Wrap up the lord of knight 作:影斗朔
「とりあえず、戦闘に関してはこれぐらいか・・・」
「そしたら、次は普段の事かな」
「そうだな、どちらかというとこちらが重要だろう」
(凄く小言を言いたそうな顔してる・・・)
不敵な笑みを浮かべ始めたライトを見て、バリューはそう思わざるを得なかった。
「じゃあ、えっと、ライトは・・・」
「とりあえずバリューは売られた喧嘩をすぐに買うことを止めろ」
「ちょっと! 私が先に言おうとしたのに、口を挟まないでよ!」
「・・・そういう短気なところを直せって言っているんだ」
「むう・・・」
色々と言われそうだったので、先手を取って喋りだそうとしたバリューだったが、ライトに敢え無く遮られてしまった。
「あとバリューはおおざっぱだから不器用さが目立つ。それに強情なところは少し変えるべきだと思う。あとは・・・世間知らずなところがあるぐらいか。これはどうしようもないだろうけれど・・・ってどうした?」
「急に酷くない!? さっきから悪口を言われているとしか思えないんだけど!」
「欠点っていうのは自分以外から見た方が正確だ。それに、嘘は言っていないぞ?」
「ぐぬぬ・・・」
悪びれもしない生真面目な表情で言ってくるものだから、バリューの神経は逆なでされていく。
・・・とはいえ、ライトが言っていることが間違っているわけではないので、なおさらバリューは何も言い出せなかった。
「だから、バリューはそれ以外のところで頑張ってもらいたい」
「・・・えっ?」
「そうだな・・・。例えば、天候や環境の変化。これは俺じゃ判断できないことの方が多い。それに仕事も俺がやるよりはバリューがやった方が・・・ってどうかしたか」
「ううん! 何でもないよ!」
人の悪いところばかり言っているかと思ったら、それ以外でバリューができそうなところを提案してくるあたり、やはりライトは悪口しか言わない奴ではない。
・・・ただ、言い方はだいぶ直接的ではある。
(そんなにビシバシ言ってくる必要はないと思うんだけどなぁ・・・)
確かに自分だとわからない欠点もあるだろうと、バリューも思っている。
だが、先ほどライトから言われたことは自分でも把握していたし、気を付けようと思っていたところでもあった。
言われなくてもわかってる! と言い返したくはあったが、それに対しての改善策を考えていないあたり、そんなことは言えないなぁとバリューは反省する。
「・・・あとは、それだ」
「それ? 私、何かやったっけ?」
「言い返したいことがあるなら言えばいいのに、すぐ黙り込むだろ」
「それは・・・」
その原因として思い当たる節を、バリューはちゃんと理解している。
でも、
バリューにとって、そうなるのはとても嫌だった。
(だからこれは、私一人だけ知っていればいい)
そうやって、バリューはいつも蓋をするのだ。
「とにかく、何でも背負い込もうとすることはバリューの欠点だ。何かあったら俺を頼ればいい、一人で旅をしているわけじゃないだろ」
「うん・・・。そう、だね」
「・・・わかってくれたならそれでいい。とりあえず、バリューはできる範囲のことをやってくれ。あとは俺ができるだけやる」
「できるだけ・・・ねぇ」
「・・・どうした?」
ついさっきまでしおらしくなっていたバリューが、急に不満げな声を出したのでライトは戸惑う。
「ライトってよく、細かいことを気にするよね?」
「それがどうかしたか?」
「どうもこうもないから!」
唐突に言葉を荒げるバリューに、ライトは思わずたじろぎ、後ろに仰け反った。
どうやら思いがけないアクシデントに弱いのは、戦闘だけでなくどのような状況であってものようである。
「いやいや、細かいことは悪くないと思うんだが・・・」
「悪いよ! 私がおおざっぱなのは認めるけど、ライトは細かすぎなの!」
「そ、そうか?」
「そうだよ! ・・・いつでもそんなに気を張り詰めていると疲れるでしょ」
「・・・確かにそうだな、反省する」
「他にもあるよ」
「・・・まあ、一つだけじゃない、よな」
ついひるんでしまったライトは、観念したかのように溜息を吐いて姿勢を正した。
「考え事に集中して周りが見えてない時があったり、私が知らないところで無茶している時もあったでしょ。強情なのはライトだってそうだし、嘘も下手くそだよね」
「三つは認めるが、最後は納得いかないなぁ・・・」
一度会話のペースを掴んだバリューは、ここぞとばかりにライトへと文句を告げていくが、ライトも小声ながら反論する。
「いつも吐いてないって言ってるけど、いつも嘘吐いているってバレてるんだから、下手くそだと認めるしかないんじゃない?」
「・・・バリューよりは上手だと思うけどな」
「それは絶対にないから」
「そうか・・・?」
俺が私がと口論になり始めたところで、笑いながらもライトは考える。
もし、ライトが本当に嘘をつくのが下手だとしたら・・・。
人生の半分以上を偽って生きてきたライトにとって、それは自分の全てを明かしながら生きてきたことと変わりない。
・・・だが、バリューはライトがつき続けている嘘にまだ気づいていない。
それに安心してしまっていることこそが、ライトの最大の欠点だった。
嘘がばれてしまったら、きっとこの旅を続けることができなくなる。それどころか、周りに多大なる迷惑をかけるだろうし、ひと時も与えられずに何者かによって殺されることだろう。
言わずもがな、バリューにも飛び火するに違いない。
それならば、俺が俺であることを偽り続けるべきだとライトは思っている。
この世界に自分の居場所なんて、とうの昔に無いのだから。
(それが、俺が生きていく唯一の方法だ)
そうやって、自分にも嘘をつきながらライトは今日まで生きてきた。
「・・・何か言った?」
「いいや、何も?」
「これも、さっきライトに言われたことを返すけれど―――隠し事は無しだよ。一人で旅しているんじゃなくて、私と一緒に旅をしているんだから」
「・・・ああ、わかっている」
ここまでバリューに気遣いされると、ライトは本気で反省せざるを得なかった。
かといってあまりにも他人に関わるのは良くないともいえる。
だが、ライトはバリューの欠点として、誰に対しても優しすぎるということを言わなかった。
戦闘中にも関わらず自分以外に気を配り、当時敵であったライトにすら慈愛の手を差し伸べるほど、バリューは周りの事ばかりしか見ていなかった。
それは欠点であるかもしれないが、それを否定してしまったらバリューの個性を否定していることと何ら変わりない。
それに、その優しさのおかげで救われた人も多くいる。
―――ライトだって、そのうちの一人なのだから。
「それにしても、反撃戦法を取っていたバリューがあんな技を使うとは、全く思わなかった」
「そうでしょ!? 私だって、いつもと同じ戦い方じゃダメだって思っていたんだから!」
嘘がばれるというなら話をすり替えるのはどうだとライトが話題を替えると、バリューは何事もなかったかのように話に乗ってきた。
それが、本当に話に乗って来たのか、俺の事を思いやって話に乗ったのか・・・物知りを自称するライトでもそれだけはわからなかった。
「そういえば、二人ともダメなところって話してなかったけど・・・」
「俺達の欠点か・・・まあ、お互い心配性なところは直すべきだな」
「それはそうだね・・・」
幾度となく危険な状況に置かれているせいでもあるが、おそらく、騎士であった時間が長かった事が原因だろう。
二人ともどちらかが怪我をすると、
「あとは俺がやるからお前は休んでろ」
「怪我をしているんだから安静にしてて」
「調子が悪いのに無茶するな」
「何時も無理しているんだからここは私がやるから」
等々・・・。
何かがあれば、互いに相手の代わりを務めようとしていた。
それだけならまだいいのだが、どちらも張り切りすぎる節があるので、休んでいる法よりも怪我をしたり調子が悪くなっていたりする。
それは、あまりにもよろしくない。
「何事も適度が一番だってことだよね」
「そういう事だ」
「・・・そしたら、二人ともどうしようもないときは?」
「ああ、それなんだが・・・どうしようもないときは試行錯誤する。ダメだったら諦める」
「え、諦めるの?」
「ああ、いつまでもその問題ばかりに目を向けていたら、他の事に目を向けられないからな」
「確かに・・・」
諦めるといったライトに驚いたバリューだったが、その理由を聞いて納得する。
それに、ライトの話には続きがあった。
「だからと言って何もしないわけでもない」
「まあ、そうだよね」
「そのようなことにならないように、常に新しいこと、既に知っている事の応用を学び続ける」
「あ、そうか。問題を解決するために前もって勉強すればいいよね。それじゃあ、ガンバレ!」
「何言ってんだバリュー、お前もだぞ?」
「えぇ、私も・・・?」
「当然だ。俺が居ない時とか役に立たない時はお前だけが頼りなんだから」
「そう言われてしまうとそうだね・・・。うん、勉強は苦手だけど頑張る・・・」
呆れたようにライトが語ると、当たり前のようにライトを頼ろうとしたバリューは、肩を落としながらもその意見に納得する。
・・・そんな意見交換も、気づけば手合いをしていたほどと同じぐらいに時間が経過し、太陽も相当に傾いていた。
「さて、いい加減に日も暮れるだろう。ここに居座り続けるのもあまり良くないな」
「じゃあ、そろそろ出発する? もうひと歩きするぐらいならできると思うけど」
「・・・と、その前に、やることがあったな」
「やること?」
「これの後始末だ。やはり放置していくのが一番だと思うが、バリューはどうだ?」
「うーん・・・。それが一番かなぁ」
それでは、改めて振り返ってみよう。
ここはだだっ広い草原で、獣の気配はなく、人の手が加えられた形跡もない。
それでは、二人はどうして急に、それぞれの役割や能力について話し合う必要があったのか。
なぜ、ライトがこれ以上にいい機会はないと言ったのか。
答えは、二人の目の前。仰向けに寝そべり目を回している、四本の腕を持つ小綺麗な盗賊達の言葉が原因だった。
彼らは何処かの名も無い民族で戦闘に優れている種族だとか、その民族の王族で最も強いだとか、果てには束になれば竜をも落とすのだと誇大表現をした後に、有り金を置いて行けと脅しをかけてきた。
相変わらず喧嘩を買ったバリューのせいで、やむを得ず戦闘をする羽目になったのだが・・・その結果がこれである。
二人は少しも苦労することなく三人を気絶させた・・・というよりは、三人が振り回していたこん棒が、そのまま味方に当たって昏倒しただけだった。
ただ自爆してしまっただけの三人組を見たライトは閉口し、バリューは自分たちがこうなっていないかと不安になってしまうほど、あっけない戦いだった。
そのようなことがあったせいで、手合いをしたり話し合ったりすることになったわけだが・・・。
「結局、この人たちは一体何を言いたかったのかな?」
「自身の技量を相手に教えることで、相手から戦意を喪失させようとしたんじゃないか? 俺達以外が聞いても多分どうってことなかっただろうけどな」
「ん? それってつまり?」
「そうだな、要するに・・・ただの自慢だ」
「あぁ、納得した。・・・バカだなぁ」
バリューは憐れみを向けるような表情で、倒れている三人組へとポツリと呟く。
「あ、そうだ」
「どうかしたか?」
「この人たちがどんな種族か分からない私でも、これだけは言えるよ」
「・・・ん?」
「何物であっても過度な自信、自尊心、怠慢、慢心はダメ。絶対に」
「・・・ああ、そうだな」
「・・・? ちゃんと聞いてる?」
バリューは急に辺りを見渡し始めるライトへ、訝しげに問いかける。
「聞いているが・・・おかしいとは思わないか?」
「何が?」
「この草原は危険な獣も、人の手が加えられた形跡もないだろ?」
「うん、それはさっきからずっとそうだよね」
現に、そこで伸びている三人組以外の生物の姿を見ていない。
肉食獣がいるなら襲い掛かってきていてもおかしくなく、羽虫がいるなら先ほどまでの手合いの最中に飛び出してきていただろう。
「俺もついさっきまで気付かなかったけど、本来、この二つの状態が一致することはないはずだ」
「え、そうなの?」
「人の手が加えられているなら獣や虫がいないことはまだわかる。そしてその逆もそうだ。だが、両方とも存在しないということは、
「・・・それって、マズいんじゃないの?」
「非常に不味い。呪われた土地か、毒草地、もしくは危険生物の温床か・・・どちらにしろ、碌な場所じゃないだろうな」
焦りが見えるライトの表情を汲み取ったのか、バリューの顔も青ざめていく。
「とりあえず、急いでこの草原から抜け出すぞ!」
「で、でも、この人たちはどうするの!?」
「やむをえないが置いていく! 何があるかわからないのに、他人に気を使っている余裕なんてないだろ!」
「―――そう、だね。正直置いて行きたくないけれど、こんな所で手痛い怪我を負ってしまうわけにいかないもんね・・・」
茜色に染まりつつある空に照らされていた二人は慌てて身の回りを整え、ついさっきまで手合いをしていた疲れを見せない走りでその場を後にした。
その後ろ姿を、三つの視線がじっと見つめていた。
今晩は。左之亜里須です。
話し合いをしようと
未だお互いに秘密を隠したままみたいです。
誰だって他人に話せない隠し事の一つや二つはあるでしょう。
ですが、その秘密で自分が悩んでいる時、誰からも助けを得ることは出来ません。
何せ、誰も知らないのですから。
だからこそ、悩みを打ち明け、じっくりと話し合う必要がでてくるのです。
秘密を隠し続けている二人も、いつかは打ち明けられるのでしょうか。
この話は次回で終わりになります。
この物語でステータスといった個人能力について、読者様が少しでも思うことが出来ましたら嬉しい限りです。
次回もまた見て頂いたら嬉しいです。
それでは、より良い日々を・・・。
ちなみに、続編はまだ書き終えていません。
遅筆であることはわかっているのですが、どうしても筆が進まなくて・・・。
何かしらコツとかないんでしょうかね?