Wrap up the lord of knight 作:影斗朔
「・・・」
「・・・」
だからと言って、今更自分のことを話す・・・なんて、どうしても気恥ずかしく感じてしまうのは仕方がないとバリューは思ってしまう。
確かにあんな出会い方をしたのだから、碌に自己紹介もしておらず、人づてに聞いた個人情報しかお互いに知ることができてないのだが・・・。
今更、伝えておかないといけないことなんてあるのだろうか。
しかし、このままでは目下の問題である、それぞれの立ち位置の解決が出来ない。
そこで、ライトは発想を転換する。
「・・・よし。バリュー、今から手合いをしてくれ」
「え、今から!?」
そう唐突に提案してきたので、話し合いをするんじゃなかったのかと言いたげな表情で、バリューは言い返す。
「『力と力を交えれば、自ずと相手のことがわかってくる』って、レイジさんが言っていただろ?」
「・・・それって意味をはき違えているんじゃないかなぁ」
「そうかもしれないな。ほら、しっかり構えないとケガじゃ済まないぞ」
「え・・・? わっ!」
開始の合図を一言も告げることなく、ライトはバリューの頭部へと剣を突く。
切っ先が尖ってないどころか剣身が四角柱といった、傍から見るとわけがわからない剣でも、風を切るような勢いで突き出されるならば骨を砕くことなど造作もないだろう。
・・・が、それを手合いで繰り出す必要はない。
しかし、ライトは一切の手加減をすることなく、一撃必殺の剣を振るっていた。
バリューはその急な行動に驚きながらも、ライトの一撃を頭を傾けることで難なく回避し、担いでいた剣を構える。
「いつも思うんだけどさ・・・、いきなり攻撃してくるの止めない!?」
「いきなり攻撃してこない敵の方が珍しいだろ!」
「それは、そうだけどさ!」
ライトはバリューの行動を封じるために足元を払おうとするが、その前に剣身を横にして薙ぎ払いにきたバリューの一撃を回避するため、剣身二つ分の間を開ける程度にその場から飛びのく。
勿論、バリューが先ほど使った横薙ぎも、うまく受け身を取らねば骨折は免れないだろう一撃である。
「やっぱり、今やる必要ないんじゃない?」
「『困った時はとにかく体を動かせ。動かないと何も始まらない』って―――」
「確かにレイジさんはそう言っていたけど・・・。なんか違う気がする・・・」
じりじりと間合いを詰めながらバリューは呟く。
手合いをするときは、ライトがいきなり攻撃を仕掛けてくるところから始まるのはいつも通りではある。
けれど、ここまで唐突に手合いを行うのは初めてだった。
「いい加減教えてくれない!?」
「何を!」
「急に手合いを始めたこと!!」
執拗に手元ばかりを狙ってくるライトの剣を鍔でいなしながら、バリューは再度問いかける。
かく言うバリューもいなした剣を構えなおされる前に一撃入れようと、巨剣をまるで棒切れのように振り回し続けていた。
「勿論、得意不得意をはっきりさせるためだ!」
「普通の手合いで得意不得意がはっきりさせられるの!?」
「ああ、そうだ! バリューだって相手の行動によって戦い方を変えるだろ!?」
「・・・ち、ちょっとストップ」
「ん?」
動きを止めたバリューを見て、ライトも動きを止める。
どうも様子がおかしい。今まではライトの方をしっかりと向いていたのに、今はどこかそっぽを向いているように見える。
おまけにさっきの言葉はどこか戸惑っているようにライトは聞こえた。
「さっき、相手の行動によって戦い方を変えるって言ったよね?」
「そうだが?」
「そんなに変える必要って、ある・・・かな?」
「お前なぁ・・・」
呆れたといわんばかりに、ライトは冷たい視線を向ける。
視線の意味を理解したのか、バリューは、あはは・・・と笑いながら頭をかいた。
「・・・例えば、この前戦ったバブルとかがそうだ。遭遇は初めてだったから、いつもと明らかに違った戦いを強いられただろ」
「あ、確かにそうだね」
「それと同じだ。普段の手合わせではやらないことをやるのは苦労する。だからこそこういった普段の手合わせだと、それぞれのクセが出やすい」
「なるほど・・・。だから急に手合わせを始めたんだね」
そう、いつもは腕を鈍らせないようにするため手合いを行っていたが、先ほどライトが唐突にやり始めたのは、自分と相手の得意不得意を改めて把握するための手合いだった。
急に攻撃したのは不意打ちを未然に防ぐための保険でもあるが、今しがたライトが唐突に攻撃した理由は、突然の事態に対してどう対処するか見定めるため。
一度距離をとった時も手直しという理由もあったが、バリューが次にどのような行動を起こすかを見定めるためでもあった。
「続けるぞ」
「りょーかい」
一瞬にして間合いを詰めたライトの横薙ぎが、バリューの剣によって防がれる。
そのままライトに向かって体を捻り、その反動で受けた剣を弾き飛ばそうとバリューは動く。
だが、その行動を読んでいたのかライトは剣を逆手に持ち替え、身を翻した。
「それで、クセがわかったらどうするわけ!」
「簡単だ! 良いものと悪いものを精査すればいい!」
「なるほど! 良いものは伸ばして、悪いものは改善していけばいいってことね!」
「そういうことだ!」
そして、再度二人の剣はぶつかり合い、辺りに鈍い音を待ち散らす。
風に揺らめく草の音も、鳥や虫の鳴き声も聞こえない広陵な草原の中、その場に似つかわしくない鋼と鋼がぶつかり合う音だけが響き渡った。
―――全力を出して相手を打ち負かす。
それはいつだって・・・たとえ手合いであっても変わらない。
常に敵の手の内を探り、逆手に取り、渾身の一撃を叩き込む。
戦い続けながら、相手の心意を探り続け、揺さぶりをかけ、一瞬で仕留める。
そんな剣を交え続ける二人の脳裏には、いつかの戦いがよぎっていた。
それは、まだ二人が敵同士だった頃・・・、
お互いに何者かわからない状況で対面した時の光景だった。
今晩は。左之亜里須です。
投稿が三日目の深夜になってしまいました。
次からは夕方辺りに投稿できるように頑張ります。
さて、本編ですが、次から過去の回想へと時系列が変化します。
敵同士だった二人は、一体どのような経緯で出会ったのか。
出会った直後、二人はどのような行動に至ったのか。
二人の馴れ初め、その最序盤の話が展開されていきます。
次回作もまた見て頂いたら嬉しいです。
それでは、より良い日々を・・・。
余談ですが、
まだまだ寒い日が続きますので、体を労りながらも鍛えていきたいと思います。
(さっきまで体調不良でダウンしていました(-_-;))