GIRLS und PANZERーーアンツィオ奮闘記   作:礼楽

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とりあえず、一人確保という事で。byカルパッチョ

どうしてそうなった。

諸々の報告を受けた僕の脳裏に浮かんだのはその一言に尽きた。

 

高校近くの環状線道路において、赤いスポーツカーと508CMコロニアーレが爆走中。

尚、そのどちらもがアンツィオ高校生徒の模様。

 

ドアを乱暴に開け、入ってきた風紀委員が開口一番に放ったそれは僕が頭を抱え、そして胃痛をぶり返させるのには強すぎる衝撃的な内容だった。

 

赤いスポーツカーはまだ分かる。

いや、本当は分かりたくもないが。

どうせまた彼女(・・)が出来上がったマシーンで走り回っているだけだ。

再三にわたり注意してきたが一向に治らないそれの矯正はもはや諦めそうな部類だ。

 

それの制御と更生を含めての戦車道生への丸投げ……もとい、紹介であった。

そのはずだ。

 

 

しかしもう一台、スポーツカーに追従あるいはそれを追い越そうとしている508CMコロニアーレについては理解できない。

確かあれは戦車道部の備品で登録されていたものだ。

つまりは戦車道部の人間が乗っている事になる。

 

確かに安斎は言っていた。

今日話してみる、と。

 

なるほど、即実行とは迷いがないなと感心していたのだが。

それが一体何をどうしたら、爆走に繋がるのだろうか。

しかも、とうの安斎は部室に居るという。

なら、彼女…奈穂凛か?

いや彼女はそんな事はしない。

 

いや、それよりもだ。

僕にはやるべき事がある。

おもむろに立ち上がり、ドアへと向かう。

 

「会長、どちらへ?」

 

副会長が不安そうな表情で見つめる中、僕は彼女に告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ちょっと保健室で胃薬貰ってくるよ」

 

「会長!?」

 

これは腹部を抑えながら、アンツィオ高校生徒会長が戦車道部の部室へ怒鳴り込みに行く約十分前の出来事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンツィオ周辺には高速走行の出来る環状線がある。(独自設定)

そこはかつて走り屋と呼ばれた人たちが、己のテクニックとマシーンを競い合う聖地として有名であった。(独自設定)

現在ではその数は減り続ける一方であったが、それでも誇りを胸に走り続ける人たちがいた。(独自ry)

 

 

そんな環状線を一台の車が走っていく。

 

前を行くのは赤い流線型の形状をしたスポーツカー。

ボンネットに取り付けられた『跳ね馬(・・・)』のエンブレムを煌めかせながら、悠々と走行していく。

 

その運転席に座る赤い髪の少女はくつくつと笑いながらハンドルを切っていく。

 

「クックックッ…、ご機嫌な音を出すじゃあねぇか。

やはり十二気筒エンジンはいいぜぇ…!

最っ高の音を響かせてくれる!」

 

チラリと少女は速度計…タコメーターに目をやる。

速度は時速90km/hを超え、まだまだ上昇していく。

 

………が、その針が110km/hを超えた辺りから、エンジンから異音が聞こえ出す。

 

おっとっとっ、と少女はアクセルペダルから足を浮かせる。

 

それが80km/hにまで速度が落ちると途端異音がピタリと止み、エンジン音しか聞こえなくなる。

 

 

「っち!

やっぱ、安定性がねぇか。

流石に手作りエンジンじゃあ、無理があるか…………ん?」

 

少女がそう不貞腐れていると、ルームミラー越しに一台の車が後を着いてきているのが見えた。

 

 

 

 

その一台、後方を走る508CMコロニアーレでは、二人の少女が言い合いをしながら前方のスポーツカーを追っていた。

 

「もっと飛ばせ!

じゃないと追いつけないぞ!?」

「無茶を言うな!?

まだタイヤのグリップがどこまで行けるのか分からんし、何より私がコロニアーレに慣れていない!!」

 

黒髪の少女…ペパロニが、金髪の少女…ネロに詰め寄る中、ネロは必死にハンドルを握っていた。

 

まだ数回しか乗っていない508CMコロニアーレ。

その車の癖を身体で覚えようとしているのだ。

 

「(……アクセルペダルが多少重い。

それとアライメントが歪んでるのか若干左に流れる。

だけど、ブレーキ周りには問題なし、どころか最高!

加速も申し分無いし、これは………)

 

征けるぞ!!」

 

ニヤリとネロが笑い、アクセルペダルを踏んでいく。

途端、高鳴るエンジンの音に合わせ速度がぐんぐんと、上がっていく。

 

その速度はコロニアーレが出せる限界を超え、時速100km/h。

緩やかなカーブを滑ることなく走り抜けていく。

 

 

「(んだ?あの車……ん?

あれってアタシが前に整備してやったコロニアーレじゃねぇか。

 

つうことは……………アイツら生徒会か!

 

大方アタシを止めるために引っ張り出してきたんだろうがそうは行かねぇ!)

…っは!舐めんな!」

 

後ろより追跡してくるコロニアーレを敵と判断し、少女は加速をさせる。

 

「くっ…!

(加速したという事はこちらに気が付いたか。

だが分からん、なぜ逃げる?

 

………なるほど、そういう事か。

 

『私に追いつけない様じゃあ話にならん。

私をスカウトしたければ追い抜いてみせろ!』

 

という訳だな!?

良かろう、このネロ・クラウディウス。

挑まれた勝負には決して逃げも隠れもせん!

必ず貴様に追いついてやる!)」

 

「((っ'ヮ'c)<ウッヒョォォォォオ!!!

速えぇぇぇぇぇえ!!)」

 

 

双方がそれぞれ全く見当違いな思惑をしながら、両車は走る。

 

「(ほう、なかなかのアクセルワークだ。

立ち上がりが遅いのはコロニアーレの特性上仕方ないが[独自設定]それをカバーする様に淀みなくシフトチェンジしている。

いいドライバーだ、しかし生徒会にあんなのいたか?

しかも目立つ金髪なんて生徒会にいなかったはずだ。

てことは、一年か)」

「(…速い。

なんだあのバケモノは。

いくらスポーツカーと言えどあの加速と立ち上がり…よほど手を加えているのか…………

そういえば、ガレージ前に転がっていたのはエンジンパーツ……

まさかエンジン自体がオリジナルなのか!?

…よほど腕の良い整備士でなければ、エンジンなんて作れるもんじゃ無い)」

「「((コイツ出来る…!!))」」

「フーッ!速ぇ!!

サラマンダーより、速えぇ!」

「喧しいわ!」ゴスッ

「おぐっ!?」

 

ハンドルを握りながら器用にペパロニへ肘を叩き込むネロ。

その視線は一瞬足りともスポーツカーのテールランプから離れることは無い。

そうして二台の差は縮まり、互いが視認出来るまで近づいた。

 

赤髪の少女と金髪の少女は互いに睨み合い、そして笑う。

ただし、苛烈に。

その表情はどちらも絶対に負けないという意思を感じさせるのには十分であった。

 

そして、同時にアクセルを強く踏み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………それで、これは一体どういう事ですかねぇ?」ゴゴゴゴ…

「…やばい、凛の背中に阿修羅が見える…!

あばばばばば…」

「ドゥーチェしっかりしてください!

今気絶されると私がもちませんから!」

「おい」

 

 

会長より、事の次第を聞いた私達はそれは勿論大急ぎであとを追いかけた。

そしてそこで目にした光景、それは……

 

 

「いやぁー、悔しいなぁ!

まさかアクセルふかした途端エンジンが吹っ飛ぶとは思わなかったぜ!」

「ふん!

大方いきなり全開にしたのであろう。

だから負荷に耐え切れずに壊れたのだ」

「きゅー」

「でもお前、アタシに着いてこれるとはなかなかやるじゃないか!

それも初乗りのコロニアーレで」

「なに、余は元々操縦手だからな。

それも色々と無茶をさせられたおかげで大体の荒い運転も出来るようになったということよ。

しかしこのコロニアーレはそなたが整備したのか。

なかなかに良い整備であったぞ!」

「だろー!」

「きゅー」

 

 

ボンネットより、パイプやらパーツやらが飛び出したスポーツカー。

車体に大きく擦れた傷が付いたコロニアーレ。

そのコロニアーレの車内で馬鹿笑いしながら会話しているネロと、赤髪の少女。

後部座席で伸びているペパロニ。

 

あ、スポーツカーが火を吹いた。

 

 

 

「お前ら喋ってないで消火しろやぁぁぁぁぁぁあ!!!」

「ひぃ!凛がブチギレた!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

消火と、二台のレッカー移動と説教。

様々な作業を終えて、もはや夜もふけて日をまたぐ頃。

ようやく諸々の後処理を終え、疲れた身体を机に投げだす。

真向かいの席ではカルパッチョも同じように机に突っ伏している。

 

「やれやれ、やっと終わったか。

……もう書類を見るのは懲り懲りだぞぉ…」

 

流石の先輩もヘトヘトの様子で、力無く椅子の背もたれに寄りかかっている。

 

ちなみに件の三人はというと、会長に膝詰めで説教を受けて現在足の痺れにより絶賛悶絶中である。

 

 

 

 

 

「それで、貴女が会長の言っていた人ですね?

確か……」

「くぅ……ああー、待て。

ちゃんと………いひ………名乗らせろ…。

アタシのポリシーに反する……」

 

私が確認の意を含め、話しかけるとそれを遮ぎり立ち上がる少女。

膝がまるで産まれたての小鹿のように震えているが、その表情には自身溢れる笑顔を浮かべている。

 

「アタシの名前はフェラーリ。

このアンツィオで、いや、世界で一番速い女だ!

…っ、やっぱむり!」

「ちょ、おま、ふみゅ!?」

 

 

そう彼女、いやフェラーリは名乗る、と同時に耐えきれなかったのか後ろに倒れ、ネロを下敷きにした。

 

 

 

後日、改めて勧誘を行った所、快く了承してくれた。

その時の理由について、彼女は

「戦車なんていじったことねぇからやってみたかった。

とりあえずCV33に十二気筒エンジン積ませろ」

などと言っていたらしい。

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