GIRLS und PANZERーーアンツィオ奮闘記 作:礼楽
戦車道のルールの中にこのようなものがある。
参加可能な戦車は終戦までに、戦線で活躍または設計が完了し試作されていた車輌と、それらに搭載される予定だった部材を使用した装備品のみ。
つまりは先の第二次世界大戦終戦までに作られた戦車なら使用可能という事である。
これは例えばドイツのティーガーやティーガーⅡ、更には冗談の様な化物戦車マウスも、終戦前に一応試作されていた事から、使用可能という扱いになるのだ。
これを踏まえた上で、私たちのアンツィオの保有車両を見てみよう。
CV33…15両
セモベンテ突撃砲…5両
IV号突撃砲(奈穂凛個人所有扱い)…1両
「うん、無理だコレ」
「諦めるの早くないか!?」
「だってペパロニ、これどう考えても攻撃力が足りないんだよ。
…にしても何でこんなにCV33ばっかりあるの………?」
「ドゥーチェによると、今まで使っていた戦車は大抵がスクラップであったり修繕不可能な程壊れていたり、既に売却されていたりとか」
「うむ、つまりはこの最底辺の状態でもって新たなる我々の活劇を綴っていくと!
……かなりの苦行になると思うがな」
「これって大丈夫なんでしょうか…?」
カルパッチョの発言に私とネロ、ペパロニは押し黙る。
私の持ってきたIV号突撃砲はともかく、セモベンテは確かに攻撃力はあるものの数が少ない。
そしてCV33はぶっちゃけるとただの速いだけの戦車……いや、もはや装甲車だ。
チラリとスクラップが置かれている方を見る。
砲身どころか砲塔すらないP40
何をどうやったのか分からないが真っ二つに割れているセモベンテ
装甲板が、物の見事に全部剥がれている…
……何だあれ?…とにかく戦車。
「新規購入、あるいは寄付。
最悪の場合は諦めてこれで戦う事になりそうですね。
少なくとも今年中にはどうこうできる話ではありませんよ、これは」
さて、大体見当がつく方はもうお分かりかと思いますが私たち四人は現在、コロッセオ脇にある戦車倉庫の中へ来ています。
先輩曰く、副隊長と隊長補佐、そして副隊長補佐ならば自校の保有車両は見ておくようにとの事。
当の先輩はと言うと、現在戦車道に関するルールや知識などの座学を受講者達に行っており、現在別行動中です。
無論、私とネロは既に中学校の時に通った道ですし、ペパロニとカルパッチョも私達がマンツーマンで教えた結果すんなりと理解出来たそうなので参加しなくとも問題はありません。
…多少の不安がありますが、仮にも副隊長なのですからきちんとして欲しいを願うものです。
あ、そうそう。
役職についてなのですがこれはつい先日決まったものです。
安斎先輩は当然の事ながら、隊長。
隊長補佐に私。
副隊長一名はペパロニ。
副隊長補佐にはネロとカルパッチョという組み合わせです。
私は比較的目立ちたくなかったので対外的に露出のある副隊長にはペパロニを。
ただペパロニだけでは不安なので補佐にカルパッチョを推薦しておきました。
ネロはまた別の意味で露出を控えたほうがいい(先輩判断)ので補佐をお願いしました。
さて、話は逸れてしまいましたがこの惨状。
事前に聞いた話によると、戦車の修理は各各々で行っていたとのことで当然の事ながら専門的な修理は不可。
私の家にある大量の機材を用いたとしても流石に知識がなければ無用の長物。
私や安斎先輩もそのような知識は流石に持っておらず、中学校時代はそもそも『戦車修理倶楽部』という変人の集いに戦車を直していただいていたため、同級生に聞くのも不可。
かと言ってこのままでは流石に不味い。
さて…どうしたものでしょうか。
「…それで、僕にどうしろと?」
「会長の知り合いに誰かそういった事に詳しい人が居たら、是非紹介して頂きたいのです」
「という理由なんだ、頼むよー。
私とお前の仲だろー」
「棒読みで言うのは止めてくれないかな安斎」
「安斎言うな!私はドゥーチェ・アンチョビだ!」
「はいはい、ドゥーチェドゥーチェ(笑)
そう言えばドゥーチェとフ〇ーチェて似ていると思わないかい?」
「思わんわ!」
明くる日の昼休み。
生徒会室にて、私と先輩は生徒会長とお昼を共にしながら相談をしていました。
先輩曰く、この生徒会長は無駄に顔が広いらしくそういった相談をするのにうってつけの人物だと。
「大体、僕にそんな知人がいると思うかい?
どう生きてきたら戦車道に関わってないのに、戦車の販売に詳しい人と知り合いになれるのか聞かせて欲しいものだね」
「親父さんとかの知り合いでそういう人って会ったこと無いのか?」
「うーん、そもそも戦車道用の戦車を購入したりしていたのは前の校長だし、父さん自身もあんまり戦車道に興味を持ってなかったからね。
それに、父さんの赴任は今年からだよ?
そんなこと知るはず無いじゃないか」
「うっ、確かに……」
可愛らしいピンクのお弁当箱から手羽先を取り、齧りながら会長がボヤく。
余談ではあるがアンツィオ高校は今年度、体調不良を理由に前学校長が辞任。
それと同時に赴任してきたのがなんとこの会長のお父さんなのだそうだ。(先輩情報)
「にしても安斎。
そのスクラップだっけ?それって直せないの?」
「直せるのならそうしたいんだけどなぁ……。
私も凛もそこら辺の知識に関してはさっぱりなんだよ…」
「一応訂正しますと板金と溶接等の知識ならあります、が流石に戦車の修理に関しては…」
「ほぉー…流石は
「…………………………えぇ、まあ一応は。
というより、会長は知っているんですね」
そう呟いた私の顔は、恐らく情けないくらい落ち込んでいたのであろう。
先輩もワタワタしながら会長にしーーっ、とジェスチャーしていましたし。
「……あぁ、あの
所詮くだらない下世話で低俗な人間がその嫉妬心故に作り出した妄想だろ?
そうじゃなくて、入学する生徒のことはちゃんと調べてあるんだ。
その中で奈穂さんのことを知っただけだよ。
変な事思い出させちゃってごめんね?」
そう言った会長は会話のネタ選ぶの失敗したなぁー、といった表情で謝ってきた。
…思ったより口悪いな、この人。
「…いえ、大丈夫です」
けれど、悪い人ではない。
「んー、そうだ。
ならこうしようか。
このアンツィオには機械整備が得意な人が一人いる。
その人を戦車道に誘ってみるというのはどうかな?」
「ほら、やっぱり知ってるんじゃないか」「生徒のプライバシーに関わる事だからね、そう簡単に職権を乱用してしまっては信用を失いかねない。
学園艦の生徒会長としては当然の事さ。
それに最初に君たちが聞いてきたのは『戦車の売買に詳しい人』だ。
『戦車を修理出来そうな人』とは聞いていないよ?」
「…それで、その方は一体どんな人なのでしょうか?」
そう聞いた途端、彼女は苦笑いしながら答えた。
「究極の速度狂…かな?」
〜side〜ねろ・くらうでぃうす。
(倉出音色)
「それで、そいつが居るっつうのがここ?」
「うむ!
ちゃんと奏者からもメモを預かっておる!
……ご丁寧に校内地図とコンパスまで用意してある手際の良さよ」
諸君!
私だ!ネロ・クラウディウスだ!
…………いや、あの、ごめんなさい。
私、倉出音色と申します。
アンツィオ高校で戦車道副隊長補佐をやらせて頂いてます、ごめんなさい。
はい、突然のテンションの落差に驚かれている方も多いと思われますが、これが本当の私です。
さて、私とペパロニさんが今どこにいるのかというと。
私たちの戦車を置いているガレージから道を外れること約10分。
学校敷地内ギリギリの所にあるちょこっとだけ古びたガレージに来ています。
というのも、お昼に凛ちゃんと安斎先輩が生徒会長から聞いた戦車を修理出来そうな人というのがこのガレージの中にいるみたいです。
そこで、ちょうど手が空いていたーー断じて座学を教えるのに戦力外扱いされた訳ではないーー私とペパロニさんが勧誘に来た、という訳です。
「…にしてもすげぇなぁ。
そこら辺、金属スクラップでいっぱいだぜ?」
「…これは、エンジンの部品?」
そう、ペパロニさんの言う通りあっちこっちに錆びてしまった物や、中から破裂してしまった物など色々な金属パーツが転がっている。
そのどれもがエンジンに関するものばかりだ。
「という事は、ここで間違いは無いな」
「よし、んじゃあ入るか!」
「えっ、ちょ、おま」
ペパロニさん!?
いくら何でもいきなり入るのは…!
そしてペパロニさんがドアに手をかけた時だった。
ガラガラガラと鈍い音が響き、ドアの横にあったシャッターが開いていく。
それを見たペパロニさんはニッコリ笑顔でそのシャッター内に入ろうとする。
が。
ブオォォォォンッ!
「おわ、なんだ!?」
「うわっと!?」
開きかけていたシャッターの間から、赤い何かが飛び出す。
それは、車高が低くて赤く塗装されたスポーツカーだった。
一瞬の事なので良くは見えなかったけども、中に乗っていたのは赤い髪の女の子だ。
………なんかめっちゃ怖いくらい笑ってたのは気のせいだろう。
その車はそのまま私たちの前を通り過ぎ、走り去っていく。
と、突然ペパロニさんが走り出す。
「ペパロニ、どこへ行く!?」
「へっ、決まってるだろ?
追いかけるんスよ!」
叫びながら、私たちが移動に持ち出していた508CMコロニアーレの運転席に乗り込む。
「今から追いつけるとは到底思えんのだがな!」
「上等!
ここで逃がしたらドゥーチェやナポリが折角探してくれたのが無駄になっちまうからな!
死ぬ気で追え!」
「良かろう!」
アクセルをベタ踏みし、急発進する。
悲鳴をあげるように響くタイヤのスキール音を聞きながら、私は………いや、余はテンションを上げていく!
そうして、学園内での突発的カーチェイスが幕を開ける。
……………………後から思えば、後日改めて向かえばよかったとか、わざわざ追いかける必要が無かったとか思うけれども。
良い意味でも、悪い意味でもノリと勢いのアンツィオ流に順調に染まっていたなぁ、と思う私であった。