魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
コンピュータルームにて再び作業を開始した超とハカセ、するとハカセは手元のパソコンに映し出されたページに驚きの声を上げた。
「ちょっ・・・超さん!今ネット上の書き込みが・・・・」
「誰かが話題の火消しでもやっているのカ?そういえば千雨さんが色々動いていたようだがまあ心配ないネ?」
それは自分のプログラムに絶対の自信を持っているからこその言葉だった。
今更千雨がパソコンをどうしようと己の超科学と魔法技術に影響はないと確信していたからである。しかし・・・
「その・・・・それがシモンさんの試合について話題が『魔法』から『気合』に変わっているんです・・・・・・」
「なにっ!?」
「その・・・シモンさんとヨーコさんの試合は本当に魔法じゃありませんし、大声を張り上げながら力を解放して戦ったお二人の姿に、同じ抽象的な言葉で『魔法』より『気合』という言葉にむしろ納得してしまっている人が多いようです・・・・」
「むむむむ・・・話題を消すことよりも話題のすり替えにしたか・・・・意外とこれはうまい手ネ・・・・賛成、否定より別の力としてとらえる・・・・とすると『魔法』というファンタジーな言葉よりも『気合』に心惹かれるものも多い・・・特にシモンさんの映像を見る限りそのほうが納得しやすい・・・」
少し予想外の事態に超は何かを考えているようだった。
しかしこの程度の問題はさほど魔法を広めることに影響はないはずだとハカセは思っている。
だが超は妙な引っ掛かりを感じているようだった。
それは「気合」という単語の発生源だった。
一体誰がこの言葉を広めたのかだった。
だが犯人は直ぐに思い浮かんだ。どう考えてもシモンしか思いつかなかった。
それはつまり徐々に自分たちの戦いが始まってきていることを意味していた。
そのことに気づき徐々に心臓の音が高鳴る。
超は言い知れぬゾクゾクした感覚に思わず口元に笑みを浮かべた。
「だが心配要らないネ、今行われているクウネル・サンダースと村上小太郎の試合は再び魔法で納得するものが多くなるような戦いネ」
超はモニターで映し出されている小太郎とクウネルの攻防に目を移す。
それは犬が手から出たり、分身したりする小太郎。攻撃をくらってもものともしないクウネルの常識外の戦いが繰り広げられていた。
戦局はクウネルが圧倒的であるが、小太郎の戦いも話題を盛り上げるのに充分だった。
「たしかに魔法派が盛り返してきてます・・・・・・」
『村上選手気絶!!クウネル選手勝利ーーー!!』
終わってみればクウネルの圧勝だった。
別カメラに映し出されるネギたちは驚きの表情を浮かべている。
超もクウネルの目的はよく分からないが、再び自分が優位に立ったことが分かった。
そして別のカメラに映し出されるシモン。そしてその隣でパソコンを操作している千雨の姿を捉えた。その様子に再び笑みを浮かべた。
「さあ・・・どうするシモンさん?」
超はシモンの次の手に注目する。
リング上で気を失っている小太郎に、ネギの生徒の数名が駆け寄っている。
その様子をシモンは観客席から額に汗を流しながら見ていた。
「小太郎があんなに簡単に・・・・・・・・・あれがクウネルさんか・・・・」
正直クウネルの桁外れの力に驚いていた。
小太郎の攻撃は自分の目から見ても強力だったが、クウネルになんの効果もなかった。
あれがこの世界の英雄の仲間の力なのだと思い、少し鳥肌が立った。
「宇宙は広いな・・・・・・・本当に・・・・・」
素直に賞賛の言葉が出た。それほど自分にとってもクウネルの力を底知れないと感じた。
するとシモンのそんな様子とは別にパソコンを操作していた千雨の表情がまた変わった。
「おいおい、今のトンデモバトルにまた魔法派が盛り返してやがる・・・どうします?・・・」
一時は盛り上がりを見せた気合も、ネットで打ち出される巧みな言葉に誘導され、再び魔法が盛り上がり始めた。
もっとも最初からこの程度でうまくいくはずもないことはシモンも予想していた。
あくまで今のは反撃の狼煙にすぎず、本当の勝負はこれからである。
今の小太郎とクウネルの戦い、これで再び魔法派が盛り上がり始めている。
どうやらリアルタイムで多くのものが映像を見て意見を交わしているようだ。
だとしたら次に反撃の手が再び訪れる。
「大丈夫!次の試合はネギだけど対戦相手は美空だ。そしてその次は俺だ。それしだいでまた気合派が復活するさ!それにこの行動は単に気合を普及するためだけじゃない」
シモンの頭の中には別の作戦も思いついていた。
しかしその作戦を実行するにはまだ早いと思っていた。
今はまず気合と自分たちの存在をアピールすることに専念した。
すると千雨は美空の名前に反応して、シモンを少しジト目で睨む。
「・・・・一回戦見てて思ったんですが・・・・春日の奴も魔法使いなのか?アイツだけは私と同じ常識の中で生きる女だと信じていたんだが・・・」
お互い超人クラスの中では影の薄い存在であり、あまり話したことはないが、美空の存在は千雨にとっては日常を感じさせる貴重な存在だった。
しかし一回戦での大立ち回りでその想いが粉々に打ち壊された。
「Yesでもあるが、それだけじゃない。アイツを突き動かすのは『魔力』だけじゃなく『気合』だからな・・・・。シャークティに伝言でも頼んでおくか・・・」
「・・・・どっちにしろ非常識って奴かよ・・くそっ・・・・どうなってやがる・・・・」
もはや本物の常識とは何なのか?千雨の頭の中はその疑問でいっぱいだった。
シモンは現状報告と美空への伝言を込めてシャークティに連絡を取り始めた。
「小太郎君が・・・・・・そんな・・・・・」
決勝で会おうと約束した小太郎が負けたことにネギはショックを隠せないでいた。
本当はすぐにでも声をかけに行きたかったがアスナたちに小太郎の気持ちを察しろと言われて、ネギは黙っていた。
しかしそれでもネギは小太郎が心配だった。すると楓がネギの前に現れた。
「まあ、ネギ坊主、ここは拙者にまかせるでござるよ、小太郎とは拙者が話をしてくるでござる。ネギ坊主は次の試合に集中するでござる」
「でも・・・・僕も・・・・・」
楓の提案だったがそれでもネギにどこか迷いがあった。
「ふん、人の心配するとは随分余裕があるではないか、ぼーや」
「マスター・・・・・」
「そのままでは足元をすくわれるぞ?言いたくはないが春日美空は油断しなくても中々のものだぞ?」
エヴァの言葉を聞いてネギもハッとした。
そう、ネギの次の対戦相手はアスナを倒し、その才能を開花させた美空なのである。
迷いのあるまま戦って勝てる相手ではなかった。
「そうよネギ!負けたから言うわけでもないけど、美空ちゃんは強いわよ!」
「ええ、私の目から見てもそう思います。ネギ先生は自分のことに集中すべきです」
「アスナさん・・・刹那さん・・・・・わかりました。僕も今は美空さんだけを見ます!!」
「「「「えっ?」」」」
ネギは深い意味を込めて言ったわけではないが、あまりにもネギが真剣だったため少し顔を赤くしてしまう一同。
やはりまだまだアスナたちも子供であった。
そんな様子を少し離れてみる美空。
正直ネギが油断したままなら、ありがたかったがそうも行かないようである。
やるしかないなと思い、準備運動を少し始めた。
するとその後ろで先程から携帯でシモンと話をしているシャークティがようやく会話を終わらせた。
「兄貴、なんて?」
「どうやらこの大会がネットで公開されて相当話題になっているそうです・・・・」
「えっ?」
「魔法という単語を惜しみなく使い、話題が広がっているそうです・・・・・超鈴音の仕業ですね・・・」
おそらく学園関係者はまだこの程度では動かないかもしれない。
報告したいがシモンとの約束もあり、自分はグレン団として行動することを決めているためにそれが出来ない。
超の計画を最初から知っている彼女にとって、学園側の対応が少し疎かのような感じがしてきた。
もっとも知っていながら彼女も報告しないわけなのでなんとも言えなかった。
昔の彼女ならすぐに報告していただろうが、少し柔軟になったことが自分でも自覚してきた。
だからこの場は学園側へ報告するよりもシモンの案に載ることにした。
「今シモンさんが『気合』を普及して『魔法』を乗っ取ろうとしているようです」
「はあ!?」
「そこで美空・・・・アナタは魔法使いの見習いですが、魔力を使ってもいいが気合で戦えとのシモンさんからの伝言です」
「へ~・・・珍しい・・・兄貴が命令するなんて・・・・」
「命令ではなく提案だそうです」
その言葉に美空はニヤリと笑みを浮かべる。そして力強い言葉で、
「だったら乗ったぁ!!」
そう、想いを込めて叫んだ。
『続いての試合を開始します!春日美空選手、ネギ・スプリングフィールド選手!リングまでお越しください!!』
そして、勝負の時はきた。
「さあて・・・・それじゃあ気合入れていきますか!」
「美空、がんばりなさい」
「美空、ガンバレ」
美空はポキポキと関節を鳴らし、自信に満ち溢れた表情で歩き出した。
もうここにはいつものメンドくさがりで臆病だった美空は居ない。
たった一度の勝利で才能と自信を手にした彼女の姿は実に堂々としている。
たとえ英雄の息子が相手であろうと今の彼女は臆したりなどしない。
そんな彼女の後姿を見ながらシャークティは口を開く。
「美空・・・」
「はい?」
「背中のマーク・・・・とてもお似合いですよ・・」
その言葉を聞いて美空は「ニッヒッヒッ」と子供の笑みを浮かべてうれしそうに笑った。
彼女の背中のグレン団のマークは実に強く、堂々としていた。