GIRLS und PANZERーーアンツィオ奮闘記 作:礼楽
全く秋冬は地獄だっぜ!
あ、エタナる気は無いのでコツコツ書いてますよ、ご安心をば。(文法メチャクチャ)
活気溢れる屋台、屋台、屋台。
美味しそうに食べ物を食べている人、人、人。
アンツィオ高校の広場はとにかくごちゃごちゃしていた。
そこら中から聞こえてくる客引きの声と、料理を作る音、楽しそうに家族談笑する声と様々な音が聞こえてくる。
そんな中でとある一人の少女は眉間に皺を寄せ、腕を組み歩いていた。
彼女………奈穂凛は、どの屋台にも寄らず独りただ歩いていた。
一つの屋台を見ては次へ、また一つの屋台を見ては次へと特に何かを買うこともなくただフラフラとしていた。
そんな彼女を周りのアンツィオ生徒や通行人はチラチラと見ていた。
というのも彼女の容姿は良い意味で注目を集めるのだ。
足首の長さまで伸ばし、腰のあたりから下を一纏めにされたベージュ色の髪。
気だるげに開かれ、周囲をフラフラと眺める蒼い瞳。
細部に至るまでまるで人形の様に整った可愛らしい顔。
長袖のワイシャツに深い青のジーンズ、そして黒色のコンバットブーツとまるで男性が着るような服装を違和感無く着こなしているその姿に皆、多少なりとも見とれてしまっているのだ。
そんな美少女が考え込んでいる。
女性に対して情熱的(当社比)なイタリアっ子達は一体彼女が何に心を悩ませているのかを考えている。
一方、そんな事を露ほども知らない凛は何を考えているのかというと…………
(さっきのパニーニも美味しそうだけど、あっちで見たパエリアも捨てがたい。
けど、ジェラートもなかなか…)
ーーー単にどの食べ物を食べようかと悩んでいるだけだったりする。
というのも凛は基本的な女性に比べてはよく食べる方ではある。
だからといって好きな物をあれこれ買って食べる様な自堕落な事はせず、きちんと節制している。
そのために今回の食事は一品だけにしようと考えていたのだが、アンツィオの、ひいてはイタリア料理の前にその決意は揺らぐ事になっているのだ。
例えば焼きそばーーー何故イタリア料理の中に焼きそばが混じっているのかは考えてはいけない、なぜならアンツィオだからーーーこれもそこらの祭りの出店とは一味違う。
具材に朝取れた新鮮な魚介類、農家直送の野菜、わざわざ手間をかけて作り上げた自家製の麺。
それをシェフ顔負けの腕前で調理をするアンツィオ生徒。
鼻歌混じりに、しかしその手は一切止まること無く動き続け、一つの
そうして出来るのは、ぷりぷりのエビとイカ、ホタテをふんだんに使った海鮮焼きそばなのだ。
それを食べる客はもちろんの事、笑顔だ。
閑話休題。
そうした料理の中から一つだけを食べる。
そのため凛が大いに悩んでしまう事は仕方の無いことだ。
しかし屋台街を三週もした頃、唐突に
彼女は近くのフリースペースとなっている席に座ると顔を突っ伏した。
ぐぅー。
「……駄目です、全然決まりません」
時間にして約一時間。
その間ずっと彼女は悩み続けていたが、結局決めることが出来ずに空腹で動けなくなったのだ。
「もうこの際全部食べ尽くす勢いで散財してやりましょうか…
いや、でもせっかく守ってきた自重をここでやめてしまう訳には…
ううっ…」
「ほい、鉄板ナポリタンおまち。」
「……ふぇ?」
声に反応した凛が顔だけを上げると、目の前には鉄板皿に乗ったナポリタンが置いてあったのだ。
ふわふわと思われる半熟卵の黄色と、ナポリタンの特徴的な赤。
じゅうじゅうと焼ける鉄板により、ナポリタンの焼ける音と匂い食欲をそそるハーモニーを演出している。
事実、それらを目にした凛も盛大にお腹を鳴らしていて顔を赤らめているが視線は鉄板ナポリタンから全く動こうとしない。
だが、そこでふと正気に戻る。
凛はそもそも屋台を巡っていただけで、実際に注文はしていない。
なのに何故目の前に料理が置かれているのか。
これはひょっとして違う人の分なのではないか。
もし…
万が一、仮にそうだとしたら…その時は泣く泣く…非常に名残惜しいがこの料理を返却ないし、それを指摘しなければならない。
断腸の思いではあるが心を鬼にしてその言葉を口にしようと、先程これを持ってきたであろう人物に向けて顔を上げると………
「おいおい、折角私が作ったんだぞ。
出来れば冷めない内に食べて欲しいんだが」
深い緑のツインテールがあった。
信念を秘めた紅い瞳があった。
揺るぎない自身に満ち溢れた表情があった。
私はこの人を知っている。
そこにいたのは私が両親の次…いや、同じくらい敬愛する
「せ、先輩……?」
「ん?どうしたんだ?」
安斎千代美
彼女がそこにいた。
「…なんて格好してるんですか」
「……そこには触れないでおいてもらえると助かる///」
ーーー何故かハート柄のエプロンをつけた状態で。
「……で、手伝う段階になってからエプロンが無いことに気が付いたと」
「まぁ、そういうことだ。
ほんと参ったよ…裁縫部の奴ら、『これしか残ってないの。
絶対似合うから♡』で言ってこんなの渡してくるし…」
それは大変でしたねぇ、と言わんばかりに生暖かい視線を寄越してくる
先程まで幸せそうに、頬一杯にナポリタンを詰め込んでもっきゅもっきゅと食べていたのだが、今は食後のカフェ・ラテをごっきゅごっきゅと飲んでいるのだ。
……カフェ・ラテってそうやって飲むものじゃないんだけどなぁ。
ともあれ久しぶりの後輩との再開ーーーと言っても一年ぶり位だがーーーに私自身の表情も緩む。
奈穂凛。
私が二年生の時、たまたま教室に残っていた凛を無理矢理戦車道の体験会へ引っ張っていったのが最初の出会いだ。
最初は凛自身興味が無さそうな感じだったが、急遽岡田先輩の突然の思いつき(私達にとっては何時もの事)で実際に戦車に乗せて走ったりして行くうちに惹かれていっていたみたいだ。
なにしろ最初は仏頂面で
で、大体の戦車がそれなりに動けてきた頃、またしてもあの人が思いつきでこう言ったんだ。
「そうだ!!どうせだから模擬戦をしようじゃないか!!」
『『『『『『『『はあぁぁぁ!?』』』』』』』』
当然、私達履修生が全力で止めたのだが叶わず実行してしまう事になった。
全十両によるバトルロイヤル、しかも戦車に乗るのが初めての人ばかり。
予想通り泥試合となったのは言うまでもない。
戦車同士がぶつかるわ、明後日の方向へと砲弾が飛んでいくわでてんやわんやだった。
もちろん私達の戦車も例に漏れず。
指示した方向とは逆へとむかう、砲弾を逆に装填しそうになる、通信機のダイヤルをメチャクチャに動かす…。
そんな中、凛は唯一落ち着いた様子で座って周りを警戒していた。
そうして一台の戦車に狙いを定め、どこか余裕そうな雰囲気を漂わせながら砲撃をして…………
遥か彼方、明後日の方向へと砲弾をぶっ飛ばしていった。
何をどうやったらそうなるのか分からないほどぶっ飛んでった砲弾は、近くの木に命中していた。
今でもその時の車内の様子を思い出せる。
確か私は笑っていた、ここまで外せる人もなかなかいないと。
唖然とする他の生徒、確かその時はまだ天才少女の渾名で呼ばれていた頃だからあんな風に外したのを信じられないのかも知れない。
そして当の本人はというと…………
「…ぶっ、あっははははは!!」
ものの見事に大爆笑していたのだ。
直後にほかの車両に撃破されたのだが、その中でもあいつは笑っていた。
後から本人に聞いたのだが曰く、
「今までの中で一番面白かった瞬間だった。
笑った理由については覚えていない。」
だそうだ。
それからあいつは一頻り笑い終わると私に向かってこう言ったんだ。
「
その目はどこまでも真剣で、そして私が見たなかで一番輝いていた。
そこから私とこいつの、ある意味本当の戦車道が始まったんだと思う。
長い長い、私とこいつの物語が。
「…先輩、ところでお代わりなどはありますか?」
「お前、節制はどうした!自重は!?」
「こんな美味しいものをお代わりしないのは逆に失礼になります。
つまり、お代わりするのは義務なんです。
おわかり……いえ、おかわり頂けるだろうか?」
「この前うわ言のように体重ヤバイって言ってたの誰だっけかな…?」
「ぐぬぬ…」
「まあまあ、カフェ・ラテは奢ってやるからさ」
「本当ですか!では行きましょうさあ行きましょう!」
「ちょっ、待て!
エプロンを引っ張るな!
待てったら〜!!」
…………ほんと、凛といると締まらないなぁ。