Wrap up the lord of knight 作:影斗朔
・・・話は過去にさかのぼり、雨の森の中。
目的地付近までたどり着いたライトは、木陰で疲れを癒し、今後の事を考えていた。
索敵しながら目的地を目指して進んでいるが、いい加減に疲れが溜まってきたな。
ここまでの道中で出会えていない事を考えると、あの人が嘘を吐いているとは思わないが、何かしらの問題が発生して移動した可能性も考えられそうだ。
おまけにここ数十分で、三人ほど行動不能にしている。兵が疎らに配置されているとしたら、密集しているところに向かっているのと変わらないだろうし、巡回していたのなら、変わり果てた味方の姿を発見されているかもしれない。
「やはり、会敵した時点で一旦退くべきだったか・・・」
つい先ほど見つけた目的地の洞窟付近で、ここまでの疲労を取るために一休みしながらそう呟く。
そのおかげで、森の中で見ることはないだろう
「・・・チッ、誰か来るな」
つい、声を出してしまって慌てて口をつぐむ。
ただでさえ慣れない土地で疲弊しているのに、もうすぐ目的地に着きそうなタイミングで人の気配がするとは・・・非常に面倒だが、奴らのように足を砕くべきだろうか。
いや待て、これ以上の手出しは流石に不味い。ここに来るまでに遭遇した三人はどうにか仲間を呼ばれることなく意識を刈り取ったが、次はうまくいくとは限らない。
だとすれば隠れておくのが正解だな。幸いにも声を聴かれるほど近くにいるわけではなさそうだ。
・・・丁度良く葉が地まで垂れ下がった木もある。これはついているかもしれない。
ほっと肩をなでおろし、木の根元でしゃがみ込む。
念のためにフードをこれ以上にないぐらい目深に被った。
それから十三秒後、俺が立っていた場所の付近に現れたのは、森の中には不釣り合いな鎧だった。
隠れる前に暗がりからぼんやりとした明かりが見えたが、あれは鎧が光を反射したものだったらしい。
・・・それにしても、
ただ見た目の良さを重視してあの鎧を纏っているのならただの雑魚だが、意図して装着しているのならば、あの人物は只者ではない。
加工困難で重厚な
背中の剣はよくわからないが、おそらく鎧と同じようにただの武器ではなく、何かしらの意図があって装備していると思うべきか。
―――隠れて正解だった。あんな奴がフォンテリア軍内にいるとは思わなかったが、もし遭遇していたなら無傷で帰ることは難しかっただろう。
よし、このまま通過してくれると・・・。
「・・・そこに隠れているのはわかっている」
「(っ!?)」
あろうことかそいつは俺の前で立ち止まった。
バカな!? 完璧にカモフラージュしているはず・・・!
・・・落ち着け。敵だと分かっていたら、わざわざ俺に声を掛けてくる必要なんてない。
俺の正体がわかっていないのなら、ここは誤魔化しに転じるべきた。
「・・・すみません、急に明るい物が近づいてくるものだから、幽霊か何かと思いまして隠れた次第です」
ゆっくりと木の陰から這い出すと、鎧は俺を向いていた。
想像していた通りだが、やはり俺よりも背がデカい。リーチではこちらの方が圧倒的に不利そうだ。
「・・・そうだったか、驚かせてしまって申し訳ない」
「いえいえ! あなたの鎧が立派なもので、思わず息を呑んで見惚れてしまっていました」
男性にしては少し声が高めか・・・?
くそ、相変わらず中にいる人物の正確な体格が分からない・・・!
少なくとも、
思っていたよりも礼儀正しい事も悪くない。これなら、付け入る隙がありそうだ。
「・・・そうか。だが、私は見世物ではない」
「で、ですよね。大変失礼いたしました!」
「・・・それに、この付近には敵軍が潜伏している可能性がある。早く家に帰れ」
「て、敵ですか! わかりました!」
やはり、フェルメア軍が森に入ったことはバレている。それか、俺が無力化したあの三人が見つかったからバレたのか・・・。
どちらにしろ、逃げるなら今がチャンスだ。運よく奴は俺が敵だと気づいていない。
この場を一旦立ち去って、機会をうかがってからもう一度迎えば・・・。
「・・・その前に、一つだけ質問がある」
「―――何でしょうか?」
「・・・ここはあまり生き物が立ち寄らない場所だ。狩人なら近づく必要すらない。なのに何故貴様はここにいる」
「生き物が少ないので、貴重な薬草やキノコが採れるんですよ。普段は別の場所にいるのですが、家の貯蓄がピンチになるとよくここに駆け込みます」
「・・・そうか」
「では、急いで帰りますね!」
この付近の様子を詳しく調べていて正解だった。国内勤めの騎士が森の事を詳しく知っているかはともかく、誰から言われたとしても違和感なく返事を返せたはずだ。
鎧から視線を外し、体を前傾にする。今にもこの場から駆け出して去るように《《見せかける。
―――気づいたのはついさっきだった。
奴が俺の立っていた付近から出てきて、俺のすぐ隣を通る。その行動自体には何の問題もない。奴にとっては、ただ道の途中に俺が居ただけのことだ。
・・・なら、生き物も殆どいないこの場所に、奴は
フォンテリア軍の兵士は一様にして、物陰に隠れて不意打ちを狙っていた。
確かに、サシでなくとも戦果を挙げられる戦法としては十分にありな方法だ。
だが、それを確実にするためには、フォンテリア軍の兵士全員がその場に待機し、身動きしないことが前提条件になってくる。
この森の事を知っているのだから、奴がフォンテリア軍の兵士・・・いや、あれほどの威圧感から騎士であることは確実だ。
にもかかわらず、奴はこの森の中を通ってここまで来た。
それは、作戦を無視する重要な理由があるから・・・。正しくは、王からの勅命を受けてここに来た、ということが言えるのではないか?
つまり、奴はこの先で俺とあの人が密会することを阻止しに来た事になる。
王からの勅命を受けた専属騎士として、あの人を殺す気で。
―――それだけは、やらせない。
鎧の横をすり抜けたタイミングで剣の柄に手を掛けた。
あの人は、俺という人間を認めてくれた人の一人だ。
今の俺が居るのはあの人のおかげと言っても過言じゃない。ここでいなくなられたら・・・困る。
それに、困るのは俺だけじゃない。主様やあの人の家族だって、あの人が無事でいることを願っている。
それなら、あの人を守るために俺がここで死んだとしても、何の悔いもない。
奴は早く家に帰れと言っていたが、とんだ笑い話だ。
・・・どうせ俺に帰る場所なんて、とっくの昔に無くなってしまっているんだから。
―――貰った!!
通り過ぎた瞬間と同時に、奴の左側の大腿神経目掛けて剣を振るった。
「・・・そうか」
「っ!?」
体を叩いた触感は感じず、代わりに鈍く重い金属音が辺りに響く。
左腰へ叩きつけられるはずだった剣は、寸前のところで、鎧が背負っていた大剣に受け止められていた。
「・・・わかりやすい嘘だ。そんなもの、誰にも通じないぞ」
「チッ!」
体勢を立て直すために一旦距離をとると、鎧の人物はその背の大剣を両手で構えなおしている。
俺を敵だと判断したようで、奴の鎧から殺気がピリピリと漏れ出していた。
(くそっ、しくじった・・・!)
見た目より動きが速いだろうとある程度は予測していた。だが、嘘が早々にバレたのは、完全に想定外だった。
奴が攻めてこないよう、細心の注意を払いながら剣を構えるが、何故かその場から動くことなく切っ先を俺の方へと向けたままでいる。
「・・・やはり敵か。逃げるのなら見逃してやるつもりでいたが、わざわざ対峙してくるとはな」
「ああ、そうだ。最初は逃げようとしたが、お前がこの先に行くなら話は別だ」
「・・・ふむ」
「この先でお前が何をするかはわかっている。俺は、それを阻止するためにここに来た」
「・・・なるほど、そういうことか。それならば手加減は不要だな」
奴の体がりきみ、前へと重心が掛かっていく。
うまく挑発に乗ってくれたようだ。奴はこのまま数秒もしないうちに俺へ距離を詰めてくるはず。
重量があるあの鎧だと急には止まれないだろう。だから、その速度と重量を利用して逆にご立派な鎧を破壊してやる。
今にも前へと進みそうな巨体を再度確認して、それが進みだすよりも先に、湿った大地を蹴った。
今晩は。左之亜里須です。
一日間違えました・・・。
でも、早い分にはいいですよね・・・?
さて、4.5は一度現実に戻って二人の手合いの話になります。
白熱しているようですが、周りは見えているのでしょうかね?
5では、ライトが謎の鎧へと攻撃したところで終わっています。
鎧の人物とは一体何者なのでしょう?(目逸らし)
次回もまた見て頂いたら嬉しいです。
それでは、より良い日々を・・・。
漸く冬が明けますね。
苦手な時期からようやく解放されたので、頑張りたいと思います。
・・・え、何をですか?
―――色々です。