GIRLS und PANZERーーアンツィオ奮闘記 作:礼楽
私は小さい頃、無気力に生きていた。
大富豪の母と何処かの学園長をしている父という優れた両親の元に生まれ、何不自由無く生きてきた。
勉強、習い事、家事、運動。
それら全てを言われるがままに行いその技術を、知識を、学力を、高めていった。
今思えば、私は要領が良い子供だったのだろう。
どのような方法を使えば如何に自分にとっての有益になるかを取捨選択し、その中でひたすら効率の良い方法をとっていた。
しばらくして、私には「天才少女」という渾名が付けられた。
すると周りからは羨望と嫉妬を向けられ、両親からは期待と戸惑いを向けられた。
小さい私が何時しか大人顔負けの技術と知識を持っていたのだ。
そうなるのは無理もない。
小学生になると虐められる事は無かったが、露骨に周りから避けられるようになっていた。
天才は孤独、とはよく言ったものだ。
そんな私は特に友人を作ることも無く
、ただひたすら同じ
数々の賞を取り、資格も取り、様々な大会で優勝を納めた。
だが、私はそれらの物に何の感慨も持てなかった。
取れて当然と思うような事はしなかったが、私にはどれも
濁った灰色の世界の中、特に何がしたいという訳でもなくただ流されて生きていく。
私はそんな人生を歩むと思っていた。
あの人に会うまでは。
きっかけは極々些細なものだった。
何の代わり映えもしない小学校を卒業し、とある中学校へと入学して暫く経った時のことだ。
中学生になっていても私は特に変わらずに、日々を過ごしていた。
この頃、私は習い事をやめていた。
父曰く、例えどんな賞を貰っていたとしても本人が楽しめていないなら無理にさせるのは良くない、とのことだ。
流石に教育者たる父には私の乾いたこの心情の事を見抜かれていたのだろう。
母にも、焦らなくていいから自分のやりたい事を見つけよ?とも言われた。
…それと、「お母さん、凛ちゃんがお友達連れて来るの楽しみに待ってるからね?」
…とも言われていた。
しかして急にそんな事も出来るはずが無く。
また、今まで他者とは一線を引かれていた私に友達など出来るはずも無く半ば本気で母の言葉をスルーしようとめしていた。
そもそも小学生の時からあまり同年代の人と話をしたことは無いのだ。
塾に行けば講師とは幾度となく話す事はあるのだが、そこでも私は同年代の人に避けられていたのだ。
それにこの中学校の一年生の半分は前の小学校から来ていた人達だったし、あとの半分の人も「天才少女」の事は知っていたらしく、話しかけようとすらしてこなかったのだ。
そんな状況でどうやって友達を作ればいいのか。
わかる人がいたら是非ともレポート用紙5枚で纏めていただきたいものだ。
その日は中学校の選択科目を上級生がプレゼンテーションする日で私達一年生は体育館へと集められていた。
華道や茶道などメジャーな物が終わる中、それは始まった。
「続いて戦車道の説明を始めます」
瞬間、スピーカーより響く爆音。
スクリーンに映し出されるのは戦車がエンジンを蒸し、雄々しく進む姿。
乗っているのは全員が少女で、それぞれが各分担の仕事をこなしている。
戦車道。
知名度としてはメジャーとマイナーの中間といったところとして認識される
当時、その名は知ってはいたが私はさして興味を持たなかったのだ。
スクリーンに映し出される映像を私は
冷めた目で淡々と見ていた。
各プレゼンテーションも終わり、放課後を迎えた時だった。
その時私は丁度担任の教師に呼ばれた指導室から教室へ戻ったばかりだった。
会話の内容は、私が孤立していることについて。
どうやらあの気の弱い担任は私が虐められているものだと思い、面談を設けたのだそうな。
全く馬鹿馬鹿しい。
生徒を気遣っているようにも見えるが本心がバレバレなのだ。
面倒ごとはゴメンだ。
一言も口にはしなかったがあの人の目を見ればわかった。
己の保身しか考えないような教師に心配されるような謂れは無い。
よってその時の私は多少不機嫌であった。
教室へ戻るとそこには生徒の姿は1人も無かった。
恐らく友人と遊びに行ったり、部活動の見学にでも行った者が大多数だろう。
そんな事を考えながら自分の荷物を纏めて、鞄に入れていた時のことだ。
「うぅ〜、流石にこの時間は人が残っていないかぁ」
廊下より突然そんな声が聞こえてきたのだ。
「全く、先輩も人使いが荒いよなぁ…
今から見学者を見つけて来いだなんて無茶なことを…」
声の主は段々と近くなり、ついに開けたままにしていた教室の扉からその全容を知ることになった。
彼女は呟いていた独り言を止めて、こちらを見ている。
「んお!?
まだ残ってる一年が居た!」
途端、嬉しそうにニコニコとしながら歩み寄ってくる。
「…何の御用でしょうか?」
「なぁ、突然で悪いんだけど
お前、戦車道に興味は無いか!?」
「……無いです」
「えぇ!?」
きっぱりと告げると荷物を持ち、その場を後に…
ガシッ
「ちょ!ちょっと待って!?
見学するだけで良いからさ!」
あとにしようとしたのだが、その女子生徒(発言の内容から推察するに上級生)は何故か私の肩を掴んでその場に止めようとする。
それに心なしかその顔には大量の冷や汗が流れていた。
「…離してください。
大体何故そんなに焦っているんですか?」
「先輩に見学者を1人必ず連れて来いって言われてるんだ。
それで残ってるの私だけなんだよ!
だから頼む!
私を助けると思ってさぁ!」
「と言われましても…」
「その、何か予定とかがあるんなら無理にとは言わないけど…」
「う゛っ…」
予定…はは、予定か…
生憎ボッチである私にはそんな物などはない。
「…予定は、特に無いですけど」
「おぉ!!そうか!
じゃあ決まりだな、行こう!」
「え、ちょっ!?」
予定の有無を聞くなり、私の手を引いて走り出す。
その力は強く、振り解けるようなものでは無かった。
「よし!
これで校庭20週は免れたな。
助かったよ、一年生」
「…凛です」
「え?」
「名前、一年生じゃないです。
「あ、そうか。
すまん、すまん。
じゃあ、次は私の番だな」
走っていた先輩は手を離して振り返り…
「私の名前はーーーーーだ、よろしくな!」
…思えば、私の運命が変わったのはここからなのかもしれない。
だが、それを変えてくれた。
私に色をくれたのは彼女だ。
だから私は………
ここから始まるのは、
ただの一人の少女ががむしゃらに突き進む物語だ。
出会いと別れ。
栄光と挫折。
勝利と敗北。
絆と敵愾心。
様々な要素が混じり合い、一つのエピソードとなる。
それでは観客席の皆様、
私の
どうぞ、ご覧下さいませ。