが隣を叩くが、俺のアメ車級ボディじゃちぃとスペース的に厳しい。

それに、俺が態々立ってるのは理由があるんだなこれが。

 

「あぁ、大丈夫だ。それにそんなスペースに座ったらさゆか達が狭くなっちまうよ。遠慮せずにもちっと余裕取りな」

 

「う~ん……でも、元次君に悪い気が……」

 

「なんにも悪くねえさ……それに――」

 

「ちょっと!!男の癖に座ってるんじゃないわよ!!早くどきなさい!!」

 

「す、すいません……」

 

「まったく、これだから男は邪魔なのよ」

 

「……あんな風に一々絡まれんのも面倒だからな。空気悪くなるしよ」

 

「あっ……」

 

俺が見た方向と聞こえてきた声で、さゆかも本音ちゃんも、そしてラウラも察してくれた。

先に座ってたリーマンに向けてヒステリックに怒鳴る、いかにも女尊男卑主義に染まった中年のババアの行動に。

まぁ、あんな感じで絡んでくるならまだマシな方だ。

吊り革にちゃんと掴まってねぇと、痴漢冤罪を掛けられるなんてのもザラだからな。

例え冤罪でも、今は女性優遇処置の所為で訴えられたらほぼ負けに近い。

だからモノレールとか電車は、今の男達からは敬遠されがちだったりする。

俺は両手を吊り革にかけて、両手を上に上げた痴漢出来ない状況を作ってる訳だ。

 

「……酷い、よね。ああいうの」

 

「うん~。女性優先車両があるんだから、そっちに座れば良いのに~」

 

「大方、何でも思い通りに出来ると逆上せ上がってるんだろう。ああいうのはドイツにも居た……権利を勘違いした輩は、何時見ても醜悪だな」

 

さゆかと本音ちゃんは悲しそうに眉尻を下げ、ラウラは侮蔑する様に吐き捨てる。

折角の楽しかった雰囲気がもう台無しじゃねぇか。

 

「まっ、放っとこうぜ。突っかかってこなきゃ対して害は「ちょっと!!邪魔よアンタ!!」……あぁ?」

 

と、本音ちゃん達のムードを変えようとした所で、耳元にギャーギャーうるせえ声が響く。

そっちに目を向ければ、そこには関取クラスすら狙えそうな豚が居やがるではないか。

どうにも俺の後ろを通って隣の車両に行こうとしているらしい。

その後ろに居る2~3人の女共も同じ目をしている所を見ると、どうやら同じ穴の狢らしいな。

 

「聞こえなかったの?邪魔だからどけって言ってるのよ!!図体ばっかりでかいだけで能無しの男の癖に!!」

 

……OKOK。早速調子ブッこいた馬鹿に絡まれた訳だな。ったく。

と、俺を馬鹿にされてムッとした表情を浮かべるラウラに、プライベート・チャネルを開く。

 

『ラウラ。もう次の駅に着く。そこが降りる所だから、適当にあしらってさっさと降りるぞ』

 

『そんなもので良いのか?こいつは兄貴を侮辱しているのだぞ?……身の程を知らぬ愚物め。腹が立つ』

 

『んなもん気にすんな。これぐれえ何時もの事だからよ』

 

それだけ言って回線を切り、俺は目の前の豚に視線を下ろす。

さっさとあしらっとかねぇと、本音ちゃん達すらも貶しかねねぇからな。

それされたら無残にブッ殺確定だし。

 

「どう考えても邪魔なのはテメェの無駄な横幅だろうが。ドラム缶がでけぇ面して歩いてんじゃねぇよボケ」

 

「……は?」

 

一瞬、車内の空気が凍りついた。

 

目の前のデブは何を言われたか分からないって顔してるし、後ろの馬鹿共はオロオロするばかり。

多分今まで他の男連中は素直に言う事聞いてたんだろうがな、俺はそこまで甘かねぇぞ。

車内の男連中は止めとけ、って必死に手を振ってるが、俺はそれに構わず口を開く。

 

「てめぇみてーな汚デブじゃISにも碌に乗れやしねぇのに何粋がってやがんだ?ダイエットしてから出直せや、豚」

 

「兄貴、それは豚に失礼だ。豚は美味いソーセージにもベーコンにもなるが、これにその需要は全く無い。精々が工業用のオイルだろう」

 

「な……なぁ……ッ!?」

 

「あぁ、そうだなラウラ。こりゃ完全に失言だったわ。だが、こいつの蓄えてる油じゃ何の役にも立たねぇ。オイルにすりゃなりゃしねえさ」

 

「ふっ、確かにな。私も失言だった」

 

と、転校当時を思わせる冷たい瞳でデブを見据えながらラウラが参戦。

その言葉に納得しつつ目の前の馬鹿を笑顔で貶すのを忘れない。

そしてラウラも見下した笑みで侮蔑を顕にする。

ここまで言われたデブは鼻の穴を大きく膨らましながら青だったり赤だったりと忙しなく顔色を変えていた。

無駄に使えねえ信号機みてえだなオイ。っと。駅に着いたな。

 

「ふ――ふざけ――っ!!」

 

うるせぇギンッ!!!

 

「―ひっ――」

 

そろそろ周りの迷惑になりそうだったので、サングラスをずらして軽く怒気を叩き付ける。

すると、デブと取り巻き達は短い悲鳴を挙げて、電車の床にへたり込んだ。

ガタガタと震えるそいつ等から視線を外し、俺とラウラは悠々とモノレールを降りる。

勿論、本音ちゃんとさゆかも一緒に着いて来てるので全員ちゃんと降りた。

入れ違いにモノレールに入ろうとしてた人達がデブ達の様子に首を捻っている。

 

「次にナマ抜かしやがったり、他の人に迷惑かけてみろ――”容赦しねぇぞ?”

 

「ひっ、ぃ――」バタッ!!

 

と、最後にもう少し強めに怒気を叩き付けると、アホなデブ共はモノレールの床に倒れて失神。

モノレールの扉が閉まり、そのまま次の駅に行ってしまった。

 

「ったく。面倒くせぇ……三人ともごめんな?折角の休みによ」

 

「う、ううん。元次君は何も悪くないよ。いきなり言ってきたのは向こうなんだもん」

 

「そ~だよ~。だから、あやまっちゃだ~め~」

 

「元より兄貴を侮辱する様な輩だ。私としてはあれでも足りないくらいだぞ」

 

巻き込んでしまったさゆかと本音ちゃんに謝ると、二人は逆に俺を弁護してくれる。

ラウラは寧ろヤリ足りなかったご様子。

あんなのに時間使うの勿体無いしバッチィでしょうが。兄貴として許さんよ?

しかし巻き込んじまったのは事実なんだよなぁ。

 

「まぁ、男の俺が一緒だとこういう事が起きるって先に言っておけば良かったぜ……本当に悪い」

 

「だ、大丈夫だよ。だから、そんなに謝らなくても――」

 

「むむぅ~……ちょっとさゆり~ん♪お耳をはいしゃ~く♪」

 

「え、えっ?」

 

「ん?」

 

「ゲンチ~はちょっと待っててぇ~♪」

 

「あ、あぁ」

 

本音ちゃんとさゆかに申し訳なくて若干表情を歪めていると、何故か二人はコソコソと内緒話を始めた。

うむ、これがハブられる?いや違ぇよ。

 

『……え!?……ほ、ほんとうにするの?』

 

『うん~。だってそ~しないと~、げんち~が落ち込んだままになっちゃうもん~』

 

『そ、そうだけど……迷惑、じゃないかな?』

 

『だいじょぉ~ぶ♪げんち~は、やさしいもん~♪それとも~、私だけしちゃおっかな~?』

 

『ッ!?そ、それは駄目……ッ!!私だって、負けないもん!!』

 

『にっひっひ~♪じゃあ、二人でやっちゃお~♪』

 

『う、うん!!やろう!!』

 

何やら二人して内緒話終えたらグッと拳を握って気合入れてらっしゃいます。

な、何だ?一体なんの話をしてんだろうか……本音ちゃんの内緒話って時点で俺の警報が鳴ってんだけど。

ビービーと緊急離脱を要請してんだが、一緒に遊びに来てんのに逃げられる筈もなし。

 

「ふ、二人とも?どうかしたのか?」

 

「えへへ~♪女の子の秘密の会話なのだ~♪だから、ゲンチ~にはな~いしょ~♪」

 

「あ、あはは……ちょっと、内緒話……かな?」

 

「そ、そうか?まぁ、そういう事なら聞かねぇさ」

 

さて野暮とは思いつつも問いかければ、やはり内容は言えないご様子。

まぁ……さすがに女の子の秘密と言われちゃあ……引くしかねぇわなぁ。

と、納得していたら、何故か本音ちゃんとさゆかがちょこちょこと俺の左右に陣取る。

ん?何でこんな並びを――。

 

「むふふ~♪――え~い♪」

 

ぎゅっ

 

「――おん?」

 

ぎゅっ

 

「――んん?」

 

「……お、お邪魔しますっ」

 

二回聞こえたぎゅっという何かに掴まる音。

そして俺のカッチカチな両腕に伝わるふよふよしたやーらかい感触。

 

――んんん?

 

「おぉ?これが世に言う『両手に花』状態なんだな、兄貴?」

 

何故か辺りを気にしていたラウラが振り返って目を丸くしながら、そんな事をのたまう。

あれ?君ってそういう比喩的なアレは詳しくなかったんじゃね?

おうおう勉強しましたアピールに辞典を掲げてんじゃない。

そんなドヤ顔で見られたって、今の状態じゃ撫でんのは無理だぞ。

 

……良し、そろそろ状況確認しよう。

 

左右に視界を向ければアラ不思議。

そこには其々、俺の腕に体を預ける様にして抱きつく本音ちゃんとさゆかのお姿があり申した。

 

「てひひ♪やっぱりゲンチ~の腕って、おっきくてぇかた~い~♪」

 

本音ちゃんは楽しそうに、しかしちょっと頬を赤らめながら癒される笑顔で俺を見ていた。

そして逆隣のさゆかも無言ではあるものの、しっかりと俺の腕を抱えてらっしゃる。

 

「……あぅ」

 

小さく声を漏らしながらも決して離そうとはせず、寧ろ体を預ける様にして寄りかかっているさゆか様。

俯きながら、しかし美しいロングヘアーの隙間から見えるお耳はしっかりと赤く熟してんぜ。

 

うむ、状況確認終了――いや。

 

いやいやいや!?

 

「お、おおお二人さん!?一体全体何してらっしゃいますぅ!?」

 

状況を全て確認してやっと俺の口からどもりまくった声が出てくれた。

な、何事なんだよこれはマジで!?

もしかして我が世の春が、遅ればせながら、やっと来たのか!?

あぁ畜生!!顔が滅茶苦茶熱くなってきやがった!!

 

「そ、その……元次君に……元気に、なって欲しくて……」

 

「そ~そ~♪げんち~に私とさゆりんの元気を~、ちゅ~にゅ~なのだ~♪」

 

「っ……ふ、二人とも……ッ!?」

 

お、俺なんかの為に二人して体張って……なんて嬉しい事してくるんだっつうの!!

元気出るどころかハッスルしちゃいそうです!!

何時もの様にマイナスイオン溢れる本音ちゃんのにへら~っとした緩い笑顔。

そして恥ずかしそうにしながらも、俺に寄りかかる優しさ溢れるさゆかのほっこりオーラ。

もうこれだけでご飯が一升食えてしまいます。

 

「むぅ。兄貴、私も元気をあげるぞ!!とう!!」(ヒーロージャンプ)

 

「って何故にお前は肩車!?」

 

「もう前と後ろしか空いていないが、それでは歩き辛い。それに、この眺めは凄く良いぞ!!」

 

俺の頭の上で楽しそうにしてるラウラの様子に、もう言葉が出ねぇよ。

そして両隣に陣取るさゆかと本音ちゃんの嬉しそうな笑顔が、俺の心をキュンキュンさせてきまっす。

両腕から伝わるやーらかい大きな大きな果実の感触と、ドキンドキンと伝わる彼女等の鼓動。

もう甘い匂いやら香水の香りが俺の鼻腔を刺激しまくり。

ハッキリ言って天国でしかない状況だが、心臓が破裂しそうなぐらい暴れてます。

これ、俺の心臓が保つか分かりません。

 

っていうか周りの野郎共、恨めしいって顔で見てくるんじゃねえよボケ。

 

俺たちの周りから発信される妬みの視線に怒気を乗せたメンチで返す。

そうすると周りの野次馬共は散り散りに逃げ出していった。

周りが空いたのを確認した本音ちゃんが、嬉しそうに片手を上げる。

 

「じゃぁ~、買い物にぃ~れっつ、ご~♪」

 

「……お……ぉ~(照れ)」

 

「うむ。ミッションスタートだ」

 

「ま、マジかよ……っ!?くそっ……やったろうじゃねぇか……ッ!!」

 

そして、左右からくる引っ張る力を感じ取り、俺も気合を入れて共に足を進める。

覚悟を決め、そして二人の美少女を侍らせたままに、駅の中を歩き始めた。

いや、別に抵抗しようと思えば簡単に離れてくれるんだろうけどな?

しかしそうすると態々俺を元気付けようと考えてくれたお二人に申し訳が立たねぇ訳で……それに、だ。

 

「……(チラ)」

 

「ん~ふふ~のふ~♪」

 

「おぉ……ッ!?これが兄妹の触れ合い……良い、良いぞ……ッ!!」

 

こんな楽しそうな笑顔の本音ちゃん振り払うとか天地が引っ繰り返っても出来るかぁああぁあぁぁあッ!?

恥ずかしそうにしながらも「良いのかな?」とか不安そうにしてるさゆかを離すとか極刑モンだぞこらぁッ!!

肩車一つで目をキラキラさせてるラウラを下ろすとか無理ッ!!

従って、彼女達の行動を止める事は俺には出来ないのである。

っというか役得過ぎて離れるとか無いわ。

腕に感じるやーらかい膨らみに鼻の下が伸びそうになるも、それは全力で抑える。

とりあえず手はポケットに突っ込んで、この幸せな状況を満喫しようと思いました、まる。

あぁ、道行く野郎共の嫉妬に塗れた視線が心地良いわ。

 

 

ふははは!!羨ましかろう野次馬共め!!ふはははは!!

 

 

「にゅふふ~♪ゲンチ~顔まっか~♪りんごみたいだよ~♪」

 

「あっ、ほんとだ……くすっ♪……可愛い♡」

 

「むっ?兄貴、頬が熱いぞ?熱でもあるのか?」

 

「……そこに関しちゃ突っ込まねぇでくれよ」

 

誤魔化すのは無理でしたね、はい。

本音ちゃんとさゆかの忍び笑い、そしてラウラの純粋な疑問の声に項垂れてしまう。

寧ろこんな状況で顔赤くなんねぇとかどんなヤツだってんだ。

俺の知る限りじゃ一夏ぐらいしか……特大級の例外じゃねぇか。

っつうかさゆか、俺みたいなデカブツ捕まえて可愛いはねぇだろ可愛いは。

俺の顔見て余裕取り戻してっけど、さゆかもさっきまで顔真っ赤だったからな?まだちょっと赤いからな?

 

「ふふっ♪……ごめんなさい、元次君。ちょっと意地悪だったね」

 

「でもでも~、ゲンチ~もまんざらじゃ~なさそ~だも~ん♪嬉しいでしょ~?」

 

こ、こんの……ッ!?二人して余裕そうにしやがって……ッ!!

俺が羞恥で顔真っ赤にしてんのに気付いてるのに、楽しそうにしてる二人。

さゆかも本音ちゃんも余裕そうにしてるが……甘く見んなよ?

俺は売られた喧嘩は誰彼構わずホイホイと買っちゃう男なんだぜ?

 

そうだそうだ。俺だけ恥ずかしがってんのは不公平だよなぁ?

 

ならばそう、この二人にもこの気持ちを味わっていただこうじゃねえの。

 

最近はちっと、特にこの前のプチソーププレイ的なアレから本音ちゃんには翻弄されっぱなし。

 

前みたいに俺の言葉に恥ずかしがる本音ちゃんを見させてもらおうではないか。

 

そしてさゆかよ。俺相手に可愛い等と言った事を後悔させてやんぜ。

 

二人に復讐しようと考えてると顔の熱さが段々と引いてきた。

よーしよし、やったる。やっちゃるぞこの可愛い子ちゃん達め(錯乱)

じゃあ今度は彼女達にこの熱さをプレゼントする番だ。

笑顔で俺を見上げる二人に一度息を吐いてから同じく、いやさ悪どい笑みを返す。

 

「あぁ。こんな可愛い女二人が俺の為に擦り寄ってくれてると思うと、嬉し過ぎて堪んねぇな」

 

「……ふ、ふぇっ!?」

 

「……あうえぇぇっ!?」

 

と、最初はポカンとしてたお二人が大変身。

ボンッて音を鳴らしながら煙を吹き、その顔色が首からグングンと真っ赤に染まっていく。

そして驚きの声を発するが、まだ終わらん。まだ終わらんよ。

 

「っつうか、二人共分かってんのか?俺の腕にそんなに体を押し付けやがって……二人の心臓の音、バッチリ感じてんだぜ?ドキドキしてんの丸分かりだかんな?」

 

「「ッ!?」」

 

と、俺の言葉に急いで体を離そうとする二人。

しかーし、んな事俺が許すとでも?

逃げようとする二人の腰に素早く手を回して捕獲。

 

「ひゃっ!?」

 

「ふにゃ!?」

 

「おいおい、何で逃げる?二人共、俺に元気を分けてくれんだろ?」

 

「あ、あわわわわ……ッ!?げ、元次君!?あの、ごめんなさ――」

 

「ん~?俺には何の謝罪か分かんねぇなぁ♪ほら、もっと俺に元気を分けてくれや♪(ギュッ)」←密着率アップ。

 

「は、はわわわわ……ッ!?(だ、駄目ぇ、離れたいのに……離れたくないよぉ……ッ!?)」

 

顔真っ赤にして焦りながら謝罪しようとするさゆかの言葉を笑顔で遮断。

更に俺にちゃんと密着する様にさゆかを引き寄せる。

何か目がグルグルして煙吹いてるが……千冬さんの時の様な命の危機はまるで感じませんなぁ。

 

「あ、あうぅ~……ッ!?こ、こんなの駄目だよぉ~!?お、女の子を無理矢理侍らせるなんて、悪人だ悪人~!!」

 

おや?どうやら本音ちゃんは反撃するだけの元気があるらしい。

さゆかの恥ずかしがる姿にニヤニヤしてたら、反対の手から逃れようとする本音ちゃんの姿が。

さゆかの様に大人しくする事も無いが、顔が真っ赤なのは一緒だ。

でもな本音ちゃん?俺は本音ちゃんにもっと恥ずかしい目に遭わされたんだぜぇ?

従って逃がしてあげる必要無し、覚悟するがいいわ。

 

「人聞きの悪い事言うなよ本音ちゃん。大体、二人から俺に引っ付いてきたんじゃねぇか?」

 

「そ、それはゲンチ~の元気が無かったからで~」

 

「だ・か・ら・よ・ぉ・♪(ギュッ)」←密着率アップ。

 

「はにゃぁ……っ!?」

 

尚も逃げようとする本音ちゃんをニッコリした笑顔で見つめつつ、手の力を少しだけ強める。

少し勢いが付いて俺の胸板に頬を擦り付けてしまい、慌てながら上目遣いに俺を見てくる本音ちゃんと”イイ”笑顔で視線を合わせた。

 

「ま~だまだ俺は元気が出てねぇんだ。だからちゃーんと抱きついて、俺に元気を注入してくれや♪はっはっは♪」

 

「あうぅ~……ッ!?う、嘘つき~!!嘘つきはドロボ~の始まりなんだぞ~!?」

 

「んん?何か言ったかな~?俺には可愛い小動物の鳴き声しか聞こえねぇなぁ~♪」

 

「っっ……に、にゃうぅ~……ッ!!(ずるいずるいずるい~!!い、いっつも不意打ちばっかり~!!)」

 

グリグリグリッ!!←頭をグリグリと元次の胸に擦り付ける音。

 

こらこら、俺を萌え殺す気ですかこの癒し娘は?

本音ちゃんは俺の言葉にニャウニュウ鳴いて頭をグリグリと押し付けてくる。

正に「撫でて撫でて~♪」と擦り寄る子猫の如し。一生面倒見てやるわ。

 

「むむぅ……兄貴!!私も兄貴に元気をあげているぞ!!(ギューッ!!)」←肩車状態で元次の頭を抱きしめる。

 

「おうおう、ちゃんとお前からも貰ってるぜ。ありがとうな、ラウラ」

 

「うむ!!なら良いのだ!!」

 

と、俺の頭の上で少しむくれていたラウラにもお礼を言えば、ラウラは腕を組んで胸を反らす。

やれやれ、我が妹分は随分と表情豊かになったもんだな。

その得意げな表情にほっこりした気持ちを抱きながら、俺は二人を寄せていた手を離しつつ、一歩前に。

 

「あっ……」

 

「あぅ……」

 

俺の体から離れた二人だが、思わずといった具合に俺に手を伸ばそうとし、ハッとした顔で手を止める。

まだ顔が熟した林檎になってる二人に、俺は苦笑いしてしまう。

 

「まっ、俺も何時までもやられっぱなしじゃねぇからよ。ここらで手打ちとして、早く行こうぜ?」

 

「時間は有限なんだしよ」と零しながら一歩動けば、二人共恥ずかしそうにしながらも俺の横について一緒に歩き始めた。

……くっくっく……勝った!!いや~、やっぱやられっぱなしってのは性に合わねぇからな。

オマケに美少女の恥らう表情を満喫できたし、言う事無しだなこりゃ。

久しぶりに清々しい気分を味わいながら、俺は3人と共に駅のホームから改札を目指す。

ちなみにラウラは未だに肩車のまんま。これ親子に見られてねぇよな?

 

(や、やっぱり、意地悪すると……返ってきちゃうんだね……まだ、胸がドキドキするよぉ……)

 

(か、可愛いって言われちゃった~……おりむ~のパ~ティ~の時も言われたけど~……し、静かにしてぇ~、私の心臓~)

 

少し俯き加減な二人に遣り過ぎたか?と思うも、歩みは止まらないので大丈夫かと完結。

そのまま俺達は駅の改札を抜け、駅前のショッピングモールであるレゾナンスへ通じるエスカレーターへと向かう。

 

「~~♪む?少し待って欲しい、兄貴」

 

「んぁ?どした?」

 

「あそこを見てくれ」

 

と、鼻歌を歌う程にご機嫌だったラウラが急に止まれと言い出した。

反射的に歩みを止め、本音ちゃん達も首を傾げつつ、頭上のラウラが指差す方向へ目を向ける。

 

「ん?……ありゃ一夏か?」

 

「それに、デュノアさんも一緒だね」

 

俺とさゆかの言葉通り、視線の先には一夏とシャルロットの姿が。

二人の表情は後ろ姿で分からねぇが、手を繋いで歩いているじゃねぇか。

仲睦まじく、まるでデートしてるみたいに――”周り”には見えてるだろうな。

 

「あれ~?おりむ~とでゅっち~、で~とかな~?」

 

「……いや……多分あの兄弟の事だ。クラスメイトと買い物ぐらいにしか思っちゃいねぇだろうよ」

 

「え?で、でも、手を繋いでるよ?女の子と二人で出かけて手を繋いでるんだし、織斑君もデートだって思ってるんじゃないかな?」

 

「そ~だね~。さすがのおりむ~も、お買い物だけなんて思ったりしないと思うよ~?」

 

「……中坊ん時、な」

 

俺の言葉を信じられないって表情で聞いた本音ちゃんとさゆかが弁護するが、俺はそこに態と言葉を区切って溜めを作る。

甘い、甘いんだぜ二人共……兄弟がそんな奴なら、俺も弾も呆れちゃいねぇさ。

言葉を止めた俺に二人の視線が向く中、俺は溜息を吐くのを我慢して、一夏の鈍感ストーリーを口にする。

 

「隣町へ出かけた一夏は、そこで偶々遊びに来てたダチの妹と会ったんだわ。んで、そん時にその子からデートに誘われて……その子に「手を繋いで下さい」って言われたんだよ」

 

「お~」

 

「やっぱり織斑君、モテるんだね」

 

俺の言葉にワクワクした表情を浮かべる本音ちゃんとさゆか。

だが、それに対する俺の浮かべた表情は、苦い顔だ。

 

「恥ずかしそうに赤面しながらその子に言われた兄弟は、何の躊躇も無く手を繋いで……こう言ったのさ……『知らない町で逸れたら大変だもんな』……ってよ」

 

ちなみにダチの妹とは勿論、蘭ちゃんの事だ。

後日その話をちょっと涙目で教えられ、俺と弾によるツープラトンが一夏に炸裂。

更に蘭ちゃんを泣かせたとして巌さんから特大の拳骨が一夏の頭に落ちた。

床で伸びる兄弟に溜息を吐きながら頭を抱えるという、何とも言い難い事件だったぜ。

女の子の勇気を振り絞った言葉を曲解する一夏。難聴よりもヒデェ。

 

「……え~?」

 

「…………あ、あはは……織斑君らしいのかな?」

 

この結末に対する二人の表情は其々別モノだ。

本音ちゃんは呆れ、さゆかは笑いながらも少し頬がヒクついてる。

さすがにこりゃねぇよなぁ。

しかし兄弟の奴……確かにあいつも水着持ってねぇから買いに行こうって行ってたが、何でシャルロットと?

……まぁ多分だが、昨日シャルロットがIS使った罰で二人で掃除してたし、そん時にシャルロットが誘ったんだろう。

いや、若しくは兄弟が”ついでに”誘ったか?

兄弟がシャルロットを”デート”に誘ったんじゃねぇってのは、長い付き合いの俺なら手に取る様に分かるわ。

っつうかあの馬鹿兄弟何でシャルロット誘ってんの?箒と買物に付き合う約束はどうした?

 

もしかして……俺が殴ったから忘れてる?じゃもっかい殴りゃ思い出すだろう。

 

「兄貴。一夏達の事もだが、私が見せたいのはそこではない」

 

「は?違うのか?」

 

「うむ。私が言っているのは、あそこの自販機の傍だ」

 

と、どうやらラウラが言ってたのは兄弟とシャルロットの事じゃなかったらしい。

何時の間にか俺から降りて隣に立ちながら再び場所を指定してくるラウラ。

その指に従ってもう一度視線をちゃんと向けてみる。

なんだ?ラウラが惚れた男以上に見せたいのって――。

 

「「――」」

 

「……はぁ」

 

ラウラに指定された場所を見た瞬間、俺は自然と溜息を吐いてしまう。

何せ其処に居たのは――自販機の陰に隠れて、一夏とシャルロットに視線を送る、ダチ二人の姿だったからだ。

躍動的なツインテに軽くロールした気品あるブロンド。

まぁつまりは鈴とセシリアの二人な訳だ。

二人して自販機に身を預けながら、前方を歩く一夏とシャルロットを見つめている。

 

「……あれって、手ぇ握ってない?」

 

「……握ってますわね」

 

と、一夏達の事であろう話をしながら、セシリアは手に持っていたペットボトルが歪む程の力で握り締めている。

ギチギチと嫌な音が鳴っていたが、遂にブシッ!!とかいう音を鳴らしながら蓋が跳んだ。

おぉ。中々の握力じゃねぇか?こいつ等嫉妬すると格段に戦闘力上がるからなぁ。

何で一夏に恋する乙女ってのはどいつもこいつも一癖二癖あるんだろうか?

そーゆう星の女ばっかり引き寄せる性質なのかもしれねぇな、我が兄弟はよ。

どうやら背後の俺達にはまだ気付いていないご様子。

しかも本音ちゃん、ニコニコしながら口元に指を当てて「し~♪」とか言って楽しんでらっしゃる。

その様子にさゆかと顔を見合わせて少し苦笑い。

 

「そっかぁ……見間違いでも白昼夢でもスタンド攻撃でも妖怪の仕業でも無くて、やっぱりそっかぁ」

 

セシリアの言葉に鈴は呟きながら、自販機からスッと身を出し――ってちょい待て?

 

「よし殺そう!!(ズギュンッ!!)」←甲龍片腕展開。

 

「アホか」

 

「(ドスコォッ!!)へぷぅ!?」

 

部分展開した甲龍の腕を構えた鈴に、思わずかる~くチョップ。

何か変な声を出しながら、鈴は頭を抑えて蹲る。

白昼堂々と殺害予告してんじゃねぇよ。

 

「い、痛ぁ……ッ!?だ、誰よいきなりこんな上等キメてくれちゃってんのはぁ!?」

 

「ん?も一発いっとく?(ゴキッ)」

 

「すいませんでした!?」

 

勢い良く振り返って怒りの形相を向けた鈴に掲げた手の骨を鳴らすと、サクッと頭を下げてきた。

そのついでに甲龍の部分展開も消えていく。

ったく、嫉妬で一々ISを使うんじゃねぇっての。それ食らったらさすがに一夏死ぬわ。

 

「げ、元次さん!?さゆかさんに本音さん、ラウラさんまで!?」

 

「よぉ」

 

「奇遇だな、セシリア」

 

「こんにちわ~、せっし~♪」

 

「こんにちわ、セシリアさん」

 

「あっ、は、はい。どうも……あぁ、そういえば皆さん、昨日お出かけされるお約束をされてましたわね」

 

「そ~そ~♪今日は糖分の日なのだ~♪」

 

「いや、それなんか違うぜ本音ちゃん」

 

それじゃまるで記念日みてぇになっちまうよ。

楽しそうにパフェに想いを馳せる本音ちゃんに苦笑しながら、俺は頭を摩る鈴に視線を向ける。

 

「嫉妬は大いに結構だがよぉ、それでIS使うのは止めとけって。また千冬さんの説教受けたかねぇだろ?」

 

「う゛……止めとくわ」

 

俺の言葉に鈴はブルリと震えながらそう答える。

ISはその全ての性能が現存の兵器を遥かに凌駕する代物だ。

更にISはパイロットとの稼働時間と搭乗時間や戦闘経験を蓄積する事で、単一仕様能力を発現する第二形態二次移行(セカンドシフト)へとシフトする。

だからこそ平時であっても代表候補生や国家代表は稼働時間と戦闘経験の蓄積の為にISを携帯するのを許可されてるそうだ。

しかしまぁ昨日千冬さんが言った通り、緊急時でも無え限りは専用機を展開させちゃいけねぇ。

当然の処置だわな。じゃねぇとどこでも史上最強のスーツで悪さし放題になっちまうし。

 

「ふむ……兄貴、一度ここで別行動をしても良いだろうか?」

 

「ん?どうかしたか?」

 

と、ちょい青い顔の鈴から視線を外して俺を見上げるラウラに視線を合わせる。

するとラウラは、その幼い表情をキリリとさせて前の一夏とシャルロットに顔を向けた。

 

「嫁が誑かされては堪らんのでな。あの中に交ざる」

 

「「んな!?」」

 

「……ほ~?」

 

「お~?ラウランも、おりむ~とデ~トしてくるの~?」

 

「当然だ本音。寧ろ私の嫁の癖に私に黙ってシャルロットとデートなど、浮気ではないか」

 

「あ、あはは(ボーデヴィッヒさんのこの自信が羨ましいなぁ)」

 

成る程成る程、この大胆さは今まで一夏に惚れた女の中じゃ無い。

しかも自信満々堂々と好意を明け透けに伝えてんだからなぁ……こりゃ、他のヤツ等よりリードしやすいだろう。

現に恥ずかしさが先行してるセシリアと鈴なんか驚愕してるし。

後は兄弟が勘違いしなけりゃ、こりゃラウラが持って行っちまうだろうよ。

 

「OKだ。じゃあパフェ食べに行く時にゃISで連絡すっからよ。楽しんできな」

 

「うむ、了解した。ではそうするとしよう」

 

「ラウラン、ファイトだぁ~♪」

 

「感謝する、本音。ではこれより、別任務に移行する」

 

本音ちゃんの暖かい応援に微笑んで感謝し、ラウラはエスカレーターで降り始めた一夏達へ向けて足を踏み出す。

 

「「ちょ、ちょっと待ちなさい/お待ちなさいッ!!」」

 

「む?何だ?」

 

「まぁ待ちなさい。待ちなさいよ……全く、早計にも程があるわね、アンタは」

 

と、動きを止められたラウラの訝しむ視線も無視して、鈴はラウラの前に立ってヤレヤレって感じに首を振る。

呆れてるポージングだが、冷や汗が隠しきれてねぇっての。

どーせ抜け駆けされんのを焦っただけだろ。

俺のジト目に気付いた鈴だが、一度軽く咳払いをしつつ、ラウラの顔の前で指をチッチと振った。

 

「良い?未知数の敵と戦うには、まずは情報収集が先決でしょうに。事前準備を怠れば、それは痛恨の痛手にも繋がりかねないわ」

 

「り、鈴さんの言う通り!!ここは追跡の後、二人がどのような関係にあるのかを見極めるべきです。作戦は確実に、勝利は優雅に、ですわ!!」

 

「何言ってんだお前等?」

 

思わず突っ込んだ俺に対して「黙ってろ!!」と言わんばかりの視線を向けてくる二人。

未知もクソも追跡すんのはお前らがよーく知ってる鈍感野郎じゃねぇか。

 

「ふむ。一理あるな。では追跡しつつ、二人の関係を荒いざらい白日の下に晒すとしよう」

 

納得しちゃったよ。丸め込まれちゃったよラウラ。

そのまま頷き合い、3人は揃って柱や人の影に隠れながら一夏とシャルロットを尾行しにかかる3人。

余りにも鮮やかな動きに止める暇すら無かったぜ。

 

「あの歳であの鮮やかな動き……良いセンスだ」

 

何か白髪の眼帯付けた爺さんがそんな事言いながら通り過ぎていく。どちらさん?

余りにも急展開過ぎて、残された俺とさゆかは顔を見合わせて苦笑いするしかなかった。

本音ちゃん?楽しそうな笑顔で俺を見上げてらっしゃるよ。

 

「じゃあ、私たちも行こ~?早く早く~♪」

 

「そ、そうだね。ここに居ても仕方ないし……」

 

「……そうだな……じゃ、行くか」

 

「うん♪」

 

「てひひ♪れっつご~だ~♪」」

 

と、俺達もエスカレーターに乗って、レゾナンスへと向かう事に。

ここのショッピングモール・レゾナンスは駅前に位置するモールだ。

交通網の中心でもあるココは電車に地下鉄、果てはバスにタクシーと何でもござれの揃い踏み。

市のどこからでもアクセスが可能であり、反対も然り。

んでもって、駅舎を含んだ周囲の地下街全てと繋がっている。

レゾナンスは欧・中・和を問わずにレベルの高い食事処を完備。

衣服も量販店から海外の一流ブランドまで網羅してやがる。

更に各種レジャー施設も抜かり無く、子供から老人まで全ての年齢層に対応可能ときた。

 

まさに『ここで揃わなきゃ何処にも存在しない』とまで言わしめる、究極のショッピングモールなのである。

 

ちなみに俺は良く中学時代に一夏と弾、鈴や蘭ちゃん。

そして数馬と数馬ラヴァーズを含んだ皆で遊びに来たモンだ。

しかし結構な数ここに来てるけど、まだこのレゾナンスを制覇しちゃいねぇ。

寧ろ広すぎて周る気すら失せるレベルだぞ。

 

「っと、本音ちゃん」

 

「んにゅ?どうしたの~?」

 

「いやな、本音ちゃんの行きたいっつう……着ぐるみ屋?いや着ぐるみ売り場か?」

 

「着ぐるMIXの事~?」

 

スゲェ名前だな。何を持ってMIXとしてるんだろうか?

 

「あぁ。そこってどの辺りなんだ?水着売り場より遠いんなら、先に本音ちゃんの行きたい店に行こうと思うんだけどよ」

 

「あっ、そうだよね。水着売り場は男女別だけど、直ぐ近くのブースにあるし」

 

さゆかの言葉に頷きながら、本音ちゃんと視線を合わせて言葉を待つ。

例のパフェの店は水着売り場からちょっと行った場所にある。

だから本音ちゃんの行きたがってる店の場所を聞いて、遠いなら先にそっちへ行こうと思った訳だ。

俺の言葉に理解を示してくれたらしく、本音ちゃんも何時ものホワッとした笑顔を浮かべる。

 

「それなら大丈夫~。着ぐるMIXも、水着売り場の近くだから~」

 

「そうなのか?」

 

「うん。ほらほら、ここだよ~」

 

と、丁度近くにあった案内板を本音ちゃんは指差す。

つってもIS学園の制服(本音ちゃん袖長バージョン)なんで、分かり辛いが。

彼女が指した所には確かに『着ぐるMIX』という店名がある。

水着売り場から2,3店舗離れた場所だが、パフェ専門店には水着売り場の方が近い。

しかし俺達の居る位置からすれば着ぐるみ屋の方が近いな。

 

「んじゃあ、このまま先に本音ちゃんの用事を済ませちまおうか。さゆかもそれで良いか?」

 

「大丈夫だよ」

 

「わ~い♪ありがとう~♪」

 

さゆかも異論は無いらしく、俺達はそのまま案内掲示板に書いてあった店まで赴いた。

店の真ん中が入り口で、左右のショーウインドウには沢山の着ぐるみがそれぞれポーズを取って飾られた店。

本音ちゃんお目当ての『着ぐるMIX』なる店の入り口を、俺達は潜った。

そして本音ちゃんはおれとさゆかに向き直り、楽しそうな笑顔で両手を広げる。

 

「私~ここで色んな着ぐるみ買ってるんだ~♪品揃えもばっちしだよ~」

 

「はぁ~……こりゃ、スゲェ」

 

「いっぱいあるんだね……あっ、あれ昔テレビで見た事ある」

 

「おぉ、ありゃ戦隊モンに、巨大ヒーローのコスチュームか?怪獣までありやがる」

 

「ふっふっふ~♪仮面のヒーローから魔女っ子まで、抜かりは無いのだ~♪」

 

本音ちゃんの言う通り、専門店の名に偽り無しのラインナップだ。

子供達の為の番組のキャラクターから、コアなマーベルヒーローまで幅広いコスチュームの数々。

こんな所に来たのは初めてだが……着ぐるみっつうかコスプレの方が正しいんじゃねぇか?

俺だけじゃなく、さゆかも物珍しそうにキョロキョロしてる。

 

「じゃあじゃあ、着ぐるみパジャマのコ~ナ~はこっちだよ~♪」

 

と、本音ちゃんが移動を始めたので、俺とさゆかも本音ちゃんの後について行く。

しっかし、本当に色んなコスプレ……いやさ着ぐるみがあるもんだなぁ。

……っておい、鎧武者はまだ分かる、鎧武者はな。

しかしゾンビはねぇだろゾンビは。

「頭も取れます」って頭取れたら中身出るだけだろゾンビの意味は?

 

「……色々なシリーズがあるんだね、本音ちゃん」

 

「そだよ~。着ぐるみパジャマとか~、ご当地ゆるキャラシリ~ズとか~……おー」

 

「ん?どした本音ちゃん?」

 

と、何やら歩みを止めてある一角に目を向けた本音ちゃんが、笑顔で俺に向き直る。

そしてそのままニコニコ笑顔で指を指し――。

 

「あれ、ゲンチ~に似合いそ~だよ~♪」

 

「え?……勘弁してくれ」

 

「え~?似合うと思うのに~。さゆりんもそう思うでしょ~?」

 

「……あ、あはは……あれは……ちょっと、ね?」

 

「ぶ~」

 

ブー垂れる本音ちゃんに顔を手で覆うアメリカンなポージングをしてしまう俺。

そしてさゆかも先にある物を見てちょっと頬を赤くしつつ苦笑いしてしまう。

一昔前に有名だったメタリックマッチョな炭酸飲料ヒーロー”ペプシマン”の着ぐる、いやスーツ。

ピッタリ肌に吸い付くであろうそのデザイン、最早色んな意味でアウト過ぎる。

しかも何故か色は二代目仕様のシルバーとメタリックブルー。

……寧ろ初代が赤と銀色の配色だって知ってる奴は居るんだろうか?

 

「ぶぅ~……ゲンチ~ってコ~ラ大好きでしょ~?」

 

「まぁ好きだけどよ、コーラは」

 

それでもあのスーツを好きになる事はまずねぇっての。

余談だが俺はペプシもコカもどっちも好きだ。

まぁ本音ちゃんも本気でアレを薦めてた訳では無いらしく、直ぐに歩みを再開。

色々なコスプレ衣装や着ぐるみを通り過ぎ、本音ちゃんが何時も着ているのに似たシリーズの一角へ入る。

おぉ、本音ちゃんが良く着てる電気ネズミとか黄色い狐なんかもあるな。

 

「う~んとぉ……あっ、あったあった~♪これこれ~」

 

と、本音ちゃんが手に取ったのは、俺が見ていた黄色い狐の様なパジャマだ。

フードと耳、そして狐らしく柔らかそうなフワフワの尻尾が付いていて、パジャマらしく手袋は付いていない。

そして何時も通り本音ちゃんのこだわりがあるらしく、大きめのモデルを手に取っていた。

 

「へ~……あっ、これ可愛い」

 

「どれどれ……おぉ?確かに可愛いな」

 

「うん。この耳がへにゃっとしてるの好きなんだ♪」

 

さゆかが見ていたパジャマは、中ほどでヘニャリと垂れた犬耳をフードに生やした着ぐるみパジャマだ。

本音ちゃんの選んだパジャマと同じく、柔らかそうな尻尾が付いてる。

 

「さゆりんも買おうよ~♪一緒に着てくれる人居ないから大歓迎~♪」

 

選び終えた本音ちゃんが商品を持ちながらそう言うが、さゆかは苦笑いして口を開く。

 

「あはは……今日は、水着を買う予算しか持ってきてなくて……残念ながら、ちょっとオーバーしちゃうから」

 

「ありゃ~……まぁ、私もこのパジャマと水着でお小遣いの山が崩れちゃうから、仕方ないよね~」

 

さゆかの言葉に溜息を吐きながらしょぼくれた顔をしてしまう本音ちゃん。

「お菓子の分も残しておかなきゃ~」と嘆いてる。

まぁこのパジャマって中々に良い値段してるからなぁ。

さすがにお小遣いで遣り繰りしているであろう女子高生にゃ痛い出費だろう。

基本的にIS学園は外部でのバイト禁止だし。

 

だがしかし、ここで女の子に金出させてる様じゃ男失格だ。

 

「さゆか、サイズはそれで合ってんのか?」

 

「え?……う、うん。合ってるけど……?」

 

そうか、と一言呟き、俺はさゆかの目の前のパジャマを手に取る。

更に目をぱちくりとさせてる本音ちゃんの持つパジャマもヒョイと貰う。

 

「え、え?ゲンチ~?」

 

「げ、元次君……も、もしかして」

 

「あぁ。ここは俺が払う。序に、この後二人が買いに行く水着も払わせてくれ」

 

「えぇ!?そ、そんなの悪いよ!!」

 

「そ、そ~だよ~。私もさゆりんも自分の買物なのに、ゲンチ~に払ってもらうなんて~!!」

 

「本音ちゃんの言う通りだよ。そ、それに私達、パフェの無料券まで貰ってるのに、そんな」

 

二人揃って俺の言葉に反対するが、俺はそれに苦笑いを返す。

まぁ普通はこんな風に奢られたりしたら悪い気がしてしまうだろう。

二人共女尊男卑の思考には全く染まって無い普通に可愛い女の子達なんだし。

しかしまぁ、それは全く関係無く、今回は俺が奢りたいってだけなのです。

 

「なぁに、金は心配ねぇさ。爺ちゃんの工場でバイトしてたから、懐はかなり余裕があるんだ」

 

しかも親父とお袋も、外国から毎月仕送りしてくれてるし、婆ちゃんと爺ちゃんもかなりの小遣いをくれてる。

基本的に学園は光熱費や水道ガス代まで全て国が負担してくれてるからその辺りは実質ゼロ円。

寮費も取られてねぇから、食事や購買くらいしか金は掛からない。

アパートの家賃光熱費も親父が負担してくれてるから、俺の財布にゃ響かねぇんだ。

 

更に、俺の懐が一気に暖まった理由がもう一つある。

 

ある日、俺の口座に身に覚えのねえ多額の金が振り込まれた事があったんだ。

最初こそ混乱したし、さすがに知らない金を使おうなんて気にはならなかったが、その直ぐ後に掛かってきた電話で謎が判明。

その金を振り込んだ人物こそ、俺が神室町でお世話になった”賽の花屋”さんその人だ。

 

俺が鈴の父親、ウェイの親っさんを助けたあの事件。

 

あの時に花屋さんに捜索の依頼をした訳だが、俺はあの馬鹿ギャング共に先を越されちまった。

その理由が俺の試合であれ、偶然であれ、遅れた事とウェイの親っさんが怪我をしてしまったのは事実。

だから花屋さんは俺が本来払った筈の300万という大金の依頼料を差っ引いてくれたらしい。

更にあの時怪我をしたウェイの親っさんの入院費と治療費も引いて、俺の口座に50万もの大金が入ってきた訳だ。

 

こんなお小遣い貰えんなら、あの面倒事もやった甲斐があったってもんだぜ。

 

「まぁ兎に角よ、折角女の子と買物に来てんだ。こーゆう時は男が払うのが筋ってモンだろ?」

 

「で、でも……」

 

「うぅ~……本当にいいの~?」

 

「ほ、本音ちゃん」

 

本音ちゃんが窺う様に俺を上目遣いで見上げ、さゆかはどうするべきか分からないって顔をしてる。

まぁ、いきなり高いモン奢らせてくれって言われたら気が引けるよな。

ましてや男女で、しかも恋人でもねえ男に払わせるのは良心が咎めるし、重たいだろうよ。

 

「気にしねぇで良い。寧ろこれぐらい払わせてくれねぇと、男としての沽券ってのに関わっちまうからよ……俺の面子を守る為だと思って、今日は俺の顔を立ててくれねぇか?」

 

「……う……うん……分かったよ……ありがとう」

 

「……ゲンチ~。本当にありがとう~♪」

 

「へへっ。お安い御用ってな」

 

少し悩んではいたが、二人共本当に嬉しそうな笑顔でお礼を言ってくれた。

あぁ、この笑顔こそ俺にとっちゃ報酬そのものだ。

 

……それに、俺も狙いが一つある訳でして。

 

「って訳で。今日は一切合財俺が払わせてもらうが……一つ、頼まれちゃくれねぇか?」

 

「え?良いけど……」

 

「頼みってなんなの~?」

 

首を傾げる二人に笑顔で「なに、そう難しい事じゃねぇ」と、前置きを一つ。

 

「頼みってのは至極簡単で……ちゃんとこのパジャマを着た姿、俺に見せてくれって事だけだ」

 

「え、えぇ!?」

 

「……えへへ~♪良いよ~♪私達の”あですがた”を~見せてしんぜよう~♪」

 

「え、あ、ちょっ、本音ちゃん……ッ!?」

 

「おう。楽しみにしてるぜ……勿論、さゆかもな?」

 

「あ、うぅ……ッ!?」

 

楽しそうな笑顔で了承してくれた本音ちゃんとは対照的に、恥ずかしそうに唸るさゆか。

まぁ本音ちゃんは普段からあのシリーズのパジャマ着てるから恥ずかしいなんて思うことは無いだろう。

しかしさゆかは初めて着るパジャマだから、恥ずかしさが隠せていない。

……くっくっく……その恥ずかしがる姿を期待してるのだよ、俺は。

さゆかが恥じらいながらあのパジャマを着てる姿を想像するだけで……猛ります。

そして本音ちゃんの笑顔溢れるであろう狐パジャマ。

……あぁ、想像だけで癒されるぅ……マイナスイオンが溢れてくるんじゃぁ。

 

本音ちゃんの笑顔とさゆかの恥ずかしがる様子にほっこり。

俺は会計を済ませて二人分の買物袋を持つ。

荷物持ちも男の役目ってな。

勿論それはこの二人が良い女だからであって、女尊男卑思考の馬鹿の荷物を持つ気は更々無い。

 

そう、だからまぁ――。

 

「そこの男。これ、全部会計して荷物を持ちなさ」

 

「 ブ ッ 殺 す ぞ ? 」

 

「ヒ、ヒイィイイッ!?」

 

こーゆう馬鹿と良い女の区別はちゃんとつけておかねぇとな?

会計終わって二人の所に戻る途中で割り込んできた馬鹿にストロングな怒気をプレゼント。

泡食って逃げる様はとても滑稽でした。

レジの男はイイ笑顔でサムズアップ。俺もイイ笑顔でサムズアップ返し。

 

んー。しかし俺も開幕一発で殴らなかった辺り、忍耐が上がってるぜ。

まぁ楽しい買物中に面倒に巻き込まれんのは御免だからな。

 

しかし二人の女の子と同時にデートとは普通に考えてクソ野郎過ぎる。

……本音ちゃんとは一度デートした訳だが……さすがに女の子二人連れて「どっちもとデートだ」なんて言えるか。

マジで只のクズ野郎になっちゃうし、それなら普通さゆかか本音ちゃんが「最低!!」って言って俺を見限ってる筈だ。

しかし二人共、今の所不満はなさそうだし、今回は普通に遊びに来たって方向が妥当だろ。

 

じゃなきゃ最初にパフェ誘った時に複数人誘った俺に怒る筈だよな。

 

一夏がとある女子のデートの誘いを”皆で遊ぶ”って解釈して鈴や蘭ちゃん、俺達男衆を誘った時も最初にデートを申し込んだ女の子が「織斑君って最低!!」って泣きながら帰ったぐらいだし。

 

つまり経験則からして、複数人で出掛けようって誘った時に誰も怒らなかったからこそ、今回のはデートじゃねえだろう。

 

さゆかと本音ちゃんもこれが”男とデート”(真実)じゃなくて友達と買物って考えてくれてるだろうさ。(外れ)

 

うんうん。何時もは呆れる一夏の鈍感経験だが、今回ばかりは予測の役に立ってくれたぜ。←(大外れ)

 

と、まぁ自分の今置かれてる状況を再認識して、二人の所へ戻る。

そのまま近くの男の水着売り場に入り、俺は速攻で気に入った水着を購入。

女尊男卑の影響で女性水着売り場と比べたら3分の1程度の大きさしかねぇし、ラインナップもそんなに無かったから、選ぶのは直ぐ終わった訳だ。

俺の用事も終わったので、最後にさゆかと本音ちゃんの水着を買いに女性水着売り場へ向かう。

 

「あ、あの……元次君」

 

「ん?どうした?」

 

「そ、そそ、その……水着、買うんだけど……」

 

「?」

 

本音ちゃんが楽しそうに前を歩く中、さゆかが態々俺の隣に並んで話しかけてきた。

なにやら顔真っ赤にして言い辛そうにしてるが、一体どうしたんだ?

訳も分からずさゆかを見たまま言葉を待つと、さゆかは人差し指をツンツンさせる。

 

「あの……今は、見ないで欲しいの……そ、その……臨海学校の時に……感想を、聞かせて欲しいから……駄目?」

 

少し窺う様に俺に目を向けてくる和製beautiful girl。

……上目遣いでんな事言われたら断れる訳無いでしょおぉおが!?

さゆかはもう少し自分の可愛さってのを自覚して欲しいぜ!!

そしてそのオーダーはOKに決まってるじゃないですか!!

可愛さ炸裂状態のさゆかに目を合わせ、自分に出来る厭らしさを無くしたつもりの笑みを浮かべて口を開く。

なるべく遠まわしに楽しみだと伝えねば。

 

「……わ、分かった……たた、楽しみにさせてもらうぜ?」

 

俺のアルティメットお馬鹿、もう少し濁す事を知れってんだ。

ドストレートに過ぎる上に吃り過ぎだわ。

 

「はうぅ……ッ!?……お、お手柔らかに?」

 

「お、おおう……こ、こちらこそ?」

 

何とも言えねぇこっ恥ずかしい空気になるのを感じつつ、俺達は無言で佇む。

いやまぁ、水着売り場に着いたからなんですけどね?

既に本音ちゃんは店の入り口で待っていたので、さゆかが事情を説明すると彼女も同意してくれた。

 

「さゆり~ん、はやくはやく~♪可愛いのがいっぱいあるよ~♪」

 

「あ、うん……そ、それじゃあ元次君はちょっと待ってて貰っても良いかな?」

 

「あ、あぁ。それじゃあ先に金を渡しておくわ……ほい」

 

「え!?こ、こんなに!?」

 

「ふぇぇ……ッ!?ゆ、諭吉さんだ~……ッ!?」

 

財布から取り出した一万円札を一枚づつ手渡すと、二人揃って驚いた顔をしてしまう。

まぁ大金なのは違いねぇからな。

 

「あー。何か見た感じ値段もピンキリみてぇだし、とりあえずその範囲で気に入ったヤツを買ってくれ。無理に安いヤツ買わないで、本当に気に入ったヤツをな」

 

「こ……こ、こんなに貰えないよ!!」

 

「さ、さすがに多過ぎるってば~!!」

 

と、二人は慄いた表情で金を突き返そうとするが、それは受け取らない。

一度出した金を戻すなんてカッコ悪過ぎるだろ。

そんな感じで男の矜持だと説明し、二人には何とか納得してもらう事に成功。

ちょっと後ろめたそうな顔の二人を笑顔で見送る。

 

「とりあえず、俺はここで待っとくからよ……二人がどんな水着にするのか……楽しみにしてるぜ?」

 

「あ、あぅ……じ、じゃあ……ちょっと待ってて……ッ!!」

 

(絶対に、可愛い水着選ばなくちゃ!!)

 

「う~……こ、こ~なったら~……か、覚悟するのだ~ゲンチ~!!」

 

(超・ウルトラ勝負水着で、いぢわるなゲンチ~をの~さつしちゃうぞ~!!)

 

覚悟?萌え殺される自信ならアリアリですが?

二人が店に入ったのを見届けて、ミッションコンプリート。

幸いにも水着売り場の前にはベンチがあるからそこで待つとしよう。

俺の言葉に頷き、二人は仲良くお喋りしながら店の中へ入っていった。

それを確認してからベンチに座り、一息吐く。

 

ふぅ……いやしっかしヤベェな……女の子だけと遊びに来た事なんてねぇからなぁ。

ぶっちゃけ、二人がちゃんと楽しんでくれてるか不安で仕方無い。

 

鈴とか蘭ちゃんは元々一夏にお熱だったから、俺や弾とかは寧ろ付き添いって感じがあったし。

まぁ、俺は俺なりの持て成し?いや気遣いで二人に楽しんで貰うしかねぇか。

しかし女の子って普段何して過ごして――。

 

『―――――ッ!!』

 

「んあ?……何だ?」

 

考え事をしていた俺の耳に何か女子の水着売り場の店内から騒がしい声が聞こえてくる。

しかし言い合いをしている様な悪い雰囲気ではなさそうだ。

声の聞こえてくる方向に向けられる他のお客の視線は、好奇の視線だからだ。

 

……大丈夫そうだがさゆかと本音ちゃんも中に居るし、万一って事もある……行ってみるか。

 

俺はベンチから体を起こし、二人の荷物を持って水着売り場に入る。

そのまま周囲の視線が向けられている一角へと足を踏み入れ――。

 

「良いですか!?幾らクラスメイトといっても、けじめはつけなければなりません!!」

 

「「……はい」」

 

「……ハァ」

 

そこには、床に正座して、同じく正座した一夏とシャルロットを注意する真耶ちゃんの姿が。

そしてその隣で呆れた表情で溜息を吐く、千冬さんの姿もあるではないか。

衆人環視のド真ん中で床に正座させられて説教されてる一夏達はそりゃーもう肩身が狭そうに縮こまっていやがる。

っつうかまたお前かbrotherよ。お前は騒動を起こさにゃ気が済まねぇのかよ。

そして一体全体何をヤラかしやがったんだっつの。

 

「まさか”試着室に男女二人で入る”なんて……臨海学校が近くて浮かれる気持ちは分かりますが――」

 

「おーし真耶ちゃん、いや山田先生。そこまでにしましょうぜ」

 

「ふぇ?え!?げ、元次さん!?」

 

と、我が兄弟の罪状を述べて下さった真耶ちゃんの肩に手を置きながら俺登場。

驚く真耶ちゃんと露骨に喜ぶ兄弟に、俺は輝かしいスマイルを贈る。

 

「ふぬぁッ!?げ、元次ッ!?お、おま……ッ!?」

 

そして――俺を見た瞬間に聞いた事も無い様な悲鳴を挙げる千冬さんに苦笑いしながら軽く頭を下げる。

今朝の事もあって顔合わせた瞬間に逃げたくなるが、ここはそれをグッと我慢。

今はそれ以上にヤラねばならぬ事があるのでございます。

 

「お、おぉ兄弟!?哀れな俺を助けてくれんのか!?今の俺にとって、兄弟は正に天からの遣いだぜ!!」

 

「一夏……多分ソレ違うと思うよ……」

 

シャルロットの項垂れながらの言葉に、テンションの上がった一夏は気付かない。

うむうむ、俺達の絆はやはり鉄の如く強固にして信頼感のあるのだな。

正に俺を信じきってる兄弟に対して、俺は笑顔を崩さずに口を開く。

 

「あぁ待ってろ兄弟。今直ぐに俺がテメェの穢れた魂を天に送り届けてやるからよ。なぁに気にすんな、あの世までなら即日配達可能だ」

 

「地獄からの使者!?宅配地獄(デリバリー・ヘル)さんですか!?」

 

届けにきたぜぇ、地獄行きの切符をよぉ?

 

裏切り?いーや違う、これは俺から兄弟へのせめてもの手向けなのさ。

ボキボキコキコキと念入りに拳の骨を鳴らしながら青い顔色の一夏を見下ろす。

テメェはなんだってそんな美味しい思いばっかりしてんだよクソが。

しかもそれで相手からの好意に気付かねぇとかふざけんなよコラァン!?

 

日本の、いや全世界のモテない男子を代表してお”死”置きしたるぜ。

 

「ち、違うんだ元次。一夏は何も悪くなくて……」

 

「あん?どーゆうこった?」

 

「だ、だからその……ええと……」

 

と、何故か慌てふためく一夏では無く隣で正座していたシャルロットが俺に弁解してくる。

その取り成しにとりあえず拳を解いて視線を向けると、シャルロットは少し頬を赤く染めてしどろもどろに口を開いていた。

しかし何かを話す訳でもなく、言葉にならない呻き声が出るばかり。

ふ~む……な~るほど?つまりアレか。

事情を理解し、俺は苦笑いしながら店の入り口へと視線を向ける。

 

「おう。バレてんだからさっさと出てきな」

 

俺の言葉に一夏達の視線が入り口へ向かい、少しばつの悪そうな顔の鈴とセシリアが出てきた。

ってあれ?そういやラウラは何処に行ったんだ?

居る筈の妹分の姿が見えないので、鈴にプライベートチャネルを開く。

 

『おい鈴、ラウラはどうした?』

 

『え?あぁ、さっきまで一緒だったけど……一夏が普段通り過ぎたから、危惧していた事じゃないって分かって途中で離脱したわ』

 

『あぁ、そういう事か』

 

『それよりゲン。あんたは余計な事言わないでよ?』

 

『わかってるっつうの。俺達は今ここで会ったばっかりって事な』

 

『よろしい』

 

鈴との会話と取引を終えて、プライベートチャネルを閉じる。

しかしさすがはラウラ。

引き際は心得ているし、そのお陰でセシリアと鈴みたいに気まずそうに出てくる必要も無い。

後で何食わぬ顔で俺達と合流してくるだろう。

 

「そ、そろそろ出て行こうかなーとは思ってたのよ」

 

「えぇ、えぇ。タ、タイミングを計っていたのですわ」

 

まぁ追跡してたのがバレてたのと、千冬さんと真耶ちゃんという教師に囲まれてる集団にゃ近付くのは憚られるわな。

おおかた千冬さん達が居なくなるまでやり過ごそうとしてたんだろうが、それはキャンセルさせた訳だ。

そして一夏が悪くないというシャルロットの言葉はつまり、シャルロットはどっかでこいつ等の尾行に気付いてたんだろう。

んで、買物、いやシャルロットからすりゃデートを邪魔されたくなくて、二人にバレる前に更衣室に一夏を連れ込んだって事かね?

気持ちは分かるが……あわよくば一夏に女と意識させようとしてたのか?

あざといなぁシャルロットの奴は……いや、強かになんのか?まぁどっちでも良いけどよ。

 

「あ、やっぱり二人か。何をこそこそしてるのかと思って、ずっと気になってたんだけどさ」

 

「じ、女子には男子に知られたくない買物ってのがあんのよ!!」

 

「そ、そうですわ!!まったく、一夏さんのデリカシーのなさには呆れてしまいます」

 

普通に気になっただけであろう一夏の質問に返ってきたのは非難轟々の嵐。

どうやら一夏の奴、尾行には気付いていたらしい。

まぁ確かに女にゃそういうデリケートな買物もあるのは分かってる。

しかし普通に質問しただけでその返しはねぇだろう。

っつうかぶっちゃけお前等そんな買物せずに尾行してただけじゃねぇか。

二人の返しに聞かなきゃ良かったって肩落としてる一夏には同情を禁じ得ない。

 

 

 

兄弟に恋する乙女達が大集合し、一気に騒がしくなる店内。

 

 

 

やれやれ。コイツ等と居ると退屈しないぜ、ほんと。

 

 

 

――まぁ、それよりも……なぁ……。

 

 

 

「う、うぅ~……ッ!!(あ、あれだけの事(同衾)があっても平然としおって……ッ!!)」

 

「お、織斑先生?マネキンの後ろで何をしてるんですか?」

 

 

 

一瞬でマネキンの後ろに隠れながら俺を睨む千冬さんへの対応、どうしましょう?

まるで小動物の様に、しかし威嚇するのを忘れない千冬さんの姿は正に、ツンデレなワンコ様に見える。

 

 

 

真っ赤なお顔で俺を睨むお犬様に苦笑しつつ冷や汗を流しながら、俺は千冬さんに視線を向けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 





文字数多いのに話が進んでいない(涙)


もう少し要所要所の絡みを少なくすれば良いのだろうか?


改めて見返すと、余分な表現や演出シーンが多いかも

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