間違いながらそれでも俺は戦車に乗るのだろう。   作:@ぽちタマ@

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雪原の戦い、比企谷 八幡の思惑

 俺たち大洗戦車道一行は短期決戦と行くべく、集団となって相手を探しながら現在前進中。

 たぶんだが、このことは相手も気づいているだろう。いくらなんでも偵察の一つもよこさないはずがない。こちらの行動は筒抜けなはずだ。

 そして道中、カモチームが慣れない雪で運転トラブルを起こしたり、雪で塞がってる道を榴弾で吹き飛ばしたりなどがあったが、それ以外は特段問題はなく俺たちはさらに進軍を続けるのだった。

 そして……。

 

『11時に敵戦車、各車警戒!』

 

 西住からの通信が入る。

 ついに相手の戦車が見つかったか。さて、プラウダ校はどうやって俺たちをけちょんけちょんにするのか、お手並み拝見だな。

 

 

 ====

 

 

 扇状に大洗の戦車が広がっていく、それに従い相手の車両も砲撃を始める。

 だが、相手の戦車はこの距離では届かないと分かっていて砲撃をしているようにも見える。自分たちの位置を教えるかのように砲撃している相手へ、そのままⅢ突が長砲身を活かし相手を撃破。

 続いてⅣ号も長砲身になったことを活かし相手を撃破する。

 ここまでは順調だ。逆に言うと順調すぎる。相手は去年の優勝校だぞ? いくらなんでも配置が雑だろ。こんなのただ撃ってくだいと言わんばかりに戦車が配置されているし、射程外なのにばかすこ撃ってきたのにも説明がつかない。弾の無駄使いでしかない。

 そして三両中、二両撃破をし、残っていた一両がわざわざこちらに牽制して逃げていくのだった。まるでこっちについてきてもらわないと困るようなそぶりで。

 ……なるほどな、そういう感じか。

 

『全車両前進! 追撃します!』

 

 俺たちはその指示に従い、相手を追いかけるために前進する。

 一両を全車両で追いかける。はた目から見ればこちらが優勢に見えるかもしれない。だが実際にはどうなんだろうな。本当の意味で追い詰められているのは相手かこちらか。

 俺の考えが正しければ……。

 追いかけ続けるとその進行方向の先には五両の車両、そしてその一両がフラッグ車ときた。

 これまたなんとも露骨だな。さっきのあれでこれときたらこれはもう確定だろ。

 俺は西住にだけ、無線を繋げる。

 

「西住」

 

『どうしたの?』

 

「今から起こることを黙ってみていてくれ」

 

『え、それはどういう……』

 

「とりあえず今は俺の指示にしたがってくれ、頼む」

 

『う、うん。わかった』

 

 西住には先に釘を指しておいた。これでもし、あいつらが行動を起こしても止めるやつはいなくなる。

 そして相手との砲撃戦に入り、相手の戦車を一両またこちらが撃破する。だがそれだけで相手はそれ以上の抵抗はせず、残った四両はあっさりと撤退するのだった。

 もう十分に撒餌はばらまいたってことか。

 その撒餌につられるように、大洗の面々は一両、また一両と相手の戦車を追いかける。

 

『は、八幡くん!』

 

「西住、たぶんここから先は待ち伏せされてると思う」

 

『……やっぱり、これはそういうことなの?』

 

「あぁ」

 

『でも、それだとみんながやられちゃうんじゃ……!』

 

 そう、このままだと俺たちはそのまま負けてしまう可能性がある。だが、相手は一気にこっちを撃破せずにじわじわと追い詰めてくるだろう。俺にはその確信がある。

 

「気を引き締めろ、西住」

 

『え?』

 

「ここを乗り越えるぞ」

 

『でも、どうやって?』

 

「西住は先にあいつらを追いかけてくれ」

 

『八幡くんは?』

 

「頃合いを見てあいつらを助けるチャンスを作る」

 

 たぶん、カチューシャは今頃ほくそ笑んでいるのだろう。もしくは大爆笑していると思う。だが、手のひらで踊っているのは果たしてどっちだろうな? 俺はこの状況になることをむしろ望んでいたのだ。

 さぁ、思う存分にけちょんけちょんにしてもらおうか。

 

 

 ====

 

 

 雪に覆われた民家や教会が並んでいる市街地で、カモ、アヒル、カメ、ウサギ、カバチームがフラッグ車に目がけ、ひたすらに砲撃をしている。

 そこにⅣ号が合流する。

 たぶん、こう思っているのだろう。当てさえすれば、フラッグ車を撃破すれば、こちらの勝ちだと。だが、ならなぜ逆のことを考えないのだろうか。こちらが相手を狙っているということは、逆にこちらも相手に狙われているということに。

 俺の考えと連動するように、民家や林から次々と相手の戦車が出てくる。

 やっぱり、そう来るんだな。

 

『東に移動してください !急いで!』

 

 西住が相手の動きに気付き、指示を出す。

 だがそれも相手の用意したルートだったのだろう。すぐにその退路も塞がれる。

 

『南南西に方向転換!』

 

 そしてそちらも相手の戦車が出てきて塞がれる。

 西住たちは完全に囲まれてしまった。

 四方八方から相手の砲弾の雨が次々と降り注ぐ。だがやはり、本気で倒す気はないのだろう。あえてウィークポイントを外して攻撃してるようにも見える。

 カチューシャにとってこの集中砲火に意味はなく、相手をじわじわとなぶりたいだけなのだと思う。

 俺は戦車に取り付けて貰った発火装置を起動させる。そして俺の戦車が故障したかのように煙を上げ、それと同時にエンジンを加速させそのまま包囲網に突っ込む。

 

『は、八幡くん!?』

 

「西住! 今のうちに南西の建物に向かえ!」

 

『で、でも!』

 

「ここは俺に任せて、あいつらを避難させろ!」

 

『……っ! わかった! 全車、南西の大きな建物へと向かってください! あそこに立てこもります!』

 

 とりあえず、俺のこれで少しは時間稼ぎはできるはずだ。雪とこの硝煙筒の煙で相手は視界が悪くなって見えにくくなってるから、運が悪くない限りは当たらないはず。それに俺の戦車は通常以上に速度が出るようになっているからな、この視界の悪さで当てれるものなら当ててみろ。

 そうこうして俺が撹乱をしていると、俺以外はどうやら建物の中に入ったようだな。

 さらにギアを一段階上げ、俺もその建物へと砲弾の雨を潜り抜けながら行くのだった。正直、当たると一瞬にして今の俺の戦車は大破するので気が気じゃなかったが。とりあえず、なんとかなったな。

 砲撃は俺たちが立てこもったあとでも続き、この建物が壊れるまで続くと思ったが、それがふとやむのだった。

 その代わりに現れたのが、白旗を持ったプラウダの生徒二人。

 そして俺たちに告げる。

 

「カチューシャ隊長の伝令をもってまいりました」

 

 俺たちは戦車を降り、相手の話を聞けるように集まる。

 

「降伏しなさい。全員土下座すれば許してやる……、だそうです」

 

 相手のプラウダの生徒は淡々とただただそう俺たちに伝えるのだった。

 

「あ……、」

 

「なんだと!?」

 

「隊長は心が広いので三時間は待ってやる、とのことです。では」

 

 そう言って、軽くお辞儀をして自軍へと去っていく。

 

「誰が土下座なんか!」

 

「全員自分より、身長低くしたいんだな」

 

「徹底抗戦だ!」

 

「戦い抜きましょう!」

 

「でも、こんなに囲まれていては……。一斉に攻撃されてけが人がでるかも……」

 

 いまだ戦う気まんまんのカエサルたちとは違い、西住の表情は暗い。

 

「みほさんの指示に従います」

 

「私も土下座くらいしたっていいよ!」

 

「私もです!」

 

「準決勝に来ただけでも上出来だ。無理するな」

 

 そんな五十鈴たちの言葉に西住はホッとしている。

 たしかにそうなのだろう。無名校がここまでこれたのだ、それだけで十分。……もし、負けて廃校になるという言葉がつかない限りはだが。

 だから俺はこの状況になることを望んだ。

 あの日、俺はダージリンさんから聞いていたのだが、カチューシャは相手のプライドを搾取するのが好きらしい。それを聞いて俺は思ったのだ。それならたぶん、相手を一気に倒しはせず、じわじわといたぶるように追い詰めるのではないかと。それこそ降伏という手段がもっとも戦車道ではプライドをズタズタにできる。なんせ戦わずにして勝つんだからな。こっちの貧弱な戦力なら簡単に追い詰められるだろうと。

 この建物に逃げ込めたのだって偶然ではない。あの包囲網の中、不自然にここへ行く道だけは通れるようになっていた。たぶんこれは独ソ戦で行われた「名誉ある降伏」を準って、大聖堂に逃げられるようにして俺たちに降伏を申し立てたのだろう。三時間の猶予はカチューシャの気まぐれかなんかだろ。

 俺もさすがにここまでうまくいくとは思わなかったが、俺はこれを利用して大洗の問題を解決しようと思った。

 一つは勝ってきた故の慢心、もう一つは廃校という事実を知らない故の勝利に対しての意識の違い。

 俺はそれを行うために、釣り野伏せとわかったいて注意はしなかった。カチューシャを利用させてもらったのだ。とりあえず慢心はこれで砕けたはずだ。

 そして次の問題だ。

 まず、河嶋 桃という人物は見た目では強がっているが、実際のところは極度のプレッシャーに弱く、その実芯の弱い人間なんかじゃないかと俺は思っている。

 その彼女はすでに試合前でもういっぱいいっぱいだったのだろう。プラウダという強豪相手に勝てるかどうかもわからないのだ。不安でしょうがなかったと思う。

 だからあの時、一年生が負けてもいいじゃないですかと言ったとき、たまらずに叫んだのだ。

 

「ダメだ! 絶対に負けるわけにはいかん! 徹底抗戦だ!」

 

 今もそう、自分でも無理だとわかっていても尚、戦う意志を無理矢理に出している。

 

「でも……」

 

「勝つんだ! 絶対に勝つんだ! 勝たないといけないんだ!」

 

「どうしてそんなに……。初めて出場してここまで来ただけでも凄いと思います。戦車道は戦争じゃありません、勝ち負けより大事なものがあるはずです!」

 

 河嶋さんは大洗が好きなのだろう。だからここまで追い詰められている。ここまで弱っている。

 

「勝つ以外の何が大事なんだ!」

 

「私、この学校に来て、初めて戦車道の楽しさを知りました。この学校も戦車道も好きになりました。だからこの気持ちを大切にしたまま終わりたいんです」

 

 ……西住、それだとダメなんだよ。

 

「……なにを言っている? 負けたら……!」

 

「河嶋さん!」

 

「ひ、比企谷……?」

 

 それをあなたの口から言ったらダメだ。言ってしまえば生徒会に不信感が募ってしまう可能性がある。そんな状態になってしまったら決勝なんて望めない。

 人に第一印象があるように、言葉にも第一印象がある。インパクトがあればあるほどその人物と言葉が結びついてしまう。

 だからここから先は俺が言うべきだろう。俺なら、いつこの戦車道をやめても問題がないからな。

 

「――いいか? よく聞けお前ら」

 

 俺は戦車道のやつらの視線を集め、そして今まで隠してきた真実を言う。

 

「大洗学園は、この戦車道全国大会で優勝できなければ廃校が決まる」

 

「え……学校がなくなる……?」

 

 西住は信じられないような目で俺を見てくる。

 

「比企谷、なに言ってるの? こんな時に冗談言ってる場合じゃ……」

 

 武部は俺が冗談を言っていると思っているようだ。

 

「冗談だと思うか?」

 

 本当に冗談だったらどれほど良かったんだろうな。

 

「だって、だってそんなのおかしいじゃん! なんでそんな急に……!」

 

「比企谷殿! どういうことですか!?」

 

「八幡さん!」

 

「比企谷……どういうことだ?」

 

 秋山たちが、俺に詰め寄ってくる。

 

「比企谷ちゃんの言ってることは本当だよ。この全国大会で優勝しなければ、我が校は廃校になる」

 

「せ、説明をお願いします!」

 

 会長はそこから大洗が廃校になる経緯を話してくれた。

 近年は特にこれといった活動実績が無かった事や入学者の減少に悩んでいた事から、文科省の学園艦統廃合による廃校の対象に上がったそうだ。

 だから会長は、戦車道全国大会優勝という実績があれば廃校を免れると考えたのだ。

 

「それで戦車道を復活させたんですか……」

 

「戦車道をやれば助成金も出るって聞いてたし、それに学園運営費に回せるしね」

 

「じゃあ! 世界大会っていうのは噓だったんですか!?」

 

「それは本当だ」

 

「でも、いきなり優勝ってのは無理ですよ~」

 

「いや~、昔、戦車道が盛んだったからもっといい戦車があると思ってたんだけど……。予算がなくていい戦車は全部売られちゃったみたいでね」

 

「では、ここにあるのは……」

 

「うん、全部売れ残ったやつ」

 

「それでは、優勝など到底不可能なのでは……」

 

「だが、他には考え付かなかったんだ……。古いだけで、なにも特徴がない学校が生き残るには」

 

「無謀だったかもしれないけどさー、あと一年、泣いて学校生活を送るより希望を持ちたかったんだよ」

 

「みんな、黙っていてごめんなさい」

 

 これで全員わかったはずだ、負けるとどうなるか。あとは……。

 

「バレー部復活どころか、学校がなくなるなんて……」

 

「無条件降伏……」

 

「そんな事情があったなんて」

 

「この学校がなくなったら、わたくしたちはバラバラになってしまうんでしょうか?」

 

「そんなのヤダよ!」

 

「単位習得は、夢のまた夢か……」

 

 さぁ、これで最後だ。これさえ乗り越えれればあとはもう問題ない。あとは勝つか負けるかだ。

 

「……お前らは、もうあきらめるのか?」

 

「比企谷?」

 

 武部が怪訝そうな顔でこちらを見てくるが今は構ってられない。

 

「磯辺たち、お前らの言う根性はそんなものだったんだな、ガッカリだ。たった一度窮地に陥ったぐらいであきらめるんならバレー部復活への思いもその程度なんだろ」

 

「な!?」

 

「「「コーチ!?」」」

 

 次にカエサルたち。

 

「いいか、たかちゃんズ。お前らは歴史詳しいくせに第二次世界大戦のスターリングラードの戦いでソ連軍が用いた包囲戦法に気づかなかったんだぞ? まったくもって恥ずかしくないのか? そのままで終わるつもりなの?」

 

「なにを!?」

 

「聞き捨てならんぜよ!」

 

「そういうお前はどうなんだ、八幡!」

 

 俺はいいんだよ、気づいてたから。

 

「というか、たかちゃん言うな!」

 

 そして丸山たち一年生。

 

「丸山たち。お前らがこのままあきらめたらあのウサギ小屋のウサギたちはどうなるんだ? お前らはなにもしないでそのままあいつらを見捨てるのか?」

 

「せ、先輩……」

 

「そ、そうだよね、私たちがあきらめたらあの子たちの居場所がなくなっちゃう」

 

「わ、私たち……あきらめちゃだめだよ」

 

「「「「頑張ります!」」」」

 

「頑張ります!!」

 

「……」

 

 風紀委員は。

 

「えっと、風紀委員の人たちは頑張ってとしか……」

 

「私たちにはなにもないの!?」

 

 いやだって。俺、あなたたちのこと知らないですし。

 

「あー、あれですよ? 負けたら風紀委員もなくなりますよ?」

 

「そ、そうよね! 頑張るわよ、ゴモヨ、パゾ美!」

 

「う、うん!」

 

「わかったのよ!」

 

 俺は西住たちの方を見るが、あいつらには必要はないだろう。

 そして最後に。

 

「会長」

 

「比企谷ちゃん……」

 

「ここまで来れたんです。あと一歩じゃないですか」

 

「うん……ありがとう!」

 

 これにてボコのボコボコ作戦は大洗の問題を解決させることができたと思う。

 そして俺は西住の方を向き、しばし視線を合わせる。後の続きは西住が引き受けてくれるだろう。頷いてくれたし。

 

「まだ試合は終わっていません。まだ負けたわけじゃありません。私たちはちょっとボコボコにされているだけです」

 

 西住はそう言いながら俺を見てくる。あとで話があるからと、その顔は言っていた。やっぱり説明しないといけないか。

 

「あとは頑張るしかないですよ! だって、来年もこの学校で戦車道やりたいから、みんなと……!」

 

「私も、西住殿と同じ理由です!」

 

 西住の意見と共にやる気をだす秋山。

 

「そうだよ! とことんやろうよ! あきらめたら終わりじゃん、戦車も恋も!」

 

 まだ恋愛のことをあきらめてなかったんだな武部のやつ。ある意味それもあいつの強みなのかもしれん。

 

「まだ戦えます!」

 

 やはり五十鈴のやつは芯が強い。

 

「うん」

 

 冷泉の返事はいつも同じように見えるがダルそうには感じないな。やる気はあるようだ。

 やっぱりこいつらには俺の言葉なんていらなかったな。

 

「降伏はしません、最後まで戦い抜きます。ただし、みんなが怪我しないよう判断しながら」

 

 これでこいつらはもう大丈夫だろう。

 

「修理を続けてください! Ⅲ突は足回り、M3は副砲、エンジンのかかりが悪くなっている車両はエンジンルームを温めてください。時間はありませんが落ち着いてください!」

 

「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」

 

 

 ―――もし、俺がいなくなっても。

 

 

「私たちは作戦会議だ!」

 

 さぁ、俺は、ナカジマさん直伝の修理術でも披露しますかね。と、その前にか。西住が修理の準備をしている俺に近づいてきた。

 

「八幡くん」

 

「なんだ?」

 

「こうなるってわかってたの?」

 

「わかっていたというよりは、仕向けたに近いけどな」

 

「八幡くんはみんなのことを信用してるんだね」

 

「俺が?」

 

「だって、下手をしたら試合どころじゃなくなってかもしれないのに、八幡くんはみんながあきらめないって思ったんだよね?」

 

 そうか、そう言われるとそうだな。そっちの可能性を考えてなかったわけじゃないんだが……。

 俺は……あいつらを信用してんだな。自分のことながら、西住に言われて初めて気づいた。

 

「ねぇ、八幡くん」

 

「ん? なんだ?」

 

「頼ってね?」

 

 西住はそう言って、作戦会議へと向かっていった。

 それは俺が副隊長になったときに、西住に言われたことだ。「私たちを頼ってね」と。

 

 

 もし、この時の言葉をちゃんと俺が理解していれば、あんなことにはならかったのだろうか? いや、たぶん変わらない。結局、理解しても俺は同じことをするだろう。

 

 だって俺には、その方法しかできないのだから。

 

 

 ====

 

 

「コーチ、すごいですね!」

 

 近藤はそう言いながら俺に近づいてくる。

 

「ん? あぁ、そうか?」

 

 俺なんて、ナカジマさんたちに比べたらペーペーもいいとこだ。たしかに筋はいいとは言われたが。

 というか近い、近いから! ちょっと離れようか近藤。あとコーチ言うな。

 

「いつの間にこんなことができるように?」

 

「練習が終わったあとに自動車部の人たちに教えて貰ってたんだよ」

 

「へぇー」

 

「せんぱーい! こっちもいいですか?」

 

 今度は一年生か。

 

「おう、ちょっと待っとけ」

 

 そしてある程度の修理を俺は終わらせ、作戦会議の方へと向かうのだった。

 

 

「どうですか? そっちは」

 

「あ、八幡くん」

 

「比企谷か、問題はこの包囲網をどう突破するかだ」

 

 たしかに地図を見る限り、この建物の周囲をぐるりと相手の戦車が配置されている。

 

「敵の正確な位置がわかればいいんだけど……」

 

「偵察をだしましょう」

 

 西住のその提案で、秋山とエルヴィン、冷泉と園さんが偵察に行ったのだった。

 

 


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