間違いながらそれでも俺は戦車に乗るのだろう。   作:@ぽちタマ@

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アリサの理由

 大洗の試合のあと、サンダースのミーティング室で隊長の反省会という名のお説教があった。

 

 隊長は普段はそれこそ、とんでもないぐらいにフリーダムで、何があっても大抵のことは許してくれるのだが。一度でもフェアプレーから外れようものなら、普段の温厚さと相まって怒るとめっちゃ怖いのよ。

 

 うぅ……、こうなるってわかってたのに。でも仕方がないのよ!だって!

 

「ねぇアリサ、なんで無線傍受機なんて使ったの?さすがにあれはやり過ぎだと思うんだけど」

 

「え…、えっと……、それは……」

 

「なに?いえないことなの?」

 

 隊長の顔が険しくなる。べ、別に、やましいことがあるんじゃないんです!

 

「そ、その……笑いませんか?」

 

「ん?大丈夫!問題ナッシングよ!」

 

 ほ、本当かなぁ。

 

「大洗のやつが偵察に来てたじゃないですか?」

 

「オットボール三等軍曹?それがなにか関係あるの?」

 

 関係があるかなんてもんじゃないですよ!あいつは…いや、あいつらは……!

 

「偵察に来たのはいいんですよ!いや、よくはないですけど……。あいつらと来たらお姫様抱っこなんて見せつけてきて!私は…私は、タカシと上手くいってないのに!」

 

「え?もしかしてそれが理由なの?」

 

「……はい」

 

 だって羨ましかったの!妬ましかったの!お姫様抱っこよ!?私だってタカシにされたこともなかったのに!!

 

 だから大洗を完膚なきまでにやっつけようと無線傍受機を使った。仲間に止められもしたが、あの時の私は冷静じゃなかった。ただただけちょんけちょんにすることしか考えてなかった。

 

 結局、そのせいで負けてしまったし。

 

「次の出会いがあるよ」

 

 落ち込んでいる私にナオミさんが肩を叩いて励ましてくれる。

 

 ナ、ナオミさん!

 

 私は心のなかで泣いた。だってイケメンすぎなのだ。クールビューティーなのにやさしいだなんて反則すぎる。

 

「たしかにあなたの理由はわかったわ、アリサ」

 

「……隊長」

 

「今回の試合についてはこれ以上なにも言わないわ。オーケー?」

 

「はい…すみませんでした」

 

「うん!わかればよろしい」

 

 さっきも言ったが無線傍受機を使ったのは、私のごくごく個人的な理由だけど。それでもあんなことになるとは思ってなかった。

 大体おかしくない?たしかに私は無線傍受をした。だけど、相手も相手で、あの対応の速さはおかしすぎるわ。実際、どの段階から気づいたのかしら?まさか序盤から?いやいやそんなまさか。

 

「ねえ、アリサ?」

 

「は、はい!?」

 

「搦め手ってどう思う?」

 

 隊長にしては珍しい質問だ。この人は基本的にそういうことをやろうとしない。いや、やらないというよりは正攻法が好きで好きでしょうがないといった感じだ。

 

 本当にどうしたんだろうか?

 

「どうしたんですか?急に」

 

「う~ん、そういうのもありなのかなーって思っちゃって……」

 

「え!?」

 

 これには私以外のみんなも驚いている。な、なにが隊長にあったというの!?これは緊急事態よ!早急にどうにかしないと!

 

「な、なにがあったんですか!?」

 

「え?なにって…ハッチーにきれいにハメられちゃったじゃない?」

 

 は、ハメられたって……。それは相手の作戦という意味ですよね!?あっちの意味じゃないですよね!?隊長だからそういうことじゃないってわかりますけど。主語を入れてください主語を!一年生のちょっとおませな子たちが隊長の発言で顔を赤くしてしまっていますよ!

 

「…相手の作戦って意味ですよね?」

 

 私は恐る恐る隊長に聞く。

 

「ん?それ以外の意味ってあるの?」

 

 私の質問に隊長はキョトンとしている。こういうところも隊長らしいというかなんというか。

 

 うん、ですよねー。そうですよねー。よかった本当によかった。心なしかみんなホッとしてるように見える。グッジョブ私!

 

「いえ、気にしないでください」

 

「そう?それで話を戻すんだけど。あそこまできれいにやられるとむしろ清々しい気持ちになっちゃってね。ああいう心理戦?情報戦?ていうのかな、そういうのもありなのかなぁって思ったわけなんだけど」

 

「そうですね。私のファイヤフライもああされてしまうと意味がなくなりますし」

 

「あれは比企谷が特殊なだけなような……。普通はあそこまでうまくいかないと思いますし、実力だけでいえばこちらが普通に勝ってましたよ」

 

 そう、いくら無線傍受をされているとわかっても、あそこまでこちらを一方的に追い込むことなんてできないと思う。というかあいつ異常すぎよ!どこまでがあいつの思惑通りだったのかわからないけど、できるならもう戦いたくないわね。

 

「普通なら…ね。でも私たちは負けたのよねー。ハッチー、またうちの学校に来てくれないかしら?」

 

「隊長、前から思ってたんですけど、あいつのどこがそんなに気に入っているんですか?言っちゃなんですけど、お世辞にもカッコいいとも思えないですし」

 

 いや、顔は悪くないんじゃないかしら?でもいかんせん、あの目つきの悪さですべてを台無しにしてしまっている気がする。

 

「うーん…ハッチーはね、とにかくおもしろいわ!」

 

 そういえば隊長の笑いの沸点は異常なほどに低い。

 

「おもしろいって…なにかあいつとあったんですか?」

 

「この前、うちの学校に見学に来てたじゃない?」

 

「たしか隊長が案内してたんでしたっけ」

 

「そうそう、その時にうちの戦車倉庫とか案内してたんだけどね」

 

 なんで大洗のやつってわかっててこの人は案内しちゃうかな。隊長も一回戦の相手だってわかってたはずなのに、男だから関係ないと思ったんだろうか?いや、どうだろう。わかってても結果が変わらないような気がするのはなぜかしら。

 

「戦車を見ながらこうつぶやいてたのよ、履帯に細工できないかとか、砲弾を不発弾にできないものかとか、面白いわよねハッチー。普通そういうこと考えないじゃない?」

 

 いやいやいや!面白くないですよ!まず第一に、妨害工作以外のなにものでもないですからそれ!なんで普通に笑ってるんですか隊長!

 

「普通は誰もそんなことはしませんよ……」

 

「まぁさすがに私もそれはとめたわ、各車両は試合前にはいつも点検してるからやってもムダになるって」

 

 隊長、注意するところが違いますよ?そこは妨害工作を考えているところを咎める場面ですよね!?無駄になるからやめときなさいって、なんで相手を思いやってるんですか!

 

「そしたらハッチー、そうですかってシュンとなっちゃってね?ちょっとその顔が可愛かったわ」

 

 なんか惚気られてる気分になってきた……ん?というか?

 

「隊長、ひとついいですか?」

 

「なに?」

 

「あいつのことが好きなんですか?」

 

「ハッチーのこと?もちろん好きよ?」

 

「いえ、人間的としてではなく、恋愛的な意味でですよ?」

 

「それって、手をつないだりとかデートしたりしたいってこと?」

 

 隊長の中での恋人関係ってそんな感じなんですね。

 

「まぁ、そんな感じです」

 

「そうね、私は――――」

 

 

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