Wrap up the lord of knight 作:影斗朔
「ここまで決着がつかないのって、あの時以来じゃない!?」
「確かに、そうかもな!」
相変わらず、互いの武器が逆転した状態で二人は手合いを続けていた。
付近の草は二人が踏みしめ、剣で薙ぎ払ったせいで、その場所だけ半分以下の長さになってしまっている。
長い間打ち合っていた二人の体力は、もはや限界に近い。
それでも、二人の対決に決着はつきそうになかった。
「あの時、突っ込んでくると思っていたが、完全にカウンター狙いだっただろ!」
「そうだよ! そもそもこんな重武装だと、考えなしに突っ込んでも疲れるだけだし!」
「そうだろうとは思った!」
「でも、最初に剣を盾にしたからって、剣を狙ってくるのはずるいでしょ!」
「あれは正直言って感嘆したぞ! 一発で使い物にならなくしてやろうと思っていたのに、うまく衝撃をいなされて今でも現役だからな!」
もはや、手足をどうにか動かしながら口喧嘩をしているだけにしか見えないその様子は、はたから見たら滑稽極まりないが、本人たちは至って真面目である。
それは、未だ相手の事を好敵手として見ているからだろうか。
―――はたまた、こういった相手が今までいなかったからだろうか。
そもそも、二人にとって手合いは練習、訓練、腕試しといったものではない。
如何に相手の攻撃をいなし、相手を行動不能にさせられるか実践し確かめる・・・。
つまるところ、それは実戦と何一つ変わらなかった。
しかしその手合いは、『無事に遺品を親族の元へ届ける』任務を完遂するため、二人にとって必要としているもの。
誰かを守るための力を、自分たちを守るための力として扱うために、二人は毎日のように手合いをしているのだ。
そしてこの習慣は、二人が旅を始めるよりも前・・・それこそ、戦争の真っただ中から行っているものだった。
『鍛錬を常に欠かさないこと』
彼らの恩人はそう言って二人を良く叱っていた。
そんな二人の事情を知り、救ってくれたその人はもういない。
もっと力があったら守れたかもしれない。もっと知恵があれば救えたかもしれない。
彼らが力を求めるその根底には、未だその思いが燻っているのだ。
自分自身を守るために・・・なんてことを言い訳にしているが、今、彼らが毎日のように手合いをしている理由の大半は、これのせいだといっても過言ではないだろう。
・・・だが、どれほど努力しようが、結局はそんなifを叶えることなんて出来ない。
過ぎた事実を変革することなんて、到底不可能だ。
だからこそ、彼らは旅を続け、任務を遂行しようとする。
それが、自分たちができる最後の仕事だとそう決めたのだから。